それではどうぞご覧下さい。
エンジェルティア随一の実力を持つムウテン。他の天使は火や水等の属性を持ち、天使特有の光属性も持ち合わせており、敵の属性が有利だったとしても光属性で対抗できる。が、ムウテンはそれができない。誰もが持つ光のみ。一見、属性面では劣っている様にも思える。
しかし、それは実際に相対すると、この評価がガラリと変わるのだ。
「源次、君がどう立ち回ろうと無意味だ。僕にはわかる。次何をするのかもね」
「くっ…!」
そして、エンジェルティアとデモンティアの大きな違いはここだ。属性以外に各々特殊能力を持ち合わせていることだ。ただ、この力はヒイテンからナナテンまでの7人しか発言していない。かつての仲間も、この特殊能力は付与されていなかった。
そんな彼らの中で非常にシンプルながらも最強とされる力を持つのがムウテンだ。
「はい、残念」
「こいつっ……!!」
プリーストの追尾する光弾を次々に避けながら、それを彼に当たる様にギリギリまで近づく。この素早い動きにプリーストは反応できる訳もなく、自分の攻撃を自分自身で食らってしまう。
まだ攻撃は終わらない。怯んだその隙をついて、ムウテンが作り出した光の槍が彼を捉える。近距離で食らってしまった為、プリーストの装甲が耐え切れるはずもなく、ヒビが入り始める。
ここでプリーストもただ何もせずにいたら身体を貫通してしまう。身体を限界まで仰け反らせ、槍の勢いをなんとか殺してギリギリで避けた。
「はぁ…… はぁ………」
「まぁそう来ることも分かっていたけど、簡単に倒してしまっては契約破棄の代償があまりにも軽過ぎる」
「破棄した覚えはないがな」
「破棄したも同然さ。それに勝てるはずもない相手に無駄に挑むその姿… もう少し見ていたいんだ。これは個人的にやりたいだけ」
「全くよぉ…… どうしたらそんな化け物みたいな思考になるか…」
ムウテンは見えている。プリーストがどう動くのか、どう避けるのか、どう攻撃するのかも全てわかる。それが彼の特殊能力である未来予知。彼の前では全ての攻撃は読まれ、簡単に対処されてしまう。
「それじゃあもっと実力差をわからせてあげようと思うんだけど……」
「やっぱり本気じゃなかったか…!」
「もちろんさ。君の様な人間にいきなり本気を出すわけないだろ?─── 準備はいいかい?」
その瞬間、ムウテンの姿は消える。まるで光の如きスピードでプリーストのあらゆる箇所に打撃を与えていく。反応できるはずもなく、サンドバックの様に攻撃され続け、段々と身体の至る所にヒビが入り始める。
「うっ…!! くッ……!!… そおぉぉぉぉぉぉッッ!!!」
プリーストは杖を振り回す。当たるかもしれない。光速で動く彼に当たる可能性は極めて低く、予知されているにも関わらずがむしゃらに振るった。
全ての攻撃は空を切り続け、ムウテンの攻撃は着実に大きなダメージとなっていく。最後に杖を振るった瞬間、プリーストの身体は宙へと浮かび、装甲は砕け、強制的に変身が解除された。
そうして地面へ無様に転がった源次の腹を、ムウテンは軽く足を置き、徐々に力を込めて圧迫する。
「かはっ…!!」
「本気を出す必要もなかったけど、最後くらい君には味わっておいて欲しくてね。僕と君、人間とエンジェルティア。まさに天と地。絶対に勝てない存在だと知ってから死んでくれ」
「何が天と地だ! お前なんか宇宙に出たら塵以下だボケッ!!」
「…… じゃあ君はその塵に負けた事になるね。気分はどうだい?」
「負けてねーよ… 俺が認めてない」
「あ、そう」
ムウテンは更に力を強くする。内臓が押し潰されそうになり、息も苦しくなってきた。
「うがぁっ…!!」
「このまま口から内臓を飛び出させてもいいけど、流石の僕もそれを見たいとは思わない。だから君には慈悲として跡形もなく消えてもらうよ。そうすれば痛みはないし、君の言ってる諦めない気持ちが残ったまま死ねる」
「それでも俺は負けねぇよ…… お前を倒して、あいつらも助けて俺は…… あいつらと自由を手に入れるッ!!」
「…… そうかい。それじゃあね」
ムウテンは翼を広げ、上空へと飛んでいく。それから天へと手を掲げると、そこへ光のエネルギーが溜まっていき、やがて源次をいとも簡単に飲み込めるほどの大きな球体となる。
それを源次目掛けて振り下ろす。絶対に逃げる事はできない。
「デモンハンターの馬鹿野郎ども…… すまねぇ……!!」
光は彼を包み込む─────。
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一方その頃、メレフはエンジェルティア6名とダテンを同時に相手していた。スタンドアドバンスエイワンの力を使い、その性能を活かして時には大雑把に詰める戦いを行った。だが、そんな戦い方もそう長くは続かない。恭也の魂は苦しんでいた。
「はぁ…… はぁ……」
ダテンが2体、メレフへ向けて投げ飛ばされた。メレフが攻撃できない事を知っているからこその行動だろう。
「くそっ…!」
2体に攻撃を加えない様に剣を使って流す。が、それを見越してか、フウテンが液状化しメレフの身体に纏わりつく。更に後ろから透明化したミイテンが羽交い締めにする。
そして完全に身動きができなくなった所で、ヒイテンの分裂、ヨオテンの巨大化、イツテンの肉体強化による一斉攻撃が行われようとしていた。
エンジェルティアたちが力を溜めている間、ナナテンが前に出てメレフを嘲笑う。
「全員相手にするとか大見得切ってた割にはこの程度かしら?」
「… 大勢で攻撃してきてよく言ったものだな」
「はぁ? あんたがやるって言ったんでしょ? 私たちのせいにしないでくれる?」
「それでこのままどうする気だ?」
「ここにいる全員の力をあんたに食らわせる。そうすればいくらあんたの再生能力があっても間に合わない… 死ぬだけよ」
「いや、まだ終わりではない。俺には秘策があるからな…… いや、愚策か」
「……… あんたホントに意味わかんない。さて、あんたたちここで終わらせるわよ」
ナナテンの合図で天使たちが一斉に構え、そして最大まで溜めたエネルギーを一気に放出した。
そして身動きが取れなかったメレフだったが、直後拘束が解かれる。すぐさまドライバーのキーを回そうとしたが間に合わず、全攻撃をその身で受けてしまった。
凄まじい爆発音と共に砂が舞い散り、景色が見えた時にはメレフの装甲はズタズタとなり、所々から血が噴き出した。
「恭也様ッ…!!!」
「大……… 丈夫だ…… エイル…」
エイルの傷つけたくないという想い、恭也の負けたくないという想いが混ざり合い、メレフは瞬間的に再生する。何事もなかったかの様に。
だが、それは魂を大きく削り、メレフは胸を抑えて苦しみ始める。
「がっ… ぐぅ……ッッ!!」
これにより限界に近づいたメレフは変身が解除される。
ナナテンは感覚を研ぎ澄ませ、恭也の心臓の音を聞く。着実に弱ってきていることがわかった。
それからエンジェルティアは苦しむ彼の元へと近づいて行く。
「恭也様…… そんなッ!!」
「はぁ… はぁ…… うぅ………!!」
「…… 皆、恭也様の盾にッ!!」
恭也の前にデモンティアたちが集結する。遥か昔であるならば、この状況なら五分五分といったところで特に問題はない。昔ならば。
今、彼らの力は本来のものではない。ここでエンジェルティア達と正面を切って戦えば確実に負ける。死が待っている。
「やめろ…… お前たち!!」
「いえ、私たちはあなたをお守りするのが役目。絶対に死なせません!!」
エンジェルティア達が攻撃態勢に入る。今ここで何もしなければ全員死ぬ。
恭也は無意識にアレに手が伸びる。
「─── 俺はお前達を死なせる訳にはいかないッ!!!」
そして恭也はドゥラストティアイズキーを起動する────。
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「─── え?」
源次は生きていた。どうやら一瞬気を失ってしまった様だ。何が起こったのかわからず、瞬きをしていると、目の前に光が入ってきた。段々と音も大きくなっていく。
それからハッとなって状況を理解する。源次はムウテンの作り出した光の球の中にいる。その中で生きて入れられるのは、ドライバーから出てきたジェルエが作り出したバリアがあるからだった。
「ジェルエ!!」
「大丈夫!? 源次!?」
「お前これ……」
「僕もこんな力があったんだよ… 君を守りたいって思ったら出てきたんだ」
「そりゃ… すげぇけど…… 大丈夫なのかよ!?」
「無理だね… 僕の力じゃムウテンの攻撃を凌ぎ切るなんて事できない……」
「それじゃあ俺たちはこのまま……」
「死なないよ」
「何?」
「源次は自由を満喫して、お兄さんの分まで生きたんでしょ?」
「そうだけど…」
「じゃあ源次だけは生きてよ。僕は源次に命を救われた。だから今度は僕が救う番だから……」
「お前何言って…!!」
ジェルエはバリアを更に大きく貼り、外の景色が見える程の長い道を作った。
「さぁ!! 早くここから逃げて!!」
「ジェルエ……」
「短い間だったけど… 僕も少しだけ自由を貰えて嬉しかったよ…… 楽しい思い出ができてよかった……」
「…………」
「最後に食べたあのスイーツ美味しかったよ。ありがとう…… 源次────」
そう言って更にジェルエは力を込める。が、限界が近づき、バリアにヒビが入り始めた。
「源次早くッ!!!」
バキバキという音を立て、今にも壊れそうな勢いだ。ジェルエは必死にバリアを維持し続けていた。もう源次は逃げただろうか。あとどれくらいバイアは持つのか。状況が見えないほど必死だった。目をぎゅっと瞑り目の前に集中していた。
そんな時、頭に優しく誰かの手が添えられる。
「なんで………!!」
それは源次であった。逃げていなかったのだ。
ジェルエはそんな彼に怒鳴った。生きていて欲しいのに、どうして彼はまだこの中にいるのだ。
「─── 俺はお前にも生きて欲しい」
「え?」
「お互い何かの縁で出会っただろう? これは運命だ。そん時から決まってんだよ。俺とお前は相棒同士だって事が」
「源次……」
「自由へ羽ばたこうぜ。誰も俺たちを止める事はできない。お前と俺で勝ち取ろう。自由への道を!!」
「……… うん… うんっ…… うんッ!!」
「それにまだまだお前には色々知ってもらうぜ。この地球には美味いもんばっかあるんだ。全部食うまで死なせるかよッ!!」
「じゃあ死なないよね……… 戦おう!! 源次ッ!!」
「おうッ!! 行くぜ… ジェルエッ!!!」
──── その直後、光球が散った。上空から見ていたムウテンは思わず「えっ」と声が漏れる。
真ん中には源次とジェルエが立っていた。2人の間に何かが浮かんでいる。それは見たこともない鍵だった。
「君たち…… どうやって生き延びたんだい…? それにその鍵は… 一体何を……」
「さぁな。俺たちもそこら辺の細かい事はわからねぇ。多分奇跡ってやつだろう。常識じゃ測れない不思議な力だ」
「それで? その奇跡とやらの力を使って僕を倒すのかな?」
「それもわからん。だが、負ける事は無くなったな」
「…… それじゃあ来なよ。これが本当に最後だ」
「あぁ、やってやるぜ。自由を手にするのは… この俺たちだッ!!」
《ホリージェル!!》
新たなキー「ホリージェルトライズキー」を起動すると、源次の周りをジェルエが光を放ちながら飛び回る。そのキーを胸に当て叫ぶ。
「変身ッッ!!!」
《アンロック!!》
そしてキーをプレイドライバーに挿して回すと、ジェルエの神々しい翼は源次を包み込むほど大きくなり、その翼を閉じて彼を隠す。
源次の身体にアーマーが形成され、プリーストの時よりもより神々しく、源次の性格を再現した様な少々尖ったものへと変更される。
《聖なる!!鐘を!!皆に送ろう!!holy bell!!スタンドホリージェル!!》
「─── 懺悔しな、ムウテン」
「ふっ… ふふっ…… 形が変わった所で僕との実力差は埋まらないよ」
ムウテンは光速で移動し、一瞬にしてプリーストの目の前に来ると、光を纏った蹴りを彼に浴びせた。
が、それは塞がれる。微動だにもせず、たった一本の腕に。
「は…?」
「終わったな。これで確信したぜ──── 俺たちの勝ちだ」
仮面ライダープリースト スタンドホリージェル。
今、彼の反撃が始まる───。
遂に出ましたプリーストの最強形態スタンドホリージェル!!
果たしてその実力は……。
そして次!!エンジェルティア編ラストでございます!!
次回、第23解「我は堕ちる、我の深き闇」
次回もよろしくお願いします!!