Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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◆現在の仲間
【遠征組】
ルイ、チャド、ガルベス
【拠点組】
トゥーラ、ナパーロ/ラックル/694番、シルバーシェイド、シャリー、
ヘッドショット、レイ、ジュード


83.グリフィンの回想①

約20年前

 

 

「ここがダストキングのアジトか?シュライク」

 

グリフィンは背負っていた分厚い刃の武器をおろした。暗い闇夜の中、目の前には5メートルほどの城壁がそびえ立っている。

 

「間違いないね。場所と地形も報告と一致している。堅固そうだからボスを待ったほうが良さそうだ」

 

グリフィンの後ろで草むらに隠れながら様子を伺っている女が応えた。

 

「ローグにはもう連絡しているからじきに来る。それより夜が明ける前に奇襲して城壁の砲台を無効化しよう」

 

「マジか。うちら5人だよ。ここダスト盗賊の本拠地だよ」

 

他の者も同調するように首を振っている。

 

「あの門を正攻法で攻めるほうが犠牲がでる。俺が門を解除出来たらお前たちも入ってこい」

 

そう言って1人かけだしていくグリフィンを、4人は不安そうに見送った。

 

門にたどり着いたグリフィンは早速ピッキングを開始する。

 

(サーチライトがないから難なくここまでこれたが……クロスボウ砲台は全部で4つか)

 

もし気づかれて集中砲火を食らったらひとたまりもないだろう。グリフィンは音が鳴らないよう慎重に解除を試みた。

 

ガチャン

 

鍵は少し大きな音を立てて開いた。

 

「…………」

 

辺りは静けさを保っており気づかれた様子はない。手で合図をして4人を呼ぶと、グリフィンはユックリと門を開ける。

 

(門番がいない……というか城壁にも見張りがいないな)

 

さすが盗賊と言うべきか、警備は大分お粗末のようで城壁内にそびえ立つ中央の塔以外には人が配備もされておらずグリフィン達は楽々と城壁を確保出来たのだ。

 

「さすがにここまでだろ。後はボスが来るの待とうぜ」

 

「了」

「そ、そうですね。あ……鼻に虫が……」

「ビープ」

 

シュライクというスコーチランド人の女の意見に皆が賛成した。

しかし、このときグリフィンは違うことを考えていた。

 

敵の拠点は中央にそびえ立つ4階たての塔だけだ。一箇所しかない出入り口は交代で2人の番が見張っているのみであり、上手く行けば見張り番を一人ずつ順番に削ることが出来そうなのだ。

ただし、2人同時に暗殺となるとこれをグリフィンと一緒に遂行出来そうな者は限られてくる。

 

(シュライク以外だとピアか……)

 

グリフィンはやる気がなさそうなシュライクを諦めてピアという金髪の女に話しかける。

 

「あんたは隠密は得意か?あそこにいる見張り2人を同時に殺りたいのだが、やれそうか?」

 

「…………」

 

ピアからの返事はない。

 

(無視かよ……!どいつもこいつも言うこと聞かねぇな!)

 

グリフィンは元ホーリーネーションの歩哨であり熱心なオクラン教徒であったが、現在の教義・思想に疑問を抱き、国を出てローグ一派に加わった。

そして真面目である程度戦闘スキルがあったため、5人チームのリーダーを任されていた。

 

メンバーには長柄武器を使いこなす女シュライク、無口な女ピアの他にハイブ人のビープ、グリーンランド人の吟遊詩人がいた。

 

(くそ!俺のチームはロクなのがいないじゃん!せめて戦闘経験ある奴で固めてくれよ!)

 

特にビープという仕事も戦闘も全く出来ないハイブ人を鍛え上げるよう言われた時はほとんどなかった髪が全くなくなってしまっていた。

 

「ビープ!」

 

「ええ?お前がやるって言うのか?ビープ。つーか、吟遊詩人は隠密出来たりしないの?」

 

「歌は歌えるぞ!」

 

自信ありげに返答する吟遊詩人を見てグリフィンはすぐに計画を諦めた。

 

「城壁を占拠したまま待機だ」

 

 

 

 

 

 

そして数分後

 

「ダスト盗賊の襲撃がやまないと思っていたらこんなところに王が隠れていたとはね」

 

現場の緊張感とは裏腹にのんきな声と共にノーファクションのボス ローグ・アイゼンが1人現着する。ダストコートを羽織り、武器は一振りの刀のみ帯刀していた。

 

「ちょうど無限の太刀を免許皆伝できたから試せそうだよ。グリフィン」

 

【挿絵表示】

 

ローグは黒髪のグリーンランド人であり一見するとそこらにいるただの青年だが、グリフィンが加入した時から既に異才を放ち、内面で周りの者を惹きつける何かを持っていた。

この時もすでに彼はたゆまぬ努力によってあらゆる武器を使いこなせるようになっており、チャドと闘っても結果が予想出来ないほどの実力を有していた。

 

武闘派の自分(グリフィン)やシュライクが味方であるにも関わらずローグ・アイゼンに気負わされている様子をビープが不思議そうに見ているのも無理がなかった。ローグの強さの1つにその圧倒的な力量を難なく隠す無邪気さがあったからだ。

 

「ダストキングはあの塔の中かな」

 

ローグは隠密行動することなく1人歩いて向かっていく。

 

「え……援軍はローグ1人?大丈夫なのか……?」

 

「問題ない。まぁ見ていろ」

 

加入したてのピアでさえローグの行動に焦りを感じていたが、(グリフィン)にとってはそれは日常茶飯事であった。

 

当然、ダスト盗賊の見張りは近づいてくる人影に気がつく。

 

「なんだてめぇは!?」「こいつ見覚えがあるぞ。確かトマスを殺した……」

 

それが見張り2人の最後の言葉になった。

 

『無限の太刀 七の型 須滅赤口(すめつしゃっこう)

 

ローグが見えない速さで腰に差した刀を振るうと見張り2人は血しぶきすら出さずにその場に倒れ込んでいった。そしてそのまま彼は塔の中へ消えていく。

 

その後、中からダスト盗賊が騒ぎ出す声が聞こえてきたが、徐々に断末魔の叫び声に変化していく。

(グリフィン)は加勢に行くつもりはなかった。というより行く必要がないと思っていた。彼が来たならば後は取りこぼしだけを対処すれば良い。それほど彼の強さは異次元まで登りつめていたのだ。

 

案の定、声が止むとローグが1人出てくる。

 

「ちょっと急いでいるから雑になってしまった。生きている盗賊は逃していい。王は2階で寝ているから捕獲して懸賞金にしてくれ。捕まってたっぽい女の人達は保護してね」

 

ローグが来たらもはや自分たちは後処理班だった。

 

塔に入るとダスト盗賊達が全員倒れている。息のある者も失った手などを抑えて呻いている。奥には盗賊に連れ込まれたであろう裸の女が数人怯えながら部屋の隅に固まっていた。

 

この数分の出来事で辺りを荒らし回っていたダスト盗賊の本拠地は壊滅したのだ。

やったのが齢30手前の1人の男だけという事実に私はただただ驚愕するしかなかった。

 

ローグが急用で先に拠点へ帰った後、グリフィンチームで元ダスト盗賊本拠地の後始末をした。捕らえられていたキャットという男がグリフィンチームに加わり、「後輩が出来た」とビープが喜んでいたが、自分にとってはお荷物が増えただけだと思った。

 

ダストキングをホーリーネーションの都市で引き渡した後、再度ノーファクションに戻るまでは3日かかってしまった。

拠点に戻ると何やら皆騒がしく行き交っている。

 

「あ、グリフィン!帰ったらボスのとこ来てくれってさ」

 

帰って早々に衛兵に呼び止められ、グリフィンはチームを解散して1人、ローグのいる宿舎へ向かう。

 

「ボスいるか?いま帰ったぞ」

 

「ルイちゃ〜ん。そうでちゅかぁ。ん〜?でちゅかぁ」

 

ローグは気づかずに赤ん坊と戯れている。

 

「ごほん!ローグ。呼んだか?」

 

「どうした(キリ)」

 

「帰ったぞ。呼んだだろ?」

 

ポカーンとしていたローグであったが思い出したように喋りだす。

 

「おー!グリフィン!ダストキングはお金になった?」

 

微笑むルミの横で赤ん坊であるルイを抱き上げながらローグは遊んでいた。先日ダスト盗賊を壊滅させた男とは全くかけ離れた顔だった。

 

「多少はな。仲間も少し入ったぞ」

 

「ああ、キャットだっけ。後で挨拶しておくか。そういやビープとは打ち解けたかい?」

 

「やる気だけはある!だが俺のチームちょっとクセのある奴多くないか!?唯一グリーンランド人の吟遊詩人も相当変わった奴だぞ!」

 

「そうかな?歌が聞けて楽しいじゃん。まぁグリフィンはグリーンランド人以外をよく知ったほうがいいからね」

 

「ぬぬ……」

 

これ以上グリフィンは言い返せなかった。元々、オクラン教の歴史研究のため敢えて自分から忌み嫌う他種族にアプローチしていたからだ。ローグもそれを察して異種混合チームにしていた。

 

「ただ……ちょっと気になることがあってね。俺がリバースの脱走奴隷であることがホーリーネーションにばれたくさい。追手が来るかも」

 

「なんだと!?」

 

リバース鉱山というワードはホーリーネーションの国内においては大変意味深い。なぜならここで国家を上げて教祖である初代フェニックス一世の巨大石像を建築しているからだ。何年にも渡る長期事業であり大量の奴隷がここに集められ労働力として駆り出されていた。労働は過酷を極め、毎年多くの死者を出しており、グリフィンもこの事業には懐疑的であった。

 ただ何より驚かせたのはボスのローグがこの施設の脱走奴隷である事であった。今どき互いの出生など気にもとめない情報ではあったが、リバース鉱山から脱走出来たことに驚きを隠せなかったのだ。

 国家の一大事業ということもありこの施設は最上級の警備体制が敷かれている。若者が単独で突破できるような場所ではなかった。さらにここから脱走した者にはホーリーネーションから懸賞金がかけられる。そんな場所から抜け出し、ホーリーネーション領の近くで拠点を構えているローグ・アイゼンはやはり只者ではないと実感できた。そして感嘆している自分をよそにローグは話をつづけた。

 

「まぁバレたというより噂が出回った、と言ったほうが正確かもしれないな」

 

「どういうことだ?」

 

「彼らも馬鹿じゃないから元々俺が脱走奴隷だということに感づいていたと思うんだよね。ただ、既にノーファクションは大きくなっていたし、害もなかったから野放しにしていたんだと思う」

 

「じゃあなんで今さら捕まえに来るんだ?」

 

「たぶん俺が脱走奴隷だと領内に噂を撒いた奴がいる。ホーリーネーションは立場上この噂を捨て置けなくなったのかもしれない」

 

「なに!一体誰が!?」

 

「でね……実はさ、最近ホーリーネーション方面に行っているのはグリフィンチームだけなんだ」

 

ローグの真顔にグリフィンはピンとくる。

 

「まさか……俺のチームに密告者がいると?確かに外交担当になって定期的にホーリーネーションに赴いているが……それって確定なのか?」

 

自分のチームメンバーとは不器用ながらも上手く付き合えていた。突然ローグから言われたことに普段冷静なグリフィンも困惑していた。

 

「分からない。そもそも俺が脱走奴隷だと知っているのは浮浪忍者村出身の者だけだ」

 

この言葉でグリフィンは察する。リバース鉱山の強制労働所はその名の通り鉱山の真ん中にある。たとえ脱出に成功できたとしてもホーリーネーションの都市に行くわけにもいかないため、ホーリーネーションと敵対する浮浪忍者村があると言われる北を目指すことになる。ローグは脱出後に恐らく浮浪忍者村に辿り着き支援を受けたのだろう。だから浮浪忍者出身者がローグの経緯を知っていてもおかしくない。そして浮浪忍者出身と言えば。

 

「おい……それって……ピアじゃないか。あいつは浮浪忍者村の出だろ」

 

「そうなんだよねぇ。ただ彼女はホーリーネーションに姉を殺されているし、違う気がするのよ」

 

「じゃあ外部の者か。浮浪忍者が我々とホーリーネーションを戦わせようと画策した可能性も捨てきれないな。まさかピアは浮浪忍者からの回し者!?」

 

「やっぱその線も浮かんじゃうよなぁ」

 

ローグとしては浮浪忍者に支援してもらった経緯があるようで、なるべく疑いたくもないようだ。

 

「とにかくグリフィンはこれからホーリーネーションと戦争にならないよう外交してもらいつつチームメンバーの動きもさり気なく見ていてくれないかな」

 

「分かった。だが一応破談になった時に備えて戦争の準備はしないとだな」

 

「そうだね……」

 

この時ローグが寂しそうに応えたが、グリフィンの頭の中はどのように交渉すべきかで一杯になっていた。




グリフィンチームに怪しい人を集めてみました('∀')
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