前回、何の取り柄もない人間「大神恭也」は悪魔の王としての宿命を背負っているという信心られない事実に困惑したが、自分を変える為に人々を守る為に「エイル・ワン」という悪魔の力を使い、仮面ライダーメレフへと変身する。そして一体目の悪魔ビーツを封印すると、その場に残ったのは人間の姿であった…
それではどうぞご覧ください。
昨日のあの戦いを気に恭也の人生はガラリと変わった。
自分が本当に悪魔の王なんかになれるのかな、と寝て起きてもそんな想いが頭を過ぎる。
だけど今はその宿命とやらに乗っかってみようと思う。何もできない自分を変える為のチャンスであり、自分が誰かの為に役に立てるのならやるしかないんだ。
「……… エイルよ」
「はい、なんでしょうか恭也様?」
「添い寝する事を許可した覚えはない」
「… はっ! 申し訳ございません! 隣が不自然に空いていたもので…!」
「空けてない! 壁寄りで寝る方が好きなだけなの! 俺はっ!…… っとと…」
恭也は昨日からもう決めた。王になるのならまずは威厳を見せなければならない。
だからこうして何も知らない自分を慕ってくれているエイルや他の悪魔達の為にも、見た目はともかく言葉の使い方だけはそれっぽくしなければと思っていた。
「それより昨日の… ビーツ? だったか? そのデモンティアは封印されてどうしているんだ?」
「昨日のビーツは私の直属の部下ですので、私のキーの中に待機しております」
「直属の部下…? エイル、お前はデモンティアの統括を任されているそうだな?」
「はい! おっしゃる通りです!」
「…… 俺はそもそもデモンティアの数やお前達の組織? 構成というのか? そう言ったものを把握していないのだが…」
「こ、これは申し訳ございません!! 本来ならば説明しなければならない事を後回しにしてしまって…!! この失態は私の身体で…!!」
「いらんいらんいらん!! やめろ!!…… とにかく俺はそれを知りたい。説明を頼む」
「承知しました!…… デモンティアは私含め72体存在します。そして特定の数字を持つ者は同じ位の者たちを使役し、今以上の力を解放する事が可能となっております」
「くらい…? 位とはなんだ?」
「私が1の数字を持つ悪魔ですので、その下の2〜9までの数字が私の直属の部下となっております。なので、順当に行くのであれば、10の数字を持つ者は11〜9までの悪魔を使役し、20の数字を持つ者は21〜9までの悪魔を… という風に72番までこのような構成になっております」
「ほう… つまりお前たちデモンティアは各位の数字ごとに隊長のような立ち位置のやつがいるという事か」
「左様でございます」
「… しかし、72番目ともなると人数が3人しかいないのか。そうなると60番目と混合と考えても…」
「あ、72番目は……──── っ!」
「どうした? いや、そういう事か」
「はい、再びデモンティアが現れたようです───」
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いつからだろうかと数年前から繰り返し頭の中で呟いている。
男は今年で40歳となり、良い妻をもらい結婚もして子供もいて、とある会社の部長になって金銭にも困らず、毎日毎日大変だが幸せで豊かな暮らしをしていた。
しかし、何故か男は満たされなかった。彼は今、自分が特別幸せだとは思っていない。それどころか不幸とも思っている。
(今日はうちの部署に新人が入って来るんだったなぁ…)
今すぐ他の場所へ行ってくれと心の中で願う。
身勝手極まりないのだが、男はもうこの忙しさにはウンザリとしていた。
なんでも手に入ったし、これ以上のものはないと最初は自分もそう思っていたのに、結一番大切なものをなくしているのに気づいたのはいつからだろうか。
「時間がない…」
自分の時間がない。家族や仕事、家に帰っても仕事仕事、自分の時間も取れやしないのに幸せだと?ふざけるな。上に立って見てからそう言ってくれよ。
男は苛立ちながら自分の勤める会社へと到着し、廊下を歩いてその角を曲がると不思議な事に人がいなかった。
「あれ…? 誰もいない?」
男が会社に着く時間帯はいつも1人だ。鍵を開けるのも男がやる為、この会社は男1人だけの空間となっている。
この静寂した時間が好きというのもあり、いつも早くに家を出てくるのだが、今回ばかりは違うのだ。
今日は大事な会議であり、全員この時間に来ると決まっていたはずである。なのに、誰1人としてそこにはいなかった。
なら、会議室の方にいるのではないかと普通は思うだろう。その会議室ですらドアが開かれていないし、人の気配すらない。
「一体どういう事なんだ───」
「さぁ、どういう事だろうね?」
「……っ!!?」
男は背後から突然声がしたので驚いて振り向き、声の主の姿を確認してからまた驚いた。
それは悪魔だった。信じられないが、どこからどう見ても悪魔としか言いようがない姿をしている。鋭い牙に鋭い目、鋭い爪に鋭い尾。明らかに普通ではない。
「な、なんだ君は…!!」
「僕は『シィスリ』。君の味方だよ」
「私の…?」
「僕と契約をしようか。契約を交わせばなんでも手に入る。君は時間が欲しい。そうだろう?」
「何故それを…… だが、時間なんてそんな物どうやって…」
「君もわかる通り僕は悪魔だ。なんでもできる力を持っている。どうする?」
「どうすると言われても… 悪魔と言うならきっと裏があるはずだ。何か欲しいのだろう? 代償に魂とか」
「あーあーいらないいらない。僕が欲しいのは君の笑顔だ」
「………」
「信じてないね? まぁ別にいいよ。本当にこれからも時間がないままに、家庭に追われ、仕事に追われ、そうして生涯を自分の時間もなく終える。他人の為だけに使って自分に使えない。他人はそれを普通と思い、当然と思っている。君はそんな奴らの為に時間をくれてやるのかい? もう何年と生きれるかもわからない寿命… 時間をさ」
「………… 私は嫌だ」
「んん?」
「この先、他人に私の時間が取られるなどもうごめんだ」
「だからどうしたい?」
「… 契約だ。契約する」
「あっ…… ふふふっ、いいね。いいよ。じゃあ契約成立という事で────」
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「エイル」
「はい!」
「そのデモンティアは人間の魂を喰らうわけだが、ビーツの一件で魂を喰われたはずの人間が何故生きているんだ?」
現場へと向かう恭也は昨日のビーツの一件が気になっており、エイルにその疑問を投げ掛けた。
恭也の言う通りデモンティアは人間の魂を喰らう。だが、ビーツは魂を喰らうどころか人間の身体に憑依していた。
それを聞かれたエイルは笑顔が消える。
「それは…… 恭也様が変身なさるお姿メレフは私たちデモンティアの力を憑依させて初めて完成致します。それと同様に封印を解かれたデモンティア達もただの人間に憑依する事が可能です。しかし、恭也様のような特別な存在ではない限り、
「まさかビーツはその人間に憑依後、縁のある者達を騙して魂を喰らおうとした訳か」
「はい。我々デモンティアの力は封印されて以降、その力の大半を失ってしまいました。私もその1人です… 契約など交わさずとも魂を喰らう事など容易でした。ですので、恭也様のお力さえお貸しいただければ、弱りきった我々デモンティアは真の力を発揮できるのです」
「容易にね……」
容易か。このエイルも自分を慕ってはいるが、本当は他のデモンティア達のように人間の魂を喰って生きていたのだ。そんなのわかりきっている。
恭也はエイルは信用したいと思っていた。昔から王に仕え、王の為に戦って来てくれた。そんな彼女を信じなくては王として威厳や誇りはどうする。
…… あれ? そういえば、エイルは何故王に仕えるようになったんだ? 彼女はああ言ってはいたが、実際の所は具体的な内容というか根本の部分の話しがない。
「… エイル──」
「…っ! 恭也様! あちらに倒れている人間が!」
「なんだと…!?」
そこには男が倒れていたが、周りを見ると1人どころではなく10人以上は気を失って倒れている。
恭也は目の前にいる男に何があったと問いかける。
「ば、化け物が出たんだ… みんなそいつに襲われて…」
「やはりそうか… 怪我はないのか?」
「怪我はないが、早く警察に連絡を…!!」
「…… わかった。とりあえず連絡してと」
そして恭也は元の口調で警察に連絡し、エイルに場所を聞きながらデモンティアを追う。
どうやらここら一帯から既に離れており、別の場所へと移動しているようだった。
「一定箇所にいるというわけではないのだな」
「きっとこのデモンティアは慎重なのかも知れません… ならば、シィスリの可能性があります。奴は慎重派ですので場所を移動し、我々の追跡を逃れるつもりでしょう」
「逃れられるのか?」
「いえ、逃しません。この私にお任せを!」
エイルは翼を広げて空を舞い、上空からデモンティアの反応がする方に目を向ける。
この反応ならまだ近くにいるはずだ。王であるこの方の為なら秒で追跡し、捉え、封印し、そして…
「また添い寝を試みます!!!」
「… は?」
こいつは何を言っているんだという目で見る恭也だが、逆にその視線が彼女を刺激したらしく身体をくねらせている。
そんな中でも流石王の側近で全ての悪魔を統括する悪魔だ。しっかり指が悪魔があるだろう方向を示していた。
「とにかく行くぞエイル…」
「はい!」
居場所がわかった2人はその方角に向かって走り出す────。
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森の奥深くまで入ってようやくシィスリと思われる悪魔を追い詰めた。
見た目はビーツと似ているが、ビーツより細身で目が丸い。
「追い詰めたぞ…… えっと」
「確定しました。奴はシィスリです」
「そうだシィスリ。お前もここで封印してやろう」
しかし、シィスリは余裕の笑みを浮かべ、恭也を相手に頭も下げずに肩にポンッと手を置く。
その行為に今にも飛びかかりそうな従者を無視し、恭也はシィスリに再び顔を向ける。
「何が目的だ」
「これはこれは現王。どうやらお怒りの様だね」
「少しな」
「… 目的もこうも僕たちデモンティアは人間の魂を喰らって生きているんだ。そこのエイルから聞かなかったかい? デモンティアだって命はある。永遠じゃないんだ。君たちがやっている食べるという行為を僕らはただしているだけさ。そこのエイルだって──」
「──!! やめなさいシィスリ!!」
エイルはシィスリが何かを言おうとすると血相を変え、彼が喋るのを横から入って止めた。
「エイル…?」
「す、すみません…」
「…… 訳は後で聞こう。それよりもシィスリ。お前の言うことは確かに正しい。だが、俺もお前たちを好きにさせるわけには行かない。デモンティアを封印する。その為に俺は戦う」
恭也は腰にデモンドライバーを装着し、エイワンティアイズキーを手に持ち起動させる。
《エイワン!!》
「ふーん、現王も信念がある人か」
「借りるぞエイル」
そしてエイワンティアイズキーをデモンドライバーの鍵穴に刺し込み構える。
「変身ッ!!!」
《開錠!!》《憑依!!》
鍵を捻るとエイルが憑依し、強固なアーマーが展開され、恭也は仮面ライダーメレフへと変身する。
《悪魔の名はエイル・ワン!! 1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》
《スタンドエイワン!!》
「シィスリ。お前を封印する」
「できるかな? 僕には回避手段あるよ?」
「ならば… 見せてみるがいい!!」
メレフはメレフキーブレードを召喚し、シィスリを縦に切り裂く。
しかし、切られたシィスリは特に何もしない。普通この場合腕を使って防御する姿勢や少し後退するなどといった戦法を取る筈だ。
そんなシィスリに違和感を覚えつつもメレフは剣を振り続ける。
「はぁっ!!」
なぜ攻撃をしてこないのか。なぜ攻撃を受け続けるのか。
奴の狙いがなんなのかわからない。わからないのだが、切り付ける度に嫌な気持ちになってくる。
今までやった事がなかったからわからなかっただけだった。今ならわかる気がする。人を切るという感覚だ。
「んっ…!?」
すると、メレフはシィスリを切り付ける手前でピタリと剣を止めた。
シィスリはニヤリと笑って鋭い爪で切りつけてから、両腕を伸ばして手を組むと、ハンマーの様に上からメレフを叩きつけた。
「ぐはぁっ…!!」
「恭也様!!? どうされたのですか!!?」
「…… ダメだ」
「え?」
「攻撃できない…」
「何故ですか!!?」
「お前も見えている筈だ」
「あっ…!」
シィスリの身体からは憑依した人間の顔が見えていた。
彼の言う回避手段とは自分の憑依した人間をチラつかせ、メレフの攻撃を封じようというモノだった。
先ほどの恭也の発言に反応したシィスリは先代の王の様に信念があると睨んだ。
つまり恭也は人間だということ。デモンティアは本能のままに生きる生物。人間は何か信念が有ればほぼ確実に曲げる事はない。ましてや王の器となる人間が同族を斬るなどあり得ない。それが封印エネルギーを込めたキックだとしても傷つける事を拒む筈だ。
だからシィスリは勝ちを確信していた。
「すまん… エイル」
「恭也様…」
これは勝機と見たシィスリは再び腕を伸ばして鞭のようにしならせてメレフを四方八方から叩きつけた。
いくらメレフの装甲が頑丈といえど限度は必ずある。このままではいずれにしろ破壊される。
すると、エイルは恭也にドライバーにキーを回すよう頼む。
「それをすればメレフの力が……!!」
「いえ、エイワンティアイズキーのボタンを押さずにキーを捻ってください。きっと貴方様のお役に立てる筈です」
「…… わかった」
そしてメレフはシィスリの腕をタイミング良く掴んで振り回して投げ飛ばす。
そのほんの少しの隙を利用し、デモンドライバーに挿したキーをボタンを押さずに捻る。
《開錠!!》《憑依!!》
《エイワン!! ビーツ!!》
「な、なんだ… 力が溢れてくる…!!」
シィスリは体勢を立て直し、再び腕を伸ばして拘束しようと試みるが、メレフは素早く剣を振って腕を弾き飛ばした。
ただ先ほどよりもパワーアップしているのか、弾き飛ばした腕に引っ張られてシィスリは転んでしまう。
「これが同じ位の者同士、そして属性を持つ者の共鳴により起こる力。どうぞ私の力を貴方様のお力に…」
「だが、これでは人が…」
「恭也様があの人間を傷つけたくないという想いが強ければ必ず答えましょう。だから私たちの力をお使いください。貴方様の願う結末をお見せ致します」
「そうか… そうだ。俺は王だ。何もできない、何も成し遂げられない人生など2度とごめんだ…!!」
そしてメレフはキーのボタンを押して飛び上がり、エイルとビーツの力が混ざり合った前よりも強力なライダーキックをシィスリに向けて放つ。
「こ、これを見てよ!! 人間があるんだよ!!? 人間がここにいるんだ!! 僕の中に…!!」
「安心しろ」
「え…?」
「俺が助け出す!!」
「ひぃぃ!!?」
「眠れ、悲しき悪魔よ!!」
《エイワン!! シャットアウト!!》
メレフのライダーキックはシィスリに炸裂し、封印のエネルギーが身体の中を巡って爆発を引き起こした。
そしてメレフはキーを抜き、シィスリにできた鍵穴に差し込んで捻り封印を完了させる。
「…… ふぅ」
「さすが我が愛しの恭也様!! 2人の悪魔の力を使いこなすとは…!! 好きです!! 凄く好きです!! 愛してます!!! 好きッッッ!!!!!」
「さて、彼を連れて帰るとしよう。ここに置いていくわけにもいかないからな」
「承知しました恭也様好きです好き」
「うむ、好きが語尾になっているようで何よりだ」
メレフは悪魔の離れた男を抱えて街へと戻る───。
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シィスリに憑依された男は退院後、家路に着いたが、道中でもあまり気の利いた会話ができなかった。
悪魔と契約したなどと信じてもらえる筈もない。それに信じてもらえる以前にそんな奴とあんな理由で家族すらも捨てようとした自分が情けなくて仕方がなかった。
「……… あのみんな」
「さぁあなた、早く家に入ってあげて」
「え?」
「いいから」
男は妻に急かされながら家に入り、リビングへと行くといきなりクラッカーの音が響き渡る。
そこには息子と娘がニコニコとしながら待っていた。テーブルにはケーキや豪勢な料理が並んでいる。
「こ、これは…」
「パパ退院おめでとう!!」
「大丈夫で良かったね!!」
「…… この子達がね? あなたが退院するから美味しいもの作ってっていうから、ふふっ。久しぶりに腕を振るっちゃったわ」
男の目から自然に涙が溢れてくる。
妻達は彼を心配しているようだが、彼はそんな妻達に感謝の言葉と謝罪の言葉が頭の中をぐるぐるとしていた。
その涙は嬉しい気持ちもあり、申し訳ない気持ち、色んな気持ちが篭った涙だった。
だから男はそんな気持ちを全てこの一言に収めた。
「愛してる…!!」
そして男は妻と子供達を抱きしめ再び泣き始めた─────。
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「これで2体か… エイルを含めて残り69体か。中々骨が折れそうだ」
「私はもう貴方様の心に封印されてます!!」
「あ、うん… それでだエイル」
「はい? なんでしょうか?」
「シィスリの言っていた言葉の意味はなんだ?」
「…っ!! そ、それは……」
「教えてくれ」
「あの……」
「……… そうか。よくわかった」
「え?」
「お前が話したくないのならそれでいい。だが、もしも話せる機会ができたら話してほしい。今はとにかくお前と共にデモンティアを封印する。それまでよろしく頼むぞエイルよ」
「恭也様…… はい!」
恭也は優しく微笑むとエイルもそれに合わせて微笑んだ。
2人の戦いはまだ始まったばかりである────。
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「─── 全くよぉ!! 俺の部下のデモンティアは気合が足りねぇ!! 本能だけに支配されやがってちくしょぉぉぉぉ!!! … っと、早く王様のところに行って俺も熱くなりてぇなぁ!! 言うこと聞かねぇ馬鹿ども封印して頭冷やす… いや、燃やしてやらねーとなぁ!!!」
そんな恭也たちの元に熱く燃える悪魔が近づいていた───。
2週間経ちましたね(汗
なんでエイルに対して誰も反応しないのー?とかデモンティア関係の事はまた次回説明いたします!
第3解「我と戦い、我の力となれ」
次回もよろしくお願いします!!
※また必殺音入れ忘れたので入れました申し訳ない…