Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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【遠征組】ルイ、トゥーラ、ジュード
【拠点滞在】ナパーロ/ラックル/694番、ガルベス、シルバーシェイド、シャリー、ヘッドショット、レイ
【偵察中】チャド


68.出立へ向けて

リドリィ。

単独活動しながらテックハンターとして十傑の9位に位置するほどの猛者である彼女は、女の身ながら巨躯であり、フォーリング・サンという曲形に曲がった特徴的な重武器を使いこなし、界隈では『最強の女傑』と呼ばれていた。

 

【挿絵表示】

 

「やべぇ、リドリィだ……こいつたしか懸賞首ハントもやってた気が……お前を追ってきたんじゃねーか?」

 

「俺は最近大人しくしてたぜ。お前だろ!」

 

大男達はリドリィを見るなり一気に戦意喪失して慌てふためいている。

 

「ふーん。テックハンターの身でありながら強盗の容疑で検証金2000catかけられているロドリゲス。窃盗犯エリスに盗賊ハドソン。そして強盗・強姦致死で5000catのリンゲルか。でかい図体の割にB級ばっかだな。やっぱ相手にしないから安心しな」

 

リドリィは名前を言い当てられて萎縮している大男達には目もくれず、それを束ねているであろうスケルトン、サッドニールに声をかける。

 

「そこのスケルトン。あんたがリーダーだろ?部下を野放しにしてんじゃないよ。市民に迷惑がかかっているだろ」

 

呼ばれたスケルトンは無言でリドリィを見据えたあと一言呟く。

 

「CP84±10といったところか。さすが十傑のリドリィだな」

 

「!!!!」

 

その場にいた一同に戦慄が走る。

 

「うげぇ!マジっすか!」

 

スケルトンの計測結果に大男達はさらに引いている。当然、ルイ達もだ。

 

「おい、トゥーラ。もしかして俺達のリーダーってリドリィさんか?……くそ強いな」

 

「え、ええ」

 

トゥーラ自身もまさかそこまですごい人だと思っていなかったようだ。

皆が啞然とする中でリドリィはトゥーラに喋りかける。

 

「さて、あいつらはどうせ船で一緒になりそうだし、放っておいてまずはうちらチームの自己紹介でもしようか」

 

リドリィはトゥーラの肩を手繰り寄せ、別の場所に移動する。

これに対してトゥーラは緊張しているようでシドロモドロだ。

 

「リ、リドリィさん。私達は想定通り3名で参加します。こっちがルイでこっちがジュードと言います」

 

トゥーラの紹介に合わせてルイ達は軽くお辞儀をする。

 

「ふっ。知っているよ。メガクラブにトドメを刺したんだって?やるじゃないか。頼りににしているよ」

 

リドリィはルイに対してバチコーンと音を立ててウィンクする。

 

「あ、は、はい!」

 

「トゥーラもよくここまで頑張ったね。絶対にアードルフを探し出そうな」

 

「……はい!」

 

男より男前なリドリィにルイとトゥーラは早速メロメロになっていた。トゥーラに至っては元々自分の命を救ってくれた憧れのテックハンターにまた会えたのだからその喜びは一際大きかった。

そもそも今回の禁忌の島行きについてはトゥーラが手紙でリドリィに対して以前から相談していたようで、ハウラーメイズ攻略を経て、やっと認めてくれて一緒に仕事が出来ることになったのだ。リドリィに対する思いが強いのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 リドリィと合流した一向はサッドニールチームを置いて目的地を目指し始めたが、ルイとトゥーラはトキメキが止まらないようで並んで話し続けていた。

 

「なるほどなぁ、トゥーラが惚れるのも無理はないぜ」

 

「でしょう。力量だけでなく度胸もマインドも一流よね」

 

「だなぁ。俺でもひと目見てすごさが分かるよ。逆にどんだけ頑張ればあの域までいけるのかってちょっと萎えたぜ」

 

そこに先頭を歩くリドリィが振り向いて声をかける。

 

「おーい、早く行くぞ。私達は既に遠征メンバーとして内定しているが、今回はテックハンターの混合チームになるから事前に他チームとも意識合わせしておきたい」

 

「は、はい!」

 

リドリィに呼ばれるとルイとトゥーラも背筋がピンとなって走り出す。

 

 

そして

 

「ストーップ!」

 

「は、はい!」

 

荒野の中でリドリィが急に皆を止めた。

 

「カニの集団がいるね。食糧も少なくなってきたし、君たちの力量を見ておきたい。ちょっと3人で倒してきてくれ」

 

「は、はい!」

 

カニは全部で7匹。3メートル級も混ざっていたが、今のルイにとってはさほど苦にはならなくなっていた。

 

「トゥーラは武器が不向きだろ。今回は弓で援護してくれ。ジュードはカニとやったことあるっけ?」

 

「大丈夫だ。大きいのはちょっと拳が痛みそうだけど」

 

「じゃあ、あの3メートル級は俺がやるから周りを寄せ付けないでくれ」

 

「了解」

 

 

 

こうして3人は難なくカニの集団を撃破した。

 

「へぇ〜やるじゃないか。連携も出来ている」

 

リドリィも褒めてくれた。

 

「が、しかし」

 

「しかし?」

 

「トゥーラはボウガンと刀で対人外は不向きだとしても、ボウガンの射撃精度はもっと上げないと話しにならないな。ルイに当たりそうだったぞ」

 

「はい……」

 

「ルイはそれ無想剣舞か?ちゃんとモールに教わったのか?」

 

「モ、モール?俺はアウロラさんに教えて貰ったんですけど(殆ど時間とれてなかったけど)」

 

知らない名前が出てきてルイは困惑した。

 

「アウロラか。彼女もモールの弟子だったよ。夢想剣舞を編み出した開祖はモールだからな。いまどこにいるか分からんが見つけたら教えを請うがいい」

 

重大な事をサラリと言い放ち、リドリィはそのままジュードを見やる。

 

「ジュード君はその武術を誰に習ってるんだい?」

 

「え、あ、チャド師範です!」

 

「おお、チャドか!知っているよ。ノーファクションのメンバーだったね。武術と言ったら伝説級のティンフィストか拳聖チャドと言われてたぐらいだよ」

 

「師範を知っているのですか!ノーファクションも!」

 

「おう覚えてるさ。他にもローグ、バーン、ハムート。あそこは猛者揃いだったからなぁ。ここ数年見かけてないが」

 

どうやらリドリィはもうノーファクションがないことまでは知らないらしい。

そしてルイはリドリィの口から唐突に出た自分の父親の名前に誇らしくなったが、打ち明けるのは躊躇した。ほとんど覚えていないし、自分が褒められたわけではなかったからだ。

 

「まぁチャドに教わっているなら問題ないな。3人とも足手まといにはならなそうだ。今後も自分の欠点を意識しながら日々精進するように!」

 

「はい!」

 

この時、リドリィがジュードだけ君ずけで呼んでいることに違和感を覚えていたが、皆、敢えてここでは触れなかった。そして後にリドリィはどうやら男の子にだけ甘いということが発覚するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

2日後。

 

野生のカニを狩って食糧を確保しながら一同はついに出港元となる港町に到着した。

 

港町はハウラーメイズの最南端にあり、元は古の都であったが、残っている廃墟を活用して港町として再興しつつあった。

そこには既に持ち主が分からない船が2隻並んで停泊していた。

 

「どっちの船の持ち主がレディー・ミズイなのかな」

 

「こっちの綺麗な方じゃないかしら?それでも割と小さいわね。6、7人しか乗れなくない?これだと本当にあのサッドニールチームと定員をかけて争うことになったりして……」

 

リドリィチームが4名。サッドニールチームは5名いる。これだけでもオーバーしているのだ。トゥーラはリドリィのほうを見るが、特に心配している様子もなく荷物をおろして大あくびをしている。

するとそこに一人の男が近づいてくる。

 

「あなた方、禁忌の島に行くテックハンターですか?」

 

【挿絵表示】

 

男は赤い顔をした特徴的なシェク人であった。さらに特徴的なのは抱える荷物の量だ。大きなバックパックを背負い、バックの端には申し訳なさ程度に斬馬刀をくっつけている。

 

「ああ、そうだ。あんたもか?」

 

暇そうにしていたルイが勝手に応えた。

 

「ええ。私はトレジャーハンターのディアーと言います。見ての通り荷物係として雇われました」

 

「ふーん、シェク人にしては珍しいな。つーかまた一人定員が増えたわけか。もう雇い主は来てるのか知ってる?」

 

「分かりません。私もここに集合するよう言われたのですが道中で死にかけましたよ。護衛を連れてくるべきでした」

 

「ハハハ。確かにハウラーメイズは一人じゃ危ないな。町で出会ってたら一緒に行けたんだけどな」

 

「ええ、そうでしたね。街であなた方を探していれば良かったです」

 

ディアーという男は話すと気さくなシェク人でこれまで同行してきた遺跡や見つけた宝物のことを話してくれた。その様子を無表情で聞いていたリドリィであったが何かに気づいてピクリとする。

 

「サッドニール御一行も到着のようだ」

 

スケルトンと大男4人組が姿を現したのだ。

そしてサッドニール(仮)はリドリィに問いかける。

 

「雇い主は来ていないのか?」

 

「まだのようだ。ただ向こうの木陰にずっとこちらを伺う気配はある。揃うのを待っていたんじゃないか?」

 

リドリィの指摘にその場にいる者達は一斉に木陰を見た。すると木陰から声が聞こえてくる。

 

「気配に気づくとは流石です。リドリィ様。サッドニール様もお待ちしておりました」

 

木陰から黒ずくめの格好をした男が2人出てきて喋りながら近づいてきたのだ。

 

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ただ、どうやら敵意がないことは皆感じ取っているようで接近に警戒する様子はない。

 

「我々はレディー・ミズイに雇われた立会人ホセと私シオタと申します。これからあなた方に禁忌の島を調査して頂くにあたって我々が同行し、確認を行う任務にあたらせて頂きます。以後お見知り置きを」

 

この言葉に誰も驚くことはなかった。見てくれは怪しいが、任務中に依頼主の代理や監査として立会するパターンは場合によってはよくあることだったからだ。

ただ、サッドニール組の大男が口を挟む。

 

「ちょい待てや。それより現地で見つけたお宝は自分の物にしていいんだよな?契約書にはそう書いてあったよな」

 

「はい。我々は太古の技術にしか興味がありません。ですので見つけた設計図は提出して頂きますが、それ以外の品はご自由にして頂いて構いません」

 

「報酬は?前金一人10万cat!先に払って貰うからな」

 

「そちらも問題ありません。設計図は内容により20万cat支払います」

 

立会人から出てきた金額にサッドニール組から歓声が上がった。この世界における10万catはS級の賞金首一人を捕らえた内容に匹敵しており破格の金額なのだ。

 

しかし、ルイの表情は憮然としていた。

 

「あいつらの前金……俺らへの提示額より高くないか?」

 

「力量で決めているのかしらね」

 

トゥーラも少し憤りを感じていたようだ。

しかしそんなリドリィ班の思惑を他所に立会人は颯爽と船のシートを外し出す。

 

「―――では、早速船に乗り込みましょう。前金は船の中でお渡しします」

 

立会人2人それぞれの手にはキーのようなモノが握られていた。

 

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