Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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◆現在の仲間
ルイ、トゥーラ、ナパーロ/ラックル/694番、ガルベス、シルバーシェイド、シャリー、ヘッドショット、レイ、チャド、ジュード


65.トゥーラのけじめ

「さぁ着いたわ。ここがショーバタイよ」

 

渦中のトゥーラはシャリーを伴い数日かけて都市へ移動していた。道中で帝国(都市連合)の反乱農民に出くわし食糧をせびられたが、単純に走って逃げることで、空腹でスタミナが切れている農民をまくことが出来ていた。

 

「わ〜大きな都市ですねぇ。ここに何があるんですかぁ?」

 

ピンク色の奇抜な髪を持つ女の子シャリーは元奴隷ということもあって言われるがままについてきたが、ショーバタイ都市の大きさに感動していた。

 

「ああ、言ってなかったわね。私の実家があるのよ。あなたも泊まっていいわよ。それと数日ここにいるからこのお金使って散策なり買い物なり自由にしてて」

 

「おお!お金!初めて持ちます」

 

目をキラキラさせているシャリーにトゥーラは忠告する。

 

「あんまり人前でお金を出さないようにね。あと危ないから都市の外には絶対に出ないこと」

 

「了解です!」

 

そう言って喜び勇んで走っていってしまったシャリーを見て軽くため息つきながらトゥーラは見送った。

 

(実家の場所をまだ教えてないんだけどな。ま、その辺歩いてたら出会うか)

 

トゥーラはあまり変わっていない街並みを見てゆっくりと歩き出す。都市の中をぐるりと周り、昔ながらの建物や新規に建造されている建物を眺めては感慨にふけっていた。

 するとどこからともなく声をかけられる。

 

「え?もしかしてトゥーラじゃない?トゥーラ・カイヤライネン!」

 

振り向いた先にはトゥーラと同じ年頃であろう街娘がいた。

 

「あ……リコ。久しぶりね……」

 

「記事見たわよ〜!ハウラーメイズ遠征隊にいたんだって?まさかあなたがテックハンターになっていたなんて信じられないわ〜」

 

「……まだあまり実績を残せてないけどね」

 

「何言ってんのよ!47位ぐらいじゃなかった?十分じゃない!」

 

「ああ、それは……」

 

トゥーラは一瞬説明を躊躇った。遠征において自分は大きな功績は残せていない。ルイがメガクラブにトドメをさしたからこそ貢献ポイントが付与され、しかもそれを全部自分が貰ったことなど今さら恥ずかしくて説明したくはなかったのだ。

 

「まぁ早くお母さんのところに帰ってあげな!」

 

「う、うん」

 

トゥーラはそのままようやく路地裏に入っていき、古びた家の前に立った。

しかしため息をつくばかりで中々家の中に入ろうとしない。

するとガチャリと扉が開きぶつかりそうになり中から声が聞こえてくる。

 

「あ、すみま……トゥーラ!?帰ってきてくれたのね!」

 

「……母さん、ただいま」

 

出迎えたのはトゥーラと似て長い黒髪の中年女性だった。

 

「無事なの?どこも怪我はしていない?連絡もしないでどうしてたのよ!」

 

「もう。遠征の記事は見てないの?私は宣言通りテックハンターになったのよ。ケガなんかするわけないじゃない」

 

ポートサウスで辱められた事は口が裂けても言えず、つい強がってしまう。

 

「え!?あれだけダメだって言ったのになぜテックハンターなんかになったのよ!」

 

「なぜって……でないと父さんを探せないわ」

 

この言葉に母親は悲しそうな表情になる。

 

「……!!あなたまだ……。あの人がいなくなってからもう10年以上もたつというのに……」

 

「探し出してあげないと可愛そうじゃない」

 

「そんなこと言ったって……あの人が行ったところは禁忌の島なのよ?……まさかあなたあそこに行こうとしているの!?」

 

「ええ、行くわ。今日はそれを伝えに来たのよ」

 

突然娘から告げられた一言に母親は青ざめて固まっている。そしてせき止めていた何かが溢れ出しそうな表情で問いただす。

 

「な、なんでなの?なぜあなたまで行くのよ?あの人が帰って来なくなってから私がどれだけ苦労してあなたを育てたか分かっているの?」

 

母親は次第に取り乱し声を荒げる。

 

「だめよ!絶対にだめ!あなたまでいなくなってしまったら……また1人にしようとするの!?」

 

「……っ」

 

トゥーラはこれ以上言い返せなかった。

 

女手一つで大事に育てたかわいい1人娘が危険な大地へ行こうなどと親ならば反対するに決まっている。実際にトゥーラは半ば家出するような形でテックハンターの業界に足を踏み入れていた。そして母の気持ちがわかるがゆえに長く実家に帰れないでいたのだ。

 

今回行こうとしているところは並大抵の場所ではない。最後の挨拶になる可能性も踏まえてお世話になった母親にお礼を述べるためにあえて赴いたのだ。猛烈な反発にあうのは覚悟の上であった。

だからトゥーラの意志はここで揺らぐことはなかった。

 

 

全ては幼い頃に父親とかわした約束のため。

 

 

 

 

 

父親の名前はアードルフ・カイヤライネンといった。

 

トゥーラは幼い頃、アードルフがテックハントの調査先からガラクタの玩具を拾ってきてくれるのをいつも楽しみにしていた。壊れて動かなくなった玩具でさえ科学技術がふんだんに使われている仕組みが見て取れ、一日中目を輝かせながら飽きずに眺めていられたものだった。

 

「今回も期待して待ってろよ」

 

「うん!お父さんってどうしてこんな面白い物ばっかり見つけてこれるの?いつもどこに行っているの?」

 

「お?トゥーラも父さんの仕事に興味あるのかな?父さんはふるーい遺跡に眠っている人の生活に役立ちそうな便利な物を集めてくる仕事をしているんだよ」

 

「ふーん、みんなのために働いているなんて偉いんだね!私も大きくなったらお父さんみたいなテックハンターになる!」

 

「お?そうかそうか!じゃあ帰ったら道具の使い方とかを教えていかないとな!」

 

「分かった!」

 

このやり取りの後、アードルフはお気に入りのカウボーイハットを被り禁忌の島へ旅立った。そして消息を断ったのだ。

 

成長し自分の父親が何をしていたのか理解ができる年頃になりトゥーラは考えるようになる。

娘として彼を見つけ出し禁忌の島攻略を成し遂げる。そして父親が目指したであろう偉大なテックハンターになることで彼との約束を果たし、無念を晴らすのだ。

母親には申し訳ないがこれは自分に課せられた使命なのだと。

 

 

その夜、すっかりシャリーのことを忘れていたが、彼女は自力でトゥーラの実家に辿り着いた。どうやらトゥーラ・カイヤライネンの家がどこか聞き回っていたら知っている人がすぐに見つかり場所を教えてくれたらしい。

ショーバタイでは少なからずトゥーラの知名度が上がっていたようだった。

天然のシャリーが訪問したことで母娘の気まずい状況も少し和らげることが出来てその日は過ぎていった。

 

 

翌日、トゥーラは早々に出立する準備をしていた。実家とは言え母親と口喧嘩をしたせいで居心地が悪かったのだ。

しかしそこに母親が毅然とした表情で近づいてくる。

 

「おはようトゥーラ。あなたの頑固さは父親ゆずりね。私が何を言っても禁忌の島に行くつもりでしょう?」

 

「う、うん……」

 

「だったらこれを持っていきなさい」

 

母親はそう言って一振りの刀を差し出す。

 

「これは……?」

 

「父さんが昔に遺跡から持ち帰った物よ。価値は分からないけど見るからに切れ味が良さそうだし役に立つでしょう?」

 

「……ありがとう」

 

「あなた武器はいいとして仲間はちゃんといるの?シャリーという子はいい子そうだけど……奴隷だったのでしょう?まさか1人で行くわけじゃないわよね?」

 

「同行してくれる上位ランカーのテックハンターがいるの。それに今回チームも組まれるわ。実はハウラーメイズを取れたおかげで禁忌の島の攻略に現実味がでてきたのよ」

 

「そうなの……。必ず帰ってくるのよ?」

 

「ええ。分かったわ」

 

親への挨拶を終えたトゥーラは実家を後にした。腰にはキラリと光り輝く父親の刀を帯びて。

 

 

 

 

こうしてショーバタイを出て暫く歩いた頃

 

見渡す限り砂漠の広野の中で、一人の男が近づいてくるのを発見する。

 

「だ、誰でしょうか……また反乱農民ですかね?」

 

シャリーがオドオドしながら警戒している。

 

「ボロボロの服装だからそのようだけど……一人だけか。少しふらついているし何かの襲撃にあってはぐれたかな?」

 

男はそのまま二人に一直線で近づいてくるが手には鍬を持っている。

 

トゥーラも抜刀して構える。その様子を見ていたシャリーもトゥーラから貰ったお古の刀を抜いた。

 

「どうします!?や、やりますか!?」

 

「シャリー、落ち着いて。要件を聞いてからよ」

 

互いの距離が数メートルまで縮まると男は悲壮感漂う表情で声をかけてくる。

 

「た、旅人どの!すまんが食糧を少しだけでいいから分けてくれんか?農場がスキマーに襲われて逃げてきたんじゃが一人になってしもうた」

 

「……」

 

トゥーラは考え込んだ。この男一人に食糧を提供するだけの余裕はある。万が一、強奪しようとしてきても恐らく勝てる相手だ。ただ、気になることもある。

 

(真っ先に逃げのびた男が重たい鍬をずっと所持しているだろうか?)

 

それにこの辺に農場があると聞いたことはない。

 

「そこで止まりなさい。少しだけなら分けてあげられるわ」

 

「おお、ありがたい!」

 

男も言われた通り立ち止まり、荷物をおろすトゥーラを見てニヤニヤしている。

 

その様子に何か違和感を感じ取ったのかシャリーが声をかける。

 

「トゥーラさん。こんな奴ほっといてもういきましょうよ。何か気持ち悪いですよ」

 

「大丈夫。少し食糧を置いていくだけよ」

 

トゥーラはカバンから取り出したドライミートをナイフで裂き始める。

 

すると

 

「トゥーラさん!向こうから別の者達が走ってきます!」

 

「え!?」

 

振り向くと確かに目の前にいる男と同じような身なりの者達が歓声をあげながら接近してくるのだ。

 

「騙したわね!?」

 

側にいる男のほうを見やった瞬間、目の前には振り下ろされようとしている鍬が目に入り、すんでのところでかわす。

 

「飯をよこせぇええ!」

 

男はそのまま再度斬りつけようとしてくる。

どうやらこの男は後ろから走ってきている男達とグルのようだ。

一人が気を引いて油断している隙に後ろから襲いかかる算段だったのだろう。

 

しかし

 

『無限の太刀 参の型 羽衣』

 

トゥーラは冷たい目つきをすると襲いくる男の鍬を避けつつ持っていた刀で男の両腕を撫で斬った。

 

「あ……あ……ああ!」

 

切れた腕から鮮血が吹き出し、男はしばらくその様子をあ然としながら見ていたが、やがてそのまま膝をついて倒れこんだ。恐らく大量失血により気を失ったのであろう。

 

トゥーラはその様子を冷酷に見下ろしながら刀を一振りして血を飛ばすと、一言呟く。

 

「これだから男は信用できない……」

 

そして側で固まって見ているシャリーに声をかける。

 

「このまま走って逃げましょう」

 

シャリーは無言でコクコクと頷き、走りゆくトゥーラの後をすがるようについていった。

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