シンオウ地方を旅してみればポケモンたちの声がする 作:かれいの煮物
この日のミオシティはいつにも増して雪が降っていた。
今日は一日中、海からの強い潮風が吹き付け潮の香りと冷気を街ゆく人達の肌に叩きつけていた。
私はある一人の男と待ち合わせをミオ図書館でしていた。
その男の名前はハルト。
私が生まれた時からの幼馴染である二人の内の片方。
そして、私達が十歳になりシンオウ地方のポケモン研究の権威、ナナカマド博士より
ヒコザル、ナエトル、ポッチャマの三匹を貰い一緒にシンオウを旅した旧友。
彼と私とは二年前、私がシロナという少女に負けてチャンピオンを降り、
逃げ帰るようにしてミオへと帰って来た時に一度だけ話をしたぐらいだ。
彼は今、もう一人の幼馴染であるユキと結婚して、考古学者として、
シンオウ中の遺跡を回って発掘、調査をしているらしい。
家を出て跳ね橋を渡り、少し歩くとすぐに図書館が見えた。
懐かしい。
私達三人が旅に出る前からちっとも外観が変わっていない。
コートの肩に掛かった雪を落としながら中に入ると、懐かしい本の匂いと、
旅に出る前からいる少しばかり老けたであろう受付の女性がいた。
私と同年代の子供達はよく彼女に読み聞かせをして貰っていたものです。
「あら、トオル君?久しぶりにここに来たわね。今日はどうしたの?」
「どうも、お久しぶりです。今日はハルトと二年ぶりに会うんです。彼を見ませんでしたか?」
「え?ハルト君はまだ来てないわよ?二階で本でも読んで待っていたら?」
どうやら彼はまだ来ていないようだ。
彼女に言われた通り、本でも読んで待っているとしよう。
ちなみに『トオル』というのは、私の名前だ。
二階に上がり、本棚から本を適当に取り、読み始める。
私達が旅に出る前、よく三人で一緒に本を読んでいたものです。
あんなに大きく感じられた本も十何年も経つと小さく感じられます。
「ようトオル、二年ぶりだな」
本を読み始めて数分、ハルトが声をかけてきました。
何と、何と懐かしい。
十年前、一緒に旅に出た時からあまり変わっていません。
「やぁハルト。久しぶりですね。君は変わっていない。本当に懐かしい」
「ああ、俺もだ。最近何してるんだ?また研究所とやらに引きこもってんのか?」
「ええ、そうですね。最近はコダックの頭痛について研究しています」
「コダックの頭痛ぅ?そんなんより一緒にフィールドワークに行こうぜ」
「嫌ですよ。フィールドワークなんてホウエンのオダマキ博士だけで十分ですよ」
それにしても久しぶりに会うと話すことが沢山ありますね。
「そうだ、それより結婚おめでとうございます。ユキは今何を?」
「ああ、ありがとうな。ユキは今家だわ」
「おや、そうですか。ところで、なぜ今日は待ち合わせを?」
「すまん、本題に入るわ。実はお前に頼み事があってな」
「何です?金を貸す事以外なら大丈夫ですよ?」
「金の無心じゃねぇよ。俺に妹がいるのは知ってるだろ?」
「ええ、確かリコとかいう名前でしたよね?」
そう、彼には妹がいるのでした。しかし、何故その名が?
「ああ、リコは少し体が弱くてな。十四歳になるまで旅は無理だと」
「おや。ですが、彼女はもう十四歳なのでは?」
「体は良くなったんだがまだ心配でな?リコの旅に着いてやって欲しいんだ」
「ええ、他ならぬ君の願いです。構いませんよ」
「本当か!?ありがとう!出発が明後日なんだ。よろしくな!」
「では明後日に私の研究所に来てください」
「おう!じゃあな!」
そう言って彼はすぐに階段を降り帰ってしまった。
もう少しぐらい話していたかったが仕方ありません。
私も帰って準備でもすることにしましょうか。
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