Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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【遠征組】ルイ、トゥーラ、ジュード、(リドリィ)
【拠点滞在】ナパーロ/ラックル/694番、ガルベス、シルバーシェイド、シャリー、ヘッドショット、レイ
【偵察中】チャド


72.侵入

「立会人がサッドニールの命を狙っているだと?どういうことだ。あり得ないだろう」

 

さすがのリドリィも否定的だ。立会人とは調査を依頼をしている雇い主と同義であり敢えて募集して集まったテックハンターの命を狙う意味が分からない。

それに立会人と敵対した場合、契約は反故になり賞金のために集まってきた者達の目的がなくなってしまう。

当然それはサッドニール班配下の大男達にも影響があるはずだ。

 

「お頭!金が貰えなくなるのは困りますぜ!」

 

当然、部下達も騒ぎ出す。しかし、サッドニールは依然として変わらぬ余裕を見せる。

 

「問題ない。金のことならば依頼主の報酬に頼らずとも工場を取ればどうにでもなる」

 

この言葉にリドリィも反応して割って入る。

 

「さっきからお前が言っていることがよく分からない。まずお前が命を狙われているという理由を証拠を含めて説明しろ」

 

声を荒げて問い詰めるが、それでもサッドニールは折れない。

 

「工場を制圧した後に話してやる。今の時点では立会人が妨害しないよう(・・・・・・・)縛って見張っておいたほうがいい、とだけしか言えない」

 

「そんな説明だけで我々が納得すると思うのか?」

 

「お前さん方はお金より工場の秘密に興味があるのだろう?協会からも何か指令を受けているのではないのかね。ここは戦力となる私と協力しておいたほうがいいのではないかな?」

 

「……」

 

「それに何も立会人を殺すわけではなく、念のため余計な事をされないよう縛るだけだ。制圧後に開放するし傷つけたりもしない。その理由についても突入すれば自ずと分かるだろう」

 

サッドニールの提案は暴走スレスレではあるが配慮している節も見える。

 

(このスケルトン……水没してAIが破損してたりしないよな……)

 

リドリィは最初からこのサッドニール班の事を多少知っていた。彗星の如く急に現れテックハンター協会に名前を登録したと思ったら、懸賞金がついているようなならず者の猛者を雇い、急速に貢献PTを稼ぎ出し始める。このスケルトンを筆頭にした急造チームの荒くれ者達は各地でトラブルを起こしつつも実力で23位まで登りつめ、一目置かれるようになっていたのだ。

 そんな謎が多いテックハンターがいま依頼主の立会人と対立しているのだ。サッドニールの戦力は調査に不可欠であったためリドリィを大いに悩ませていた。

 

そしてここで立会人自身も自分の潔白を訴え始める。

 

「馬鹿げたことを言わないで頂きたい。依頼したのに妨害するわけないでしょう。それに我々立会人に対する敵対行為は即、契約解除となりますよ。仮にあなたの配下が技術を持ち帰ったとしても取引に応じられなくなりますし、貴族への反逆は都市連合から懸賞金がかけられます」

 

立会人はサッドニールチームのメンバーに向けて訴えた。しかし

 

「ハハハ、残念だったな立会人さん。俺たちは既に懸賞金はかかっているから何とも思わねーよ。前金とお宝だけ貰ってトンズラも選択肢の一つさ」

 

サッドニールのメンバー達は立会人の主張を全く意に介さず拒絶したのだ。

そしてサッドニールは配下のエリスのほうを向き、縛るのを促した。

窃盗犯エリスは唯一、サッドニールチームの屈強な大男達の中では常に後ろの方にいておどおどしていたシェク人だ。犯行内容も他の者と比べると軽いほうで小物感が伺える。恐らく戦闘もアシスト要員なのだろう。

エリスは狼狽えながらも立会人を縄で縛り始めた。

 

「貴様ら後悔するぞ」

 

「エ、エリスはサッドニールさんに拾って貰った。裏切れない」

 

自分を一人称で呼び、おどおどしながらも太い腕で強く縛るエリスに対して立会人も抵抗することなく縛られた。

 

 

こうなると最早リドリィ達は静観のままいれるわけにはいかない。

 

「工場の調査完了後に立会人を開放すること」

 

それを絶対の条件にしてサッドニール班に協力することにしたのだ。当然、立会人はリドリィにもご立腹であった。

 

「では工場内の状況と推薦する作戦を共有しよう」

 

サッドニールは遠くにそびえ立つ巨大な黒い建物を指差し説明を始める。どうやら工場も過去に入ったことがあるようだ。

 

「工場は2階建てで1階は倉庫だ。起動していない大量のアイアンスパイダーが格納されているだろうが動かないから安心しろ。中枢は2階だ。ここには一体のスケルトンと6体のスラル。10機ほどのアイアンスパイダー。5機の警備スパイダーがいる。これを細い階段中央で少しづつ迎撃する」

 

ここまで細かく内情を把握しているスケルトンに違和感を覚えつつもルイ達は最後まで説明を聞く。

 

「迎撃は疲れない私が担当する。それをリドリィがサポートしてくれ。打ち漏らした鉄蜘蛛はサッドニール班のリンゲル、ロドリゲス、ハドソンが処理しろ。終われば2階は宝の山だ」

 

サッドニール班のメンバーから歓声が上がる。

 

「相手のスケルトンが一体最後に残るだろうが奴はCP90だ。私だけでもやれないことはないが万全を期して私とリドリィが協力して一緒に始末する」

 

この言葉に歓声を上げていた大男達の笑いが止まる。

 

「90……ですかい?」

 

「そうだ。恐らく扱う武器は長柄系だ」

 

この世界において個人の強さをCPとして数字で表現するがMAX値は基本100である。人生において100の数値を叩き出す猛者と出会う事はほぼないと言っていいだろう。90に近づくリドリィも懸賞首の間では噂になって恐れられるほどの存在だった。にも関わらずサッドニールは平然と言い放った。それは自らもその数値に近いことを表していると共にこれから凄まじい激戦が待っていることを示唆していた。

 

 リドリィもこの話を聞いて額に微かな汗を流す。相手が聞いた通りの戦力であれば仮にサッドニールが崩れた場合、大量の鉄蜘蛛とそのスケルトンが自分に向かうことになる。数からして自分のスタミナが持たないかもしれない。そうなれば瞬く間に遠征隊は全滅してしまうだろう。

 そんな重要な局面でサッドニールという得体の知れないスケルトンを本当に信じて良いのか不安がつのる。

 

「相手の戦力は確実なのか?対応しきれるというお前の計算の根拠はどこにある?」

 

「……相手の数は確実だ。根拠もある。そんなに不安なら隠密で2階を探ってからにするか」

 

「当然だ。戦力が万全でない場合は突入も考え直さないといけない」

 

一行は禍々しくそびえ立つ工場周辺に到達する

と、外壁に張り付き様子を伺う。

 近づいてみると高くて黒い外壁は度肝を抜かされるほどの大きさだ。周りには鉄蜘蛛などの気配がなく静まり返っており、かえって不気味さを浮き立たせる。

 

「じゃあ行ってきます」

 

小声で喋ったのはルイだった。隠密に長けており、自分も何か役に立ちたいと自ら志願したのだ。実際、戦力にならない兵士が斥候として先頭になって様子を見に行き、相手が仕掛た罠を知らせる事は軍や部隊などではよくあることだった。当然、その分、危険でありリスクが高い。

 

「無理はするなよ」

 

リドリィの声を背中で聞きつつルイは気配を消して一階の入口をソッと覗く。

 

何かが動いている気配はない。

 

しかしスキマーのように罠を張って待ち構えている敵がいないとも限らない。慎重に一歩づつ音を立てずに中へ入っていく。

 天井の2階部分からはゴウンゴウンと何やら機械が動いているような音がするが一階はサッドニールが言った通り、今のところ平穏だ。

 

だが、天井を見ながら歩いたせいで小石を踏んでしまい、微かな音が室内にこだましてしまう。

 

「…………」

 

相変わらず1階は静まり返り何も起きない。偵察続行だ。

 

そして入ってみてから気づいたのだが奥のほうには黒い四角い物体がいくつも積み上がっているのが分かる。

 

(何かの容器か?)

 

ルイは恐る恐る近づいてみた。この沢山の容器の中に貴重な武器であったり、古代技術の設計図などが入っているのだとしたらそれだけで任務達成なのではないかと安易に考えてしまう。

しかし、近づいてみてその発想は幻想であったと思い知らされる。

 

容器だと思っていた黒い物体は足を畳んで起動していないだけのアイアンスパイダーだったのだ。それが数え切れないほど所狭しと積んであるのだ。

 

「…………!!」

 

音に反応して今にも動き出し始めるのではないかと思い、足がすくむ。

 ルイが茫然と佇み動けなくなっているとリドリィは苛立って声をかけてくる。

 

「ルイ……!おい、ルイ……!!」

 

そしてリドリィ自身もシビレを切らして一階の内部に入ってくるがルイ同様に固まってしまう。

 

「なんだ、この数は……戦争でも始まるのか?」

 

他の者も安全が確保された一階に入ってきてそれぞれ同様の反応を見せる。しかしサッドニールは堂々と入ってくるなり驚く様子もなく語り始める。

 

「驚いたかね。以前は警備用だけ(・・・・・)作っていたが、それとは比べ物にならないほどの増産体制だな」

 

「一体誰が何のために……」

 

「上にいる奴に聞きたまえ。ルイとやら、そのまま2階の兵力も確認してきてくれ」

 

名前を呼ばれたルイはビクリとする。2階から放たれる異様な気配に気負わされて階段を登る足が進まないのだ。

 

「ルイ、もういい。2階には私が行く。お前達はサッドニールが言っていた陣形で迎え撃ってくれ」

 

リドリィはそう言って腰に差した長剣を抜き取ると自ら斥候として2階に登り始めた。これを見たサッドニールも持っていたポールワームを取り出して部下に指示する。

 

「リンゲル、ロドリゲスはここで待機して予定通り打ち漏らしを倒せ。ハドソンは2人のバックアップだ。エリスは引き続き立会人から目を話すな。変な動きをしたら殺していい」

 

先程よりもさらに過激な発言が飛び交い、否が応でも緊張感が増してくる。

達人たちからも余裕が消え失せているものだからルイ達はもう完全にビビっていた。

荷物持ちのディアーは狼狽えて周りを警戒している。

 

「ル、ルイさん。前線が破れたら私達は逃げましょう。どうせ戦力にならないんだし生きて報告したほうが彼らも報われます」

 

「何言ってんだ……!その時は負傷者の救護だろ!それにやばかったら担いで逃げるんだよ!」

 

「しかし大柄の者は重くて無理ですよ……」

 

「うるせぇ!もうすぐリドリィさんが2階に着く!」

 

皆、固唾を飲んで様子を伺っているが、いよいよリドリィは2階に到達しようとしていた。

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