Kenshi -20years later- 作:さわやふみ
【遠征組】
ルイ、チャド、ガルベス
【拠点組】
トゥーラ、ナパーロ/ラックル/694番、シルバーシェイド、シャリー、
ヘッドショット、レイ、ジュード
祈祷日
上級審問官セタが数十人の兵士を連れてノーファクションにやってきた。審問官が祈祷で訪れることは異例である。本来、審問官とはオクラン教の教え、教義に反する異端を排除することを意図した捜査員である。通常布教は司祭や司教など宗教を広める役割の者が担っていた。
審問以外の目的があるとすればやはり国防に関わる事だろう。審問官は手練の上位パラディンの中から選出される。さらに主導者ホーリーロード・フェニックスに選ばれた者が上級審問官として政務に携わるのだ。そのため政務執行者として地方視察に来ている可能性は充分にあった。そして数いる候補者の中から最高位まで駆け上ってきたセタのエリートとしての実力は底知れぬ不気味さがあった。
チャドはここノーファクションで接待に近い歓迎を受けてもなお疑いの目を持っていた。相手が審問官となると俄然、警戒心も高まる。
(ノーファクションが離反しないか定期調査も目的に含まれているかもしれないな)
チャド達は予定通り農民の振りをして、遠めからセタと応対するグリフィンを監視していた。
「あの人……腕がないっすね」
ルイがセタを見て呟いた。
確かに彼は腕の付け根から先がない。そして少ししか生えていない腕を堂々と見せているのだ。
「ホーリネーションは義手も機械だから教義上、腕につけられないのだろう」
チャドは手練の上級審問官が片手を失っている
事に驚いたが、それよりもセタの後ろにいる取り巻きに目を向けていた。
服装から
審問官1名。
高位パラディン2名。
パラディン8名。
歩哨10名。
御使い10名。
1都市に攻め込める人数で来訪していたのだ。
しかも
(あの審問官……見覚えがある)
セトの後ろに隠れているが、ただならぬ気配を漂わせている者がいたのだ。都市連合の手配書に記載され多額の懸賞金がかけられている壮年の審問官。名はカスケード。
以前は高位パラディンとして都市連合との紛争地帯であるバスト地方に出没し、名のある侍を討ち取ってきた手練だ。
用兵術、戦術にも精通しておりバスト地方を事実上占領した功績により、セトの側近として抜擢されたのだろう。
(要注意人物だな……)
チャドは万が一でも彼らと目が合わないよう細心の注意を払うようルイに目配せした。
尚、ガルベスは容姿とガタイが目立つためこの場から離れたところで待機していた。
「遠いところお越し頂きありがとうございます」
グリフィンはセタ一行に深々とお辞儀をして丁重に迎えた。
「うむ。変わりないか?」
「はい。教祖様にお力添え頂いたおかげでこの街もここまで復興を遂げることができました」
「そうか。定例報告は後でカスケードにしてくれ。私はこの後、用があるためすぐにここを発たねばならん」
「左様でしたか。お忙しいところありがとうございました。それではカスケード様にお伝えしておきます」
このやり取りだけ済ますとセタはさらっとノーファクションの様子を見渡し、数人の部下を連れてもと来た道を引き返して行く。
これに面食らったのはチャド達だ。
上級審問官セタと言ったらホーリネーションを支える柱の1人であり、もう片方の上級審問官ヴァルテナと並んだ双璧であった。当然、些細な出来ごとも念入りに確認し、敵対している相手がいそうであれば容赦なく潰しにかかると思っていた。
そんなセタが二言三言のやり取りだけで引き返したのだ。ノーファクションに目をつけていると思えたのは杞憂だったのかもしれない。
「ふぅ……問題なかったな」
セタの一行が見えなくなってチャドは一息いれて警戒を解いた。
しかし
そんな一瞬の気の緩みが別の審問官の接近を許してしまう。いつの間にか審問官カスケードがこちらのほうへ寄って来ており、ルイに対して話しかけていたのだ。
「あなた……どこかで見たことがありますね」
カスケードは指でルイの顎をクイッとあげて顔を隠していたフードを取った。
「!!」
「え……何ですか……?」
狼狽えるルイにカスケードはベッタリくっつき顔をマジマジと覗く。側にいるチャドは不用意に近づけないでいた。迂闊に近づこうものなら気づかれてルイに何をされるか分からないからだ。
「少しあちらの宿舎で伺いたい事があるのですが宜しいですか?」
拒否は許されそうもないカスケードの静かなる圧力にルイは首を縦に振るしかなかった。ちらりとチャドの方を見るが、彼も“今は大人しく従うしかない“という表情をしており、ルイはそのままカスケードの言う通りついていく。
がっちり肩に手を回されながら宿舎に向かう2人を見てグリフィンは無表情を貫いている。
(グリフィン……!奴はホーリーネーション側だったのか?)
いま下手に動いてもルイの命が危うい。チャドはどうすることもなくその様子を伺うことしか出来なかった。
「では、そこに座ってください」
ルイはカスケードに促されるまま従う。丁寧な口調と端正な顔立ちを見て、思わず気を許してしまいそうになる。しかし次の言葉で改めて彼が審問官という立場であることを認識させられる。
「あなた……都市連合のルイさん……ですよね?」
言わずもがなホーリーネーションと都市連合は長年敵対する大国同士である。審問官からの質問が重大なものであることは情勢に疎いルイであっても容易に察することが出来た。
サーッと全身から血の気が引いていく。
ルイをどこで知ったのか不明だが、今もハウラーメイズ攻略の記事などでルイの情報は転がっていたので問題はそこではない。“テックハンターの“ではなく“都市連合の”という言葉がスパイを警戒しての尋問であることに気づき危機感を覚えたのだ。
回答を間違えた場合、危険な状況になるのは目に見えている。今部屋の中にはルイとカスケードの2人しかおらず、助け舟を出してくれる人はいない。正解となり得る回答が頭の中に浮かばず、ルイは押し黙ってしまう。
「あれ、喋れますよね?さっきも会話できていたし」
「あ、いや。はい……」
「ルイさんで間違いないですか?」
「そうですけど……」
「なぜ農民の格好で私どもを見ていたのですか?グリフィン司祭はこのことを知っておられるのですか?」
カスケードはにこやかな表情を作っているが目は笑っていない。最早下手な言い訳は余計な嫌疑をかけられるだけだし、今から工夫した返答をルイが出来るはずもなかった。
「ど、どこから話せばいいのか……、俺は元ノーファクションメンバーの娘だったんだ」
「ほう。それで?」
「過去にホーリネーションと戦っていた経緯もあるから、今の良好な関係に水をささないよう、遠くから様子見見してればいいってグリフィンさんが言ってくれたんだ」
「なるほど、そういう事でしたか!今はノーファクションと提携しているので問題なかったのに!そして都市連合で英雄扱いされているルイさんがまさかノーファクションの出だったとは!」
杞憂だったのか審問官カスケードは全く気にしていないようであった。それどころか親しみのある接し方にルイはつい気を許してしまう。
「ハウラーメイズの記事見たんですね。実際はあんま活躍してないですけど」
「若いのに謙遜する心もお持ちとは素晴らしい。ここで出会えたのは何かの縁でしょう。是非ルイさんにお願いしたいことがあります」
カスケードは急に真剣な顔をしてルイに切り出した。
一方、チャドは離れた場所でグリフィンを問い詰めていた。
「貴様、本当にカスケードと組んでいないと言うのだな?」
「はい。誓ってあなた方を騙してはおりません。カスケード審問官に敵意がなかったのはあなたもお気づきでしょう。ただ、ルイさんに目をつけるとは私も不覚でした……」
グリフィンは指を顎にあてて考え込んでいるが、チャドにはそれすら演技なのではないかと疑う。しかしグリフィンの言う通り、今のところカスケードからは敵意は感じられなかったのも事実だ。(そのせいで接近に気づけなかったのもあるが)
「都市連合のルイという言い方をしていたが問答無用で敵認定というわけでもないのだな?」
「カスケード審問官は非情に熱心な教徒ではありますが、合理的な方でもあります。敵である都市連合を調べている過程でルイさんを知ったのでしょう。彼女がテックハンターだとも知っているならば危害はくわえないはずです。仮に敵対視したならばその場で歩哨に捕らえさせたはずです」
「では狙いはなんだ?都市連合市民に英雄視されていることで排除対象になる可能性はないのか?」
「分かりません。ただ本当のことを言えば解放してくれるはずです」
チャドはこれ以上追求することを止めたが、心の中ではグリフィンへの疑いは晴れなかった。むしろこの男が最初からホーリネーションに通じていたのではないかという思いが強まっていた。
(このままルイが捕まった場合、グリフィンは限りなくグレーと見るべきだろう)
ただ、仮にこの場でルイを助け出せたとしても数の多いホーリネーション兵から逃げ切ることは不可能だ。ならばまずは全力でカスケードを捕らえる。そして奴を人質にしてこの場を脱出するのだ。
チャドは覚悟を決めた。
しばらくしてルイ達が入っていった建物のドアがガチャリと開く。中からはカスケードのみが出てきた。
(まさかルイは拘束されたのか……?)
チャドは静かに闘志を燃やし戦闘態勢に入った。するとカスケードはそれに気づいたのかすぐさま話しかけてくる。
「お待ちください。あなたは拳聖と讃えられた武道家チャドですね?」
カスケードはチャドの事も把握していたのだ。
「……なぜ知っている?」
「有名ですからね」
「ルイはどこにいる?中か?」
「中におりますが、これから私達と共にスタックへ行くことになりました」
到底、理解できない言い分だが、ここで熱くなるわけにもいかず、チャドは冷静に問答を続ける。
「……なぜだ?」
「戦争を回避するためです。ルイさんご本人にも了承を得ました」
「ルイに直接聞く」
「それはなりません。あなたには別にお願いしたいことがあります」
「……!」
やられた。ルイに会わせる気がなく、そもそも自分へのお願いを予め用意しているのは最初からルイ達がここにいることを知っていたからだ。であれば恐らくグリフィンはほぼホリネ側で間違いない。セタの手勢が来るまで我々をここに釘付けにし、カスケードと示し合わせて巧妙な流れでルイを人質に取った。ルイが
「なぜお主のお願いを聞かなければならない?まずはルイの安全の確認が先であろう」
「ルイさんは安全です。都市連合の侵攻を内から防いで頂く重要な役割を担って頂きたいので。むしろこれからスタックに行くのはどちらかと言うと交換条件としてルイさんを強くしてあげるためです」
「どういう意味だ?」
「残念ですが、ここからは国家機密になるため何も申し上げられません」
「それで納得すると思っているのか?」
チャドは敢えて反発した。話しぶりからルイがローグの子であることには気づいていない。ホーリーネーションは問答無用で女性を異端審問として火炙りにするような国であるが、安全でありそうならば敢えてここで戦わずに様子を見たほうが良い。だが、すぐに安心した様子を見せると逆に勘ぐられる可能性があるため、会話が決裂しないギリギリのラインで慎重に言葉を選んだのだ。
「あなたの納得など求めておりません。ここで仲違いしてもあなた方にとって良い結果にならないだけでしょう」
カスケードは自分が優位な立場を理解し詰めてくるが、チャドも外見上、渋い表情を見せつつ話に乗ることにした。
「……取り敢えずそのお願いとやらを言ってみろ」
これにカスケードの表情はパッとにこやかになる。
「こちらのお願い事項はズバリ1つです!それは都市連合ノーブルサークルの1人ロード・オオタの暗殺です!」
「……なんだと?」
「調査の結果、彼が今回、皇帝テングJrを抱え込んで我が国に攻め込んでくる気配を見せております。その前に彼だけ排除することで戦争の回避を狙っております。実に平和的な話でしょう?」
カスケードは明るい表情でサラリと言いのけると不敵な笑みを浮かべていた。
KenshiがバージョンアップしたからかMODが滅茶苦茶に……
まだ完全に環境戻せておりません( ;∀;)