シンオウ地方を旅してみればポケモンたちの声がする 作:かれいの煮物
「これがランターン、そっちのはコイキングの資料です。よろしく頼みますよ」
「えぇ。お任せください」
そう言って私は何枚かの紙の束と合鍵を職員のユウキ君に渡す。
ミオ図書館でハルトと久しぶりに会ってから二日後、私はミオの郊外にある自宅兼研究所にいた。
この家は私がチャンピオンを辞めた時に一軒家を買い取り、増改築をして研究所をくっ付けた。
それからは地方に遊びに行くか、ここで水タイプのポケモンの研究をして過ごしていた。
ハルトの話では正午ぐらいに件の妹さんを連れて来るという。
どんな子なのだろう。体が弱いとは言っていたが大丈夫だろうか。
「どんな子なのでしょうか、ルンパッパ?」
「パッパ?」
そう言って私はテレビの前で動画を見ながら踊っているルンパッパに話しかけた。
最近ルンパッパは暇さえあれば私にテレビを付けさせダンス動画を見て踊っている。
そのせいで、電気代が馬鹿にできない程高くなって来ている。
しばらくルンパッパが踊っているのを案外上手だと眺めていた。
その時、来客を告げるチャイムが鳴った。
どうやら彼らが来たようだ。
「さぁ、行きますよ。ボールに戻ってください」
そう言ってルンパッパをボールに戻し、私は玄関先に赴き彼らを出迎える。
「やぁハルト、よく来てくれました」
「おう、トオル、少し待たせたか?」
「こっ、こんにちは!」
玄関前には二人。ハルトとその妹さんだ。
今は三月で外は暖かく、三日前の吹雪が嘘の様に感じられた。
乾いてはいるが暖かい風で絶好の旅立ちの日だろう。
「どうぞ、入ってきてください」
「「お邪魔しまーす」」
いくら暖かいとはいえ立ち話をするのは寒くなるだろうと思い家の中に入れる。
「はじめまして。私はトオル。元ポケモントレーナーの研究者です」
「リコです。よろしくお願いします!」
元気よくリコと名乗った彼女は艶のある黒髪にハルトによく似た少し垂れた目をしている。
16歳にしては少し小さめの身長で白いパーカーと青いズボンを履いている。
まるでギャラドスみたいと思ってしまったのはここだけの話だ。
リビングに入り、周りをキョロキョロ眺めているリコを尻目に、
私は三人分のお茶を淹れてテーブルの上に置き座っているハルトに話しかけた。
「リコは元気いっぱいですね。体が弱いとは聞いていましたが何よりです」
「あぁ、昔よりはすごくマシになったんだ」
そんな感じで彼の近況やユキは何をしているかなどを話ているとリコの大きな声が聞こえてきた。
「すごーい!本物のポケモンリーグの優勝トロフィーですか?」
「えぇ、本物ですよ」
どうやら私のリーグの優勝トロフィーを見つけた様だった。
「リコはお前のファンなんだぞ。お前のポスターとか色んなグッズだって持ってるんだ」
「お兄ちゃん!恥ずかしいからやめてよ!」
「おや、それは嬉しいですね。もう私にファンは居ないと思っていました。それ触ってみます?」
「え!?いいんですか!?ありがとうございます!」
そう言ってリコは棚からトロフィーを出してあちこちを見ている。
何とリコは私のファンだったとは。
私がまだチャンピオンであった時にはもう少しファンがいたと記憶していたが皆、
私よりシロナさんがお好きな様であまり人気が無かった。
「ところで、君はもうポケモンを持っているのですか?」
「はい!ポッチャマを貰いました!」
「ポッチャマですか。一度見せてもらってもよろしいですか?」
「いいですよ。出てきて!ポッチャマ!」
リコがそう言ってモンスターボールの真ん中にある開閉スイッチを押す。
カチリと高い音と共に中からトレーナーに似て元気な水色のポケモンが出てきた。
「ポチャ!」
ポッチャマはボールから出てきてすぐにリコに飛びついて行った。
急に飛び付かれたリコが頭を撫でるとポッチャマはとても幸せそうにしている。
「なるほど。ずいぶん甘えん坊ですね。君とポッチャマは良いパートナーになるでしょう」
「だろう!?やっぱり俺の妹だもんな!」
ハルトの親バカならぬ、兄バカが出てきた。
そういえば、私達三人で行動していた時もよく妹がなんだと言っていた。
どうやら相当可愛がっているらしい。
「ああ、少し話し込んでしまいましたね。では早速行きましょう」
「はい!」
そうして私達は家を出て少し歩き、ミオシティと218番道路の境までやって来た。
ハルトとリコが暫しの別れをお互いに告げた後、ハルトは私に
「トオル、リコのことを頼むぜ。俺はこれから仕事があるからここまでだ」
と、短く声を掛けて去って行った。
目の前に広がる218道路、この道は十年前私達三人が一緒に旅立った時から全く変わっていなかった。
生息しているポケモンやポケモンバトルをするトレーナー達。
水辺を泳いでいるコイキングやヒンバス、空を飛んでいるムックルや木々を渡り歩くパチリス。
旅立ちやバトル、五年振りに帰ってきた時のことが懐かしい。
そんな懐かしさを感じながら私は振り返り、目の前の少女に話しかけた。
「リコ、準備は出来ましたか?ここから先が218番道路。まだ見ぬものがキミを待っています。
ここからがスタートです。是非、シンオウの全てをキミとポケモンが見ることが出来ると良いですね」
そう言って私達は218番道路へと一歩、踏み入れた。
やっと始まりましたね(他人事)執筆頑張らなきゃ(使命感)
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