それではどうぞご覧ください。
「あのゾンビルはお前が造り出したんだな」
「その通りだ。あの程度でくたばる様では我の力を扱うなど夢のまた夢に等しい」
「…… 俺を呼び出した理由は? 敢えてエイルに気付かせる為に気配を強めたのだろう?」
「そうだ。用というのは───」
「恭也様ァァァァァァ!!! どちらにいらっしゃいますかぁぁぁぁぁぁぁ!!! 私がついておりますご安心くださいッッッ!!!」
ンードゥが恭也に話をしようとした瞬間、エイルが彼を探し雄叫びを上げている。とてもありがたい事なのだが、正直今はやめてほしい。
「…… あ、ンードゥ。明かりが欲しいんだが…」
「光はあまり好かないのだが… やむを得ん」
すると、一瞬にして辺りに光が灯る。どうやらそこは書斎の様で周りには本棚がズラリとあり、その中心にンードゥが椅子に腰掛けていた。
エイルは恭也を発見するや否や飛び掛かって来て、その勢いに思わず倒れてしまう。
「ご無事でしたか恭也様!!?」
「無事だ。だから離れてくれ…… 奴と話をしたい」
「奴…?」
恭也が指差す方向にはンードゥがいた。エイルは無言で立ち上がり、目をキッとさせて腕を組む。
「久しぶりね、ンードゥ」
「久しいなエイル。我の見ない間に…… どうなっている?」
あのンードゥすら困惑しているようだ。前王の時とはまた違うのだろうか。
「それより恭也様を呼び出して何のつもりかしら? まさか大人しく封印されるつもりではないでしょう」
「当たり前だ。別の件でお前たちをここに呼んだ」
「それは?」
「王の覚醒が近いことについてだ」
その言葉にエイルの顔が青ざめた。やはりその件について触れられるのは都合が悪いらしい。
恭也は立ち上がりエイルの横に着いて、代わりに話を進める。
「皆もわかっているんだろう? 俺の力が既に何割増しになっているかを…… ンードゥ。俺の力は今どれ程なんだ?」
「7割だ。お前の力は既に7割を越えようとしている」
この短い時間の中で既にそこまで喰われているようだ。身体に異常がない分、実感が湧きにくいが、着実に恭也の生命は終わりに近づいている。
「俺は…… 死ぬのか?」
「死ぬ」
「そうか。聞かない様にしていたが、やはりそうなる運命か……」
恭也はエイルの方を見ると、俯いて身体を震わせているエイルが見えた。そんな彼女に何も言わずに自分の方へと寄せる。
「恭也様…?」
「安心しろ。恐怖はない。お前を恨むつもりもない。俺は使命を全うするだけだからな」
それから恭也はンードゥに聞く。
「あるんだろう? 助かる方法が」
「ほう…」
「俺をここに呼び出したのは、俺の王としての覚悟を見る為。その覚悟を見たお前は次に何をする?」
「王よ、お前に試練を与える」
「それは?」
「我の力を使いこなせ。それが死を回避する方法だ────」
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ンードゥは言う。先代も最後まで自分の力を使う事は容易ではなかった。だから死んでしまった。真にデモンティアの力を全て扱えれば、魂を喰らわれることなく、デモンティアの力をより強く、より優れた使い方ができる様になると。
メレフの全身に施された錠前の様なアーマー。これを解き放つ事によって先代すら辿り着けなかった真なるメレフになるという。
今のデモンドライバーは最初に先代が造り出し、それをエイルとンードゥの力によって完成するに至った。模造品のプレイドライバーとの違いはここだった。
悪魔の力を宿し、悪魔の力を使えるドライバーとそのキー。この2つを本当の意味で扱えるものこそ、デモンティアの王と呼べる存在なのだ。
「はぁ……」
「恭也様…?」
「すまない。全身の力が抜けてつい…」
あれからンードゥと話が終わり、彼はあそこに留まり、恭也たちは自宅へと帰還した。
ンードゥは「次の力を解放した時、お前の元へと姿を現そう」と言い、館から動こうとはしなかった。
「今まで言わなかったが… 正直俺はどうすればいいかわからない」
「………」
「ここ何ヶ月か王として皆の為に戦ってきたが、お前達の力を使いこなせているとは思えない。これから先、本当にンードゥの力も使えるか…… 自信がない」
「大丈夫です」
「エイル…」
「恭也様ならきっと使いこなす事ができます。我々は王が望むなら何でもします。どうか、生きてください」
「…… ふっ、ありがとう。そう言ってもらえると助かる」
その時、ドアを叩く音が聞こえた。母かと思ったがそうではなかった。
「源次……」
恭也は察した。源次の表情はあの敵対していた時と同じ顔なのだ。
「… 場所は?」
「用意してくれたよ… 広いところをな」
「用意してくれた…?」
「まぁいい。さっさと行くぞ」
源次に連れられ、その場所へと向かう────?
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その場所はよくスポーツ選手達が使う競技場であった。そこに人はいない。それどころかここに目指す最中も人の気配はしなかった。
恭也と源次はその真ん中に向き合って立っている。
「デモンハンター… の仲間がやったわけではなさそうだな」
「あぁ、あいつらは関係ねーよ」
「…… ジェルエはどうした?」
「んな事はいいんだよ。わかってんだろ? 今からやるのは戦いだ」
「待て、お前まさかっ…!!」
源次がプレイドライバーを腰に巻きつけると、上空から天使が7人翼を広げ舞い降りてきた。
その瞬間、恭也もデモンドライバーを腰に巻き付け、キーを構える。
「エンジェルティアと契約したのか!?」
「そーだよ。悪いか?」
「そいつらは……!!」
「何かしたのか?」
「なに?」
「こいつらは一般人に対して何もしてないだろう? しても精々そこら辺の地面抉ったくらいだ。直接何かしたわけでもない」
「それは…」
「エンジェルティアの目的はただ1つ。お前たちデモンティアを滅ぼす事。で、俺の仕事はデモンハンターでお前たちを倒す事。行き着く場所は同じだ。だから協力し合う話になったわけだ」
「………」
「何も言えないよな? どちらもお互いの存亡を懸けてんだ。やらなきゃどちらかが終わるのみ。生きる残るのはデモンティアか、それともエンジェルティアか。決めようぜ王様よ」
《プリースト!!》
「やるしかないのなら…!!」
《エイワンプラス!!》
「「変身ッッ!!!」」
2人はキーを差し込んで捻り、仮面ライダーへと変身する。その際、プリーストの方はメレフ同様にエンジェルティア達がその身に入り込んだ。
見た目は通常のプリーストではあるが、その中身は得体の知れない不気味さを醸し出している。
「今のうちに懺悔しな… 俺と戦う事になッ!!」
「後悔するのは貴様だッ!!」
スタンドエイワンプラスに変身しているメレフは、前に戦った事を思い出し、そのまま防御もせずに突っ込んだ。
プリーストはそれに対して冷静に杖を向ける。
「ヒイテン…」
そう言うと杖の先から光弾を作り出すと同時に炎を纏わせ始めた。プリーストは光を扱うライダーであり、本来ならばこれは絶対にあり得ない事なのだ。
「それがどうした!!」
「先に言っておく。避けろ─── 燃えるぞ」
杖の先から炎を纏った光弾が発射され、それをメレフは力一杯に切り裂こうとするが、光弾に当たると剣が押し戻される。
そうなれば防ぎようがない。メレフはまともに喰らってしまう。
「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!」
光弾に当たって吹き飛ばされたメレフだったが、すぐに体勢を立て直す。
だが、その威力に思わず膝をついてしまう。
たった一撃のはずであり、エイワンプラスの装甲を持ってしても防ぐ事ができない。明らかに今までのプリーストとは違う。
「こんなものかよ王様ッ!!」
「これだけなわけがないだろうッ!!」
メレフは素早く移動しながら、剣にエイワンプラスティアイズキーを差し込んで捻り、無のエネルギーを増大させる。
「ハァッ!!」
剣を薙ぎ払うと、無の刃が空を斬ってプリーストの元へと向かっていく。
それに対してプリーストは避ける事なく、地面に杖をトンッと突く。そこから霧状の闇が溢れ出してその無を呑み込み、闇はメレフの前に現れ、先程飛ばした斬撃がメレフへと帰ってきた。
「なんだとっ…… がはっ!!!」
あれだけ力の差を見せつけたエイワンプラスの力が、今のプリーストにはまるで通じなかった。
メレフの装甲を破るほどの火力、無を呑む闇。属性の力もメレフのそれとは比較にならないほど圧倒的。それに属性も切り替える事なく、プリーストの状態で全て使う事ができる。属性を変更したところで、瞬時に不利属性に変更されてしまうだろう。
「どうだ恭也。これが俺の新たな力ってやつだ」
「…… 何故、契約を……」
「さっきも言っただろう? 目的が一致したからだよ。それ以外に理由なんてねーよ」
「そいつらは子供を殺そうとしたんだぞ」
「それだけだろ? それに仲間内だ。種族での価値観の違い…… 仕方ねー事だったって思えば……」
「貴様ッ!!」
メレフはプリーストの肩を掴む。
「…… ジェルエは天使であって天使じゃなかった」
「なに?」
「替えの利く人形だって言えばわかるか? 奴はそれだったんだよ」
「だからと言って…… 彼も生きていた筈だッ!! なのに!!」
「なのになんだ!? 辛そうだからエンジェルティアを殺すのか!?」
「違う!! 俺は…!!」
「こいつらにも生きる理由はある!! じゃなきゃジェルエは…!!」
「源次…?」
そしてプリーストはメレフの腹部に杖を当て、炎の光弾を炸裂させる。
近距離での爆発を受け、メレフの装甲にヒビが入り、後方へと大きく吹き飛ばされた。
「かっ…はぁっ……!!」
「何度も言わせんなよ。俺は… やらなきゃいけねーんだッ!!!」
それからプリーストはメレフが立ち上がると同時に脚を土で固めて動けなくし、周囲に火・水・風・雷・土・光・闇の全属性のエネルギーの塊を召喚する。
「くたばれぇ!! メレフゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
メレフはドライバーのエイワンプラスティアイズキーのボタンは押して捻り、剣に全エネルギーを集中させてその攻撃を受け止めようとする。
全属性による隕石のような波状攻撃に、やがてメレフの装甲は砕け、攻撃が止む頃には変身が解けてしまっていた。
あのまま受けていたら間違いなく死んでいた。だが、全力で受けたとしても身体はもうボロボロであり、次の攻撃に備える体力は残ってはいない。
「くっ……そっ…!!」
「よく生きてられるな…流石だぜ」
「源次… お前は……」
「わかってくれ… あいつの為なんだ」
そう言って杖を恭也へと向け、エネルギーを溜め始める。
「……… くっ!!」
プリーストが目を瞑り光弾を発射しようとした、その時だった。
「な、なんだ…!!」
恭也の持つエイワンティアイズキーが前と同じように輝き出したのだ。プラスの時とは違う。更に強い光が辺りを包む。
「これはまさか!」
「恭也様!」
「あぁ、わかる… これなら戦える!!」
そして恭也はその光により体力が回復したのか立ち上がり、鍵を構えて起動する。
《アドバンスエイワン!!》
「変身ッ!!!」
《更に開錠!!》《更に憑依!!》
その新たな鍵「アドバンスエイワンティアイズキー」をドライバーに差し込み捻ると、エイワンプラスの時とは違い、シャープさはなくなり、より重厚感のある装甲へと変化する。頭部にはエイルの様な角が生え、悪魔のような、それでいて王と呼べる見た目に変貌を遂げる。
《悪魔の名はエイル・ワン!!1の数字を持ち、その力は王に更なる力を与え、更に魂の限界を超える!! 更に言おう!! 既に超えた!!》
「ふんっ!!」
メレフが手を払うとプリーストは思わず吹き飛ばされる。
「なっ、なんだよこれ…!?」
「お前のことはよくわかった。任せるがいい」
それからメレフは構えた。
「この力があればエンジェルティアを止められる」
仮面ライダーメレフ スタンドアドバンスエイワン。
解放された75%の王の力が猛威を振るう────。
いきなりの新フォームです!!
75%解放されたその実力は…。
次回、第18解「我は進化、我の命」
次回もよろしくお願いします!!