Kenshi -20years later- 作:さわやふみ
【遠征組】
ルイ、チャド、ガルベス
【拠点組】
トゥーラ、ナパーロ/ラックル/694番、シルバーシェイド、シャリー、
ヘッドショット、レイ、ジュード
ルイがカスケードと話した後、建物を出ると既にチャドの姿は見えなかった。それはカスケードが意図して引き離したからであるが、当然そのことをルイは知らない。
「あれ?チャドさんどこだ?」
「君に連れがいたのかな?急がないと
カスケードはルイが食いつくであろうネタで巧妙に誘導していた。浮浪忍者の頭領にして無想剣舞の始祖であるモールは現在ホーリーネーションが捕らえていたのだ。彼はハウラーメイズ遠征にも密偵を混ぜておりルイが夢想剣舞を扱う事を知っていたのだ。そのためモールからルイに無想剣舞を伝授させること(モールにとってはそれを恩赦として処刑回避)と、都市連合で有名であるルイが戦争反対の旗頭になること、を交換条件にしていた。そのためにもまずはモールの処刑を匂わせてルイを早く移動させようとしたのだ。
「……分かった!じゃあ早速行こう!」
ルイが慌てながら身支度を始めていると、グリフィンがそっと近寄ってくる。
「ルイさん。行かれるのですね」
「あ!グリフィンさん!お世話になりました。ここめっちゃ良いとこですね!俺の仲間も呼びたいぐらいです」
「……それは良かったです。ただ、他の都市での行動は慎重にしてください。ホーリーネーションでは女性の立場は限りなく低いです」
「そうなんですか。分かりました!」
「ああ、それと、これを……」
そう言ってグリフィンは懐からネックレスを取り出した。
「何ですか?これ」
「君の母親ルミの形見です。前に偶然、彼女から預かっていましてね。ずっと捨てられずに持っておりました。あなたが身につけてください。後ろを向いて」
ルイは言われるがままに背中を向け、グリフィンにネックレスをつけてもらった。
「これが母の……」
ルイはネックレスの先についた輝きを放つペンダントを興味深げに眺めた。
「お似合いですよ。では気をつけていってらしゃい」
「ああ!ありがとう!いってきます!」
カスケード達の後を追うように走り去るルイを見て、グリフィンは一瞬寂しげな表情をした。
そこに後ろで見ていたパラディンのフラーケがグリフィンに喋りかける。
「では私も行ってまいります。私がいない間は他のパラディンにあなたの護衛を頼んでおきました。あなたも浮浪忍者に狙われる身……。お気をつけください」
「分かりました。ルイを頼みましたよ」
「はい。では……」
フラーケも重厚な鎧を鳴らしながらルイ達のほうへ歩いていった。
こうしてルイは審問官カスケードの思惑通り、チャド達から分断されてしまった。
そして、この後カスケードによるルイの扱いは常に丁重であり、ルイに疑う機会を与えなかった。牛のような動物ブルに車輪で引かせた籠に乗せ、何人もの歩哨がそれを警護するように付き添い、道中ではカスケードが世間話もしてくれた。もはや完全にルイはカスケードを信用してしまっていたのである。
モールを捕らえている場所は一般人にバレないようにしているらしく目隠しをさせられたがルイは疑うことなく受け入れた。
そして2日ほどかけてモールの牢獄があるとされる場所に辿り着く。
「ルイさん、もう目隠しを取ってもいいですよ」
「ほんと!?いや〜目が見えないってきついなぁ」
「ご不憫をかけました。では早速あなたのお部屋にご案内しますので、そこでモール助命の手紙を書いてください。あなたならば彼女の命を救えるかもしれません」
「分かった!でも俺、文字は読めるけど書けないんですけど」
「代筆を用意しますね。私は用がありますのであとのことは執事に言ってください。あっと……重要なことを言いそびれていました」
「?」
「この国は宗教の関係上、男尊女卑が徹底されております。私はグローバルな考えなので気にしませんが、ここにいる者たちはノーファクションと違って熱心な信者が多いです。女性のあなたはあまり目立つ行動は控えるため、この建物からは絶対に出ないで頂きたい。わかりましたね?」
「そ、そうなの。分かった」
カスケードは要件を済ますとそのまま去っていった。1人残されたルイは窓から外の様子を見る。
建物は高い城壁と山脈に囲まれており、歩哨が群れを作って物々しく巡回している。出歩く者は皆、男性で鎧を着込んでおり、一般人すらいないようだ。それにしてもすごい数の歩哨がいる。門は固く閉ざされ、知り合いでないと入れなさそうな警備体制なのだ。
(砦か城みたいな軍事施設なのか?チャドさんは後から来んのかな……)
チャドと離れ、未開の地でいま自分がどこにいるのか分からないこの状況に気づき、始めて寒気を感じてくる。しかしそこは肝っ玉のすわったルイである。ふと皿に積まれている果物に目が止まり、目を輝かせて手に取る。
「おお……これ世界の食べ物辞典に載ってた気がする。……食べていいんだよな?」
独り言を呟きそのままひと口かじってみる。
(うっま!!!!何だこの甘さとみずみずしさはっ!!口の中でそのまま溶けていく!)
これまで食べたことも見たこともない食材にルイは脳を揺さぶられた。味がなく乾燥して体中の水分を吸い取る都市連合の食べ物とは大違いだ。砂漠に覆われた都市連合と比べて、ホーリーネーションが肥沃な土地だからこそ収穫出来るのだろうか。
(これトゥーラ好きそうだな〜。お土産で皆にいっぱい持ち帰ってやるか)
ニマニマと笑いながらルイは先ほどの不安感をとっくに忘れてしまった。すると、部屋のドアをノックする音が聞こえてくる。
コンコン
「は、はーい」
「失礼します。代筆しに参りました」
「ああ、手紙の代筆か。早速来てくれたんすね」
モールの処刑はすぐにでも実行にうつされる可能性があるようなので早いところ助命の嘆願書を書いておくことに越したことはない。ルイはすぐに着手にかかった。そして半時ほどで手紙を書き上げることが出来た。カスケードはその手紙を責任持って担当者に渡してくれるとのことだった。
その夜
「さて、ルイさん。我々に出来ることはやりました。後は座して待ち、上層部の判断を待つしかないですね」
カスケードは今日の業務が終わったとのことでルイの部屋に訪問しに来たのだ。
「そっか。モールさん助かるといいな」
「結果を待つまで時間があります。とはいえここは軍事施設なので娯楽が何もありませんが、兵士用に唯一の慰労施設があります。今夜はそこでおくつろぎください」
「お、おう。そうなんすか」
ルイはカスケードに案内されるまま別の施設へ赴く。そこは奥深くにある建物で窓が一つもなく不気味な気配を醸し出していた。
「まずはこちらの部屋でこの服に着替えてください」
手渡されたのは高級感漂うサラサラの白いシルク生地で出来たレースの服であった。更衣室らしき部屋で着替えてみると、ノースリーブだし、足元は深くスリットが入っていて露出部分が多い。胸もとは突起部分こそ隠れているが生地が透けて乳房があらわになっている。それはまるで貴族が着ていそうな下着の感覚で肌触りは抜群であった。鏡であどけない表情の自分を見て一瞬、異国のお姫様が迷い込んだのではないかと錯覚を起こしてしまう。
「な、なんかスースーするんですけど……」
更衣室を出ても歩く度に素足が太ももまでスリットから露出してしまい、普段気にしないルイでさえ恥ずかしくなってしまうほどだ。
「おお……お似合いですよ。お美しい」
「い、いや俺には似合わないよ」
「あなたは充分な素材をお持ちなのにまだ性に目覚めていないだけです。ここで女性らしくしてあげましょう」
「女性らしく……?」
「あ、それと……ここで行っていることは他言無用です。分かりましたね?」
「わ、わかった」
「では入りましょう。癒やしの空間へ……」
カスケードがドアを開けると、湯気のような蒸気が漏れ出てきて、思わずルイは鼻をつまんだ。お香が炊き込まれたような婬靡な香りが混ざっていたからだ。薄暗く曇っていて中の様子がよく見えないが、何か今まで見たことのない不思議な空間に迷い込んだようだ。カスケードに案内され中へ進むと、どこかしらか蒸気に乗って声が聞こえてくる。それは1人の声ではなく複数人の女のかん高い声のようだ。
(これって……もしかして……)
その声は不快でもないが、ドロドロとしたその場の雰囲気と相まって、何か自分の奥底に眠る本能を解放にいざなっているような気がして不安にさせた。
奥の突き当りにぼんやりと湯船のような場所があり、人影も多く見える。
「男と女が一緒に風呂に入ってる……」
徐々に浮かび上がってくる酒池肉林の光景にルイは絶句した。幾人もの裸の男女が談笑しながら同じ湯につかっているのだ。暗い隅のほうでは何やら二人組がモゾモゾと動いている。
「ふふ……ここはちょっとあなたには刺激的かもしれませんね。まずはこちらへどうぞ」
ルイは小部屋に通された。中には腰の高さほどあるシングルベッドが配置されている。
「ここに寝てお待ち下さい。まずは体をほぐしましょう。終わりましたらお知らせください。では」
「え……、え?」
カスケードが去った後、何が始まるのかも分からずルイは困惑した。しばらくすると、ルイと同じように露出度の高い服を来たグリーンランド人の女性が入ってきた。
「ようこそいらっしゃいました。本日担当させて頂きますアマネと言います。宜しくお願い致します」
「よ、宜しく……。というかここで何すんの?」
「マッサージです。ルイ様は初めてと伺っておりますので私にお任せ頂いてリラックスしていてください」
そう言うとアマネという女はルイを少し強引にうつ伏せにさせる。
「ちょ……」
「まずはオイルを塗ります。楽にしていてください」
うつ伏せにされたルイの足先から透明のジェルを丁寧に塗りたくっていく。ほどよく温められており悪い気はしない。そして
「ひゃっ!」
「どうされました?」
アマネはルイの驚きには動じずにふくらはぎを優しくもみ始めた。他人にマッサージされることなど初めての経験であったルイはくすぐったさで思わず声をあげてしまったのだ。
「長旅で足が大分張っていますね」
シルクのスカートはまくしあげられハリのある太ももが露出する。アマネの手は徐々にふくらはぎから太ももへ移動する。膝から付け根までゆっくりとアマネの手が移動し、そのままつきあたり部分を下着の上からなぞりあげられる。
「ん……」
自分自身から普段発しない声が出てルイは驚いた。筋肉の凝りをほぐすマッサージとは異なる刺激を感じたのだ。しかし、止めさせたいとは思わない。むしろこのまま続けてほしいとさえ思ってしまう。
抵抗せず虚ろで火照り昂ぶった表情のルイを見てアマネの口元は微かに笑っていた。