それではどうぞご覧ください。
恭也の身体は限界だった。ンードゥの強大な闇の力を使用した事により、その負担はより大きく、魂をより多く消耗し、最早いつ死んでしまってもおかしくない状態であった。
先日のリアルとの戦いの後は特に身体に異常は見られず、誰もが安心しきっていた。が、今日になって異変が起きた。一見するとこれといって変わった所はないのだが、悪魔たちが言うには生命エネルギーを感じられないそうなのである。
これがいつ死んでもおかしくないと言われる理由だ。要はゾンビになりかけ、生きているのか死んでいるのかわからない状態。
エイルはその身体の状態を心配し、酷く泣いた。自分を責めているようだ。
自室の隅で泣き続ける彼女に恭也は声をかける。
「エイル」
「……… 申し訳ございません」
「俺は現実を受け止めている。使命を果たす為、この命を使う。それは王となったものの宿命だ」
「何故…… 恭也様はそんな強くいられるのですか?」
「…… はっきりと言えば恐怖を抱いていない訳ではない。あれほど苦しかったのに、今では何も感じなくなっている。死期が早くなっていると言う解釈になるだろうが、やはり実感が湧かないというのが強い。何故だろうな。結局、俺にもよくわからない」
「…………」
「んー………─── よし」
恭也は何か思いついたようで、悪魔たちを自分に注目させる為に手を叩いた。
悪魔たちが恭也に注目すると、彼はある提案をする。
「皆、出掛けるぞ。今更だが、親睦を深める────」
このいきなりの提案に誰もが驚き、そして誰も止めるものはいなかった────。
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本来、外に出る事は人目があり禁止されている。なので、恭也は人気がない場所を選び、そこへジェイクとティッツを連れて来た。
この珍しい組み合わせに2人は困惑したが、1000年以上前からの長い付き合いなので今更なんだと、すぐにいつもの状態に戻った。
「それでここはなんだ? 王よ?」
「歩くの疲れたよ〜」
「もう少しだ」
2人を連れてやって来たのは街が見える高台であった。ここは普段ならばデートスポットとしてカップルが多く訪れる場所なのだが、悪魔の件や天使の件等が重なり、その影響で所々が壊れてしまい立ち入り禁止になっている。
ここの街灯は当然ながら機能しておらず、辺りはすっかり暗くなっていたので、ジェイクに頼んで炎を散りばめてもらった。暗闇に揺らめく炎を見つつ、恭也はニコッと笑いながら話し始める。
「お前たちに会ってからまだ1年も経っていないのに、俺はお前たちを部下や仲間ではなく、家族だと認識する様になった」
「あ?」
「急にだと思うだろう… 王の気まぐれという奴だ。こうしてお前たちとゆっくり話がしたかった」
ジェイクとティッツは顔を見合わせる。やはり急な事で動揺を隠せていない。
ティッツは恭也に本当の目的はなんだと聞く。
「王様〜… 本当はなんなの〜」
「…… お前たちはわかっているだろう。俺はいつ死んでもおかしくない状態だと」
「あ、うん…… もしかして私たちを呼び出したのって」
「あぁ、もう長くないからな。その家族の様なお前たちと話せる場が欲しかった」
そして恭也は2人の顔を見ながら彼らとの思い出を話し始める。
「まずジェイク、お前と会った時、最初は力を使わせてもらえなかったな」
「あぁ、あの時のお前は熱さが足りなかったからな! だが、今となっては俺が求める熱さを手に入れた。何者にも平伏すことのない圧倒的心の熱さ!」
「俺はまだ王として未熟だった。それに自分に自信がなかった」
「自分に?」
「そうだ。今は王としてやっているが、実際は何も稼げてない親の脛を齧って生きてる人間だ。就職をしようにも何度も落ちて…… だが、お前みたいな熱い悪魔のお陰か、俺の中でお前の言う熱さ?が燃え上がった気がした。王になるきっかけを作ったのはエイルだが、自分に自信が持てるようになったのはお前のお陰だと思っている」
「はっはっはっ! 褒めた所で何も出ないぞ!」
次にティッツに顔を向けると、彼女は珍しく頬を赤く染めた。まだ何も言っていないのだが、ベタ褒めされる事に期待しているのだろう。
「ティッツ」
「な、なに〜」
「お前とは普通に出会ったな」
「え、あ、はい」
期待していたのとは裏腹な言葉にティッツはスッと真顔に戻った。
「はははっ、すまない。だが、お前の親しみやすさが俺の心の支えになっていた。誰に対してもその物腰の柔らかさがお前のいいところだぞ」
「へへ〜 そうでしょ〜」
「…… もう少しだけお前たちといたかった」
「恭也……」
あと何回変身したらこの命は尽きてしまうのか。ンードゥによれば残り数回程度で終わるらしい。変身せずとも魂を使用し続けていた為、普通の人間よりも寿命が短く、この先長く生きられないのは確かである。
そんな底知れない恐怖をポツリと恭也は溢した。
「王。まだお前が確実に死ぬと決まったわけじゃない!! ンードゥも言っていただろう!!?」
「そうだよ〜!! みんなの力を使いこなせれば済む話なんだから落ち込まないでよ〜!!」
2人は恭也を励ました。この悪魔たちは王としてではなく、恭也という1人の人間として好いてくれたのだろう。
王の良いところを一頻り言って励ました後、恭也は気分を良くし、そろそろ帰路に着こうかと言ったところで、後ろから凄まじい殺気を感じて振り返った。
「お前は…!!」
「私はリアル。あの時は世話になったな」
そこには闇に封じ込めたはずの使徒リアルの姿があったのだ────。
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恭也はメレフに変身し、リアルと激しい戦いを繰り広げていた。これといって変わった所は見受けられないが、ンードゥの力を使ってようやく封じ込めたのだから弱い筈がない。
リアルは指先のひとつひとつからレーザーを放ち、時には屈折させたりと、攻めるチャンスを潰してくるような攻撃を行ってきた。これも前とは変わらないが、これが非常に厄介なのだ。
これに対してメレフは防御以外の行動を取れずにいた。
この状況を打開する為には、ンードゥを呼び出して再び闇に送り込む方法が取れる。しかし、それをした所でこの様に脱出される事がわかったのだからその場凌ぎにしかならない。倒すしかない。
「くぅ…!!」
「やはり奴の力がなければこの程度の様だな」
メレフがレーザーを1本を弾いたと同時に逆の方向からレーザーが飛んできて、それを防ぐ事はできるはずもなくまともに食らってしまった。
受け身や次の攻撃に対する防御をしようとするが、間髪入れずにレーザーがメレフを捉えた。
闇に閉じ込められた恨みを晴らす様に、何本ものレーザーが雨の如く降り注ぎ、やがて満足したのかピタリと止まる。
「かはっ!!」
「お前の近くにいた悪魔は使えないな」
「…… なんだと?」
「奴らの力を使った所でンードゥの力に及ばない。出てきたとしても私に完膚なきまでに叩きのめされるだけ。それにも関わらずお前は奴らを大切な仲間だとほざく。何故だ? 闇の力さえ使っていれば勝てるのだぞ?」
「お前は何もわかってないようだな……」
「ん?」
「弱いとか… 強いとか… そんなものはどうでもいい。奴らは俺の大切な仲間… 家族だ。その絆の強さは闇の力さえも上回る」
「絆……? そんなものなんの役に立つ? ならば証明してみせよ。その力とやらを」
「聞こえるかジェイク… ティッツ。俺はお前たちを信じる。お前たちの力は奴よりも気高く、そして強い。だから…… 奴を葬る為の力を貸せ!!!」
そしてメレフはジェイテンティアイズキーを取り出すと、それをドライバーに装填し捻る。身体は炎に包まれ、スタンドジェイテンの姿に変身する。
《悪魔の名はジェイク・テンプ!!10の数字を持ち、その獄炎は全てを焼き尽くす!!》
「ふん…!!」
「…… 哀れ」
そう言ってリアルがレーザーを放つと、メレフはメレフキーブレードを大剣に変化させ、身体を大きく捻り、炎の斬撃をリアルに向けて放った。
2つの攻撃はぶつかり合い、相殺もしくはメレフの斬撃が貫通されてしまう可能性があった。が、2つの選択肢は間違いだ。炎の斬撃はレーザーを真っ二つに裂いて突き進みリアルを凄まじい熱量で燃やしたのだ。
「な、なんだとッッ!!?」
そのあまりの熱量にリアルは思わず地面を転がった。今までとは比べ物にならないほどの炎を纏ったこの形態。
それに1番驚いていたのはジェイク自身だった。
「お、おい王…… これは一体どういう事だ!?」
「わからない… だが、俺の中に今までとは違う力が芽生えたのを実感できる。まるで魂が燃え上がる様な感覚だ」
「なるほどなぁ!! つまり熱さがとんでもないという事か!!」
「そういう事になるな…… 行くぞッ!! 全てを焼き尽くす!!」
全くと言っていいほど理由にならない答えだが、メレフの中で何かが変わったのは見て取れる。
メレフはリアルの方へと走り、大剣を豪快に振るい、リアルが出すレーザーごと叩き斬っていく。全てを焼き尽くすさんとするその一撃は、やがてリアルの両手をも燃え上がらせた。
「わ、私の手がぁぁぁぁぁぁッッ!!?」
「ふんっ!!!」
《ジェイテンシャットアウト!!》
ドライバーのキーを何度も捻って10番台全ての悪魔の力を結集させ、大剣にとてつもない炎を纏い、身体が軋むほど大きくのけぞり、それをバネにして脳天からリアルを叩き斬った。
「燃えるッ!!…… だが、無駄だ!! 私は倒されようと何度でも…!!」
「ティッツっ!!!」
《悪魔の名はティッツ・ニーマル!!20の数字を持ち、その荒波は全てを包み込む!!》
そしてメレフはすかさずスタンドティニーマへと変身すると、大剣を杖に変化させ、リアルを水で包み込んで拘束し、そのまま氷山の様に凍らせてしまう。
先程のジェイクの炎もそうだが、ティッツの水や氷も彼同様に強化されており、リアルは芯まで凍らされて身動きどころか生命活動もままならない状態にされてしまう。
「──── 終わりだ」
「……ッッッ!!!」
それからメレフはドライバーのキーを何度も捻り、20番台の水の悪魔の力を杖に宿し、杖の先から硬い氷をも貫通する極太の水のレーザーを勢いよく放った。
リアルは当然凍らされているのだから身動きが取れず、そのままその身を全てレーザーに包まれ塵となってしまう。
《ティニーマシャットアウト!!》
「─── 眠れ、悲しき使徒よ」
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リアルは塵となっても余裕だった。自分は使徒なのだから復活できると。復活したと同時にメレフを殺してやると。そう意気込んでいた。
だが、数秒、数分、数十分と経ってもまるで身体は再生しなかった。叫ぼうとしても身体が元に戻らないのだから叫べるはずもなかった。
「っっ……っっっ!!!」
やがてリアルの身体は朽ちて二度と復活することはなかった。使徒リアルはゴエティアに謝罪する間もなくこの場にて散る────。
恭也はリアルが朽ちる様子を見つつ変身を解く。若干フラッとしたが身体に異常は見受けられず、寧ろ前よりも軽い感じがした。
「…… 一体この力は…?」
「あの時お前に何があったんだ? この短時間でここまでの力を引き出すとは……」
ジェイクにそう聞かれるが恭也自身何が起こったのか全くわからない。
するとティッツが「あっ!」と言い恭也にこう言った。
「もしかしてもしかして〜さっきの絆とやらが関係してるんじゃない〜?」
「なに?」
「恭也が王!って感じじゃなくて私たちを対等とか仲間とか、そういう近い関係だって思ったからなんじゃないかな?」
「んー…… 確かに。あり得なくはないな」
「つまり恭也がこれからみんなとの絆を深めていけば…!!」
「なるほど。そうすれば先程の様に力を引き出すことができ、俺が死ぬ事は無くなるかも知れないということか」
「そういう事〜」
仲間仲間と言っておきながら、恭也は結局のところ部下という根本的な認識は変わってなかった。だが、今回の件で彼自身の見方が変わったのか、はたまた彼自身の成長具合によるものなのかはわからないが、どちらにせよ大きく前進した事に変わりはない。
恭也は再び悪魔たちとの関係を深める為、彼らに歩み寄る事を決意する───。
ごめんなさい1ヶ月送れました。
また次回から早めに投稿できますのでご安心ください+いつも見てくださっている方々、本当にありがとうございます。
次回、第28解「我が嵐、我が轟く」
次回もよろしくお願いします!!