それではどうぞご覧ください。
使徒リアルはメレフたちへ向けて、10本の指先からレーザーを放出する。
指は関節が多くある為、小さな針の穴に糸を通す複雑な動きをすることができる。レーザーが指1本から放たれていたから避けられていた。それが10本ともなると、容易に避けることが困難な動きをするのだ。
メレフたちはそれを避け続けながら、リアルにダメージを与えて確実に倒すのだが────。
「─── 無駄だ。私はゴエティア様の加護を受けている。今の私に死ぬという概念はない」
ゴエティアという神がいる限り使徒は何度でも蘇る。細かく刻まれようと、細胞すらも消し去ろうと、彼という存在がこの世から消えることはない。このリアルを倒すには神を倒す他ないのだ。
今、ここで戦い続けるのは、メレフたちにとっては圧倒的に不利である。この場から早急に退いた方がいい。
メレフは皆に聞こえる様に作戦を伝える。
「源次! お前は俺の援護を頼む! ムウテンは仲間を連れて逃げろ!」
その言葉を聞いたムウテンは最初何か言おうとしたが、黙って頷き、光のベールでエンジェルティア達を包み込んでその場から消えた。
そして残ったメレフとプリーストは互いに頷き合い、ドライバーのキーを回して高く飛び上がり、ダブルライダーキックをリアルに向けて放つ。
《アドバンス!! シャットアウト!!》
《ホリージェル!! パニッシュ!!》
それを避けられた筈のリアルであったが、その攻撃を敢えて受けた。当然、2人の強力なキックを受ければ、その身体は耐え切れるはずもなく爆発する。
何度も復活する肉体だからこそできる事。神の使いであったとしても、慢心してしまう事もあるようだ。
リアルが再びこの地に足を踏み締めた時には、そこにメレフたちの姿はなかった。
「……… 逃げたか。だが、いつかお前たちは滅びる。私が手を出すまでもなく、1番守りたかったもの、人間に裏切られる事となる。世界は不条理の上で成り立っているのだ。王よ────」
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恭也たちは特に追われるような事もなく使徒から逃げ切った。全身の力が一気に抜け、怠惰感が襲う。
その後、源次は恭也と別れると、ムウテンたちの様子を見にジェルエの案内で、何処かは不明だが森の奥地へと向かったそうだ。
自宅へと戻った恭也はぐったりとしてベッドに倒れる。
「…………」
エイルが何か話し掛けてきているようだが、その声は段々と遠くなっていく。妙に身体が重たい。きっと力の使い過ぎが原因だろうか。
「………──────」
恭也は眠りにつく────。
*****
ここはきっと夢の中だろう。先程と違い身体は軽く、空も飛べる。そしておかしな事に意識がハッキリとしている。
恭也は何かに導かれるままに空を飛び、その場所へと向かう。
「あれは────」
そこには見た事ある建物が見えてきた。これはンードゥが住む屋敷だ。どうしてここに辿り着いたのだろうか。
扉の前に降り立ち、開けて中へと入る。夢の中なので屋敷内も変わっており、永遠と続いていそうな廊下が、目の前にずっと広がっていた。
その長い廊下を導かれるままに奥へと進んでいく。
「ンードゥが呼んでいるのか…?」
奥は奥へと進んでいくと、急に巨大な扉が現れ、その扉は押すまでもなく勝手に開いた。
恭也はその扉の中へ入り、ンードゥの名前を呼ぶ。
「ンードゥ! いるのだろう! 出てこい!」
そう呼ぶとンードゥはどこからともなく現れた。しかし、その隣にンードゥ以外に男が現れ、男は真ん中に置かれた椅子に座り込む。その後にンードゥももう一つの椅子に座る。
謎の人物の出現により動揺していた恭也の横に椅子が現れる。恭也も2人を見ながらゆっくりと腰掛ける。
「……… お前は?」
「俺か? 俺は悪魔だよ」
「悪魔だって?」
「名前は言うつもりはない…… いや、捨てられたと言ってもいい」
「ん…?」
「そんな事はどーでもいい。俺がお前をここに呼んだ。単刀直入に言わせてもらうが、お前は後3回変身したら死ぬ」
「3回……… か」
「驚かないんだな?」
「あぁ、もう身体の限界が近づいてきているのがわかる。それは変身する自分自身がよくわかっている」
「更に言うがンードゥの力を使った所で、お前は死ぬ運命から逃れる事はできない」
「それは…… そうだろうな」
「なに?」
「ンードゥの力を使って、正気に戻った事が一度だけある。あの時、一瞬でも制御できてしまった。これが普通であるかはわからないが、王としてならば当然と言える。だが───」
「だが?」
「俺はンードゥの力を扱う事ができれば、それでいいと思ってた。しかし実際は違った。この力を扱えたとしても、俺の生命は減るばかりだ。もっと根本的な…… 悪魔の王という根本的な所が問題なのではないかと」
「……… ほぉー… 思っていた以上にやるな。それが正解だ。王の力はただ悪魔の力を使うのではない。己自身の力だ。悪魔を屈服させるその力こそ王の真髄だ。お前は未熟過ぎた。まだ器ではなかったんだよ」
「そうか。そうだろうな……」
未熟。器ではない。恭也は悪魔にそう言われた。王の力は己の力。エイルは確かに重要な存在ではあるが、結局彼女も元を返せば王の盾なのだ。
どれだけ彼女が元の強さに戻ろうと、彼女がどれだけ力を付けようと、恭也自身には然程の影響もない。デメリットとして命をエネルギーとしているという点だけだ。
本当の王の力を手に入れる為にはどうすればいいのか。そのヒントを悪魔は告げる。
「神に会え」
「神?…… ゴエティアという奴か?」
「そうだ。そいつに会えば答えが出る」
「………」
「どうした?」
「…… お前は何者なんだ?」
「その話はまた別の話だろうな。ンードゥ、返してやれよ」
そして隣にいたンードゥは立ち上がり、恭也に「我の力を使え」と言い、腕を払うと周りが真っ暗になり何も見えなくなった─────。
*****
「─── はっ…!!」
恭也はベッドから起き上がる。外はもう既に真っ暗であった。布団を掛けられていたので、きっと誰かが眠りやすいように整えてくれたのだろう。
周りを見るが近くにエイルたちはいない。一体どこへ行ってしまったのだろうか。
「我の力を使え…… か」
あれは夢であって本当のンードゥとは限らないが、恭也の答えは出た。
それから恭也はドゥラストティアイズキーを手に持つと、外へと出て行く────。
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エイルたちは恭也に申し訳ないと思いつつ、エンジェルティアたちが身を潜めている森の奥へとやってきた。
ジェルエが恭也の自宅まで来て、エイルたちを呼び出したのだ。そんな彼もムウテンに言われて呼びに来たらしいが、どうやら何か話したいことがあるらしい。
訳を聞く為、森の奥地へと着いたエイルたちは、そこに天界でも見たような座り方したエンジェルティアたちを目にする。
「やぁ、待っていたよ」
いつものようにニコッと笑っていたムウテンだが、すぐに表情を一変し、真面目な顔つきで彼女たちにも座るように促す。
デモンティアとエンジェルティアしかいない異様な光景。なんの為に戦い続けているのかも分からなかった両者だが、こうして1つの障害を乗り越える為に手を取り合うのはこの1000年の間のことを考えたらあり得ない話だろう。
「デモンティアの諸君… と言ってもンードゥは来てないようだけど…… とにかく君たちに話したい事があって、今日ここへ集まってもらったよ」
「要件は何? 私は恭也様のお側に居なければならないのだけど???」
エイルの額に血管が浮き出ているのを見たムウテンは、目を逸らして重要な話を始める。
「…… エイル、君は何故僕らが戦い続けていたのか考えた事はあるかい?」
「考えるだけ無駄よ。私たちはただ戦い合うだけの生物。他に理由なんてないわ」
「果たして本当にそうだったのかな」
「え?」
「僕らは神によって生み出された。君たちもそうだ」
「…… 続けて」
「他のエンジェルティアにこの事を言っても笑われるか、冗談は後にしろと怒られたこともあった…… けど、僕は君たちとの戦いで、徐々にその記憶が真実へと到達しようとしている。断片的にだけど思い出せるんだ。僕たちはかつて神との戦いに参加していた。エンジェルティアとデモンティア…… じゃない。何かの為に……」
「ちょっと待ちなさい。神との戦いって事はゴエティア以外にも神がいたって事なの?」
「あぁ、そうだよ。その名は『スレイマン』。あの方… ゴエティアが僕らの神なら、スレイマンは君たちの神だ」
「つまり… その… 私たちは本来は王ではなく、神の配下という事になるの? そうだとしたら、何故その記憶が消されているのかがわからないわ」
「あれ? 否定しないんだね?」
「恭也様は確かに特別なお方。けれど、今の話を聞いて思ったのよ。デモンティアの力を使う代償である魂を糧に戦う力を、神がいるのであれば、その力を代償なしに使う事ができる筈。そしてそれは同時に人間では到底扱う事はできない力という事も…… つまり恭也様は───」
「いずれにしろ死んでしまう」
ムウテンの言葉を聞き、何か言いたげなエイルだったがすぐに開けた口を塞ぐ。これが事実にしろ、恭也は永くは持たない。
「…… そのスレイマンはどこにいるの?」
「さぁね。僕にも検討がつかない」
「恭也様にこの話をするわ」
「してもどうしようもない。もし引き受けたとしても使徒すら倒せないと……」
「恭也様ならきっと勝てる」
「根拠は?」
「恭也様だから」
「……………」
そしてそれを聞いたデモンティアたちも、そうだそうだと、エイルに同意する。
それに対してムウテンは頭をやれやれと振り、立ち上がってエイルたちに言う。
「君たちならできそうな気がしてきた」
「当たり前よ──── っ!?」
すると、エイルは急に立ち上がり、何かを感知して翼を広げる。
「何があったんだい?」
「恭也様が外出なさって…… 一体どうされたの!!?」
それからエイルはすぐに空を飛び、恭也の元へと急いだ。他のデモンティアたちも彼女の後を追いかけてその場から飛び立った。
「……… ジェルエ。君も行った方がいいかもね」
「え?」
「嫌な予感がするんだ… とても嫌な予感が─────」
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恭也はドゥラストティアイズキーを握ったまま夜中の街を歩いていた。だいぶ遅い時間なので辺りに人は全くいない。
だが、そんな時間にもう1人眠れないものがいた───。
「リアルだな」
「王よ。この時間に1人とは、そして仲間も連れずにいるとは一体どういう意志の表れだ?」
「この時間なら周りに誰もいない。この上なく戦いやすい状況だ」
「私が出ることも想定済みか?」
「そうだ。お前は今ここで倒す」
「……… 王、何を焦っている?」
「焦りたくもなる。俺の寿命は既に限界に近い」
「そうか。ならば、せめてもの慈悲で一瞬で殺してくれよう」
「一瞬で呑まれるのは─── お前の方だがな」
《ドゥラスト!!》
ドゥラストティアイズキーを起動すると、一瞬にして辺りは光すらもない程に真っ黒な闇へと染まる。
その異常なまでの闇の広がりを、少し離れたエイルたちにも視認ができた。
「恭也様がお使いになった……」
「ふぉふぉ…… これは随分と濃い闇じゃのう」
ワナイズはどこか嬉しそうに笑う。いつもなら怒りを露わにするエイルも、ンードゥの力を使用してしまった恭也の安否が心配になり、ワナイズを見ずに急いで彼の元へと駆けつける。
恭也の隣へと降り立ったエイルは声を掛ける。
「恭也様!!」
「大丈夫だ…… エイル……」
「ですが… その力を使えばまたッ!!」
「ンードゥが言った。俺を使えと… この俺に…」
「え…?」
「今、覚悟を決める時だ」
そして恭也はドゥラストティアイズキーをデモンドライバーに差し込む。すると、ドライバーから晴明の終わりを告げる様な暗く、重い音が流れ始める。
「変身」
《シッカリ開錠!!》
《ガチ憑依!!》
それからドゥラストティアイズキーを掛け声と共に回すと、エイルが憑依した後、それを呑み込むようにして炎の様に流動的な装甲が形成される。全身が闇の様に真っ黒で、目は血の様に赤く光り、腕と脚に鋭い棘が伸びる。
《悪魔の名はンードゥ・ツーラスト!!72の数字を持ち、その闇は全てを呑み込み、闇へと帰す!! この闇から逃れる事はできない!! King of darkness!!》
仮面ライダーメレフ スタンドドゥラスト────。
「闇に呑まれろ、悲しき使徒よ」
今、最後のナンバーが解き放たれる─────。
色々と説明が多い回でしたが、次回あのンードゥの力を使いこなす……?
いきなりどうして……?
次回、第26解「我が手にする、我の淵源」
次回もよろしくお願いします!!