それではどうぞご覧ください。
メロク・オーラ。属性は光で、No.60の悪魔でありその位の統率者でもある。
エイルとは良き相談相手として、時に王を巡るライバルとして共に過ごした。見た目は女神と言われても差し支えないほど美しく、煌びやかであり、悪魔と言われてもまず信じられないだろう。
性格も好戦的ではなく、寧ろ会話でその場を片付けることを好む。もし、順番が違えば彼女が全ナンバーの統率者をしていたのかもしれない。と、後にエイルは語る。
「メロクッ…!!」
「…………」
エイルが彼女の名前を呼ぶが、彼女からは何も返っては来ない。
その代わりという風に、メロクは右手を翳し、そこへと光のエネルギーを収束させて打ち出した。
「くっ…!!」
光の弾は凄まじい速度でメレフに着弾する。ネゴレイの防御が追いつかない。あれほどの速度、いや光速の弾丸をどう避けられるだろうか。
「ここは一旦引くッ!!」
「…… はい」
デモンティアイズキーから発せられた声は恭也の一言でピタリと止まる。悲しみが伝わる。鍵越しだったとしても。
メレフはキーを差し替え、他形態と比較して1番速いスタンドエミオンへと変化し、敵に背を向けて空を飛ぶ。追い風を起こし、そのスピードを更に上げる。
「今はダメだ…… 今は」
これは逃げているだけではなく、エイルの為でもある。彼女の姿は見えないが、心から感じられたあの悲しみの気持ち。メロクに攻撃してはならない。傷つけてはいけない。
何か対策法があるまで逃げるしかない。
「─── なっ…!!」
当然の事だが、いくらエミオンが速いと言えど、メレフの中ではという話であり、光速の相手から逃げるとなれば話は別だろう。
回り込まれていた。まるでメレフたちの速度がカタツムリの様に鈍いとでも言うような顔をして、メロクは彼らの前に立ち塞がる。
そして両手を翳した上で、そこに光を溜めてとてつもないスピードで発射する。
「お、おぉぉぉぉッ…!!」
エミオンの力を使い、感覚を最大限に研ぎ澄ませて風を感じ、光速で飛んでくる攻撃を全身を掠めながらもなんとか避けていく。
しかし、このまま何度も避け続けることは困難である。いずれ限界が来て全弾もらうがオチだ。
「避けられないのなら!!」
《スタンドネゴレイ!!》
光の攻撃の最中にネゴレイへと形態を変え、その攻撃を全て身体で受けきる。
いくら硬いネゴレイだとしてもこの数をくらえば相当堪えるが、これで良い。これしかない。
そのまま落下するメレフにメロクは再び手を翳してトドメを刺そうとする。
「よし、次ッ!!」
《スタンドティニーマ!!》
続いて水の力を操るティニーマへと姿を変え、周囲の水分をメロクの目の前に集め、即座に「スタンドジェイテン」へと形態を変更し、そこへと大剣を振り回して巨大な火炎の斬撃を飛ばす。
「………」
メロクは余裕そうに避けるが、これは彼女を狙ってやったわけではない。
すると、メロクの周りに水蒸気が発生し辺りが見えなくなってしまう。これを彼女は光速で吹き飛ばすが、その一瞬の隙をついて逃げられてしまった。
「…………」
何もなくなった場所をメロクはただジッと見続けていたが、やがて何かに呼ばれる様にその場から姿を消した────。
-----------------------------
「エイル…… 大丈夫か?」
「…… はい、問題ありません」
問題ないとは言っているが、顔は見るからなそんな風には見えない。
現在、無事逃げられた恭也は道中にて、熱い2人に肩を担がれてフラフラとしながら家に帰ろうとしていた。
これは力を酷使し続けた事による疲労が全て今来たらしい。身体がもうほとんど動かない。既に1週間休みをほぼ取らずに戦い続けたから仕方ないだろう。
いつもならそんな彼を心配するエイルも今回ばかりは違った。
「安心しろ。メロクの様子からしてアレは誰かに操られている。そうだろう? この俺に逆らえる悪魔などいないからな」
「はい… 左様でございます」
「……… あ、あれだ。お前と会ってから随分と経つな… いや、まだそんなに… とにかくお前とは長い付き合いだ。気晴らしにどうだ? どこかに出かけるというのは?」
「お言葉はとても嬉しいのですが、恭也様は身体にお疲れが溜まっております。私に気にせずお休みなさってください」
「えっ、あ、そうだな… すまない」
「いえ…」
ここまで調子が狂うことがあるか?
あのエイルが恭也のアプローチとも言える言葉に全くと言って良いほど反応しない。これから先こんな現象はお目にかかれないだろう。
だが、恭也は思う。自分にもしも親友と呼べる者がいて、あのような形で再会となったらきっとこうなる筈だ。胸が締め付けられるような感覚に。
「…… 大丈夫だ」
「え?」
「俺が必ず元に戻す」
「はい、ありがとうございます…」
「違うぞエイル」
「はい…?」
「『恭也様なら必ず戻せます』だろう? いつもお前が言ってるではないか。それともこの俺が信用できないと?」
「い、いえ、その様な事は決して…!!」
「── なら、俺を信じてくれ。俺も戻すと言っても具体的にどうやるかはこれから決めるとして… とにかくメロクを戻す為には少なからず王としての力が必要だ。だから俺を… お前の王を信じてくれ」
「恭也様……… はいっ!!!」
彼のその言葉にエイルは笑顔を見せた。
そして他の悪魔たちも互いに顔を合わせ、メロク奪還を決意する。
「よーーーーしっ!!メロクッ!! 気合と俺の情熱と熱血と熱と熱で必ず助け出してやるからなぁっ!!!」
「ジェイク熱いね〜、水ぶっかけるね〜」
「エイル、僕がいるからには安心した方がいい。彼女の心を溶かすことができるのはそう僕ッ!! このエミー・オッ…!!」
「……… 慈悲はないのか」
「がっはっはっはっはっ!! エイルの拳が顔にめり込んでいやがるなぁ!!」
そんな彼らと心が通じ合えている事を実感できるこの瞬間。この間に恭也は違和感を覚える。
今、どこからかはわからないが嫌な寒さを感じた。これは殺意だ。それがわかるほど強い。とてつもない殺意。
恭也は辺りを首をあらゆる方向に振りながら全体的に見渡すが、やはり近くにはいないのか、その一瞬の殺意はなくなり、悪魔たちのわちゃわちゃとした声が聞こえるだけだった。
「…… デモンドライバーか…?」
このドライバーが強く反応したのだろうか?それはわからないが、よくよく考えればこのドライバーから先ほども感じ取れた。
それはメロクから逃げた際だ。何かの視線を感じたかと思うと、デモンドライバーが強く反応したのを覚えている。
「このドライバーと関係がある……… やっぱりそうなのか?」
わかっている。信じられないのは確かだ。
だが、ゼフォーから聞いたあの件はメロクの様子を見てわかる。メロクは操られていた。エイルからも彼女がそういう奴ではないと聞いている。
それに傘下の悪魔たちならまだしも、統率者を操るレベルの悪魔がいる筈がない。操れたとしてもそれは誰だ?いくら探しても1人しかいないだろう。それは王の資格を持つ者だけ。
現在、王として数えられるのは恭也のみ。そしてもう1人いる。大昔にたった1人だけ。
そう、強大な悪魔すら操れる人間がいるという事はつまり─────。
「先代の王はッ───!!」
「─── ようやく辿り着いたか。現王よ」
「…っ!!?」
ただのどこにでもある様な一本道。一通りはまるでないそこに王が2人立っていた────。
--------------------------------
その時、皆が言葉を詰まらせた。他の悪魔たちが何も言えなくなるのは当然の事だ。恭也はもちろん顔も知らないし、どういった人物なのかもさっぱりだ。
しかし、相対して見て、王の勘というのだろうか、目の前にいる人物がどれだけ強大な力を持っており、王としての威厳を感じられる程の強い気迫の持ち主か伝わってくる。
「お、お前は……」
「はははっ、先代に対してお前とは随分と大きくなったな」
「名乗れ。今すぐにお前が誰なのか教えろ」
「先ほどから言っているだろう。私はお前よりも遥か前に王として悪魔を従えた者だ」
「先代の… 王だと…?」
この状況で聞いたのは恭也自身であるが、事実を伝えられて頭の整理が追いつかないでいた。
1000年前に死んだ人物がなぜ生きている?いや、仮に悪魔と共に封印されていたとして、そもそも彼は普通の人間であるからそれもあり得ない話だが…。
誰も言葉を発することがない中で、エイルが唇を震わせながら口を開く。
「前王様…… な、なぜ、貴方様がここに…?」
「おぉ、エイルよ。久しぶりだな。1000年ぶりだが、相変わらずの様で安心したぞ。嬉しく思う」
「わ、私も嬉しいです… が、何故……?」
「あぁ、そうだな。何故、死んだ筈の人間がこの1000年の時を超えて生きているのか。答えは簡単だ」
前王はニヤリと微笑み言い放つ。
「お前のせいだ、エイル」
その一言でエイルの身体がビクリと跳ね上がる。
知っている。前王は間違いなくエイルの秘密を知っている。恭也はすぐにその事について触れようとした。
「お前、一体エイルの何を知っ───」
しかし、恭也はその質問をしようとしたが、急に胸が苦しくなって口を閉じた。
彼女が言いたくないからここまで聞かずに過ごしてきたのに、今だって彼女に信じろと言っておきながら、じゃあお前の秘密を教えろなんて都合が良過ぎるじゃないか。エイルが恐怖して身体を震わせているのに、王である自分が更に追い詰めてもいいのか。
「ほう、こいつを庇うか。あの一瞬でエイルの気持ちを察し、敢えて聞かない事を選んだお前の姿はまさに王と呼べよう」
「何をしに来た」
「…… それが質問でいいのか?」
「何をしに来たと言っている!!」
恭也は声を荒げて前王を威嚇する。
彼はその気迫すら微風だという風に鼻で笑うと、淡々と話し始めた。
「消そうと思ってな─── デモンティア達を」
「…っ!! それは何故だ。彼女達はお前の… 王の為にその身を粉にしてでも働いてくれた。世界平和の為にだ。なのに、その言葉はどういう事だ? お前を崇拝してきたデモンティア達に対して殺すなんてよく言えるなッ!!」
「殺すでない、消すのだ」
「………?」
「この世から1匹も残さず消す。それがこの世界を平和にする為の唯一の方法だ」
「平和にする為にだと…?」
「ここまで言ってわからないか? この世界が今危機に晒されているのは知っているだろう。いや、知っているというより実際にそれに相対し、戦い、封印し続けているだろう?」
「はっ───!!」
それは当然の事だった。今、自分達が戦っている相手こそデモンティアなのだ。デモンハンターは敵でなく、彼らは世界を守る為に動いているだけに過ぎない。
「悪を使役し、悪による裁きを下す。デモンティアの王に選ばれた時点で決定している。我々の運命はな…」
「全員封印したら…… どうなる?」
「… その質問はエイルに関わる事だが?」
「うっ…」
やはり、過去の話をしようとすれば必ずエイルが関連する。
名前を言う度に彼女の身体は震えを強くしていった。怯えているのか、それともただ辛いから? 何にせよこの場をどうにか収めなければならない。
この場から逃れる為にドライバーに手をかけながら話し始めると、瞬間、前王の口から衝撃の事実が聞かされる。
「… お前には質問したい事が山ほどあるが、今はお互いの為に引く事を提案す────」
「デモンティアの力は魂を食らう事で増していく。それは各ナンバーも同じ事だ。この意味がわかるな? デモンドライバーも同じ様に魂を食らう事で力を解放していく」
「おやめくださいッ…!!!」
その時、エイルが前王を止めようと走り出すが、どこからともなくメロクが現れて彼女を受け止める。
「よくやったメロク─── ここまで言えばもうわかるだろう?」
「まさか…… そんな……」
「デモンドライバーの力を最大限に使う為に必要な悪魔、それがエイルだ。そしてドライバーを使用する際に使われるエネルギーはそう、現王──── お前の魂なのだよ」
恭也は何も言い返す事ができなかった。ただ歯を食いしばることしかできなかった。何も考えられない。整理にも時間がかかる。
「私が1000年の時を経て生きているのは、私自身が魂だけの存在となったからだ。全ての生命を吸い尽くしたデモンドライバー…… その中に内蔵されていた私は封印が解放すると共に、再びこの世に蘇った。所詮、悪魔は悪魔。我々の様な王たるべき存在がいなかったら、人間と悪魔の戦争となっていたことだろうな」
「………」
「私に告げる事もしなかったこの事実。こいつは本来の力を手に入れる為に我々を器にしたのだよ」
「………」
「私がこの世界を変える。この私の手で平和を守る。さぁ、デモンドライバーを渡せ。お前は良くやった後は私に─────」
「嘘もいい加減にしろ、前王よ」
「なんだと?」
「途中から矛盾している。お前はこの世界の平和の為とほざいておきながら、悪魔同士の無理な融合、精神的な操作をし、更に一般人にも被害を出している。これのどこが平和なんだ? お前の本当の目的を教えるがいい」
「───… ふっ、いいだろう。ただし、私に勝てたのならだがな──」
そう言うと前王は灰色のデモンティアイズキーを取り出し、それを胸へと差し込んで回す。
すると、彼の身体はみるみるうちにデモンティア達の様な、いや、彼らよりも醜悪な身体へと変化する。
「…… さぁ、準備完了だ。死はすぐそこに迫っているぞ」
今、前王と現王の戦いが幕を開ける───。
デモンズドライバーと被っちゃってるよぉ…お前なぁ…。
もっと早くからやれ(戒め
次回、第11解「我は光、我の輝き」
次回もよろしくお願いします!!