Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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◆都市連合
 チャド、ガルベス、ジュード
◆行方不明
 ルイ


94.日常の終わり

【ヘッドショット、レイ】

 

ルイ一派を離脱したヘッドショットとレイは砂漠のど真ん中を歩いていた。

 

「しっかし……本当にルイを隔離出来るとは、あの子(・・・)は天才だね。これで不安要素はなくなったよ」

 

「……」

 

レイは喋れないため相変わらず無口であるが、ヘッドショットはレイが何を考えているのか何となく察する事が出来る。

 

「何だよ。残れば良かったってのかい?元々ウィンワンから手紙が来た(てい)でルイを監視するだけの任務だったろ。これ以上いると逆にトゥーラが巻き込まれるかもしれないし、本来はうちらと関わらないほうがいいのさ」

 

「……」

 

「ん〜?もしかしてアタシらの任務をチャドに打ち明けなかったのを言っているのかい?無理無理!アイツは真面目すぎるしアタシが言うとややこしくしてあの子の計画を狂わしちまうだけだよ。チャドも自分のやり方で動いてんだ。後は見守るだけだろ!」

 

「……」

 

「……生き残っちまった者たちは皆、多かれ少なかれ自責の念に囚われ、それぞれのやり方で足掻いているのさ……」

 

ヘッドショットとレイの歩幅が少しズレてきて2人の距離があく。先頭を行くヘッドショットは気持ちを入れ替えるように声を高める。

 

「さて、アタシらは次の依頼が来るまで姿を消しておくよ」

 

伸びをしながら前を進んでいるヘッドショットにレイは小走りでついていこうとするが、首もとに衝撃が走る。

 

「…………!」

 

そこにレイの異変に気がついていなかったヘッドショットが振り返った。

 

「おーい、まだふてくされて……」

 

ヘッドショットは目を見開いた。

レイの首もとに矢が突き刺さっていたのだ。

倒れゆくレイを抱きかかえようと咄嗟に飛び出す。

 

「レイ!!!!」

 

「ひゅー……ひゅー……ごぼごぼ……」

 

レイは必死に息をしようとするが、傷口から出る血で上手く呼吸が出来ないでいる。

 

「……くそ!!これで血を抑えて伏せてろ!」

 

止血シートをレイに手渡すとヘッドショットも背中のボウガンを取り出しつつ、身を潜める。

 

「アタシに狙撃戦を挑むとはどこのどいつか知らないけどいい度胸だね!」

 

レイが射抜かれた場所と角度、そして風向きで近くに点在する丘の中から敵の位置を割り出しにかかる。

 

「……!」

 

そして気がつく。相手がかなりの腕前であることを。恐らくの狙撃ポイントは把握できたが、その尋常ではない距離から精密にレイを射抜いた腕は明らかに一級の手練なのだ。

 

(この手際はまさか……!?しかし……)

 

ヘッドショットはレイを見やる。早く治療をしなければ命が危ないだろう。そんな状況がヘッドショットの判断を誤らせてしまう。この距離であれば相手の位置を視認するために顔を出しても問題ない。そう思ってしまったのだ。

 

(いた……!)

 

そして数百メートル先にキラリと光る得物を構え狙撃体制を取っている人影を発見する。

 

しかしそれと同時に矢はヘッドショットの眉間を正確に貫いていた。ヘッドショットは目を見開いたまま地に伏せ動かなくなった。その横で無言でもがいていたレイもやがて仲良く並ぶように静かに息絶えていった。

 

襲撃から数秒間。ほんの一瞬の出来事であった。

 

 

 

 

 

【ナパーロ】

 

誰もいなくなって静まり返ったハウラーメイズ近くの元拠点にて

 

ナパーロは皆が帰ってきてもすぐ使えるように人知れず小さな小屋の掃除をしていた。トゥーラが残していった資金はすぐに使い切れるような金額ではなかったので、襲撃を受けても大丈夫なように地中に隠し、いつでも出せるようにしておいた。

 

 小屋の真ん中にポツンとあるテーブルを見ると皆と食事をしながら笑いあっていた日々を思い出す。孤独を感じ、寂しい気持ちでいっぱいになるが、これは自分が招いた種だと自らに言い聞かせた。

 

ルイさんはどこに行ってしまったのだろうか。

トゥーラさんは無事にブラックスクラッチに辿り着けただろうか。

 

ナパーロは膨大にある時間の中で、この場を離れていってしまった人たちのことを思い浮かべていた。

 そこに少し気の抜けた声が玄関のほうから聞こえてくる。

 

「ごめんくださーい」

 

ハイブ人独特の乾いた声だ。

 

ナパーロは驚いて玄関に駆けつけると、そこにはダストコートを着込んで裾からは棒のような手足が出ているハイブ人がいた。ハイブプリンスという種族でまさにシルバーシェイドと瓜二つであったため、一瞬シルバーシェイドが帰ってきたのかと思ってしまったほどだが、背中には長い薙刀を背負っているし、拠点を物色するように眺め回しており挙動が不審であった。

 

「あ、何かご用でしょうか?」

 

「……あなた1人しかいないのです?」

 

虫のような目でハイブ人はナパーロを見ている。

 

「え、ええ。あ、いやもう少しで皆帰ってきます」

 

怪しく思ったナパーロは集団だと思わせるために嘘をついたが、そのハイブ人は深いため息をつく。

 

「はぁ。やっぱり私の役割はまだゴミ掃除程度なんですかね」

 

「え?ゴミ掃除?掃除を頼んだ覚えはありませんが……」

 

意味が分からないナパーロは困惑した。

 

「ああ、いや聞いてくれますか。私はハイブ人の中ではかなり頭が切れるし腕が立つので特別憲兵に推薦されたんですよ」

 

「は、はぁ……?」

 

勝手にベラベラと喋りだすハイブ人の言葉をナパーロは聞くだけしか出来なかった。

 

「それでね……あ、そもそも推薦される前はある都市のただの衛兵だったのですよ。懸命に働いていたらそこの領主様の目に止まりまして、特別憲兵に大抜擢されたわけです。しかしそこからが大変でした。それ以降、顔も見せないような男から指令を受け続けて任務をこなすことになりました。これがもう死ぬほど過酷でして、自分の趣味が活かせなかったら今頃絶対に辞めているブラック業務でした。給料は貯まっていうようなのですが、自由に使えないようなのですよ。参ってしまいます。だから戦利品は自分の物にすることにしたのですが、今回私のターゲットはこのようなボロ小屋と貧相な身なりの子供1人ですよ!!」

 

喋るほどどんどん興奮してきたハイブ人は拠点の小さな小屋を指さすとさらに続ける。

 

「申し遅れました。私、都市連合の特別憲兵をやっております、ヒガキと申します。以後、宜しくお願い致します。……あ、しかしあなたとの交流時間は短いですね。死んで頂くことになりますので」

 

長々しい言葉を早口で喋るヒガキというハイブ人に対して、ナパーロには内容が頭に入って来ず、ほとんど聞き流していた。そのため最後の台詞を理解するのに数秒時間がかかってしまった。本来なら殺意のある相手を目の前にしてこの時間は致命的な長さである。しかし、ナパーロが襲撃を理解し、飛び退くまでヒガキは何もせずただナパーロを見ていただけだった。

 

「……あなた反応が鈍いですね。ちゃんと私の話を聞いていてくれましたか?大体なぜ少年のあなたがこんなさびれた場所に1人で住んでいるのですか?歩いてくるのにも数日かかってしまいましたよ。私の移動代は給料に計上されないので遠方は避けたいのですが私にはまだ任務を選ぶ権限がないのです」

 

「ちょ!一体何なのですか?あなたは強盗ですか!?」

 

「うーん……そうなります」

 

言うなりハイブ人は大振りの薙刀でナパーロに斬りかかった。

 

「うわっ!」

 

ナパーロは思わず尻もちをついて運よく難を逃れる。というよりハイブ人がわざと(・・・)当てなかった感じだ。ナパーロは腰に帯刀していた修理品の忍者刀を抜いて構えた。

 

しかし、いつの間にか両手で持つ忍者刀は根本から折れている。そして剣先は数メートル離れた地面に突き刺さった。ハイブ人が素早く薙刀を振るってナパーロの忍者刀のみを狙い折っていたのだ。

 

「…………!」

 

力の差をまざまざと見せつけられたナパーロは心が折れかけていたが、ぼんやりと頭の中で声が聞こえてくる。

 

『諦めるな!チャンスはある』

 

「だ、誰!?」

 

『分かっているだろ?ラックルだ。あのハイブ人は紳士な口ぶりだが恐らく殺人狂だ。飄々としているが腕もいい。取り敢えずお前はそのまま無様に逃げ回り奴を楽しませろ』

 

自分が多重人格であること。別の人格にはラックルと694番という人格がいるとも知らされていた。しかし、こうして直接頭の中で会話するのはナパーロにとって初めてであった。

 

「た、楽しませるたって……」

 

ナパーロはハイブ人に後ろを見せて転ぶように逃げようとした。

 

ザシュ……

 

ナパーロの背中から血が飛び散る。

どうやら薙刀で斬られたようだ。

 

「う……うわあぁあ!」

 

ナパーロは最早パニック状態だった。外に設置されている簡易トイレに逃げるように駆け込みドアを閉める。そこにヒガキは薙刀をクルクルと回しながら歩み寄ってくる。

 

「ええー……。もう終わってしまいますよ。そんな木のドアなんて突き破っちゃいますよ」

 

ラックルの読み通り、このヒガキというハイブ人は人を斬ることに喜びを感じる異常者であった。頼まれた拷問も平然とこなし、これまで幾人の人間を斬り刻んできた。レディー・サンダに見初められ推薦を受けて特別憲兵となったが、一方的に弱者をいたぶり死に追いやることに快感を得るヒガキにとって、内心では特別憲兵の仕事は天職と考えていた。

 

だからこそ、無力化した相手が恐怖の表情で逃げ回るこの展開はまさにヒガキにとって最もエクスタシーを感じられる瞬間であったのだ。

 

ーもう少し味わいたい。

 

無意識にもナパーロはヒガキにそう思わせることに見事成功し、背中に入れられた一撃も致命傷を避けられた。武器を持たず只々恐怖で顔を引きつらせているナパーロを見るため、ヒガキは薙刀を使ってドアを器用に開けようとした。

 

だがトイレの中でうずくまっていたのはナパーロではなく、この瞬間を待ち、人格が入れ替わっていたラックルだった。

 

同じ穴のムジナ。厳しい奴隷生活をナパーロの代わりに耐えてきたもう一人の人格ラックルは人を殺すことに躊躇しない。一気に飛び出し、薙刀を片手で抑えながら間合いを詰めると、どこからか用意した短刀をヒガキの首に突き刺そうとした。

 

「キ……キサマ……!!」

 

ヒガキはラックルを突き飛ばしたが、短刀は肩口に刺さった。

 

飛ばされたラックルはクルクルと器用に回転して着地するが渋い表情をしている。

 

「くそ、しくった……!あのヒガキって野郎。薙刀で距離をとってやがった」

 

『ここはひきましょう。このハイブ人には不意打ちでないと勝機がない』

 

「その声は694番か。お前の備えは良かったんだけどな」

 

3人目の人格694番

 

主人格ながらポートサウスの一件依頼ほとんど表に出てこなくなった暗殺者としての人格である。694番の案でいざという時のためにトイレに短刀を隠していたのだ。ここにきて奇しくも3人の人格が協力する形となったが、特別憲兵ヒガキの命を取るまでは至らなかった。

 

ラックルはヒガキに構わずそのまま逃走を試みる。襲撃された理由は不明だが、応戦する必要はない。今は倒すことに固執せず戦闘を回避するのだ。

 そのまま後ろを振り返らずに全力疾走の態勢に入るラックルだったが、それをヒガキは許さなかった。

 

薙刀の先を片手で持ち、目一杯にリーチを延ばして大きな孤を描きラックルを斬り伏せたのだ。

 

「く……そ……」

 

倒れ込む間際、ラックルはトゥーラの顔を思い出す。嫌がりながらも何だかんだ自分を受け入れ、弟のように育ててくれた。そんな彼女を結局自分は失望させたままだった。せめて戻ってくるまで彼女達が作り上げた拠点を守り通したかった。

 

 無力な自分への怒りと悔しさを内に秘めたままラックルは地に伏せる。彼の周りには斬り傷による血溜まりが広がっていった。

 

「昏睡したか……。このガキ、いきなり動きが変わりましたね……」

 

ヒガキは相変わらずの表情でしばらくラックルを見下ろしていたが、意識が復活しないと見ると興味を失ったのか、小屋を物色してからその場を立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

【チャド、ジュード、ガルベス】

 

チャド達は都市連合の首都ヘフトを訪れ、まさにいま皇帝テングJrと面会をしようとしていた。派閥とは無関係であり実力も知れ渡っているチャドはノーブルサークルにすんなり受け入れられことになったようだ。

 

チャドは一段高いところにある玉座に座るテングJrを見上げ、坦々と挨拶をしようとした。

 

「陛下。この度は」

「ああ、いいよ、堅苦しい挨拶は。そなたの腕前は知っている。よって将軍に任命する。以上」

 

チャドを遮りテングJrは口上を述べると、横にいるロード・オオタに視線を送る。恐らく既に将軍就任は確定していて後の処理は任せるといったところなのだろう。オオタも理解しているようでチャドに喋りかけてくる。

 

「将軍はあなたに確定した。この後の就任式をもって正式に帝国の将軍となる。失った地を取り戻し輝ける勝利を導いてくれることを期待する。では式典までそちらの部屋で寛いでいてくれ」

 

チャド達は言われるがままに個室に入り、一休みをとる。ガルベスとジュードはチャドの私兵として雇われる形になったため同行を許可されていた。

 

「スゴイっすね!皇帝がこっち見てましたよ!」

 

ジュードは興奮してはしゃいでいるがチャドは堅い表情を崩していない。

 

「ジュード。彼らは基本自分のことしか考えておらず尊敬に値しない者達だ。こちらも気を抜かず彼らを利用することだけを考えろ」

 

「は、はい」

 

武道において戦う相手にも敬意を払えと教えられてきたジュードは冷徹な態度を示すチャドの変動ぶりに困惑した。

 

そこにガルベスが割って入ってくる。

 

「そうだぜ。利用価値がないと判断されれば俺たちのような一般の出はすぐに用済みにされちまう。つーか、あんな間近までロード・オオタに近づけるんだ。ホーリーネーションの要求通りオオタを殺ってしまえばルイは解放されるんじゃないか?」

 

「……選択肢としては捨ててはいないが、それだけで解放される保証もないだろう。ルイの居場所すら分からなくなっている今は慎重に様子を見たいと思っている」

 

「そうか。まぁオオタを殺る場合は逃げる準備もしておかないといけないしな」

 

「ああ。トゥーラ達にも知らせておく必要がある」

 

喋りながら特注の将軍服を着込み前を見据えているチャドの後ろ姿を見て、ジュードは複雑な表情を浮かべていた。

 

 これまで大国に仕えることを頑なに拒否してきたチャドが都市連合の将軍になろうとしている。こちらの思惑と戦争経験のある指導者を増やしたい都市連合との利害が一致したからではあるが、チャドの覚悟は相当なものなのだろう。将軍になり都市連合におけるあらゆる権限を行使してルイを助け出すつもりのようだ。

 大国すら利用するというスケールの大きい手段を選択し、その一点だけに集中するチャドの狂気とも言えるやり方に、若いジュードは少なからず恐怖を覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 いつの時代でも私利私欲に走る権力者は一定数存在する。彼らは内に秘めた底なしの野心の元、狡猾に貪欲に自らの目的を達成しようと画策する。

 

大国における地位を不動のものにしたい者

戦争特需により巨万の富を得たい者

自らが信じる国教を世界標準にしたい者

 

自分の野望のためには弱き者や小さき者達のことなど意に介さず、利用し、搾取し、淘汰するのだ。

 

駆け出しで希望に満ちていたルイの小さな組織も、例外なく離散に追いこまれた。

 トゥーラ含む元拠点組のメンバーの身に起こった事は特憲により隠蔽され、チャド達の耳には届いていない。ルイ一派への襲撃はノーブルサークルのごく一部の者にしか知らされてはいなかったのだ。

 そして大国間の戦争機運が高まる中、策謀渦巻く環境に自ら身を置いたチャドはルイを探し出す目的のもと都市連合の新生将軍として動きだしたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原作 kenshi

 

kenshi -20years later-

『聖なる国』編

 

 

 

thanks for MOD's

 

イケメン種族 / IKEMEN Race

 

 

 

 

『ノーファクション残党一掃作戦 報告書 秘

 

・目的

過去に帝国の脅威となっていた組織ノーファクションの残党が統領ルイの元に再度終結する気配を見せている。この現状を憂慮し、統領ルイの消息不明を利用して残党の速やかなる排除を行う。

※なお、本任務は将軍に就任するチャド一味には知り得ぬよう遂行すること。

 

・遂行

特別憲兵隊(作戦に関わるメンバー名は任務継続の都合上、記載しない)

 

・結果

残党の排除達成。新たに反乱分子となり得る幹部クラスの排除達成。

また、本内容について外部へ漏洩する恐れなし。

なお、ルイ一派については自然消滅を確認。

要員の詳細については以下参照。

 

ルイ 消息不明
トゥーラ

死亡

ナパーロ 死亡
チャド 脱退し、都市連合の将軍に就任
ジュード 脱退し、チャド直下の私兵として配属
シルバーシェイド 死亡
ガルベス ■■■■■■■■■■■■
シャリー 消息不明
ヘッドショット 死亡
レイ 死亡

 

記録者 バード』

 

 

 

『聖なる国』編

 

next to episode6 『バスト大戦』編




ここまで読んで頂いてありがとうございました<(_ _)>
色々続く形で終わりましたが、
これでやっと後半戦というか締めのエピソードに突入するかなと……。
長すぎですね……(; ・`д・´)

それではまた充電させて頂きます。
次はついにおっぱい大戦が始まる……!(読んでくれる方がいればw)
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