Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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◆現在のメンバー
ルイ、トゥーラ、シャイニング、シャリー、ヘッドショット、レイ、チャド、ジュード、シルバーシェイド、ガルベス


60.ポートサウスの戦い(激突)

「カマルク!英雄リーグ連合ごときに何をてこずっている!さっさと蹴散らすぞ!」

 

キンブレルは長引いている北門の戦場に駆けつけた。まだ戦闘に至っていないルイ側の南門より先に北門を片付けてしまおうという魂胆だ。

 

「いや……こいつらの中に手練れが混じっている!マスクをつけたやつらだ!」

 

狼狽えながらもカマルクは部下に指示を出しながら応える。

 確かに注意深く戦闘状況を見ると英雄リーグ連合の中に布マスクをつけた動きの早い奴等が混ざっており、奴隷商部隊を圧倒している。

 

(こいつらどこかで見たことが……)

 

しばらくじっと見ていたキンブレルは血相を変えて叫ぶ。

 

「戦闘奴隷を使う!全員解放してこい!出し惜しみするな!」

 

戦闘奴隷とは名前の通り戦闘に特化した奴隷だ。キンブレルの投資により開発された部隊であり、今やポートサウスが誇る主力戦力となっていた。

この部隊を使うということはポートサウス側も本気を出したことを意味する。

 続々と様々な武器を持った奴隷が招集され皆、無表情ではあるがただならぬ気配は感じられる。

 

「よし、点呼が終わり次第、小隊ごとで北門に向かい英雄リーグ連合を殲滅しろ!」

 

ザッザッザッザ

 

足並みも乱れず行進する様は異様な空気を醸し出していた。

 

 

 

 

 

 

場所は変わって南門の郊外

 

ルイ達はヘッドショットの合図またはキンブレルを待ち続けていた。時間が来ても信号煙が上がる気配がない中、ポートサウス内が騒がしくなっていくのが分かり鼓動が高鳴る。

 

(まさか、ヘッドショット達を捕らえるための時間稼ぎをされているのか!?ヒックス(キンブレル)ならばやりかねない!)

 

ルイは後ろを振り向いた。

ガルベスはやる気満々で鼻息も荒いが、シャイニングやシャリーは武器を持ってさえいるが緊張の表情が見てとれる。

 

「お前達は傭兵の後ろからついてくるだけでいい!戦わなくていいからな!」

 

「うッス!」「はい!」

 

傭兵達も…準備OKのようだ。

後は自分の決断だけ。

最早ここまで来て後には引けない。ルイは自分を奮い立たせるためにも精一杯の声で叫ぶ。

 

「いくぞ……!かかれぇ!!」「おお!!」

 

ついにルイ部隊はポートサウスに対して攻撃を開始した。

ルイの掛け声と共に1年前恐怖の対象だったあのガルベスがルイ部隊の先頭を切って突撃していく。シルバーシェイドも続いて傭兵、酒場のゴロツキを従え後に続いた。

 

 対する奴隷商部隊は完全に面食らった形になった。まさかキンブレルが戻る前に人数が多い奴隷商を相手にルイが攻撃を開始するとは思っていなかったからだ。大きなガタイと長い板剣を肩に載せ鬼気迫る表情で向かってくるガルベスに対して、進んで剣を交えようとする者はいなかった。

先制を禁じられていたこともあり及び腰になった奴隷商一団にガルベスは容赦なく板剣の横凪ぎをぶちこむ。

先頭にいた奴隷商の2、3人が吹き飛ばされるのを見てルイは改めてガルベスの脅威を実感すると同時に味方でいるうちの頼もしさを感じた。

この一撃で奴隷商側は戦意を失い自ら向かってくる者はいなくなる。

そしてガルベスが暴れている横をシルバーシェイドを始めとした傭兵団が人数比を物ともせず蹴散らしていく。この想定以上の攻撃力に奴隷商部隊はキンブレル不在も相まって抵抗らしい抵抗も出来なく瓦解していく。

 

「ルイ!奴ら早くも撤退し始めた!門を閉められたら厄介だからこのまま一緒になだれ込むよ!」

 

シルバーシェイドがルイに声をかけたが、ガルベスはもう既に門をくぐり敷地内に入り込もうとしていた。

 

「え、中に入るの!?」

 

 正直なところルイは部隊の指揮なんぞよく分かっていなかった。当然、敷地内に突入出来るなんて思ってもいなかったので、後はベテランの判断に任せるしかなかった。

後に続いて入ってみるものの、次に何をすべきかすぐに答えがでない。

 

(敷地内のMAPは一応頭に入れてきたけど、いざ初めての場所に来るとよく分からん……!あのでかい建物がBARだから……奴隷小屋はここか!)

 

建物が乱立しており、最早先頭のガルベスがどこで戦っているのかさえ分からなくなってきていたがルイは取り敢えず奴隷小屋を目指すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

「好機!」

 

傭兵達がなだれ込む様子を見ていたヘッドショット達も行動に移した。ヘッドショットがアイコンタクトを送るとレイは背中に背負った真っ直ぐで細長い剣「鮪斬り」を取り出し奴隷小屋を勢いよく飛び出していく。

 

「あ、待て!動くな!」

 

奴隷商達も連られて追いかけるとレイは外にでたところで止まり待ち構えていた。

 

シャシャシャ!

 

そして鮪を卸すが如く出てくる奴隷商を順番に捌いていく。

ボトボトと奴隷商の首が落ちていき辺りは一瞬で血の海と化す。

 

「相変わらず奴隷商に対してはエグいことするねぇ~……」

 

ヘッドショットは地面に転がった奴隷商の残骸を見て血溜まりを避けながら小屋を出てくる。

 

「……」

 

レイはこんな時でも喋らない。いや、喋れないのだ。元奴隷だったこのハイブ人は過去に短気な主人に舌を切られてしまい会話が出来なくなっていた。元々ハイブソルジャーという比較的戦闘に向いた種族であったため、ノーファクションで腕を磨いてきた現在、奴隷商を相手にした際の彼を止められる者はいなかった。

 反面、自立した思考に欠けるところがあったため、生活面ではヘッドショットと一緒に行動することで生き長らえてきた。その甲斐あって、彼女との意思疏通はバッチリだった。

 

クイッと首を動作するだけでヘッドショットは理解する。

 

「どうした?おお!あれはルイ達か!このまま加勢するよ!」

 

 

 そしてルイは嵐のような勢いで奴隷商を切り刻みながら向かってくるレイ達を確認した。ヘッドショットもボウガンを使って奴隷商を的確に射抜いている。

 

(すげぇ。あれは…ヘッドショットさん達か!この人達一人一人が異次元の強さだ!でもトゥーラがいない?)

 

奴隷小屋にはいなかったということなのだろうか。となればルイとしてはキンブレルが他所に移したと捉えるのが自然の流れだ。

 

(ヒックス……!トゥーラを連れてくると言ったくせにどこへ行ったんだ!?やはり時間稼ぎの嘘だったのか!)

 

ルイはキンブレルを一瞬疑ったがそうなると辻褄が合わないこともなる。ヘッドショット達と合流できた今、他に時間稼ぎをする理由が見当たらないのだ。

 

「ルイ!トゥーラは奴隷小屋にはいなかった!となると後は2ヶ所あるノーブルハウスしかない!既にチャドが行っているはずだが、乗り込めた以上、まずは南門近くのキンブレル邸に行こう!」

 

ヘッドショットの提案でルイ達は突入した足でキンブレル邸を目指す。

 

「ヘッドショットさん!中で何が起きているんですか?この騒ぎは一体?」

 

「北門にアタシらとは別の集団が攻めて来ているようだ!恐らくキンブレルもそこで戦っている!」

 

「別の集団が?こんなタイミングで?」

 

「ああ!お陰でポートサウスも混乱状態さ!アタシらに向けられる奴隷商兵士が少ないのもそのせいだね!トゥーラを助け出す絶好の機会だよ!」

 

ルイには何が何だか分からなくなってきていたが、ただトゥーラを助け出すことに専念することにした。

 そして目の前にそびえ立つキンブレル邸に警戒もせず突っ込む。

 

「トゥーラ!いるか!?」

 

大声で叫ぶも虚しく反響し何の応答もない。奴隷商すら出てこないのだ。

 

「ルイ!1人で突っ込むな!うん?誰もいないのか?」

 

慌てて入ってくるヘッドショットもキンブレル邸の異変に気がつく。

 

「こっちじゃなかった!?」

 

「そのようだね。2階にチャドがやったと思われる兵士が転がっていたよ」

 

「くそ……!カマルク邸は北門の側か。早く行こう!」

 

「北門の戦闘は激化しているようだ!キンブレルも近くにいるから気を付けるよ!」

 

 

 

 

 

同刻。そのカマルク邸ではチャドとジュードがトゥーラの牢屋を必死にピッキングしていた。

 

「師範!その腕で解錠は無理です!まずは止血してください!」

 

チャドは苦戦の末に牢屋を守っていた布マスクの男を撃破していたが、腕を負傷してピッキングにもたついていたのだ。

 

「……堅牢な牢屋だがここで時間はかけていられん!」

 

ポートサウスによる戦闘奴隷の投入により北門の英雄リーグ連合は早くも制圧され始めていた。そうなると次は南門から突入してしまったルイ達だ。

 

「あ!キンブレルが南門に向かうようです!」

 

カマルク邸の窓からジュードが覗くと、最早、英雄リーグ連合はカマルクによって押し戻されており、キンブレルは部隊をまとめて南下し始めている。

 

(まずい!ルイの方へ行く……!)

 

焦るチャドの腕からは血がドクドクと滴っているが、そんな時、後ろから声が聞こえてくる。

 

「どけ。俺が錠をあけてやる」

 

バッと振り返ると視線の先にはいつの間にか深編笠をかぶった男が立っていた。

 

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