Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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◆現在の仲間
【遠征組】
ルイ、チャド、ガルベス
【拠点組】
トゥーラ、ナパーロ/ラックル/694番、シルバーシェイド、シャリー、
ヘッドショット、レイ、ジュード


84.グリフィンの回想②

(グリフィン)のホーリーネーションとの交渉は空しくも失敗に終わる。

 

ホーリーネーションの上級審問官であるセタという人物に直接掛け合ったことが逆に裏目にでたようだ。魔女狩りのように異端者を狩り続けて出世の階段を登ってきた彼が特例措置など認めるわけがなかったのだ。

 

セタ率いる『天罰』と称されたホーリーネーションの襲撃部隊がノーファクションの近くに集結し始めたことで、ローグは戦争を確信する。急遽、彼は遠征組以外のメンバーを広場に集め、深刻な表情で切り出すが、その言葉は皆を驚かせる。

 

「出頭する」

 

自分(ローグ)1人がリバースに戻れば解決すると言うのだ。

だがこのローグの第一声に対して皆は満場一致で反対する。ノーファクションには飢えて倒れかけていた者、同じ志を抱いた者、命を救われた者等、多く在席しており、恩人であるローグをリバースに送り返す事などあり得なかったのである。

 

「ばぶー」

 

よちよち歩きでローグをよじ登ろうとしている赤ん坊のルイを見て、皆の心は一致する。子供が産まれたばかりの父親を離れ離れにするわけにもいかない。

 ノーファクションはローグの意思に反して一気に応戦ムードとなり、士気も鰻登りに上がっていったのだ。また、秘密裏にシェク王国や浮浪忍者の援軍も見込める事となり、ノーファクションは遠征組がいないながらも着実に迎撃体制を整えていった。

 

その間、(グリフィン)は私にできることを進めた。それはグリフィンチームメンバーの内部調査である。

敢えて、チームでホーリネーションの都市に赴き、自由行動を取ることでメンバーを泳がせてみたのだ。しかし、確証に至る結果は得られずいたずらに時間を過ごしていった。一番警戒していたピアに至っては「自分も拠点で迎撃したい」とチームの転属願いを出すほどであった。

 そして何も成果を出せないままノーファクション対ホーリネーションの戦争は始まってしまう。

 

ローグに言われグリフィンチームはホーリーネーション領で待機させられ戦争には参加出来なくなった。これは先ほど言った通り、ノーファクションが壊滅した場合の保険として、ホーリーネーションとのパイプをなくさないためであった。

 

グリフィン以下、シュライク、ピア、ビープ、吟遊詩人、キャットの6名は都市スタックのBARにて戦況報告を待っていた。

自分は戦闘経験があるのに戦争に出させてもらえないもどかしさがあった。“ローグに疑われている者達だから”戦争に参加できないのでは、と自虐的になり気持ちも塞ぎ込んでいた。

 

当然そんなことも知らずに、ビープやキャットは純粋に勝利を願って奇声を発していたし、ピアは黙りこくっていた。吟遊詩人は常に脳死状態なので分からなかったが、この時、私はシュライクの行動に疑念を覚えていた。

 

「お前は戦争に参加したくなかったのか?」

 

チームの中では長柄武器を扱い、武闘派として主力のようにたち振る舞っていた彼女は今回の戦争に対して消極的だったのだ。

 

「私は別に闘いが好きなわけじゃない」

 

「しかしノーファクションが敗れると俺達は行き場を失うんだぞ?またモングレルに戻りたくはないだろう」

 

「はん!あそこに舞い戻るはずはないだろ。イライラしてっからもう話かけんな」

 

シュライクは常にサングラスをかけていたので何を考えているのかも分かりにくかったが、いま思えば自分と同じように戦争メンバーから除外され疑われたと思いこんでいた者の1人だったのかもしれない。自分から志願することも疑いの要素を増やすと考え、敢えて名乗り出なかったのだろう。当時、私はそこまで考えが至らなかった。

そのままネチネチと問い詰めているうちに彼女とは喧嘩別れしてBARを出て行ってしまったのだ。

 

 

 

そんなメンバー達の思惑に関わらず、やがて戦果はもたらされる。

 

ホーリーネーション襲撃部隊『天罰』敗退。上級審問官セトは重傷。ホーリーネーションはノーファクションからの申し出により停戦協定に署名したのだ。上々すぎる結果にメンバーはBARの中で人知れず歓喜した。すぐに拠点へ戻る準備をしてスタックを発った。この時、シュライクとは別れたままであったが後から一人で帰ってくるものと思っていた。

 

「ビィィィィィプ!!」

「やりました!やりましたね!」

「記念に私が歌を歌いましょう!」

「うるさい吟遊詩人……(ょしっ!)」

 

皆、それぞれ勝報を喜び噛み締めていた。

そしてウキウキしながら拠点へ戻る道中で伝令から衝撃的な事実を知らされる。

 

都市連合アイゴア部隊による大規模な不意打ち襲撃だ。

 

逃げのびてきた農業担当の非戦闘員は遠巻きにノーファクション陥落までの一部始終を目に焼き付けてきたらしい。頭領のローグ・アイゼン。シェク4人衆のオロン、レーン、ルカ。守護将クランブル・ジョン。主要戦闘員が軒並み戦死し、もはや遠征組が戻ったところでどうにもならないぐらいにノーファクションは壊滅したのだ。

 

(まさか……あのローグが……?)

 

頭をハンマーで殴られた後に遅れてくるような吐き気。どうしようもない絶望に悲しみ伏せる前に俺はその事実を受け入れられず只々嗚咽していた。

 その後ひたすら拠点に向けて皆走ったが、視線の先に立ち上る黒煙を見てノーファクション陥落という事実を受け入れざるを得ないと悟った。

 

つい先日まで赤ん坊を抱き上げていた男。圧倒的なカリスマで世界を混沌から解放し、自分を導いてくれると思っていた男ローグ・アイゼンはもういない。

 

チームは近くのウェイステーションに立ち寄り、私はショックの余りBARで酒に入り浸った。

もはやチーム内にいる可能性があった密告者のことなどどうでもよくなっていた。当然、時が経つに連れ仲間は消えていく。ピアは無言で立ち去り、その他の者も動かない私を見ていつの間にかその場を去っていた。シュライクにも結局2度と会えず、私は1人落ちぶれていったのだ。

 

数年が経ち、最後にせめてボスとの約束を果たすべく、オクラン教の司祭となり、元メンバーの保護を行うことにした。そしてホーリーネーションと交渉し支援を受けながら現在に至ったのだ。

 

 

◆◆◆

 

 

黙って最後まで聞いていたチャドは当時のことを想い言葉に詰まった。もう少し早く遠征から帰れていればノーファクションは壊滅しなかったかもしれない。チャドにとってもこれは人生最大の悔いが残る出来事だったのだ。

 

そしてグリフィンチームがローグの指示の元、戦線を離脱していたことも知っていた。

 ただそれはホーリーネーションとのパイプ役を最後までまっとうするためという認識であり、まさかチームメンバーの中に密告者がいる可能性までは知らなかった。

 

「今もチームメンバーの行方は分からないのか?」

 

チャドはグリフィンに問いただした。

グリフィンの話が真実なのか、グリフィンチームのメンバーに確認出来る者を探す必要があったからだ。

 

「ええ、唯一分かるのはピアのみです。他は音信不通でして、もう亡くなっているかもしれません」

 

「ピアはどこにいる?」

 

()浮浪忍者村のようですが詳しくは分かりません」

 

「新?移転したのか?」

 

「いえ、元浮浪忍者村はホーリーネーションがついに場所を突き止め、壊滅しました」

 

良好な関係を築いていた浮浪忍者のような小組織も大国の圧力には敵わなかったようだ。

 

「そうだったのか。それでピアはそこにいて今もホーリーネーションと戦い続けているわけだな」

 

「はい。つい先日も私は彼女に暗殺されかけました」

 

「……!そうか、ホリネの司祭だからか。説明も出来ていないのか?」

 

「久しぶりの出会いも私の暗殺未遂でしたからね。聞く耳を持ってくれません。私の近くに護衛でパラディンを置いているのもそのためです」

 

グリフィンによるここまでの話に違和感はなかった。喋り方が丁寧に変わっているのも司祭を続けたせいなのだろう。大人しく話を聞いていたルイもグリフィンを信用しているようだ。

ただそれはホーリネーションという国家の性質(・・・・・)をまだ知らないからだろう。

 

とにかく、グリフィンを白と確定させここが安全と判断するにはピアに会って話を聞くしかない。チャドは頭の中でそう結論づけた。

 

「ルイ、ガルベス。俺たちは新しく出来たという浮浪忍者村にも行くべきだ。頭領をやっているモールにも当時の事が聞けるかもしれない」

 

「モール!?」

 

聞き覚えのある名前にルイが反応した。

 

「知り合いか?」

 

「その人は無想剣舞という型の開祖らしいんです」

 

「ほう。だったらルイは尚更会っておきたいな」

 

この話を聞いていたグリフィンが割り込んでくる。

 

「申し訳ないのですが、モールは浮浪忍者村にはいません」

 

「なぜだ?」

 

「彼女はホーリーネーションに捕えられどこか分からぬ牢獄で厳重に管理されているようです」

 

「!!」

 

小組織ながらホーリーネーションに抵抗を続けてきた浮浪忍者の頭領モールはその実力からも少からず世界に名が知れ渡っていた。ホーリネーションからも長いこと懸賞金をかけられていたが、モールの所在を突き止めることさえ出来ていなかった。チャドも戦ってみたらどうなるか分からないと思わしめていた。そのモールが捕まったことは少からずチャドを動揺させた。

 

「現在、浮浪忍者村を牽引しているのはくノ一三忍と呼ばれている3人の女性です。ピア、ナイフ、レヴァ。ピア以外の2人も聞き覚えがあるでしょう」

 

「ああ。ノーファクションにも度々来ていたな。見覚えがある。その3人でモールがいない穴を埋めているということか」

 

グリフィンは改まってチャドを見据える。

 

「あなたは私を疑っているようなので、浮浪忍者村へ行くのは止めません。ですが少しだけここで滞在していってもらえませんか?私が真剣に復興に取り組んでいるのが分かると思います。それに今度、巡礼に大物がここを訪れます」

 

「大物?誰だ」

 

「上級審問官セト。彼との関係も良好な状態に持っていけていることが分かるかと思います」

 

名前を聞いたチャドは警戒を強める。

 

「……!やはり奴は生きているのか。そのまま会うのは危険すぎだろう」

 

「ええ。農民のふりをして、私が対応するのを遠くから見ていてください」

 

セトが巡礼に来る日までにこの街を調査する。怪しいところがあれば何かしら痕跡はあるはずだ。少しでも不審点があればすぐにここを退去すれば大事には至らないだろう。

チャドはグリフィンの提案を受け入れることにした。

 

それから数日間。毛皮商の通り道にあるノーファクションに滞在し、施設をくまなく探索したが、グリフィンが布教活動を行っている以外に不審な点は見つからなかった。それどころかここには牢屋や兵士の詰所もなく、平和的な建物だらけであり、ここに住む女性からもあまり不平不満を聞くことはなかった。ルイに至っては「ここに拠点をうつして合流してもいいのでは」と言うぐらいここでの生活に満足をしているようであった。

 

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