それではどうぞご覧ください。
エンジェルティア。デモンティアと対を成す存在であり、デモンティアが悪魔なら、こちらは謂わば天使と呼ばれる存在だ。
この2つの種は1000年以上も前から争っていた。実力差は互角であり、何年も同じ様に戦っては止め、戦っては止めと、永遠とも呼べる時間の中、ずっと理由がないままに戦い続けた。何故、彼らは戦いをやめないのか。何故、戦いを始めたのか。理由なんて最早ないのかもしれない。彼らは本能的に、ただそういう運命に従っていた。
しかし、その戦いは王の出現により終わりを迎える事となる。
最初からその者は王という訳ではない。ただの1人の人間だ。人間はまず天の使いであるエンジェルティアに交渉をしたが、彼らは聞く耳を持たず人間の言う案を呑まなかった。
逆にデモンティアはその案をすぐに受け入れた。彼女らからしたらあまりに都合が良過ぎるからだった。誇りとかは関係ない。ただその契約に従えばより確実に簡単に欲求を満たせるからだ。
「悪魔と契約する事がどういうことかわかっているの?」
「あぁ、わかっている。それより君たちに暴れられる方が数百倍困る」
「この契約内容、あなた─── 死ぬわよ?」
「それでこの世界を守る事ができるなら本望じゃないか?」
「バカな人間ね。それよりこの鍵なんかに私たちの力が収まるなんて、見ても聞いても信じられない話だわ」
全デモンティアを統括するNo.1の数字を持つ女の悪魔、エイルは人間にそう言った。
王になろうとする人間はその鍵を「プロトティアイズキー」と呼び、彼女たち72体の力を9本に封じ込めた。が、エイルに次ぐ脅威的な圧を放つ1人の悪魔はその10本目に収まる事はなかった。
そして圧倒的な力を持つ彼はこう言う。
「我の力はお前たち人間では扱う事はできない」
「なら、扱える様にするまで」
「できると思っているのか?」
「できなければ君たちと契約なんぞ結ばない」
72番目の悪魔ンードゥに対し、人間は一切動じる事なく笑顔で返してみせた。その姿を見たンードゥは彼を気に入り、おとなしく封印された。
── この一件からデモンティアは世間が思っている様な恐ろしい存在ではなく、共存できる生物へと性格が変わっていった。こうなったのも他ではない先代が彼らとの歩みを始めたからだ。
こうしてエンジェルティアは彼らは最早脅威ではないと悟り、長きに渡った戦いは終わりを告げたのである───。
*****
「─── その後、前王様はお亡くなりになる前に、我々デモンティアは本当の意味で封印されたのです。我々に感情というものを教えてくださったあの方だったとしても、我々の内に眠る欲の暴走を止める事はできませんでした」
「しかし、何故エンジェルティアは今になってデモンティアの事を狙い始めたんだ? 因縁があるとは言え、今の話では既に戦いは終わったはずじゃ……」
「我々が復活し、恭也様というデモンティアの王を迎え入れた事で、エンジェルティアは脅威となると思ったのではないでしょうか」
「… そのついでと言うように積年の恨みを返そうと。天使というものはもう少し慈悲の心があると思っていたぞ…」
恭也はふと疑問に思う。この考え方をするのであれば、先代を復活させたのはエンジェルティアではないと言える。彼らに因縁があるのはわかっているので、ここで争うことは何ら不思議ではないが、先代に関しては復活させたところでメリットはあるのか。もしくは見せしめとして?わからないが、とにかく直接聞いてみる必要が出てきた。
すると、黙って聞いていた源次が口を開く。
「王様よ。今の話を聞いて思うんだが、あいつらの狙いはデモンティアだけって話になるよな?」
「そうなるな」
「そうなるよな…… じゃあそれってつまり俺からしたらチャンスって事になるな」
その言葉を聞いた悪魔たちの表情が変わった。何かする前に恭也が手をあげて静止する。
だが、それに臆する事なく源次は続ける。
「お前考えてもみろよ。俺は国に雇われてお前たち悪魔を倒す為に、正確に言えば金の為に戦ってるんだ。そんなお前らがエンジェルティアとかいうあいつらに絡まれて敵が2ついる状況を作ってる。戦う理由は違えど、あいつらは俺たちデモンハンターと同じ目標がある訳だ」
「…… それでどうする?」
「お前たちに協力する」
「なに?」
「あのジェルエを守っちまったからな。結局もう俺は敵と見做された訳だ。あーあ、大金手に入ると思ったのになー…」
「いいのか?」
「やっちまった事に後悔するより、次にどうすればいいか最善を尽くすのが俺だ。それがお前と協力する事。それに……」
「それに?」
「子供傷つけられてキレるような奴に悪い奴はいないからな」
「感謝する…… だが、本当にいいんだな?」
「くどいぜ。まぁ俺も生活があるから何か有れば俺は俺のやりたい様にする。構わないな?」
「それで構わない」
この言葉が恭也にとってどれだけ心強いことか。だが、同時に不安もあるのは間違いない。源次という人物がどういう男なのか、まだ何もわかっていないからである。
「それじゃあ俺は用事があるんでよ」
「ん? どこに行く?」
「どこってそりゃお前───」
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「─── ありがとうございました〜」
「おほほほほほっ!! んじゃあね、また来るぜッ」
夜の街。人間の欲が最も深くなる時間帯と言ってもいいだろう。女や酒を求める男たちがずらずらと街に溢れ、簡単に金が飛んでいく光景が見られる。
そんな街をフラフラと酒と女で酔って歩く源次の姿があった。
「うぅ…… ヤッベ飲み過ぎた」
この日は少し飲み過ぎたのか、近くにあった公園のベンチに座り、上を向いてぼーっとしていた。
その時、彼を心配そうに、いや、呆れた様子で声を掛ける少年ジェルエがいた。
「源次はいつもこんな生活しているの?」
「悪いか?」
「…… んー、悪くはないと思う」
「おっと意外な答えだ」
「人間はストレスが重なると身体を壊すって聞いたよ」
「わかってるなー… まぁ壊れるのは身体ってより精神面だろうな」
「人間って脆いよね」
「脆いからこそ必死なんだよ。他人に壊されたくないからどんな手段使っても治そうとするんだ。例えばこういう風に俺は飲んだりして忘れようとする」
「何を忘れるの?」
「……… 何を忘れようとしたんだろうな」
これからエンジェルティアとの戦いが始まる。デモンハンターとして戦っていた源次だが、既にデモンティアは恭也によって封印され、残り2体となっていた。街への被害はない。もう彼にやる事はないのだ。
そう思っていたのだが、つい先日、組織から改めて命令が下された───。
*****
「は? それはまた急な…」
「当たり前だろう。脅威な事に変わらない」
恭也と協力する形を取った後、彼は変わらず夜の街で遊び呆けていた。
そして先日、デモンハンターのリーダーから招集がかかり、こんな事を言われた。
「王のメレフを倒す。これはわかったが、今の俺にあいつを止められるだけの力はないぞ」
「ほう? 誰よりも優れていると言っておきながら倒せないと? お前報告が来ないと思ったら、悪魔は殆どが封印され、おまけに王に負け続けていたとはな」
「仕方ねーだろ。あっちは72体の力を使えるんだぜ? 対して俺は1人。力の差は元々わかりきってたんだよ」
「言い訳するな。お前には確かに才能がある。それは認める。が、お前は碌に訓練はせず、遊んでばかりいて、それで力の差で負けましただと? なら、技術を磨け。それしか勝つ方法なんてないだろう?」
これがど正論である為、源次は軽口を叩けずに黙ってしまう。
しかし、やはり源次がずっと黙るという事はなかった。すぐに反撃に出た。
「技術磨いた所で勝てねーんだよ」
「なに?」
「悪魔たちにならその技術でなんとかなったんだろうよ。だがな、本命は王だ。その王が悪魔だけでなく、自分自身を強化したんだ。その形態に俺は手も足も出なかった。俺の攻撃は全て弾かれ、逆に相手の攻撃は俺にめちゃくちゃ当たった。そんな奴に技術どうこうで何とかなると? はっ! まずは戦ってから言うんだな!!」
「…… お前は戦ったのか?」
「え?」
「お前はそいつと全力で戦ったんだよな?」
「全力で……」
その言葉に、源次は思わず口が閉じる。
「全力で戦って負けて悔しい。誰だってそう思うだろう。どんな競技だとしても、自分の力を出し切って挑み、あと一歩の差で負けたとなれば、老若男女誰だろうと悔しい気持ちが溢れてくる筈だ。なのにお前は負けたからと言い訳ばかりで、自分の悪い点を1つも言ったことがない」
「そ、それは…」
「それはなんだ? また言い訳か? 他人を貶すようなら、まず自分を見直してみるんだな!! 源次、お前は優れた人間なんかじゃない!! 自分の立場をもっと理解しろ!!」
「…… わかってるよ… んなこと」
源次はそれ以降何も言わず、静かにその場を後にした────。
*****
メレフを倒すという前と変わらない命令の筈なのに、今はどうしてか心が重い。メレフの本当の姿を知ったからではない。リーダーに言われた言葉が思わぬほど刺さった。
「…… くそっ」
「…っ! 源次!!」
「なんだよ」
「エンジェルティアが来たッ!!」
「なんだって…!? どこだ!?」
「えっと…… え? ここ───」
ジェルエが場所を言おうとした時、空から天使が舞い降りてきた。
ヒイテンではないのはすぐにわかった。何故ならこの天使は女の天使だったからである。
「ひゅー… これはまた美人な天使さんがやってきたな」
「我が名は『ホウリー・ミイテン』。お前と話をしにきた」
「ジェルエは渡さねーぞ。どうしてもってんなら…… なに?」
「我々に協力しろ。深尾源次」
「こいつは一体どういう風の吹き回しだ?」
「私が聞いている。質問の答えは『はい』か『いいえ』のみとする」
「いやだから待て────」
源次が理由を聞こうとすると、光弾が足下に飛んできた。
「…っ!!?」
「『はい』か『いいえ』か」
「ま、待てッ!! 理由を聞かせろ!! 理由もなしにハイハイと答えられる訳ないだろ!!?」
「…… それもそうだな。いいだろう。話してやる」
その理由を聞いた源次はこう答える────。
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恭也は71番目の悪魔ヲワンダを封印した。
この悪魔はとても無口であり、ゼフォーが喋る方であるとよくわかる。何を聞いても黙っており、上司であろうワナイズが何か質問しても首ぐらいしか動かさない。ワナイズはそれを見て何を考えているかわかってしまうらしいが、恭也にはそれがなんなのかまるで理解ができない。
「ふぉふぉふぉ、言っただろう? わしが来いと言ったら来ると」
「あぁ、それは助かるが…… あともう1人は?」
「お前さんもわかっての通り、わしでは動かせんよ。力が違い過ぎる」
ンードゥという最後の数字を持ち、エイルと同じ権限がある大きな存在。まだ姿形や声すらも聞いたことがない謎の悪魔。その強さは今の恭也では使いこなす事はできないらしい。
そんな最後の1人について考えていると、家の外から風を切る音が聞こえた。
「お前は───!!」
「『ホウリー・フウテン』。それが俺の名だ。こちらに来てもらうぞ」
──── フウテンに連れられてやってきたのは森の中だった。人気がないのはまず間違いないが、他に動物の気配すらもしない。あまりにも静かで不気味だった。
「さぁ、早速殺し合いだ」
「1つ聞かせろ。お前たちがデモンティアの王、俺の先代を生き返らせたのか?」
「なんの話だ?」
「それはとぼけているのか?」
「聞きたければ力ずくで聞き出せ!!」
恭也はフウテンの攻撃を避けながらデモンドライバーを装着し、エイワンティアズキーを差し込んで変身する。
《悪魔の名はエイル・ワン!!1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》
「お前たちの因縁なんぞ知らん。だが、俺の部下を傷つける奴は誰であろうと容赦はしない!!」
「俺もそうだ。私の仲間を傷つけたお前たちを容赦しない!!」
再び、デモンティアとエンジェルティアの戦いが始まる────。
話スギィ!!次回バトります。ようやく。
今更なんですがキーを捻った時の音声「解錠」ではなく「開錠」だった事に気づいて途中から開ける方にしてます。ずっとやってなかったから作者自身ド忘れしてるという……ぷももえんぐえ(崩壊
次回、第16解「我の脅威、我と対峙」
次回もよろしくお願いします!!