それではどうぞご覧ください。
プリーストの新形態スタンドホリージェル。メレフ同様に憑依する事でなる形態だが、プリーストにはそういう機能はなかった。
だが、ジェルエという特異な天使の力により、それが可能となった。ただし普通こうなる事はないのだから、まさに2人で起こした奇跡と呼べる力だ。
そんな力を前にムウテンは全く歯が立たないでいた。
「そ、そんな事が…!?」
今まで自分を苦しめてきたものは何一つなかった。それはそうだろう。ムウテンは誰よりも強かった。エンジェルティアの中では常にトップへ位置し、他の天使達を束ね、リーダーの様な存在へと成り上がった。誰もが文句は言えど、逆らう者なんていなかった。
「……ッッッ!!」
そんな無双伝もこのプリーストの前では何もかも無力であった。先程までの立場が一転し、どの角度から攻めても全て弾かれる。どう動くかもわかっている。なのに、予知を行って攻撃してもすぐに対応されてしまう。
「源次… 君はもしかして未来が見えているのかい…!?」
「いや、別に何も見えてねーぜ」
「じゃあ何故君は動ける!! 予知をしている僕よりも先に!!」
「予知した所で意味なんかねーよ。お前より速く動けばいいだけの話だ」
「そんな頭が悪い考えで済んでしまったら困るんだけどね!!」
ムウテンは両手で光の槍を何本も作り出すと、それをプリースト目掛けて投げる。
プリーストはそれにプレイストウォンドを掲げると、光の槍がピタリとその場で動きを止め、それから杖を振るうと槍はムウテンの方を向く。
「えっ…」
「おやおや? これはどういう事でしょう…… かッ!!」
槍はムウテンに逆らい、彼に向かって飛んでいく。その攻撃を予知し、光速で避けてあらゆる方向から再び槍を飛ばす。
「残念だが、何度もやっても同じなんだな」
プリーストがぐるりとその場で杖を振るうと、またしても槍が目の前で止まり、今度は跡形もなく消されてしまった。
それに対してムウテンはかつてない程、顔が青ざめた。
「まさか…… 君ッ……!!」
「あぁ、そうみたいだな。俺に光は効かない。光は俺の源であり、また光は俺の意志で操れる。形も自由に変え、自由に消すことだってできる」
「あぁ… あぁ……ぁ……あぁぁぁ!!」
ムウテンの身体能力は既にプリーストには劣っている。特殊能力である予知も、プリーストが素早く動けるから無駄となる。更にムウテンは光属性単体である為、1つの属性による攻撃は凄まじいと言えど、今のプリーストは光を全て無効化する力を得た。
つまり、ムウテンが勝てる要素が無くなってしまった。幸か不幸か、彼に対して特効過ぎる力。手も足も出ないのは明白だ。
「俺は諦めないから勝てた。お前はどうする? オススメは諦める方だけど───」
「黙れ」
「あ?」
「黙れ…… 下等な人間がッ!!」
そしてムウテンは巨大な光の球を作り出す。先程プリーストに放ったものだろうが、それよりも更に大きく、莫大なエネルギーを費やしている。
「ははっ…はははっ…… これで終わりだよ。この力は防げない…!!!」
「やってみろよ。お前がそう思うならな」
その言葉を聞き、怒りに身を任せて光球を投げた。熱い。本当に最後の攻撃だろう。この一撃に全てを懸けているのがわかる。
しかし、それは一瞬にして終わりを迎える。
「悪いなムウテン──── これで決めさせてもらうぜ」
プレイストウォンドを掲げ、光球を切る様に振り払うと、球は真っ二つに割れ、跡形もなく散ってしまった。
まさに一瞬。ムウテンは唖然とし、予知をする事はおろか、プリーストの次の動きも見えていない。
プリーストはムウテンと同じくらいの高さまで翼を展開し、空高く舞い上がる。それからプレイドライバーに挿しているキーのボタンを押し、ムウテン目掛けて飛び蹴りを行う。
「ハァァァァァァァァァァァァッッ!!!」
《ホリージェルパニッシュ!!》
光のエネルギーを纏った蹴りがムウテンに直撃する。
その時、ムウテンの頭に天使達の姿が浮かんだ。これがどういう感情かわからなかったが、目から自然と涙がポロリと落ちる。
「……… そうか。そうなんだ…… これが─────」
そして辺りは光に包まれ、直後に大爆発を引き起こす。
プリーストは地面に着地すると、空から落ちてきたムウテンを光で包み込んでゆっくりと下ろす。
それから変身を解き、彼に近づく。
「気分はどうだ?」
「うん…… 悲しいかな……」
「悲しい?」
「こうして君と戦って、人間がこの世界で生き延びた理由がわかった気がする。君の攻撃を食らった時、頭の中にかつての仲間達が浮かんできたんだ。72人いた時の……」
「まぁ、お前が色々と思う事はあんだろうけど、さっさと恭也と俺の仲間を解放してくれ。話はそっからにしようぜ」
「そうだね。それじゃあエンジェルティア達に────」
ムウテンがヨロヨロと立ち上がった時だった。彼は身体を震わせた。そして何かを感じ取ったのか、その方向を見る。
この感じを人間である源次も気付き、同じくその方向を見た。互いに汗が流れる。
「やばい…… こいつはやばい!!」
「これは前よりも凄まじい力の様だね」
「そういや前に戦った時もお前何か感じ取って飛んでったよな? まさか……」
「あぁ、この力はあの王の…… いやもっと深い。彼が動き出したんだろう」
「恭也…… アレを使ったのか…!?」
「君の仲間もそうだけど、王すらも危ないだろうね」
「全くこっちは全快じゃねーのによ!! 急ぐぜジェルエ!!」
「うん!!」
源次は再び仮面ライダープリーストスタンドホリージェルに変身し、ムウテンを光で包み込んで、その方角へと飛んでいく─────。
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何も見えない。何も聞こえない。何も感じない。
恭也の目の前は全てが深い闇だった。自分が今どういう状態なのかも把握ができない。デモンティアの皆んなはどうなったのか?エンジェルティアは?記憶がない訳ではない。あのキーを起動した途端、この深い闇の中へと取り込まれた。
「エイルッ!! 皆んなッ!!」
叫ぼうとしたが、その声、音すらも響かない。
途方に暮れていると、誰かの声が聞こえてきた。この声は聞いた事がある。
「我の力を使ったな」
ンードゥだ。それに対して恭也は返事をする。が、しているつもりになっているだけで、実際は声は出ていない。
どこからともなく彼の声が聞こえてくる。
「ここはお前の精神世界。我と対話をしたいのだろうが、今のお前は闇に囚われ、感覚はおろか、声すらも出せない筈だ」
「……………」
「言っておくが我ではどうする事もできない。お前の身体を乗っ取るという手はあるが契約上無理だ」
「……………」
「どうすればいいか…… と聞きたいのだろう。方法はただ一つ。我を使いこなせ。それ以外に道はない」
「……………」
「後は解放しろ。お前の王としての力を────」
恭也はその闇の中で必死に抗った。自分の状況はわからないが、とにかくエイル達の事を想い、闇の中から抜け出そうとした。
すると、段々と闇の中に少しばかりの光が見え始めた。その光に手を伸ばす。そして光に吸い込まれ、恭也は目の前が真っ白になる。
──── 次に目を開けた時、恭也が立っていたのは闇に染まった地面だった。辺りにあるビルはその闇の中へとズブズブと沈んでいく。
恭也は見えてはいないが、自身の身体は闇に包まれ、黒い塊の様になっていた。
「……………」
何が起こっているのかを見る事ができるだけで、手足は動かさなかった。指一本もだ。
自分の状況が良くない事はわかっているが、他の状況がわからない。少ない情報量だが、目だけ動かし辺りを見ると、エンジェルティアの数名が闇に引き摺り込まれているのが見えた。
「なんなのよこれッ!! マジで意味がわからないんだけどッ!!」
この声はナナテンのものだろう。彼女も闇属性の力を有してはいるが、この闇に対してなんの抵抗もできていない。
同じ闇すらも呑み込んでしまう深き闇。これがンードゥの力。このままでは全てを無にしてしまう。
止まれ、止まってくれ。そう願うしかなかった。
(源次の仲間がッ…!!!)
ダテン達の姿が見えない。見えないだけであってほしい。闇に沈めば今の恭也ではどうする事もできない。
そんな状況の中、空から何かが飛来した。見た事もない姿をしていたが、それはプリーストだった。その隣にムウテンがいるが、どうやら決着はついた様で、2人はこの状況をどうにかしようと闇に向けて攻撃を行う。
「おいおい、冗談じゃねーぜ!! せっかく手に入れた力なのに全部あの黒い所に沈んでいくんだが!!?」
「どうやら思っていた以上に強大な力の様だね……」
「あいつらは………」
源次は仲間を探した。が、この闇の中にそれらしき姿は見つからない。
「クソっ……!!」
「諦めるのは早いよ。彼がこの力を制御する事ができるのなら助かる可能性がある」
「なんだって?」
「この力で消された筈の街が元に戻っていただろう? その要領でやればここにいる皆を助けられる筈だよ」
「こんなバカみたいな力…… その場で使いこなすなんての無理な話だろ?」
「属性には相性がある。この闇の力。僕たち光属性の力を王にぶつけて強制的に変身解除に持ち込もう」
「それしかないなら仕方ねぇ。行くぞッ!!」
プリーストとムウテンは力こそもうほとんど残ってはいなかったが、互いに光を一点に集中させ、メレフへと向けて放つ。
光のエネルギーがメレフに直撃すると、彼の周りを包んでいた闇が吹き飛び、その全身が露わになる。
まさに悪魔とも呼ぶべき禍々しい見た目になっており、炎の様な流動的な鎧が身につけられている。全体的に真っ黒で、目は血の様に赤く光り、腕と脚に鋭い棘が生えていた。
「さっさと戻って来い!! 恭也!!」
───────。
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恭也はプリーストとムウテンの光のお陰で、ようやく闇の中で自分を認識できる様になった。動く事もできるが、動いた所で行き止まりのない永遠と続く闇が広がっているだけだ。
その闇の中で恭也は叫ぶ。
「エイル!! ジェイク!! ティッツ!! エミー!! ゼフォー!! ネゴール!! メロク!! ワナイズ!!」
全員の名を呼ぶが返事がない。ただ1人を除いては。
「…… ンードゥ!!」
「動ける様になったか王よ」
この力の源。ンードゥだけは別だった。どこからともなく目の前に現れた。
恭也は彼に皆がどこへ行ってしまったのか聞く。
「ンードゥ。皆はどこへ行ったんだ?」
「当然、闇の中だ」
「場所はわかるか?」
「わかった所で我は何もしまい。いや、どうする事も出来ない」
「…… 俺がこの力を制御しなければいけないという事か」
「そうだ。今の我はお前により制限がかけられている。暴走しているとは言えお前の力。闇に呑まれた生物の生き死にはその手一つで簡単に決まる」
ンードゥの言葉はとても冷たく感じられたが、彼なりの優しさなのだろう。王としての力を期待している。自分を扱う、自分の主の力量を測っているのだ。
恭也はそれに応える様に胸に手を置く。
「……? 何をしている?」
「俺の魂を…… メレフの力を解放する」
「覚悟は決まった様だな」
「あぁ…… 皆を守る為ならいくらでも懸けてやろう」
そして恭也は王の力を解放した─────。
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「やべぇよ!! もう街が……」
「どうする事もできないみたいだ……」
プリーストとムウテンは街の様子を見て絶望していた。最悪の場合、メレフを倒さなければならなくなる。プリーストはそれだけは避けたかった。
「頼む… 頼むぞ恭也!!」
するとその時、メレフの指がピクリと動く。それを見逃さなかったムウテンはプリーストの肩を叩く。
「王が… 動いた」
「なに?」
そして驚いた事に沈み切ろうとしていた街が闇の中から徐々に抜け出し、遂には元の場所へと戻ってきたのだ。他にもエンジェルティアやダテン達も無傷でその場に浮かび上がり、闇は静かに消えていった。
「……… やってくれたな恭也!!」
それからメレフの変身は解け、恭也は倒れる。
源次は変身を解くと、彼に駆け寄り肩を叩く。そうすると、恭也はゆっくりと目を開ける。
「終わったぜ」
「あぁ…… その様だな」
「お前のお陰で皆んな無事だ…… まぁ、そのぉー…… ありがとよ」
「礼をするのは俺の方だ… 勝ったのだろう?」
「勝ったし、それに────」
源次がムウテンの方を向く。その方向を恭也も一緒になってみると、ムウテンはエンジェルティア達へと出て宣言していた。
「僕たちは負けた。この長い戦いの中でエンジェルティアとデモンティアの決着はついた」
「…………」
「これ以上の戦いは意味をなさない。戦った所で僕たちの敗北は決定している。戦いは終わりだ。僕たちは再び在るべき場所へ帰ろう」
エンジェルティア達は不満げな顔をしていたが、誰一人として文句を言う者はいなかった。ムウテンがリーダーだからという訳でなく、各々が理解したのだろう。
それからムウテンはダテン達を元の人間へと戻した後、翼を広げて天へと飛び立つ。
それを見た源次はジェルエにわざと聞く。
「お前は帰らなくていいのか?」
「これから美味しいものを食べさせてくれるんじゃないの?」
「そうだな。いや、そうだったかなぁ…?」
「絶対食べるッ!!!」
「わかってるよ!! 殴るなっ!!」
そして恭也はエイル達に肩を担がれながら立ち上がる。
「すまない皆んな…… 迷惑をかけたな」
「いえ、恭也様は正しい事をしました。誰も気にしておりません」
「そうか…… それでは帰るとしよう」
「はい!」
恭也や源次、そしてエンジェルティア達は各々あるべき場所へと帰っていくのであった─────。
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王の力の解放──── 99%。
王としての覚醒、即ちそれは死を意味する。助かる為には全ての悪魔の力を我者としなければならないが、ンードゥの力を操る為に一気に解放してしまった事で、恭也の身体は限界を迎えようとしていた。
──── だが、彼らに休む暇はない。新たな脅威が迫ってきている。かつてないほど強大な力。
デモンティア、エンジェルティアをも越える力────。
エンジェルティア編………完!!!
ホントご覧いただきありがとうございます。ホント感謝してます。感想貰えるだけでホント幸せもんです。ありがとうございます。
次回
3章 使徒編 第24解「我ら使徒、我ら滅び」
次回もよろしくお願いします!!