Kenshi -20years later- 作:さわやふみ
【遠征組】ルイ、トゥーラ、ジュード
【拠点滞在】ナパーロ/ラックル/694番、ガルベス、シルバーシェイド、シャリー、ヘッドショット、レイ
【偵察中】チャド
拠点を出発して1日後。ルイ達は無事にハウラーメイズ地域最北の港町に入っていた。
ここは元々廃村だったがロード・オラクルが再建し、BARが立つほど活気が出てきていた。
「ルイとトゥーラだ!」
「ハウラーメイズの英雄だ!」
ルイ達がBARに立ち寄ると人々がもてはやし讃え始める。やはりこの地域における知名度は高いようだ。
「遠征の時に見かけた移民の方々ね。私達覚えられちゃっているわ」
トゥーラはにこやかに愛想笑いし、軽く手まで振っているが、ルイの反応は反対だった。ここに来るとアウロラを思い出すからだ。
夕食を取りながらルイは真剣な表情でトゥーラに問いかける。
「そろそろ俺達のチームリーダーになる人の名前教えてくれよ。禁忌の島に行くんだから信頼出来そうな人なのかめっちゃ気になってんだけど」
ジュードもパンを口に頬張りながらウンウンと頷いている。トゥーラはすました表情で少し口に笑みを浮かべると、勿体ぶるように一呼吸置いて喋ろうとする。
しかし、そんなトゥーラの発表を遮るように突然見知らぬ男の声が割って入ってくる。
「なんだぁ〜?こんな小さなガキ共が禁忌の島に行くってのかぁ?」
いかつくて大きな体つきに旅用のロングコートを羽織り、重厚な棍棒を背負っている。見かけ上テックハンターのようだ。
男は近寄ってくるとさらに雑言を浴びせてくる。
「メガクラブも大したことない生き物だったんだなぁ」
かなり酔っているようで近づくと酒くさい。
当然こういう男に対して勝気なルイが何もしないわけがない。大男に全く及ばない身長で立ち上がると下からガンを飛ばす。
「ガキが俺様に何か用か?ちっちゃすぎて踏みつぶしちまうわ」
プツン。とルイの頭から音が聞こえる。
「てめぇ、いい加減に……」
キレたルイが喧嘩を売ろうとしかけた時であった。
「邪魔よ。私達の視界から消えなさい」
思いもよらぬ言葉をトゥーラが返したのだ。
ルイやジュードも啞然としている。
そして言われた大男は額に血管を浮かび上がらせている。
「言うじゃねぇか。ちょうど船の定員オーバーにならねぇか心配だったんだ。ここでお前達をリタイアさせるってのもありだなぁ」
船というワードでルイ達もこの大男が禁忌の島を目指す一員に応募している者だと気がつく。
「定員漏れを気にしているようじゃ大したことないわね。出直してきなさい」
さらにトゥーラが毒舌を吐き、もはや大男の顔は茹でダコのように真っ赤になった。
「ガキどもぉ……」
大男は棍棒に手をかけるが、横ではBARの警備員も目を光らせている。
「ちっ……まぁいい。取り敢えずお頭にお前達のCPを測って貰ってからでも遅くはない。どうせ船着場で会うんだしなぁ」
CPという言葉にルイはハッとする。サッドニールやスケルトン盗賊の長老が相手の力量を計測する際の数値として使っていたのを思い出したからだ。
「CPってコンバットパワーのことだろ?お前の頭はスケルトンなのか?」
「ああ?そうだ。しかも我々のお頭は短期間でランキング23位まで貢献度を稼いでいる。サッドニール様という方だ。お前達も月刊誌で見ているだろう?」
ルイ達に衝撃が走った。
「サ……サッドニールだって!?スケルトンなんだよな?いまどこにいるんだ?」
矢継早の質問に大男も面食らった形になる。
「2階の宿にいるが……お前知り合いなのか?」
「会わせてくれ!」
ルイの気迫に押され大男は勝手に会えばどうだと言わんばかりに階段のほうに手を向けた。
スケルトンが人間社会に溶け込んで生活しているとは言え、絶対数は圧倒的に少ない。その中でさらに同名のスケルトンとなると天文学的な確率になり得る。
ルイはトゥーラを見た。
「……ニールかな?」
「分からない。取り敢えず会ってみるしか……」
「だな」
ルイは恐る恐る階段を登っていく。偶然ではあるがついにサッドニールに会えるかもしれないのだ。自然と足も震えてくる。
しかしなぜ彼がここにいるのか目的が分からない。テックハントの貢献度も異様に高いが元々稼いでいたのだろうか。いくつか疑問が湧くがとにかく会えるならばルイにとって何でも良かった。
サッドニール。
スケルトンでありながら約15年間彼女を育てた後、旅の途中で別の目的を見つけチームを離脱。その後音信不通になっていた。
その間、ルイはトゥーラと共に独力で数々の至難を乗り越え成長してきた。その勇姿を育ての親であるサッドニールに見せたかったのだ。
「サッドニール……いる?」
薄暗い2階で静かに呼びかけると奥の方からスケルトンの起動音が聞こえてくる。
「私を呼んだか?お前は誰だ?」
サッドニールとはまた異なった音声の言葉で返事が返ってくると、その者が正体を現す。
「だ……誰だよお前!」
「呼んでおいて誰だとは何かね」
その者はスケルトンではあるがサッドニールとは異なる容姿だったのだ。型も違うしこのスケルトンは衣服を纏っておらずただ不釣り合いとも言える大きなバックパックを背負っているだけだった。そして何より雰囲気が全く異なっていた。言葉に感情を感じられず親近感が沸かないのだ。
それはスケルトン盗賊の長老に対する感覚と似ていた。
「あ……すまねぇ。同じ名前のスケルトンと間違えたんだ……」
「……ほう。サッドニールというスケルトンが他にいてその者と知り合いという事かね?」
「あ、ああ。そうだ」
「どこにいる?」
「いや、俺も知りたいぐらいだよ」
「そうか」
「…………」
ニールでなかった時点でルイにはこれ以上喋る話題はなくなっていた。
そして気まずそうにしていると、1階から先程の大男とトゥーラ、ジュードも上がってきた。
「お頭、すまねぇ。変なガキを行かせちまった」
大男が謝罪するとサッドニールを名乗るスケルトンも坦々と返す。
「構わない。今ここにいるテックハンターは恐らく禁忌の島に行くグループだろう。挨拶しておくことに越したことはない」
「あ、そうだった!こんなガキどもが一緒ってマズくないっすか?行くとこはあの禁忌の島なんすよ?」
「CPはギリギリだが足を引っ張るほどの数値ではなかった」
これにルイが激しく食いついた。
「え?え?俺のパワー測ったのか?いくつだった?教えてくれよ!」
「……CP39。誤差は測定不能だ」
「うおお!?そんな上がったのか?やったぜ!」
過去の測定から大幅に上がっており大喜びだ。
「喜ぶほどの数値じゃないだろうが。俺は70オーバーだぞ」
大男がすかさず突っ込むがルイは全く聞いていない。
「確か前の測定から20ぐらい増えてっぞ!」
一人盛り上がって最早周りは見えていないようだ。そこにトゥーラが冷静に声をかける。
「ルイ、どうやらサッドニール違いだったようね。そんなこともあるものなのね」
「あ、ああ。スケルトンに流行った名前だったのかな。まぁそもそもここにいるはずなかったし……」
「確かにそうね。兎に角、これ以上はもう有意義でもないし、明日も早いから私達はもう寝ましょう」
トゥーラがやり取りを切り上げるようにまとめたのでこの場はこれ以上何事もなく収まったのであった。
翌日からルイ一同はハウラーメイズ中央の都市に向かうが、ここでも一悶着が起こる。
自称サッドニール率いるテックハンターチームと再度鉢合わせしたのだ。当然、BARで絡んできた大男も帯同していた。サッドニールというスケルトンは大男の他に2人のグリーンランド人と一人のシェク人の男を従え5人チームを組んでいた。どの男も厳つい体つきで、鉈武器、鈍器、重武器を背負っていて異様な圧を放っていた。
その要因は恐らくそれぞれの巨体だけでなく、その者達の人相の悪さも起因していた。顔中傷だらけな上に目つきも鋭く無愛想で、サッドニールというスケルトン以外は全員悪人顔なのだ。
大男はルイ達に気がつくとニヤニヤしながら近寄ってくる。
「よ〜結局お前達マジで参加するつもりなのかよ」
つられて他の厳つい男共も寄ってきて、あっという間にルイ達は巨体の男達に取り囲まれてしまう。
「どけよ。通れねーだろ」
ルイが虚勢を張るが、大男達は笑っているだけだ。
「股の間を通れよ。小さいから通れるだろ?何ならその小さいおっぱいを擦り付けていってくれてもいいんだぜ?」
一人の大男が大股を開き腰を降りはじめた。
これに反応したトゥーラが自分の刀に手をかけるが、大男達はさらに調子に乗る。
「おお?そんなちっぽけな武器で何する気だ?俺の息子でも斬ろうってのか?」
「ぎゃははは!柔道着の君!この雌ガキ達とはもうヤッたのか?上手くなるように俺達が調教しておいてやろうか?」
大男達はジュードの肩に手を回し絡み始める。
「ふ、ふ、ふざけんな!やってないし!」
赤面して答えているジュードにルイが声をかける。
「おいジュード、こいつらの下ネタに真面目に対応する必要ねーよ。こっちから行こうぜ」
ルイは相手にせずに回り道しようとするが、尚も大男の一人が通せんぼする形で前に立ちはだかる。
「ガキだが顔は悪くねぇ。こんな田舎で娼婦もいねぇんだ。俺たちの相手しろよ。気持ちいい体験させてやるぜ?」
この言葉にトゥーラの表情が見る見ると蒼白になっていく。刀を持つ手も心なしか震えている。ポートサウス奴隷商に捕まり散々な目にあった彼女にとって性的な話はトラウマになっていたのだ。
「ん?おいおい、震えてるのか?ハハハハ!昨日の威勢はどうしたんだよ!優しくしてやるから安心しな嬢ちゃん!」
BARで絡んだ大男がトゥーラの様子に気づいてさらに絡もうとした時であった。
「お前の相手は私がしてやろうか?」
ドスの効いたハスキーボイスが後ろから聞こえてきたのだ。
大男が振り返るとそこにはさらに背の高い短髪のグリーンランド人が立っていた。
「あ、あんたは……!」
「くくく。私は床の技は苦手だが剣は得意なんだ。お前ら全員まとめてでもいいよ」
一見すると男と見間違えそうだがまさに今度は大女が現れたのだ。その大女は男共を一喝したあとルイ達のほうを向く。
「よう。久しぶりだな。トゥーラ。随分成長したんじゃないかい?」
この声を聞いたトゥーラの表情は一気に明るくなっていく。
「リドリィさん!!ご無沙汰しております!」
リドリィと呼ばれた大女はニカッと笑みを浮かべて腕を組んだ。