それではどうぞご覧ください。
「恭也〜、源次さんが来たわよ〜」
「入れて」
母がそう言ってきたので、恭也は源次に中へ入るように言う。部屋のドアを開けて、源次とジェルエが静かに入ってきた。
そして彼は部屋に入ってきて早々に頭を下げる。
「すまなかった」
「いや、気にしていない。お前が無事で良かった」
「理由は聞かないのか?」
「その子の為… だろう? あの時の目を見たら大体察しはつく」
「そうか…… じゃあ、お互いの話を始めようぜ。洗いざらいな」
「あぁ、これからエンジェルティアとの最後の戦いが始まる───」
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プリーストは光の鞭を杖から出現させ、ムウテンに攻撃を行う。鞭は先端部分が返る瞬間、一時的にだが音速を超えるらしい。変身した状態ならば、より速度は増し、避ける事は困難と言えよう。
だが、エンジェルティアでリーダーに位置し、誰よりも強い実力者。そんなムウテンには片手で簡単に防がれる。
「お前、どうなってるんだよそれっ!!」
「防いでるだけだよ。この腕で」
「だから意味がわからねーんだよ!!」
続いてプリーストは光弾を拡散させ、ムウテンの四方八方から攻撃を行う。よく使う戦法であり、避ける事はできないから受けるしかない。今までもそうだった。
「なるほど… こういう風に見えていた訳か」
そう言うとムウテンは身体を脱力させ、僅かな隙間を縫いながらプリーストへと近づいてきたのだ。
徐々に近づく彼にプリーストは光弾を放ち続ける。ここまで近くに来れば避ける事は更に困難を極める。近づけば近づくほど不利になる。
それなのにムウテンはいつの間にか目の前に立っていた。片手で杖は掴まれ、もう一方の手は腹部に当てられていた。
「はやっ…!!?」
「遅いよ」
猛烈な痛みと吐き気が一気に押し寄せた。そして凄まじい速度で後方へと吹き飛ばされ、壁に激突しズルズルと落ちる。
変身解除にまで至る事はなかったが、だからといってこの後どうすればいいのか予測ができない。自分ではムウテンに勝てないとわかっていた。今のままではどうしようもない。
「…… まぁ諦めない… 諦められないってのあるよな」
「ん?」
「ジェルエが同士裏切ってまで覚悟して俺と戦ってくれてんだ… ここで俺が諦めちゃ、お前に勝った後の美味い酒も不味くなっちまうよ」
「えっと…… そうか。よくわからないけど、君は最後まで抵抗し続けるということだね」
「無理だろうがな」
「矛盾してるのに何故だろう。その考え方は愚かで、逆に気に入ったよ」
ムウテンが右手を空に伸ばすと、掌から光の球が現れ、それが形を変えていき、やがて槍へと変化する。刺し貫こうと言うのだろうか。
「それじゃあね」
「ちっ…!!」
そして槍を振りかぶったムウテンは、プリーストの頭を串刺しにする寸前で手が止まる。プリーストとは別の方向を見ている。何かを感じ取ったようだ。
それからムウテンは槍を消し、翼を広げて上昇し始めた。
「どこへ行く!!」
「いや、ちょっと…… まずいね。すぐに行かないと全滅だ」
「……?」
ムウテンは一瞬にしてその方角へと姿を消していった────。
*****
「─── そんなこんなで俺は生き延びた。ヤベェな。死んでたわ」
「そうか。無事で良かった」
「お前の方もかなり厳しかったらしいな… まぁ無理もないか。6人相手は流石にな」
「俺の話はいい。それより源次の仲間が、俺の見た天使の様な怪人になったというのは本当なんだな?」
「あぁ、倒さないでくれて助かるぜ…」
「俺も倒さずにおいて良かったと心の底から思う…」
その後も恭也と悪魔一向、源次とジェルエは互いに情報を交換し合い、エンジェルティアと戦う準備を進めた。
そして話を聞く中で、ジェルエは源次の力になれない自分に怒りを覚えた。結局、ただのドライバーの一部で、源次に恩恵を与えていないどころか、敵に力を与え続けているだけ。この力を操る事ができたら、源次の仲間たちを解放する事ができる。
「………」
契約解除すらできていない源次は常に狙われる身。このままでは自由になんて暮らせない。恩も返せない。
ジェルエは決断する。
「源次…… 戦おう」
「あ? あぁ…?」
「……… 例え僕がどうなったって…」
ジェルエは聞こえない声量でそう呟いた────。
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この聖域に入れば多少の傷はすぐに回復する。戦いで傷ついたヒイテンもすぐに回復した。
ムウテンは椅子に座りながら天井を見上げていた。ただ光が降り注ぐだけの天井を、ナナテンに声を掛けられるまでずっと見ていた。
「ねぇ、ちょっと」
「…………… ん? なんだいナナテン?」
「さっきから何ボーッとしてるのよ。こっちは恥かかされてイライラしてるのに」
「ごめんよ。でも、僕たちはとんでもない奴を忘れていたようだ」
「あの闇…… 私でもどうする事もできないわ。闇を闇が呑み込む… なんて聞いた事ある?」
「ンードゥ。あの闇は強力だ。僕なら優位に立てる可能性はあるけど、彼はその光すらも呑み込む勢い…… 僕らがこうして生きていられたのも
「で? どうするわけ?」
ムウテンはそう言われると、椅子から降りて真ん中へと降り立つ。
そして手を広げ、エンジェルティアたちに命令する。
「これから僕たちエンジェルティアとデモンティアの最後の戦いが始まる。幸いあの闇を王は使いこなせていないようだ。ダテンたちを盾に使い、明日から奴らの元へ攻め込む。人間だろうと何だろうと関係ない。僕らの邪魔をするなら仕方のない犠牲。決着をつけよう。僕らエンジェルティアの誇りに懸けて!!」
今、悪魔と天使の決戦が始まろうとしていた────。
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翌日、恭也と源次は街に出向く。昨日のンードゥの力の影響により更地になった街を見るためだ。が、そこはいつも彼らが見る街並みがあった。まるで何もなかったかのように機能していた。
「ンードゥか……」
あの時、理由は何であれンードゥは街を元に戻した。闇の力はブラックホールというわけではない為、彼のような力を持ってすればすぐに元の状態へと戻すことができる。最もエンジェルティアによって元々壊された部分はまでは再生しない。あくまで恭也がキーを起動するほんの少し前の状態、元に戻すだけなのだ。
「まぁよ。元に戻ってるならいいんじゃねーか? そのンードゥって奴も初回限定サービスみたいにしてくれたんだろ」
「それが本当なら次はないだろうな……」
「王様は弱気だな。そんなんじゃあのヤバい力を使いこなせないぜ」
「……… あぁ、そうだな。一度もらった慈悲だ。ありがたく使わせてもらおう」
「お前は堂々としてろよ。俺みたいに」
「それは遠慮する」
そう言って街から離れようとした時であった。突如、辺りに悲鳴が響き渡る。2人は急いでその方角へと走っていくと、そこにはダテンがおり人々を襲っていた。
恭也は急いで変身しようとするが、それを源次は止める。
「なんだ源次!」
「お前周り見ろ…」
「なに?」
源次に言われて周りを見ると、逃げ惑う人々はいるが、何故か途中で止まっていた。そこに何もないはずなのに、彼らはそこをまるで壁があるかのようにペタペタと触れていた。
人々はドーム状のバリヤーの中に閉じ込められてしまった。
「これは一体…!?」
「エンジェルティアのせいだろ。誰かは知らないがそういう能力持ちがいる」
「……… なるほど。俺たちは罠に嵌ったというわけか?」
「そうみたいだな。ほーら、そこにいつもの奴らがご登場だぜ」
空を見上げると、人々の注目を浴びながらエンジェルティアが舞い降りてきた。
その中のムウテンは手を合わせて音を鳴らすと、先ほどまでの悲鳴が聞こえなくなった。皆、彼らの方に向き直る。
「… さて、お集まりの皆様。ご機嫌よう…… まずは安心して欲しい。君たちにはこれ以上危害は加えない」
ムウテンたちは恭也たちを見なかった。彼らの目的であるはずの恭也たちを無視し、ムウテンは市民に聞こえように、語りかけるように話し始める。
「まず一つ、ここにいる怪人はダテンと言ってね。君たちの様な弱い種に襲い掛かる恐ろしい生物さ。そしてこれを操っているのは僕らエンジェルティア。聞いたことないかい? まぁデモンティアなら聞いた事あるんじゃないかな?」
ムウテンの目的はわからない。ただ市民に向かって話し続けた。
「これだけ聞くと僕らが悪い奴と感じる事だろう。だけど聞いて欲しい。僕たちは犠牲を払ってでも倒したい相手がいるんだ。デモンティアの王。そいつさえいなければ今頃こんなことにはなってなかった」
「あいつ… まさか……!!」
そして恭也は一歩前に出ようとした時、足元に炎の槍が飛んできた。ヒイテンが警告している。それ以上行くなと。
「君たちに教えてあげよう! 悪魔の王とは一体何なのか! 悪魔なのか人なのか!」
「くそっ…!!」
「─── ねぇ、メレフ。大神恭也」
ムウテンは恭也に指を差してそう言った。周りが騒ついている。それから暫くすると、1人の男性が声を上げた。
「おい! あいつ知ってるぞ! 大神さんの家の息子だ!」
「それはうちの会社の社員だぞ!? 一体どういう事だ!?」
「大神さんって近所の…… 嘘……」
「待て、隣にいるのはデモンハンターじゃないか? 前にテレビで見たことあるぞ!!」
「デモンハンターと悪魔の王は繋がっていたのか…?」
恭也と源次は互いに誤解を解こうと試みるが、彼らはそれに聞く耳を持たない。目の前にいる得体の知れない奴らを目にして、恐怖で考えるという行動に移さないでいた。
この状況を利用して更にムウテンは続けた。
「そう! 彼はメレフ! 悪魔の王! この悪魔の騒動も、我々エンジェルティアがこうして暴挙に出る理由も、全てこの大神恭也、ただの人間1人によるものだったのさ!!」
「デタラメを言うな!!」
「ふふふっ、これで君の信頼は無くなったね。それどころか君の両親にも被害が出てしまった様だ。僕のせいじゃないよ。僕はただ真実を伝えたまでさ」
「貴様ァッ!!!」
《エイワン!!》
《開錠!!》《憑依!!》
《悪魔の名はエイル・ワン!!1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》
恭也はメレフへと変身し、ムウテンに向かって走り出した。源次は後を追う様に変身し、メレフの援護に向かう。
待機していたエンジェルティアとダテンは、それを合図に一斉に飛びかかる。
「落ち着け、恭也!! 俺たちに誤解ができちまっている今、変に暴れ回ればあっちの思うツボだ!!」
「…… すまない」
「ここは一旦、市民を守る事を優先するぞ。このドーム内から出るには奴らの誰かを倒さないとダメだ」
「なら、俺はムウテン以外のエンジェルティアを相手する。ムウテンは頼んだぞ」
「お前それって…」
「決着をつけたいのだろう? ダテンは俺が止める。市民も守る。エンジェルティアも倒す!!」
「おいおい、無茶が過ぎるな王様はよぉ…… だが、その心意気乗ったぜ。一応できるんだよな?」
「あれ以外に奴らを攻略する方法はないだろう」
「… よし、それじゃあ行くとするか!!」
「あぁ!!」
2人はエンジェルティアに向き直り、一気に駆け出す。
悪魔と天使、最後の戦いが始まる───。
残り数話でエンジェルティア編完結です。
次回、第22解「我の聖域、我は舞う」
次回もよろしくお願いします!!