それではどうぞご覧ください。
「ふぉふぉふぉ… 前王よ。お前さんやられたそうじゃのう」
「何をしに来た『ワナイズ』」
どこかもわからない廃墟の中、前王が戦いの傷を癒していると、闇から現れた老人が彼を小馬鹿にする様に話しかけて来た。
「王として情けないのー… お前さん昔より弱くなったんじゃないのか?」
「口を慎め!!」
前王はワナイズと呼ぶ老人に対して掴みかかろうとするが、気づくと彼は背後に回り込んでいた。暗闇の中を自由に動ける様だ。
「……『ンードゥ』はどうした?」
「あの方はその時を待っておる」
「その時?」
「現王の覚醒じゃよ。それを待っておられる」
「…… 奴を使いこなせると?」
「そうじゃのぉ〜…… お前さんですら使いこなす事ができなかったあの方を、あの小僧が使いこなせるとは思わんが…」
「私にはそれがわからない。何故、奴はそれほどの力を持ちながらも私に従ったのか」
「それはわしの口からは直接… まぁお前さんよりは使いこなせそうじゃがの─────」
この言葉に遂にプツリとキレた前王は即座に怪人態へと姿を変え、ワナイズのいる方へと無の波動を放つ。その威力により廃墟が半壊し光が差し込む。
が、それほどの力で撃ったにも関わらず、どこからともなく声が聞こえて来た。
「ふぉふぉふぉ、昔と比べて… いや、昔はこうではなかった筈じゃがのぉ」
「貴様ッ…!!」
「話はこれくらいじゃ…… それと昔からの馴染みだから言っておいてやろう。現王はお前さんとの戦いで成長している。前よりも更に強くなってお前さんの元へとやってくるだろう───」
その言葉を最後に声はプツリと消えた。
前王は怒りで拳を握りしめていたが、やがてその手を広げ深呼吸をし、翼を広げて外へと飛び出す。
「悪魔を全てこの世から消してくれよう。平和の為に…… いや、
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あれから1ヶ月が経ち、悪魔達も少なくなって来た影響もあってか、随分と楽になって来た。久しぶりの休みもあり、王としての生活もだいぶ慣れ始めた。
「エイル、これで残りの悪魔の数は?」
「残りは…… 13体ほどです」
「13か… これでもう終わりの様だな」
「はい、お疲れ様でした」
「…… しかし、この速さで封印するのであれば、メレフに変身する必要はなくならないのか?」
「えぇ……」
最近、エイルが何か隠そうとするとすぐにわかる様になった。
だから恭也はこういう時、彼女にこう言う。
「隠そうとするなら罰を与えるぞ」
「はい喜─── そ、それだけはおやめくださいーー い、今すぐに言いますのでお許しくださいーーー」
「何だこの棒読み」
一応罰である為、喜んではいけないのだが、初手で既に「喜」まで聞こえた。秘密隠す前にそちらを隠した方が良いのではないか。
「残りは13体と申しましたが、残りの3人が… 恭也様でも勝てる相手かどうか…」
「…… 70番の奴らか」
「はい、左様です。70番の悪魔『ワナイズ・マン』71番『ヲワンダ』────…… そして私と同じく全デモンティアを統括できる権限持つ『ンードゥ・ツーラスト』です」
「エイルと同じだと…!?」
「そして全デモンティアの中でも最強と評される実力者です」
それを聞いていたネゴールはそれに付け足す様に恭也に言う。
「ンードゥは昔っから何考えてるかわからない奴だ。あの前王でも従えていたのではなく、協力関係に置いていたくらいだ」
「なんだと!?… 王の力ですら敵わないのか?」
「あぁ、あいつは本当に強い。全盛期のエイルですら手を焼いた相手だ」
72番。デモンティア最後の数字を持つ悪魔。いずれ相対する時が来るだろう。その時までにもっと強くならなければならない。その為にも前王を倒せる実力がなければ…そう思っている時だった。
皆がビクッと身体を震わせた。そして恭也にもわかった。この殺意はあいつだ。
「行くぞ皆。前王を止めるぞ───」
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人が賑わう街の中心部。そこはカップルがよく集う場所で有名である。真ん中に噴水、その周りを囲う様にベンチがあり、そこを通れる様に東西南北の4方向から道が伸びている。
そんな憩いの場の噴水が突然爆発し、辺り一面を水浸しにした。破片が飛んで何人か怪我を負い、先程までの雰囲気は消え失せ、そこには叫び声が響いていた。
「来るがいい現王。決着をつけようぞ」
──── その数分後、恭也達は現場へと到着した。
既に現場は怪人態となった前王によって、あの綺麗な憩いの場は静寂に包まれ、瓦礫の山と化していた。
瓦礫の山の中には下敷きとなってしまっている一般人もいるようだ。ここまで堕ちてしまったのか。恭也は怒りに満ち溢れた。
「前王ォォォォッ!!!」
「…… 来たか。現王よ」
「お前の目的は我々であったはずだ。なのに、一般人を巻き込むとはどういう事だ!!?」
「お前達がもう少し早く現場へ駆けつけていれば、ただの人間に被害が出ることはなかったのではないか?」
「なん…だとっ…!!」
「私はお前達を消す為であるならなんでもしよう。それが例えなんの関係もない者だったとしてもな!!」
「…… お前だけは許しておくことはできない… 今日がお前の最後だ… 前王ッ!!!」
《エイワン!!》
「来いッ!! 真の王はどちらかその身に教えてくれる!!」
「変身ッ!!!」
《開錠!!》《憑依!!》
《悪魔の名はエイル・ワン!! 1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》
メレフへと変身した恭也は剣を握りしめ、雄叫びを上げながら前王に向かっていく。
今までに感じられなかった威圧感の前に前王は怯むことなく構える。両手を前に出し無数の針を打ち出した。針はメレフに真っ直ぐと向かって来ており、横に大きく回避すればいいだけ、しかし、ここで避けてしまえば隙ができる。前王はそれを予想していた。
だが、メレフは剣を振り回して針を切り落とし、そのまま真っ直ぐに進んできたのだ。
「ば、馬鹿なッ!!?」
「こんな針ごときで俺を止められると思わないほうがいいッ!!」
それは明らかな変化だった。メレフは成長している。
前王は驚いたその隙を狙われ、刃がその身体を捉える。装甲すら傷一つ付けることができなかった剣である筈なのに、斬撃の後がくっきりと現れる。
「なんだとっ…!!? 貴様一体何故これほどまでの力を…!!?」
「俺もわからない… ただ、お前を倒したいという想いが強くなればなるほど、身体から力が溢れてくるのを感じる!!」
すると、段々とデモンドライバーに差し込まれていたエイワンティアイズキーが、あの時と同様に光を帯び始めた。
メレフが前王を押せば押すほど、その光は強さを増していった。
「な、なんだ…? エイルのキーが光を…!!」
その光にメレフも気づいた。この光が溢れる度に身体に力が溢れてくるのを実感できる。
エイワンティアイズキーを引き抜くと、鍵は光を強くし、やがて鍵は2つに分離し、光もそれと同時に消え去る。
「エイル、これは…」
「はい、私も感じます。恭也様のお力を…」
「これなら勝てる。わかるぞ。新しい王の力だってことが!!」
「準備は出来ております!!」
「よし─── 行くぞッ!! エイル!!」
《エイワンプラス!!》
恭也の成長によって生み出された「エイワンプラスティアイズキー」を起動し、ドライバーに差し込む。
「何か… 何かまずい…!! 消えるがいい現王ッ!!」
「ハッ!!」
前王が両手から針を飛ばすと同時に、メレフはドライバーのキーを回す。
《開錠!!》
《憑依!!》《プラスで憑依!!》
怪人態と化したエイルがメレフを後ろから抱き締めると、エイワンのゴツゴツとした頑固な鎧から、シャープな鎧へと変化を遂げ、至る所が鋭利なものとなる。より悪魔の様な仮面へと変化し、ドライバーに記載される絵はエイルがハートを包み込んでいる様に変更される。
《悪魔の名はエイル・ワン!!『プラス!!』1の数字を持ち、プラスされたその力は王を頂点へと導く!!》
《スタンドエイワンプラス!!》
「ふっ…」
仮面ライダーメレフ エイワンプラスへと変身した彼は防御態勢もとらないまま、全ての針をその身で受ける。
「馬鹿めッ!! 直撃だな!!」
「……… 何かしたか?」
「なにっ…!!?」
見た目はシャープなものへと変更されたが、その硬度はエイワンの時と比べても圧倒的であった。今までであるなら、あの前王の攻撃を真正面から受け切ることなど不可能。しかし、このプラス状態はエイワンの鎧に、更に硬度がプラスされたと言ってもいい状態。二重の鎧。全盛期でもない、ただの魂だけの存在となった前王の攻撃が通る事はない。
「ならば、こいつはどうだ?」
そして前王は両手に無のエネルギーを集中させ、それを一気に放出させた。いくら硬い装甲と言えど、この攻撃は防御を無視しできる。避けなければ大ダメージは免れない。
しかし、メレフは避けない。
「何故、何故避けぬッ!!」
「避ける? 何故、回避する必要がある? その必要はない…… 正面から叩き潰すだけだからなッ!!」
そう言うとメレフは拳をエネルギー波に打ち込んだ。普通なら腕が吹っ飛ぶ威力があるはずなのだが、気づいた時には波動はどこかへと消えていた。散っていた。無となった。
「あっ… なっ…!!」
「安心するがいい」
「き、貴様ッ… いつの間にッ!!?」
前王の目の前にメレフは立っていた。先ほどの攻撃で目を奪われていた時に移動して来た様だ。
それからメレフはエイワンティアイズキーのボタンを押して捻る。両腕に力を込め連続で拳を前王にめり込ませる。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!」
「ぐぶぉっ!!?」
拳を当てる度に一撃が更に重くなるのを感じる。1発分の威力のはずが、ここまでの威力を叩き出すのは明らかにおかしいと感じる。
(そうか…!! 1発ではない!! 2発分になっている!! 一度攻撃を当てさえすれば、更にもう1発分の攻撃がプラスしてやってくる!! そうか… これがッ!!)
そして前王を天高く打ち上げ、それと合わせてメレフもジャンプし、飛び蹴りの姿勢を作る。
そのまま前王に向かって、無のエネルギーを纏った必殺の一撃を食らわせ、地面に直撃させると、そこへもう1発、必殺技の威力が重くのしかかる。
メレフは前王から離れ、彼を背にすると、大きな爆発が辺りを揺らした。
「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
《エイワンプラス!! シャットアウト!!》
それから前王の方に向き直ると、彼は怪人態から普通の人間へと姿が戻っていた。全てが終わり、身体が徐々に消えていこうとしていた。
メレフは変身を解き、リーダー格だけではあるが、悪魔達を解放すると彼らは急いで前王の元へと向かう。
前王は先ほどの恐ろしい表情はもう見せず、優しい表情でエイルの頬を撫でる。かつての暖かい手にエイルは目から涙を流す。
「許してくれ… お前たち。私はお前たちになんて事を……」
「何故、何故なのですか… あなたという慈悲深いお方が何故あの様な事を……」
「私にもわからない… 気づいた時にはお前たちに倒されていた…… そしてようやくこの身体は解放されたんだ……」
「一体誰がッ!! 誰が前王様をッ!!!」
悪魔たちが怒りに震えているものの、前王は彼らに告げるのではなく、現王恭也を見つめながら告げる。
「現王よ……お前はこれからより大きな戦いが待っている……」
「大きな戦い…?」
「我々の封印を解いた存在がいる… その者を突き止めるんだ…」
「それは一体誰だ? 俺たちの知らない別の…」
「それはわからない。だが、はっきりと言える事は我々を憎む存在だろう…… この世のものであるが、もっと上の…… 恐ろしい存在である事は確かだ」
「……… わかった。後は俺たちに任せるがいい…… いや、お任せください。先代」
そして前王は再び悪魔たちの方を向き、微笑みながら礼を言う。
「ありがとう… お前たちのおかげでこの人生楽しかったぞ」
「前王様……!! いけません……!!」
「はははっ… 現王を支えてやってくれ。今の主人は彼だ… これから先、強敵と立ち向かっていくにはお前たちの力が必要だ… 頼んだぞ」
「うぅ…… 前王様ぁ……っ!!」
「皆、元気でな… ありがとう……… 後は任せたぞ現王、大神恭也…────────」
彼はそう言い、昔と同じ様な温かな笑みを浮かべ消えていった。
恭也は初めてあったから涙は出なかった。悲しい気持ちはあったが、彼の記憶では恐ろしい王という存在が心に残っていたからだ。
しかし、悲しみの感情よりも強かったのは怒りである。自分が愛する悪魔たちの涙を見て、そしてずっと苦しんでいた前王の悲しみを感じ、今までにない怒りが込み上げて来た。
「お前たち…… 元凶を絶対に見つけ出すぞ。前王の為にもッ!!」
「… はいッ!!!」
新たな敵との戦いを前に彼らは再び、決意する────。
1章終わり!!です!!
次回から新章開幕です!!源次ことプリーストようやくスポット当たります!!よかったね!!
次回
2章エンジェルティア編 第13話「我と悪魔、我と天使」
次回もよろしくお願いします!!