Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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7.テックハンター

「うおおおお!すげー!なんだあの建物は?」

 

ブラックスクラッチに近づくとルイは歓声をあげた。

 

遠目で分かるくらい巨大な建造物が町の中央にそびえ立っていたのだ。

 

「あれは古代の遺跡だよ。この町はテックハンターの探索拠点なのさ。」

 

「テックハンター?」

 

「未開の土地を探索して古代の技術やアーティファクトを遺跡から持ち帰る冒険者達だ。」

 

「冒険者!じゃあ冒険の話がたくさん聞けるのか?」

 

「そうだな。ここにはテックハンターの詰所や本屋もある。今や世界の最先端の情報がここにあると言ってもいいかもしれない。」

 

「うおお!そんな町がこんな地域にあるのか!カニより上手い飯の話も聞けそうだな!」

 

「それもあるだろうけど、ルイにはここに着いたらやってもらいたいことがあったんだ。」

 

「なんだよ?」

 

ルイはいぶかしげにサッドニールを見る。

 

「お金稼ぎだ。」

 

「ええ?もしかして今お金全くないの?」

 

「食料を買えるぐらいはあるけどこの町で住居の拠点を買えるぐらいお金を貯めてほしいかな。」

 

「そんなに!?じゃあニールは何すんだよ?」

 

「私はロボティックワークショップで磨耗した体を修理してくる。」

 

「なんかずるくない?」

 

「いや君のお金稼ぎは筋肉トレーニングも兼ねているのだよ。せめて私ぐらい筋肉をつけるのが目標かな。それにこれからずっと野宿も嫌だろう。私は平気だが。来なさい。説明しよう。」

 

そう言ってサッドニールは町に入ると雑貨店へルイを連れていった。

 

「うおお・・・。」

 

ルイは活気のある町を見るのは初めてだったので町に入るだけで心が踊った。

 

色々な格好や武器を持った人が町を歩いている。

 

スケルトンも多い。

 

「あいつもテックハンターか?いかつい武器持ってんなぁ。」

 

「人の数倍ある大きさの猛獣と戦うこともあるからね。」

 

「カニより大きいのか!?見てみたいな・・・。」

 

軽い足取りで先行しようとするルイを止めてサッドニールは言う。

 

「大きなバックパックを買い直そう。これで手持ち金はほぼ0になるけど。」

 

「残り金を動きが悪くなりそうなバックに費やしていいの?」

 

「いいんだ。では次の場所へ。」

 

次に2人が訪れた場所は町の外であった。

 

「ここで原鉄を掘ってバックに詰めきれなくなったら全部担いでいって店に売る。そしてまたここで掘るを繰り返しなさい。」

 

「・・・・!」

 

平然と言い放つサッドニールにルイは唖然としている。

 

「お金も貯まるしルイの筋力と運動力と労働力も鍛えられる一石四鳥の作業だ。効率的だろ?」

 

冗談ではなくマジのようだ。

 

「本当に後悔してきたかも・・・!」

 

「もう引き返せないよ。強くならないとね。」

 

ニールは続けて休憩の仕方まで指定した。

 

「最初はバックパックの原鉄を売りきる度に休憩するといい。町の外れに自由に使える冒険者用のスクラップテントと寝袋がある。野ざらしだけど。ちなみに休憩中は読書をするよ。ルイは文字が読めないからこの図書館にある本で歴史を勉強しながら覚えよう。これも一石三鳥だ。」

 

「ニールって実はサディストだったの?」

 

「君の父親に働かされた分を君に返しているだけさ。ははは、冗談だよ。頑張ってね。」

 

サッドニールは生き生きとしながら町中へ消えていった。

 

一人残されたルイには選択肢はなかった。

 

(・・・掘るか。)

 

さきほど町中で渡されたツルハシを使って鉄鉱石を堀り始める。

 

カーン、カーン、カーン!

 

取り敢えず始めてみたがこれは中々難しい。

上手く削れないし綺麗な原鉄が意外と見つからないのだ。

 

そしてようやく1つ形のよい原鉄をバックに入れた時に気づいた。

 

(これをバック一杯になるまで詰めるだって?1日で終わるのか?というか滅茶苦茶重くなるじゃん!)

 

ニールは当たり前のようにとんでもない注文をしていった。

夕暮れにこの町に着いたから次の休憩まで夜通しでやれってことか!

 

(くそー!日が落ちるまでに詰めきってやる!)

 

逆にルイの負けず嫌いに火がついた。

サッドニールもこの性格を知った上での計算だったのかもしれない。

 

そして

 

朝日が昇り始めた頃。バックパックにたっぷり原鉄を詰め込んでルイがトボトボと歩いて町の門まで戻ってきた。

 

そこにツヤツヤのサッドニールが出迎える。

 

「随分時間がかかったね。初めてだから仕方ないか。」

 

「あんたは・・随分見違えたね。」

 

「分かるかい?ワックスを塗ってみたんだ。」

 

「お金ないんじゃねーのかよ!」

 

軽くポーズをとっているサッドニールにルイは思わず突っ込みを入れる。

 

「ルイのお陰で黒字だよ。原鉄を売ってきたら文字を教えてあげよう。本も買ってきた。」

 

「~~!それより過去に起きた出来事を教えてくれよ!」

 

その言葉にサッドニールは少し立ち止まって考え込んでからこたえた。

 

「君がここで一人前になったらちゃんと教えるよ。」

 

「なんだよそれ~!」

 

サッドニールによる基礎修行が何気なく始まった。

ルイは文句を言いつつも黙々と日課をこなした。

 

 

 そしてブラックスクラッチに滞在して1ヶ月ほど経過した頃、

少したくましくなったルイはいつも通り鉄鉱石を掘っていた。

 

カーン、カーン、カーン

 

(最初の頃よりスムーズに掘れるようになってきたぞ。このペースなら8時間で一杯に出来そうだ。)

 

原鉄堀は早朝から始め、日が沈んだ頃に終える。そして夜は松明のもとで本を読み漁る。それが最近の日課となっていた。

 

だがここに思わぬ邪魔が入る。

 

「そこの坑夫!お前は犬のようなお前の人生を価値のある物へと変えたいと思わないか!?今日のお前は幸運だ!俺達兄弟がそれを成し遂げてやる。お前の命は革命の一部となるのだ!」

 

現れたのはリーバーの集団だった。

 

「ええー・・!こいつらこの辺りまで来るのか。ニールから聞いたけどやっぱ迷惑集団だな。」

 

ルイは掘るのを中断し、重いバックを持ったまま町の方へ駆け始める。

 

それを見たリーバー達はルイを追い始める。

 

(せっかくバック一杯まであと少しのとこなのに!)

 

「逃げるな!卑怯者!」

 

「大人数で坑夫を奴隷にしようとするお前らのほうが卑怯だろ!」

 

言い返しながらルイは走るがスピードが全く出ていない。

 

(やっべぇ、門にいる守衛に守ってもらう手はずだけど・・これ追い付かれるじゃん!)

 

差はつまる一方だ。しかしその時、何処からか声が響き渡る。

 

「坑夫!追い付かれるわよ!荷物を捨てて走りなさい!」

 

(おお、守衛さん来たか?サンキュー!でも原鉄詰めた荷物は捨てられないぜ!)

 

ルイは声の主には従わずバックを持ったままひたすら走る。

 

「ちっ!がめつい坑夫ですね!」

 

声の主は岩場の高所に移動し背負っていたボーガンを構える。

そしてルイを追っているリーバーの先頭に向け射撃した。

放たれた矢は真っ直ぐにリーバーの足めがけて飛んでいく。

 

「ぐっ!テックハンターだ!引け!」

 

矢を受けたリーバーは深追いせず去っていった。

 

「大丈夫ですか?そこの坑夫!」

 

矢を撃った者はそのままルイの元に駆け降りてきた。

 

「ああ、大丈夫だ。足を狙ったのか。すごい射撃精度だな。」

 

「足?そ、そうね。それよりなんですかあなたは!命より荷物が大事なの?」

 

端正な顔立ちの女で品があるが少し厳しい物言いだ。

 

「俺の血と涙がこの荷物には詰まっているんだ。あんたはテックハンターなのか?」

 

女はテックハンターと言われると、後ろで一本に纏めた長い髪の毛をたなびかせ自信に満ち溢れた顔でこたえる。

 

「そうよ!自由とロマンを追い求める誇り高きテックハンターよ。」

 

「女のテックハンターか!奇遇だな!俺も取り敢えずテックハンターになろうかなーって思ってたとこなんだ。」

 

ルイの場当たり的な回答に女は袖なしのロングコートから出した腕をプルプル震わせながらこたえる。

 

「取り敢えずですって?いい?テックハンターは誰でもなれるわけじゃないのよ?それこそ血の滲むような特訓をして一人前になってから近場の比較的安全な遺跡へ行くぐらいなの。それでも帰ってこれない人だっているんだから。」

 

「そ、そうか。ところで見たとこ俺と年も近そうだけど、名前は何て言うんだ?」

 

「トゥーラ・カイヤライネンよ。あなた名前を聞くならまずは自分から名乗るのがマナーですよ!」

 

そこにちょうど別のテックハンターと思われる男達が冷やかしながら通り過ぎていく。

 

「はははは!新米トゥーラが説教してるぜ。自分はまだ相棒も出来ないペーペーなのによ!」

 

「・・・・。」

 

「お前も新米だったのか!宜しくな、トゥーラ!」

 

聞いていたルイは純粋に喜ぶが、トゥーラには気に触ったようだ。

 

「う、うるさいわね!私は誰とも組まない主義なだけよ!」

 

「じゃあ俺達と組もうよ!仲間は多いほうがいいだろ?」

 

この無邪気なルイの申し出にトゥーラは一瞬本音が出てしまう。

 

「ほ、ほんとにいいの?ってあなた坑夫でしょ!炭鉱掘るわけじゃないのよ!」

 

「鉄堀は基礎能力アップのためにやってただけで元々テックハンターっぽい事はやろうとしてたよ。ニールに言えばOKしてくれると思う。あんたいい奴そうだし!」

 

トゥーラは少し頬を赤く染めながらこたえた。

 

「ニール?仲間がいるのね。私のほうがあなた達を査定してあげるわ!」

 

ルイとトゥーラは早速サッドニールの元へ向かうのであった。

 

 

「ふむ。グリーンランド人か。あくまで仮数値だけどルイと同じくらいかちょっと強いぐらいかな。仲間には丁度いいと思うよ。」

 

これがサッドニールのこたえだった。

対してトゥーラはそれに食いつく。

 

「ちょっと!スケルトンさん、テックハンターの私がこの子と同じくらいだと言うの?」

 

「初対面だからほぼ見た目からの判定だよ。それにルイも大分ここで成長したんだ。元々、器用だし、サーベルの扱いも上手いし、隠密も上手いからね。後は旅に必須な基礎能力がつけば新米テックハンターさんぐらいにはなったと思うよ。君たち2人ならある程度やっていけそう

だね。」

 

サッドニールに誉められてルイは満面の笑顔だが、トゥーラは真剣だ。

 

「私は新米ではありません!それにあなた達が相棒に相応しいかは私が決めます!」

 

「ニール、こいつちょっとめんどくさいんだけど許してやってよ。」

 

「わかった。しかし、1つトゥーラに聞きたい。君は日々どうやって生計をたててきた?」

 

唐突な質問にトゥーラはおろかルイも頭を傾げている。

 

「どういう意味よ?主に護衛や守衛のバイトとかだけど・・その・・・バイトがない時は原鉄堀もたまーにやるわ・・。」

 

モジモジしながらトゥーラは答える。

 

「そうか。問題なさそうだね。」

 

「ニールなんだよその質問は?テックハンターにしては経歴がしょぼいってことか?」

 

ルイの言葉にトゥーラの顔は紅潮している。

 

「いや、テックハンターの中には都市連合の専属ハンターもいてね。収集した技術を直接都市連合に渡す契約をしている者がいるのだよ。そういう人なのか気になっただけだ。」

 

それを聞いたトゥーラは意味を理解したのか流暢に語りだす。

 

「ああ、お抱えハンターのことね。私はあんなお金だけで動くテックハンターではないわ。」

 

「良かったよ。国と繋がりが強いテックハンターは一応気を付けておいてね。目的によっては国を優先して仲間を裏切ったりすることもあるから。」

 

「分かったわ。・・・あ!ちょっと何かもう私が同行する流れになってるけどまぁいいわ。道中であなた達を判断することにする。で、最初はどこに行く?」

 

興奮気味に話すトゥーラとは対称的にルイは落ち着いていた。

 

「デッドランドにすげー強いニールの戦友がいるっぽくてさ。仲間に誘うついでにそこで良質な武器もゲットしたいんだよね。」

 

「あなた・・あそこは名前の通り死の土地よ?壊れた機械のスパイダーがうようよしているし、酸性雨も降り続けている。たどり着いても高価な武器を買うお金がないでしょう。」

 

「そうだなー・・・だから一度、都市連合の町をまわるってのはどうだ?そこでお金を稼ぎつつもう少し腕を磨きたいんだよね。ここで傭兵を雇うにもお金ないしさ。」

 

聞いていたサッドニールは何かを決心した様子で総評し始める。

 

「うん。悪くないよ。本を読めるようになって知識も深まり状況判断ができるようになってきている。困難は人を成長させるが勇気と無謀は違うからね。ぬるま湯とは言わないが、この世界では身の丈にあった判断をし続けなければ生きていけないからね。」

 

サッドニールが話を続けるが、

トゥーラもいつの間にか真顔で聞き入っている。

 

「ルイ。この町から離れるので向こうのレンジャーショップで旅支度をしてきなさい。私はいつでもいける用意はしてある。」

 

「おお!ついにか!それじゃ待っててくれ!」

 

原鉄堀と読書の毎日に少し飽きていたのかルイは軽やかなステップで店に向かっていった。

 

そしてその場にはサッドニールとトゥーラの2人が残された。

 

「トゥーラさん。1つお願いがあります。」

 

トゥーラが気まずそうにしておるとサッドニールが切り出した。

 

 

 

一方ルイはレンジャーショップに行くついでにブラックスクラッチを一回りしていた。

 

ここは良い町だった。

 

 BARの傍らで聞くテックハンター同士の武勇談、読みきれないほどの本が並んでいるグレート本屋、ランドマークのように町の中央にそびえ立つ古代遺跡。

 

 名残惜しいがここで得た知識はルイにとってはさらに外の世界を知りたい原動力となっていた。

 

 レンジャーショップではでかいバックアップは売り払い、代わりに盗賊用のバックパックを購入した。

これなら咄嗟の戦闘にも影響は少ないだろう。

 

 戻り際に少々の食糧を購入して2人の元に戻った。

しかし、そこに待っていたのはトゥーラだけであった。

 

「あれ?ニールは?」

 

トゥーラは呆然と佇んでいたがルイの呼び掛けに我に帰った。

 

「サッドニールはあなたにこの手紙を渡して欲しいって・・・」

 

そう言うとトゥーラはソッとルイに手紙を差し出す。

 

「ん?手紙?」

 

トゥーラの深刻な表情に疑問を抱くも、訳もわからずルイは渡された手紙を開くと次第に表情が曇っていった。




仕事が始まったので更新遅れます、、
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