仮面ライダーメレフ   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰しております。悶絶小説調教師の辰ノ命と申します。

今回、調教する小説は「仮面ライダーメレフ」

72体の悪魔が織りなす闇の戦い。
普通の青年だった主人公は王としての宿命を背負いどのように成長するのでしょう。

皆さんは私の小説に耐えきる事ができるでしょうか?
新たなライダーが歴史にその名を刻む瞬間を、それではどうぞご覧ください


72の悪魔編
第1解「我は王、我にエールを」


 ─── それは満月の夜の事である。

 月の光が木々が生い茂る、とある遺跡を照らし、またその遺跡に侵入するものも照らしていた。

 遺跡は誰も入る事を許されず、周辺にも立ち寄っては行けないと昔から言われていた。言われているというのは、伝説の話、この話が御伽噺の世界であるから誰も信じない。ましてや信じるものなど殆どいる訳がない。

 別に規制されている訳でもないので、こうして悪戯に誰かが立ち入る事はあったが、今回の客人はどうやら違うらしい。

 

 

「………」

 

 

 光は遺跡の中まで入ることはないので、その侵入者は持っていた松明に火をつけて、中に入ると近くにある階段を使って地下へと入り込む。

 当然、中は真っ暗であり、足元も何も見えない地下へ行く事は中々勇気のある事だろう。

 ここまでが普通に行ける場所だ。問題は地下に行っても何もないと言うこと。行き止まりなのだ。

 

 

「………」

 

 

 そして侵入者は何もない壁に手を触れると、そこから壁を這う様に光が流れ、ゴゴゴゴゴッという音を鳴らしながら壁が左右二つに分かれた。

 何の手品を使ったのかは不明だが、その侵入者は臆することなく中へと歩み、更に奥へと進んで行く。

 最奥に出ると、そこは広い空間で当然真っ暗な場所である。

 松明の光だけが頼りであるはずなのに、侵入者はそれを突然捨てて、目の前にある「鍵」の付いた本を掴む。

「鍵」が付いている。こう聞くと普通に聞こえるだろうが、実際は鍵が刺さっていると言った方が適切なのかもしれない。

 無用心にもその本の鍵穴に「鍵」が刺さったままなのだ。

 

 

「───…… 時は満ちた」

 

 

 侵入者は鍵を掴むと、その手に力を込め、バチバチと電気を走らせながらも引き抜いた。

 すると、箱だけではなく遺跡全体が揺れ始めたかと思うと、本の中からこの世のものではない別の何かが溢れ出た。

 解き放たれた者たちのその姿を一言で表現するなら「悪魔」。

 侵入者はその光景を目にし、そこで1人微笑む────。

 

 

 ─── これは全ての悪魔を封印し、悪魔の王となる為の物語───。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 あぁ、何てつまらないんだろうか。つまらな過ぎて退屈だ。

 そう似ている言葉を何度も繋ぎながら賑わう街をトボトボと1人歩く男がいた。見るからに冴えないボサボサ髪と黒いコートを身に纏って、明らかに目立つ事を嫌っている。そもそも目立とうなんて考えたこともないだろう。

 彼は大神 恭也(おおがみ きょうや)というごく一般的な高校生だった。過去形なのはもちろん彼はもう高校生ではないからだ。卒業し、既に新社会人としての歩みを始めているだろうこの時期に職に着けていない。

 それもその筈だ。先程言った通りの見た目が反映された性格をしている。要は得意な事が一つもない。本当の意味で何もできない落ちこぼれなのだ。

 

 

「はぁ… また落ちた…」

 

 

 これでもう何社目だろうかと思うと、すぐに考えるのをやめた。思い出したくもない数字を叩き出すからだ。

 恭也自身もこんな自分が嫌いであり、変わりたいと心底願っていたが、そんな想いは到底叶うはずが無いと思っていた。

 夢は幻で、妄想に留めておいた方が自分の為だと考えている人間だった。

 

 

「…… さっさと帰ろ」

 

 

 それから恭也はため息を吐いて自宅へと帰る───。

 

 ─── 住宅街にある2階建ての家。そこが恭家の住む家だ。

 自宅へ帰るとまず手を洗い、うがいをし、風呂に入り、飯を食う。

 恭也はそんな日常を毎日続けていた。彼は実家暮らしであり、一人っ子で両親と共に暮らしている。

 父はまだ帰ってきてはいない様だ。母が夕飯の支度をしてテーブルに並べていた。

 そこへ恭也は静かに着席をし、飯が並べられるのを待つ。

 

 

「今日はどうだった?… まぁいいのよ。いつかは何とかできる筈だから」

 

 

 また恭也の表情から察してくれた。母は毎回同じ事を言ってくれる。何度も待ってくれた。

 そんな母や父に対して、恭也は何もできない。何もしてあげられない。辛くて苦しくて仕方なかった。

 

 

「… ごめん。また落ちたよ。どうしても人と話す時、色々思い浮かぶんだ。なんて言えば面接官は自分をよく見てくれるんだろう。もう自分の事なんて落とすつもりなんだろうかとか… 毎回だよ。毎回の同じ様に思い浮かんじゃうんだ。俺… 本当にダメな人間だ… こんなんじゃ受かる筈もないって分かりきってる筈なのに…」

 

 

 恭也はそう言うが、母はいつも通りニコッと笑って慰めてくれる。

 

 

「私の息子がダメな人間なら、その子を産んだ私もダメな人間になるわ」

 

「… 母さん」

 

「とにかくあなたは今が頑張り時よ。まだ19歳なんだからきっと見つかる。私はそう信じてるわ。だって私の息子なんだもの」

 

「…… ありがとう。母さん」

 

 

 だから、ごめんと言いたい。何もできない息子でごめんねと。

 父も帰ってきて家族揃って暖かい夕食を済ませたが、恭也の胸は晴れないままだった────。

 

 そしていつもなら寝てる時間帯である23時頃、恭也は目が冴えて眠れないでいた。

 明日も早く起きて就職先を決めないと行けないのに、一体自分は何も思って起きているのだろうか。

 

 

「うーん…」

 

 

 もういっその事と、恭也はいつも通りの黒いコート羽織って着替えを済ませて外へと出る。

 外は暗く、街灯の光があるだけの道をトボトボと歩く。どうせ今から街の方へと出向いたところで閉まっているだろうから結局行くところもない。

 少し散歩でもしていようとそんな道をただひたすら何も考えずに歩く。

 

 

「ふぅ」

 

 

 夜の冷たい風が心地いい。気分も大体落ち着いてきた。

 そろそろ0時になるから家に帰らないといけない。0時頃は何となく不吉な予感がするからだ。それにお化けが怖いというのも本音。

 家の鍵だけを持っただけだから取るものも何もないだろうけれど、こんな時間に襲われても誰も助けには来ないだろう。

 なので、家に帰ろうと足早に帰路をつこうとしていた。

 

 

「… ん?」

 

 

 すると、恭也の目の前に何かが落ちて来た。それは一冊の本で、この時間とその場所に落ちてきたのが何より不自然で恐ろしい。

 恭也はそれを無視してさっさと逃げようと思ったが、再び本が目の前に落ちてくる。

 もう怖くて怖くて仕方のない恭也は普段は絶対にやらないであろう全力疾走で家までの道を走った。

 だが、やはりこの本は自分をピンポイントで捉えており、必ず目の前に落ちてくるのだ。

 次第に恭也はこの本を取らなければ死んでしまうのではないかと思い始め、意を決してその本を恐る恐る手に取った。

 

 

「い、いったい何なんだよ…!」

 

 

 その本はまるで人の名前を書いたらその人物が死んでしまう本と似ている。

 だったら目の前に死神でも現れるかと、冗談混じりにそんな事を思って顔を上げる。

 ちょうど時計が0時を刺した頃、目の前には白い服を着た女性で、コスプレでは決してないだろう角と尾と牙を持ち、こちらを見て微笑んでいた。

 あぁ、そうか。自分はここで死ぬかと、そこで恭也の記憶はプツリと切れた。

 

 今宵も満月。月がとても綺麗だ────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 恭也は自室のベッドの上で目覚めた。

 そうか。昨日の事は夢だったのだろう。服装も部屋着に変わっており、昨日出会った悪魔の様な女性、そもそも実際は出かけていないのだから会うわけもない。

 ここまでのことは全て夢の中での出来事だと自分に言い聞かせていた。

 

 

「…… 時間も10時くらいか… 寝過ぎたな…」

 

 

 久しぶりにぐっすり眠れた気がする。ここの所ずっと職探しで忙しかった。

 こんなにやっているのに何故受からないのかなと自分でも思うし、そんな無能な自分が腹立たしい。何がぐっすり眠った疲れただ。お前は何もしていない。

 

 

「畜生…」

 

 

 それから服を着替えてから下の階に行くと、いつも通り父と母、そして昨日見た白い服を着た悪魔の様な女性がいた。

 どうやらもう昼食を用意している様なので、恭也は椅子に座り家族揃ってテーブルを囲んで飯を食べ始める。

 

 

「…… ん?」

 

「あら? どうしたの?」

 

「いやいやいやいやいやいやいや待て」

 

 

 明らかにおかしいだろう。何がいつもの日常だ。あんた誰だ。このいかにも人間と違う女性がいるのに両親は何故普通なのか。

 その女性は恭也に気づくと目を輝かせ、頬を赤らめて嬉しそうに喋り出す。

 

 

「どうかされましたか恭也様? お身体の具合が… はっ! もしや昨日倒れた時にお怪我を!? 私はなんて事を…!!」

 

「あ、いや…… 待てっ!! そもそもあんた誰だ!? それに何で母さんも父さんも普通にしてんだよ!? 俺にしか見えないわけじゃないよな!? 昨日拾った本手にしないと見えないとかあるの!!?」

 

 

 混乱する恭也に父は「落ち着け」と一言だけ言った。

 いや、説明してくれ。落ち着くから今すぐに説明してくれ。

 

 

「… 実はお前は王の血を引く後継者だ」

 

「………… は?」

 

「俺と母さんは代々から年に一度、デモンティア達の封印を強める為に儀式を行っていた。結婚する事も必然ではあったが、俺は母さんが好きだ。そこは間違えるな」

 

「あ、うん。それはわかった。だけど、デモンティア…? 儀式…? 父さんは何を言ってるんだ…?」

 

「デモンティアはこの世の俗に言う悪魔だ。彼らは欲のまま、本能の向くままに生き、人間達の魂を願いと引き換えに食らう恐ろしい存在だった… だから、俺たちの先祖は悪魔達を使役する謂わば王となり、鍵に封印し、その力を使ってデモンティアを全て封印する事に成功した」

 

「…… で? そのーデモンティアって悪魔達は今はどうなってるの? 明らかにこの女の人がそれっぽいんだけど……」

 

 

 恭也がチラリと例の彼女を見るとうっとりとした表情を見せ、ずいっと近づいてきた。軽くホラーである。

 

 

「お呼びでしょうか!?」

 

「お、お呼びではないけど、君は一体誰なの…?」

 

「はい! 私はデモンティアナンバー1、全てのデモンティアの統括を任されている『エイル・ワン』でございます。王を愛し、何より恭也様を愛する者です!」

 

「は、はぁ……? なんかよくわからないけど… 俺が王の血を引くなら君は俺の……」

 

「下僕でございます!!」

 

「下僕!?」

 

「はい! あなた様の様な御人は私の様なものと対等であろう筈がありません! 私は王である恭也様に全てを捧ぐ者でございます!」

 

「あーいや、どうも… えっとその、エイルはそれでいいの?」

 

「あぁ…!! 今私の名前を…!!…… はい? それでいいとはどういう…?」

 

「だから纏めると先代が元々エイル達を使役していたのに、俺みたいなダメ人間なんかで釣り合いが取れるわけないでしょ? それに俺、そのー王の血を引いててもこんなだし……」

 

「…… 私は恭也様に一目惚れをしたんです」

 

「うん?」

 

「何度挫けそうになっても前に進み続けるあなた様の意思が私にははっきり伝わっております。まさに王たるその姿を見て恋を… 恭也様に愛を…… ふふっ、ふふふふふふふふっ」

 

「ちょ、怖いんだけどぉ!!?」

 

 

 ──── なんやかんやありエイルや両親から色々と話しを聞きある程度は整理することができた。

 父と母はそういう一族の中に生まれ、先代の封印した悪魔達が再び封印解き暴れぬように、代々から受け継がれた儀式を年に一度行っている。

 今、エイルという悪魔、デモンティアが現れたのはその封印が解かれてしまったからだと言う事。

 そして王の血を継ぐ父でも復活した悪魔を止める力がない為、諦めかけていたが、どうやら恭也がその血が1番濃く、悪魔を使役するに相応しい力を持っていると言う事だ。

 それからエイルという悪魔は自らが選んで、昔からずっと王の側近として共に戦っていたようだ。

 

 

「……… えっと、つまりエイルさん」

 

「そんな畏まらず!」

 

「いやさ… つまりはデモンティアって悪魔がまた蘇ったのなら今街中でパニックになってるんじゃないの? 魂を食べるんでしょ?」

 

「… いくらデモンティアが本能のままにと言えど、奴らも自分たちが復活したということは再び封印される事を察しているかと。奴らは今、欲の深い人間を見つけ、その魂を喰らう為に街中に潜んでいると思います… 慎重になっていると言った方が正しいかもしれません」

 

「んー…… じゃあこれから俺が悪魔を封印しなきゃいけないのか……」

 

「…? 何か気に障りましたか…?」

 

「いやぁ… 俺、未だに仕事に就けてないし、これ以上親の迷惑になるのは嫌なんだ。それに俺みたいなのが悪魔を封印なんて… 今も全部聞いて信じられないけど、それが本当ならそんな大それた事できる筈ないよ…」

 

「恭也様……─────!!」

 

 

 すると、突然エイルは何かを察知し、窓から街の方を見る。

 そして恭也の元に戻り、デモンティアが現れた事を彼に告げた。

 

 

「デモンティアが出た…?」

 

「はい。街の何処かまでは私の力不足で察知する事はできませんが、もう少し近づければ特定できます」

 

「…… わかった。行こう」

 

「…っ恭也様!」

 

「とにかくまず見てみるよ。実際に見ないとわからないから」

 

「流石です恭也様!… では、この本をお持ちください」

 

「あ… これって昨日の夜見つけた…」

 

「あなた様の為の… 王の力です」

 

「… よし、わかった。案内してエイル」

 

「承知致しました」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

「はぁ…」

 

 

 1人のサラリーマンの男性がビジネスバッグを持って大勢の人で賑わう街中を歩いていた。酷く疲れているようで何度もため息を吐き、俯いて悲しそうな表情でバッグを見つめる。

 

 

(あぁ… やっぱり今日も俺の企画はダメ出しと説教のダブルパンチ…… 上司が俺にかける言葉は精々「次はもっとマシな物を考えてこい!」だ。はぁ… 何でこんな仕事についたんだろ。俺って一体何のために生きてんの……)

 

 

 サラリーマンは今の自分が嫌で嫌で仕方がなかった。こんな人生クソ喰らえと周りにある物全てに怒りが湧いている。

 そんな彼にどこからか囁き声が聞こえてきた。

 

 

「… ん? 誰だ…?」

 

「俺だよ俺」

 

「俺って…?」

 

「ほら… 目の前」

 

「目の前って…… うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

 

 目の前と言われて向いた先には明らかにこの世のものとは思えない怪物がいた。怪物というよりもその姿形は皆がよく想像する悪魔を具現化したような、誰しもが悪魔とわかる見た目をしている。

 サラリーマンは思わず尻餅をつき、手を使って何とか後ろに下がる。

 

 

「お、おま、え、ええええ… 誰だよ!?」

 

「おいおい… 周りを見てみろ。俺が見えてんのはお前だけだ。変な行動をすると目立っちまうぞ」

 

「え…?」

 

 

 サラリーマンが周りを見ると、悪魔の言う通り周りの人間は彼を憐れむような表情で見てその横を通り過ぎているだけで、悪魔自体は全く見えていないという風に素通りしていく。

 

 

「…… お、俺に何を求めてる…」

 

「何って? 決まってるだろう。願いだ」

 

「願い?」

 

「お前の望むことを俺が叶えてやる。もちろん叶えてもいいが、タダじゃない。仮にも悪魔だからな。それなりの代償ってのはある」

 

「代償…? それは何だ?」

 

「少しばかり俺の言う事聞いてもらう。なーに心配するなよ。願いを叶えられれば俺は長生きできる。お前は願いが叶って喜べる。まさにウィンウィンの関係って奴だ」

 

「…… 信じられるわけ…」

 

「なら、いいんだぜ? また会社に戻って地獄を見ても」

 

「…っ! なぜそれを!?」

 

「どうする? 俺はこの世界で生きていく為には、できる限り多くの人間の願いを叶えなきゃいけない。だからお前の元を離れると次は確実に会うという保証がない。今、ここで決断できればそれでいいんだがな」

 

「願いを……」

 

 

 この話が実にうま過ぎる話だという事はこのサラリーマンも重々承知している。

 だが、彼の心はもう揺らぎ始めていた。もうこんな馬鹿みたいに過ごさなくていいのならと考えてしまうと、この悪魔が言う言葉を信じてみる気になってしまうのだ。

 だから彼は言ってしまった────。

 

 

「俺を…」

 

「ん?」

 

「俺を誰にも負けない、誰にも指図されない。この世の理不尽を否定できる存在にしてくれ」

 

 

 そして悪魔は願いを聞きニヤリを笑う。

 

 

「─── 契約成立だ」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 ─── 街中のとあるビルが爆発し、辺りは人の悲鳴とサイレンの音でいっぱいだった。

 恭也とエイルは彼女が感じ取ったという悪魔の気配を辿り、このビルへと到着した。今でもここから悪魔の気配を感じ取れるというエイルに恭也は息を呑む。

 

 

「そうか… ここにデモンティアの1人がいるんだな」

 

「はい、間違いありません」

 

「…… 俺にできるのかな…」

 

「恭也様ならやれます。私はそう信じてます」

 

「エイル… わかった。何とか警察を掻い潜っていけないかな?」

 

「お任せください!」

 

「ん?───」

 

 

 それからエイルは恭也を抱えて隠していた翼を広げて空へと舞う。

 恭也は背中に柔らかい何かを感じながら、ビルが爆発した場所へと降り立った。

 

 

「… 助かったよエイル」

 

「いえいえ… ん? どうされましたか? そんなに前傾姿勢に…… ま、まさか抱えた時に腹部を痛めましたか!?」

 

「いや違うんだ… 気にしないで…… というか暫く近くに来ないで、お願い。これバレたら人として最低だから、いや、引かれる。いくら君でも引かれる… うん」

 

「…?」

 

 

 暫くして収まりがつくと、恭也はエイルの言う気配のする方向へと歩いていく。段々と空気が重苦しくなってくるのがふつふつと伝わる。

 この先に悪魔がいるんだと思うと、心臓の鼓動が速くなり、その度に深呼吸をして自分を落ち着かせた。

 

 

「… そちらの部屋におります」

 

「この部屋か。この部屋に… デモンティアがあるんだよね」

 

「はい」

 

 

 そして恭也は最後の深呼吸を行い、そのドアを思いっきり開き中へと入る。

 中にはこちらの気配に気付いていたのか、先程の悪魔が机の上に座って恭也たちを待っていたようだ。

 

 

「ようやく来たか。エイルに… 人間? 何で人間がこんなところに…… なるほどそうか。そいつが次期王って奴か」

 

「お前がデモンティア…… それ以上暴れるのはやめてほしい」

 

「ほう? 何故?」

 

「何故って… 人が嫌がるから…」

 

「何故?」

 

「危ないだろ…? そんなことしたら…」

 

「何故だって聞いてんだ。俺は別に嫌な思いはしないし、そもそもあいつらは俺を認識する事すらできない下等な奴らだぞ?」

 

「認識できない?」

 

「俺たちデモンティアは人間に見えたり見えなかったりできんだよ。そんな事よりお前は俺をどうする気だ? 封印する気か?」

 

「そ、そうだ」

 

「できるのか?」

 

「それは…」

 

「…… まぁいいや。どっちにしろ封印されるんだったら… 軽い抵抗くらいはさせてもらうか!!」

 

 

 そのデモンティアはいきなり恭也に向かって鋭い爪を突き立ててきた。

 全く反応できなかった恭也は棒立ちのまま切り裂かれそうになったが、間一髪のところでエイルが彼を持ち上げて避ける。

 

 

「…っ! ご、ごめんエイル」

 

「いえ、お怪我はありませんか?」

 

「ないけど… どうしようこれ」

 

「私は今の力では『ビーツ』に及びません。ですが、恭也様が先程の本を使う事ができるのならこの状況を一変できます」

 

 

 どうやらあの悪魔はビーツというらしいが、この本を使えと言ってもどう使えばいいのだろうか。そもそも自分はこの本を使う資格があるのだろうか。

 そう考えていると再びビーツの爪が恭也に迫る。

 

 

「しまった…!!」

 

「恭也様!!」

 

 

 また間一髪のところで躱す事に成功したが、その時、エイルは掠ってしまったようで腕に爪の痕がつき、そこから血がタラリと流れる。

 

 

「エイル!!」

 

「大丈夫です恭也様。私に構わずその本の力を解き放ってください!!」

 

「この本の力…… 俺はできるのかな…?」

 

「あなた様だからこそできるのです。私は恭也様を信じております」

 

「………」

 

 

 何度思ったか。このままで本当にいいのだろうかと。

 自分を変える為の努力を今までしてきたか、いや、していた記憶すらないほど自分は自分に諦めていたのかもしれない。

 またこうして決断できなければ、こんな自分を命を張ってまで守ってくれている彼女の心すら無駄にしてしまう。

 そんな事は絶対に嫌だ。何度も同じ事の繰り返しはもうしたくない。

 恭也は覚悟を決め、ゆっくりと立ち上がりビーツを睨みつける。

 

 

「… ん? ついにやる気になったか?」

 

「─── ひれ伏せ」

 

「あ?」

 

「俺は悪魔の王… お前達を再び封印し、世界に安寧をもたらそう」

 

「な、何言ってんだお前…」

 

 

 すると、恭也の持っていた本は闇に包まれたかと思うと、その姿を変えて「デモンドライバー」へと変貌した。

 エイルは本の力が解放されたことを見届け、恭也に跪き、懐から鍵を取り出し、それを恭也に渡す。

 

 

「これは?」

 

「こちらは『デモンティアイズキー』。私の力を宿した『エイワンティアイズキー』と言います」

 

「… わかった。使わせてもらう」

 

 

 恭也はキーを受け取ると、自然に腰へとデモンドライバーを装着する。

 そして右腕を斜め下へと伸ばし、エイワンティアイズキーの持ち手の部分のボタンを押す。

 

 

《デモンドライバー!!》

 

《エイワン!!》

 

 

 キーを起動させ、そのままデモンドライバー右の鍵穴へと差し込むと、バイオリンで引いているような待機音が流れ出す。

 

 

「─── 変身ッ!!!」

 

 

 掛け声と共にキーを捻って、デモンドライバーの中央の右側にある本が開き、本の中にキーに宿ったデモンティアが映し出される。

 

 

《開錠!!》《憑依!!》

 

 

 そして本が開かれ、隣にいたエイルが宙へと舞い、元ある悪魔の姿へと戻って恭也に投げキッスをすると、その身体に憑依しアーマーを形成する。

 

 

《悪魔の名はエイル・ワン!! 1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》

《スタンドエイワン!!》

 

 

 全身が鍵穴だらけのその姿は王というには些か変ではあるが、その重厚たる姿は王と言っても差し支えはないだろう。

 これこそが「仮面ライダーメレフ スタンドエイワン」。デモンティアの1番、エイル・ワンが憑依し誕生した悪魔の王。

 

 

「行くぞエイル」

 

「承知致しました」

 

 

 そしてメレフは変身と同時に召喚した剣「メレフキーブレード」という鍵にも似たその剣を手に持ちビーツを斬りつけた。

 

 

「ぎゃぁ…!!」

 

「ふんっ!!」

 

 

 初めてとは思えないほどの剣捌きでビーツに攻撃の隙を与えずに連続して攻撃を浴びせる。ビーツが攻撃してこようと、その装甲の前には歯が立たず爪を痛そうに撫でている。

 そんなビーツに容赦をせず再び斬りつけ、最後にもう一撃と力を込めて横一閃に切り抜けた。

 すると、その圧倒的な力により吹き飛ばされたビーツはビルの上から墜落する。

 

 

「凄い… 身体が軽いし、あいつの攻撃も全然痛くない。これが王の力…… それとエイルの力か」

 

「あぁ… 長年この時を待っておりました…!! 恭也様と一つなるこの瞬間!! 私は今… 世界で一番幸せな悪魔… いえ、女でございますッ!!!」

 

「あ、うん…… さて、奴にはまだ仕置きが必要だ」

 

 

 それからメレフはビルの上から飛び降り、背中からエイルの翼で空を飛びフワリと地面に着地する。

 ビーツはヨロヨロと立ち上がると、爪を立て、その爪をメレフに向けて威嚇している。

 

 

「こ、これが悪魔の王の力か…!!」

 

「哀れだなビーツよ」

 

「なにぃ!?」

 

「今、この王が楽にしてやろう」

 

「さ、さっきからお前性格変わりすぎだろ!!? 何があったんだよそれ!!?」

 

「お前にはわからん。鍵の中で考えるがいい」

 

「ひっ…!!」

 

「─── 眠れ、悲しき悪魔よ」

 

 

 それからメレフは剣を地面に突き刺し、キーのボタンを押してから、再びキーを捻り、空中へと飛び立って片足をビーツへと向ける。

 そのまま急降下し、赤黒いエネルギーを纏ったその足でビーツを蹴り飛ばす。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」

《エイワン!! シャットアウト!!》

 

「グワァァァァァァァッッッ────!!!!!」

 

 

 凄まじい爆発を引き起こし、ビーツは木っ端微塵にはならなかったものの、ボロボロになって地面へと倒れた。

 エイルはそれに近づくようにメレフに頼むと、メレフはビーツに近づいて膝をつく。

 

 

「それから私のキーをビーツの胸に挿していただけますか?」

 

「なに?」

 

「恭也様が攻撃した箇所を見てください。鍵穴が浮き出ていると思います」

 

「…… 確かにそうだな。これが封印する為の穴という訳か」

 

「はい。その通りでございます。では、お願い致します」

 

「わかった。ここにエイルのキーを…」

 

 

 キーを差し込み捻ると、ビーツの身体はキーへと吸い込まれて跡形もなく消えてしまった。どうやらキーに吸い取られたらしい。

 

 

「… これで封印完了か?」

 

「さすが恭也様! 呑み込みお早い… 好きです。愛しております」

 

「あ、あぁ……… ん? 何だこれは…?」

 

「……… はい、これはそうです」

 

 

 メレフが先程のビーツを封印した場所を見ると、スーツを着た男が倒れていた。

 この男性はあの戦いの最中どこにもいなかったはずなのに、突然彼らの前に現れた。一体なんだというのだろうか。

 そしてエイルはその正体について話し出した。

 

 

「これは悪魔だった者です。恭也様」

 

「悪魔だった者…?」




はい!仮面ライダーメレフ始動です!いかがだったでしょうか?
ついに3作目に突入致しました。ありがたや…ありがたや…
1話目という事なので詰め込み過ぎると訳分からなくなるので次回に移します。ではでは、これからも仮面ライダーメレフと私、辰ノ命をよろしくお願いします!!
ついでに前作前々作仮面ライダートリガー・アベンジもよろしくお願いします!!

では次回、第2解「我は無、我の力」

次回もよろしくお願いします!!
※必殺音追加しました
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