Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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【遠征組】ルイ、トゥーラ、ジュード、(リドリィ)
【拠点滞在】ナパーロ/ラックル/694番、ガルベス、シルバーシェイド、シャリー、ヘッドショット、レイ
【偵察中】チャド


70.復帰

日が沈み辺りは焚火やタイマツで視界を確保しないと全く見えないほど暗闇に包まれていた。しかし一向にサッドニールチームの船が着く気配はなかった。

 

「時間だ。残念だがここまでだ。撤退準備をしよう」

 

リドリィはトゥーラを見ながら撤退宣言をする。これはほぼトゥーラに伝えているようなものだった。彼女の悲願をこのような形で終わらせるのは心苦しいが仕方がないのだ。

 トゥーラもこの判断が正しいと頭では理解している。ただやはりやるせない気持ちが強い。

 ここまで準備をしてきたのに出だしで何もしないまま終わりになるとは思ってもいなかった。

 

「リ、リドリィさん、私達だけでも行けませんか?」

 

「不測の事態が起きて戦力的に続行不能なんだ。出直すしかない」

 

「ですが……」

 

「くどい。早く準備をしろ!」

 

リドリィに一喝され、トゥーラは険しい表情でテントをたたみ始める。その様子を見てルイは慰めようと声をかける。

 

「トゥーラ、死ぬわけじゃないんだしまた準備して来ようぜ」

 

「…………あなたはいいわよね。他人事だから」

 

「え……?」

 

「未知の技術や報酬のことだけ考えていればいいんだし」

 

「いや、俺は……」

 

ルイは言葉に詰まってしまった。こんなトゥーラの反応は初めてだったのだ。そしてトゥーラもルイが狼狽えていることに気がつき謝る。

 

「ご……ごめんなさい。言い過ぎたわ」

 

お互いは背を向けてそれ以上喋ることはなかった。

 

 

 

こうして誰もが無言で撤収準備にかかっていた頃

 

奇妙な音が規則的に聞こえてくる事にジュードが気がつく。気まずい空気が流れていたので誰にも相談出来ずにいたが、その音は徐々に大きくなり無視出来ない大きさになっていた。

 

「お、おい。ルイ、聞こえるか?」

 

「……ん、どうした」

 

ルイも落ち込んでいるのか生返事だ。

 

「音だよ!ガシャンガシャンって!近づいてきてる!」

 

「!!」

 

リドリィがこの会話を聞いてすぐさま背中のフォーリング・サンを抜く。そして

 

「戦闘体制に入れ!」と大声で叫び、音のする方を向いたのだ。

その場にいる全員がつられて同じ方角を警戒する。

 

ガチャン。ガチャン。

 

やがて“それ”は焚き火の明かりが届いていない暗闇から姿を現す。

 

尖った複数の足を交互に前進させて動く様は一見カニのようであるが、根本的に違うのはその材質だろう。足がザクリと地面に着地するたびに聞こえる重もしい音と駆動する機械音からこの生命体もスケルトンと同様金属の機械で出来ている事が分かる。

 

蜘蛛型の戦闘マシーン。アイアンスパイダー。失われた古代文明の産物であり、主を失った今も侵入者を排除すべくこの地を徘徊しているという噂は本当だったのだ。

 

「皆下がっていろ!」

 

リドリィはフォーリング・サンを構えながら一人、前に出る。アイアンスパイダーもリドリィに照準を合わせたようで両者ジリジリと寄っていく。

 

最強の女傑と称されるリドリィだが、一人でこの鉄の蜘蛛を倒すことが出来るのか。ルイ達は固唾を飲んで見守る。

 

先に仕掛けたのはアイアンスパイダーだった。後ろ足で重そうな胴体を持ち上げ、相手に覆いかぶさるように前足の爪を素早く突き降ろしたのだ。

 

しかし、リドリィはそれを難なく横にかわすとフォーリング・サンを鉄蜘蛛の足に叩き込む。

 

ギィン……と鈍い音がして鉄の足の一本が第一関節から折れた。

 

リドリィはそのまま動きが鈍くなった鉄蜘蛛の別の足に追撃を加え、さらに数本奪い取った。

 

「ふぅ。こんなもんか」

 

「おお!」

 

歓声の中でアイアンスパイダーは片側の足を失くし制御を失っているようで、前に進もうとしその場をクルクルと回りだした。

 

「よーし。後は3人でトドメをさしてみろ」

 

そう言ってリドリィはルイ、トゥーラ、ジュードのほうを向くが、目があった3人はビクリとする。

 

「え、私達でですか……?」

 

いとも簡単に破壊したように見えるが、アイアンスパイダーの初撃は凄まじく速かった。

そして恐るべきはその攻撃力だ。リドリィが避けた後の硬い地面は鉄の爪で掘り起こされている。カニの攻撃なんかよりも鋭くて重たいことが想像つく。

 

だが、アイアンスパイダーは先程のリドリィの攻撃でその場からは動けないようだ。これにルイは目をつけた。

 

「どんな手を使ってもいいんすか?」

 

ルイは念のためリドリィに問う。

 

「構わん。この世界に正々堂々などと言う言葉はない。何をしてでも相手を戦闘不能にしろ」

 

この言葉にルイとトゥーラは目を合わせる。

考えたことは同じであろう。まずはボウガンで射撃をして様子を見る。

 トゥーラは早速、アイアンスパイダーが正面を向いた時に顔面に向かって矢を放つ。

しかし無情にも矢は刺さるどころか跳ね返される。

 

「……!」

 

トゥーラは次に刀に手をかける。ここ最近は生前のウィンワンが残していた『無限の太刀秘伝書』を読み漁っていた。刀のような細い得物でも太刀筋さえ磨けばどんなに硬い金属でも弱点を見つけ出して切り込みを入れられる、と応用編には書いてあった。

 

(刃こぼれしないよう同じ箇所に集中して削れば可能……)

 

アイアンスパイダーは矢を放ったトゥーラをレンズのような目で凝視している。まるで「近づいたら必ず殺す」と言わんばかりの冷徹な視線だ。

 

「む、無理だわ……」

 

トゥーラは戦わずして戦意喪失した。

今の実力ではカニと戦った時のように刀が折れるだけで鉄蜘蛛の反撃も恐らく避けれないだろうと判断したのだ。

 

「じゃあ俺がやってみる。あいつの間合いに入る前に一撃離脱戦法だ」

 

今度はルイがデザートサーベルを取り出し少しずつ近づくが、初めて見る鉄の巨体に及び腰になる。

間近で見ると3メートル級のカニぐらいの大きさなのだ。

 

「まともに攻撃を受けるなよー。お前らだと即死だぞー」

 

後ろからリドリィがアドバイスを送るが、それがかえって恐怖を掻き立てた。

クルクル回っている機械が後ろを向いた時を狙って足に一撃を入れて見る。

 

しかし、先程リドリィが容易く破壊していた鉄の足は傷がついた程度で全く折れる気配はなかった。

 

「……!!」

 

3人は戦慄する。

恐らくこれだとジュードの武術攻撃も無意味などころか拳を痛める可能性すらある。

 

「全力の回し蹴りを数発入れれば破壊出来そうだけど……あいつの攻撃を避けつつやれる自信は俺にはない」

 

ジュードは堅実タイプなのかすぐさま白旗を上げた。

 

「あとは俺の無想剣舞を遠心力つけて最大限の力で打ち込めばダメージあるかもしれないけど、反撃が怖いしあの機械の動きがどうも読めないんだよな……」

 

あっと言う間に3人の打つ手がなくなった。

そして損傷して動けないでいるアイアンスパイダー1匹すら倒せない現実を理解して絶望する。

 

しかしリドリィはこうなることが分かっていたようだ。

 

「現状の自分たちの立ち位置を理解したか?お前達はこのレベルの敵をまだ倒せない」

 

「でもサッドニールっていうスケルトンも俺たちはギリギリいけるって……」

 

「それはすぐ死なずに囮として役にたちそうだから言ったのだろう」

 

非情な言葉を坦々と言い放つリドリィにトゥーラはハッとした。

 

元々自分たちはこの地域を単独で歩き回れるレベルじゃなく、“足手まといにならない程度”だったのだ。サッドニール班やリドリィがいたから連れて来てくれただけなのだ。

それを無理言って続行を願い出るなどリドリィに負担をかけるだけであった。

 

ガシャン!シューン……

 

気づくとリドリィは鉄蜘蛛にトドメを刺していた。重いフォーリング・サンを容易く振り回すリドリィを見てトゥーラは自分の不甲斐なさを感じていた。

 

「この騒ぎで他の鉄蜘蛛が来たら私だけではカバー仕切れない。立会人、船の準備は出来たか?」

 

「あと少しです」

 

ディアーなどは鉄蜘蛛に恐怖を覚えたのか、荷物をまとめるスピードが上がっている。

しかしホッとしたのも束の間、今度は皆の恐怖を煽る音が暗闇の海から聞こえてくる。

 

バシャバシャバシャ!

 

「海から!?」「今度は何だよ!」

 

皆、剣を抜き構える。

 

「何かいるぞ!警戒しろ!」

 

ヌゥっと海の中から人影が数名浮かび上がってきてまたもやルイ達は戦慄する。この世界には半魚人のような生物もいるらしくまさしくそいつらが海から現れたのかと思ったからだ。

 

しかし、人影達の様子はどうもおかしい。

 

「げぇほ!ゲホゴホ!」「ゔぇええ!」

 

人影は上陸するなりフラフラして倒れ込むと海水を吐き出したのだ。

 

「お前達……サッドニール班のメンバーか!?」

 

よく見ると見覚えのある大男達なのだ。

ルイ達は急いでその巨体を海から引っ張り出し安全な場所まで運ぶ。

 

「しっかりしろ!何があったんだ?」

 

リドリィが一番元気そうな大男に声をかけた。

 

「ゲホゲホ!船が……沈みやがった……!ざっけんな……!」

 

「何だと?サッドニールはどうした?」

 

「お頭は……沈んだ!立会人もたぶん……溺れ死んだ!くそがああ!目が……見えねぇええ!」

 

衝撃だった。この男たちの言っていることは恐らく真実だろう。装備していた重武器はなく、ほぼ裸でここまで泳いできたようだ。海水も少し酸性だったようで体は傷つき火傷している。

 

「お前達全員よくここを目指せたな。酸で眼球が傷ついているが、いま手当してやる」

 

「へっ……!沈む直前に咄嗟にお頭が全部捨てて禁忌の島へ泳ぐよう指示してくれたんだ……!こっちのほうが近いと一瞬で判断してくれてな!」

 

大男はその後すぐに気を失った。

 

「……トゥーラ、手当をしてやってくれ。もうしばらく待機に変更だ」

 

その夜はサッドニール班のメンバーを休ませ、交代で見張りを行いそのまま朝が明けるのを待った。帰るにしても明るくなってからが良いと判断したためだ。

 

一日寝て大男達も視力が回復し元気も取り戻したようで、少ない食糧をがっつくように食べていた。そこにリドリィが喋りかける。

 

「起きたことの詳細を知りたい。話してくれ」

 

「……船が出てから俺たちは立会人から前金を貰ったんだ。そして禁忌の島がちょうど見えてきた時ぐらいで、急にボコンと船から変な音がしてモーターが止まり一気に沈んだ。全然考えてる暇もなかった」

 

「そうか。しかしお前達よくここまで泳げたな」

 

「お頭が俺たちに遠泳も習得させたんだよ。海を渡ることになるって想定してな。目をつぶりながら泳がせたんだぜ?お頭はいつだって俺たちが死なねぇように考えてくれてたんだ」

 

ルイはこの言葉にびっくりした。

 

「あのスケルトン。俺らが知ってるサッドニールとは全然違うけど見かけによらず手下思いだったんだな」

 

「…………」

 

皆がサッドニールの事を思った。恐らく彼はその体の重さからそのまま海の底へ沈んだのだろう。スケルトンは水中である程度活動出来るが、水深には限度がある。深すぎるとその水圧で耐えられない機関が出てくるだろう。

誰もが彼はそのまま海中で死んだと思った。その空気に便乗してディアーが早く帰りたそうに意見を言う。

 

「いずれにしろサッドニール班の方々は武器がないですし、これだけの人数の食糧はありません。早く帰還しましょう!何とか船も乗れるでしょう」

 

最もな意見だった。これ以上の長居は無用。今回はこのまま帰還が妥当だと皆が思った。

 

しかし、今までその主張をしていたリドリィが今度は一転して態度を変え海岸に目を向ける。

 

「待つんだ。生きているとしたらそろそろだ」

 

自然と周りの者も視線の先の波打ち際を見た。

そこから徐々に人型のシルエットが現れ始める。

 

「嘘だろ……」「まさか!」

 

皆が目を凝らし確かめるとそれは悠々と歩いて海辺に上陸しようとしているサッドニールだった。




最近は絵を描けない人でもAIが勝手に
キャラクターを描いてくれるサイトがあると知りました。
というわけで、ちょっと主人公ルイ君のイメージ絵を作ってみました。

【挿絵表示】

waifu Labsというサイトで作っており、
非営利+左下にロゴを残していればOKっぽいようです。

ランダムで作られるキャラクターから
近い絵を選んで4段階で修正していく感じです。
手頃で面白いので今後、他のキャラクターも作ってみようかと思います。
ただ、シェクとかハイブはないだろうなぁw
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