ハリーポッターの従姉妹の話   作:弥白

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花粉でやばい作者です。

誤字報告ありがとうございます。ありすぎて申し訳ないです。



ハロウィーンとトロール

 

 

 

 

 

───飛行訓練は木曜日に始まります。グリフィンドールとスリザリンとの合同授業です。───

 

 

 

 

スリザリンの談話室に【お知らせ】が出て、それを読んだ1年はみんなでガックリした。スリザリンとグリフィンドールの合同授業は、今のところ魔法薬学だけだったが、飛行訓練まで一緒なのか!と何人かの生徒が叫んでいた。

 

 

 

 

「私、箒に乗ったことない……」

 

 

 

 

「大丈夫よ、ソフィア。案外簡単よ」

 

 

 

スリザリンもグリフィンドールも関係なく、魔法使いの家の子はみんなひっきりなしにクィディッチの話をした。少し前まで、マグル出のソフィアにとって箒で空を飛ぶことや魔法を使うことなど、空想の中の話であった。教科書を読んで暗記すれば済むものでもなく、ソフィアはガックリと項垂れた。

 

 

 

 

 

 

 

木曜の朝、めんふくろうがネビルにおばあさんからの小さな包みを持ってきた。ネビルはウキウキとそれを開けて、白い煙のようなものが詰まっているように見える、大きなビー玉ぐらいのガラス玉をみんなに見せた。それは、思い出し玉でギュッと握り赤くなると何か忘れていと教えてくれるというものである。ネビルが取り出すと、思い出し玉は突然真っ赤に光り出したが、ネビルは自分が何を忘れているのかさっぱりわからなかった。ネビルが自分が何を忘れているのか思い出そうとしているとき、マルフォイがグリフィンドールのテーブルのそばを通り掛かり、玉をひったくった。

 

 

 

 

 

ハリーとロンは、マルフォイと喧嘩する口実ができたと弾けるように立ち上がった。しかし、マクゴナガル先生が現れ、何事かと聞いた。マルフォイは、しかめっ面で玉をテーブルに戻し、見ていただけと言ってスルりと逃げた。

 

 

 

 

─────────

 

 

 

午後三時半

 

 

 

よく晴れた少し風邪のある日で、足下の草がサワサワと波立っていた。傾斜のある芝生を下り、校庭を横切って平坦な芝生まで歩いていくと、校庭の反対側には【禁じられた森】が見え、遠くのほうに暗い森の木々が揺れていた。スリザリン寮生は、既に到着していて、箒が地面に整然と並べられていた。

 

 

 

 

「何をボヤボヤしてるんですか、みんな箒のそばに立って。さぁ、早く!」

 

 

 

 

白髪を短く切り、鷹のような黄色い目をしたマダム・フーチがきて、開口一番にガミガミしだした。ハリーは自分の箒をちらりと見下ろした。古ぼけて、小枝が何本かとんでもない方向に飛び出している。マダム・フーチの掛け声に合わせ、生徒たちは右手を箒の上に突き出し、【上がれ】と叫んだ。ハリーの箒はすぐさま飛び上がってハリーの手に収まったが、飛び立った箒は少なかった。ネビルの箒はピクリとも動かず、ハーマイオニーの箒は地面をコロリと転がっただけだった。次にマダム・フーチは、箒の端から滑り落ちないように箒にまたがる方法をやってみせ、生徒たちの列の間をまりながら、箒の握り方を治した。

 

 

 

 

「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強くけってください。箒がぐらつかないように押さえ、2メートルぐらい浮上して、それから少し前かがみになってすぐに降りてきてください。笛を吹いたらですよ────一、二の─────」

 

 

 

 

ところが、ネビルは緊張するやら怖気付くやら、1人だけ地上に置いてきぼりを食いたくないのやらで、先生の唇に笛が触れる前に思いきり地面をけってしまった。戻ってきなさいという先生の大声をよそに、4メートル、6メートルとどんどん地上から離れていった。そして、声にならない悲鳴をあげ、ネビルは箒から真っ逆さまに落ちた。ポキッと嫌な音を立てて、草の上にうつ伏せで墜落し、草地にコブができたように突っ伏した。

 

 

 

 

「手首が折れてるわ。さあさあ、ネビル、大丈夫、立って。」

 

 

 

 

マダム・フーチは、ネビルと同じくらい真っ青になりながらネビルの手首を見た。そして、ネビルを医務室に連れていく間に、箒に乗ったものはクィディッチの【ク】を言う前にホグワーツから出ていってもらうと言い、ネビル。医務室に連れていった。

 

 

 

 

「あいつの顔みたか?あの大まぬけの」

 

 

 

二人がもう声の届かないところまでいったとたん、マルフォイは大声で笑いだした。ほかのスリザリン寮生達もはやし立てた。そこへ、パーバティ・パチルが止めに入ったが、パンジー・パーキンソンに冷やかされ黙ってしまった。

 

 

 

 

「ごらんよ!ロングボトムのばあさんが送ってきたバカ玉だ」

 

 

 

 

マルフォイが、高々と差し上げると思い出し玉は陽の光でキラキラと輝いた。返せというハリーを煽るように、マルフォイはヒラリと箒に乗り、飛び上がった。マルフォイは樫の木の梢と同じくらいの高さまで舞い上がり、そこに浮いたままハリーに取りに来いと呼びかけた。ハリーは、ハーマイオニーの静止を無視して、箒に跨り、地面を強くけって急上昇した。

 

 

 

 

 

「ねぇ、パンジー。あの2人は馬鹿なの?」

 

 

 

「さぁ、男のプライドとかいか言うやつじゃない?ソフィア」

 

 

 

 

箒に乗っている2人を、見上げながらパンジーとソフィアは、他愛もない会話を続ける。マルフォイは、ハリーがクルリと箒の向きを変え、自分と向き合ったことに呆然とし、せせら笑おうとするものの、少し顔が強ばっていた。ハリーは、両手でしっかり箒をつかみ、前屈みになった。すると、箒は槍のようにマルフォイ目掛けて飛び出し、マルフォイは危うくかわした。ハリーが鋭く一回転して、箒をつかみ直すと、下で何人か拍手をした。

 

 

 

 

「クラッブもゴイルもここまでは助けに来ないぞ。ピンチだなマルフォイ。」

 

 

 

「取れるものなら取るがいい、ほら!」

 

 

 

 

マルフォイは、ガラス玉を空中高く放り投げ、稲妻のように地面に戻った。ハリーは、高く上がった玉が次に落下し始めるのが、スローモーションのを見ているかのように良く見え、箒の柄を下に向け、一直線に急降下した。下で見ている人は悲鳴をあげたり、なにか叫んだりしていた。ハリーは、地面スレスレのところで玉をつかみ、間一髪で箒を引きあげ、水平にたて直し、草の上を転がるように軟着陸した。その手にはしっかりと、思い出し玉を握っていた。

 

 

 

 

 

ハリー・ポッター!!

 

 

 

 

マクゴナガル先生が、声を上げながら走ってきた。マクゴナガル先生は、ショックで言葉が出ないのか、メガネが激しく光っている。パーバティ・パチルとロンの言葉をさえぎり、ハリーを連れて大股に城に向かって歩き出した。マルフォイ、クラッブ、ゴイルは勝ち誇ったような顔をしていた。

 

 

 

 

 

「ポッター、どうなるのかしらね?」

 

 

 

「多分悪い方向には進まないよ、パンジー」

 

 

 

「どういうことだい、ダーズリー」

 

 

 

「どうもこうもないよ、マルフォイ。マクゴナガル先生が、この場で減点しなかったんだ。怪我もしてないハリーを連れてどっか行くのに……それに心做しか喜んでるようにも見えたしね。多分、グリフィンドールにとっていい方向、スリザリンにとって悪い方向に進むんじゃない……あくまで私の予想だけど……」

 

 

 

 

それを聞いたマルフォイは舌打ちをして、顔を歪めた。その後、マダム・フーチが戻ってきて、授業が再開された。パンジーは難なく箒に乗って見せたが、ソフィアはマルフォイに教えてもらい、ようやく乗れるようになったものの、フラフラと揺れ挙句箒から落ちた。

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

夕食時

 

 

 

 

ハリーは、ロンにマクゴナガル先生に連れられてグラウンドを離れてから何があったか聞かせた。ロンは、ステーキ・キドニーパイを口に入れようとしていたが、そんなことをすっかり忘れ、ハリーが最年少の寮代表選手だと叫んだ。1年生が代表になるのは百年ぶりらしく、大興奮の午後をすごしたハリーは、お腹がすいていた。フレッドとジョージが話しかけてきた。2人もグリフィンドールの代表選手でビーターを担当しているらしい。2人が消えるやいなや、クラッブとゴイルを従えたマルフォイが現れた。

 

 

 

 

「チッ、ダーズリーが言ってたとおりか……マグルのところに帰る汽車はいつに乗るんだい?」

 

 

 

「地上ではやけに元気だね。小さなお友達もいるしね」

 

 

 

 

冷ややかに言ったハリーに対し、クラッブもゴイルも先生たちがスラリと座っているので睨みつけることしか出来なかった。マルフォイは、今夜魔法使いの決闘をしようと言い出した。マルフォイの介添人はクラッブ、ハリーの介添人はロンが担当すると言った。

 

 

 

「真夜中でいいね?トロフィー室にしよう。いつでも鍵が空いているんでね」

 

 

 

そう言うとマルフォイは去っていった。ハリーは、介添人が自分が死んだら変わりに戦う人だと知り顔色を変えた。そんなハリーを見てロンは、ハリーとマルフォイがやり合ってもせいぜい火花をぶつけ合う程度だとフォローした。2人が見上げると、今度はハーマイオニー・グレンジャーがいて、夜に校内をウロウロして捕まったらグリフィンドールが減点されるといい、2人を止めた。しかし2人は、余計なお世話だと言い返し、夕食を食べた。

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

スリザリン寮 談話室

 

 

 

 

 

「本当に行くのドラコ?」

 

 

 

「行くわけないだろ、まあ、あの2人ならバカ正直に行くだろうが」

 

 

 

 

パンジーの問にマルフォイはそう返した。ソフィアは、マルフォイたちを横目に見て、自分の課題に取り組み、最近ハリーと話していないことを思い出した。

 

 

 

 

 

─────────

 

 

 

 

その頃、ハリーとロンは、ハーマイオニーとネビルと一緒にミセス・ノリスに追われていた。ネビルが鎧にぶつかり、城中の人を起こしてしまいそうな凄まじい音を立てたので、4人は回廊を全力で走っていた。フィルチが追いかけてくるかどうかを振り向きもせず、全速力でドアを通り、次から次へと廊下をかけていった。トロフィー室からだいぶ離れた場所の冷たい壁に寄りかかりながら、額の汗を拭いながらハリーは息を弾ませていた。早く寮に戻ろうと催促していたが、ほんの10歩と進まないうちにドアの取っ手がガチャガチャとなり、教室から何か飛び出してきた。飛び出してきたのはピーブスでハリー達を見てケラケラと笑った。

 

 

 

 

 

生徒がベッドから抜け出した!──【妖精の魔法】教室の廊下にいるぞ!!

 

 

 

 

黙っていてくれというハリーたちの願いも聞かずピーブズは、大声で叫んだ。4人は、ピーブスの下をすり抜け、命からがら逃げ出した。しかし廊下の突き当たりの鍵のかかったドアにぶち当たり、ロンがもうダメだとうめいた。ピーブスの声を聞きつけ、フェルチが全速力で走ってくる。ハーマイオニーが押し殺したような声で、どいてというとハリーの杖をひったくり、鍵を杖で軽く叩き【アロホモラ】と呟いた。そうすると、カチッと鍵が開き、ドアがぱっと開いた。4人は、折り重なってなだれ込みその勢いでドアを閉めた。

 

 

 

 

 

「え?何?」

 

 

 

ネビルにガウンの袖を引っ張られたハリーは振り返った。ハリー達が入ってしまったのは四階の【禁じられた廊下】だった。ハリーたちはこの瞬間、なぜそこは立ち入り禁止たのか理解した。そこには床から天井までの空間全部が埋まる程の大きさの、頭を3つ持った犬のような怪獣がいた。3つの口から黄色い牙をむき出し、その間からはヌメヌメとしたヨダレがだらりと垂れ下がっていた。それを見た瞬間、ハリー達はさっきと反対方向に倒れ込み、ドアを後ろ手にバタンと閉め、飛ぶようにさっき来た廊下を走った。4人はとにかくあの怪獣件から少しでも遠くに離れたい一心で走り続けた。やっとのことで8階の太った婦人(レディ)の肖像画までたどり着いた。息は絶え絶えで顔は紅潮し、汗だくなハリー達を見て、婦人は驚いた。

 

 

 

 

 

「あんな怪物を学校に閉じ込めておくなんて連中は一体何を考えているんだろう。」

 

 

 

 

やっとロンが口を開いたら、ハーマイオニーが突っかかるようにどこに目をつけているのと言った。ハーマイオニー曰く、あの怪獣犬は床ではなく、仕掛け扉の上に立っていたので何か守っているに違いないと言った。皮肉を飛ばして女子寮に戻っていったハーマイオニーを見て、ロンは悪態ついた。ハリーはというと別の意味でハーマイオニーの言葉が引っかかっていた。

 

 

 

 

 

「グリンゴッツは何かを隠すには世界で一番安全な場所だ───多分ホグワーツ以外では……………」

 

 

 

 

ハグリッドが入っていた言葉を思い出し、ハリーは713番金庫から持ってきた小さな汚い包が今どこにあるのか分かったような気がした。

 

 

 

 

 

───────────

 

 

 

 

 

 

次の日、ハリーとロンは疲れた様子だったが、ホグワーツにいるのを見て、マルフォイは舌打ちをした。朝食を食べながらハリーとロンはあんなに厳重な警備が必要なものとは一体何なのかを話し合っていた。いつものようにフクロウが群れをなして大広間に飛んできた。六羽の大コノハズクがくわえた細長い包みがすぐにみんなの気を引いた。コノハズクは、ハリーの真ん前に舞い降りて、その大きな包みを落とし飛び立った。ハリーが急いでそれを開けると手紙があり、中身は新品のニンバス2000だった。

 

 

 

 

 

 

1時間目が始まる前に階段で、 マルフォイはハリーが箒を持っていることについて絡んだが、フリットウィック先生からハリーが特別措置によって最年少寮代表選手に選ばれたことを聞き、怒りと当惑をむき出しにし階段を降りていった。ハリーはというと寮に置いてきた箒のことを考え一日中授業に集中できなかった。夕食は何を食べたのかは分からないまま飲み込み、ロンと一緒に寮へ駆け戻、りベッドカバーの上を転がり出た箒を見て声を上げた。夕暮れの薄明かりの中、ハリーはグリフィンドールのキャプテンであるオリバー・ウッドにクイディッチについて教えてもらった。暴れ玉であるブラジャーがホグワーツでは1度も人を殺したことはないが、顎の骨を折ったやつが二、三人いると聞き、ぶるりと震えた。

 

 

 

 

毎日たっぷりある宿題に、週3回でクィディッチの練習でハリーは忙しくなった。気がつくとホグワーツに来てからもう2か月もたち、授業の基礎もだいぶわかってきた。ハロウィンの朝はパンプキンパイを焼く美味しそうな匂いが廊下に漂ってきて、みんな目を覚ました。

 

 

 

 

【妖精の魔法】の授業で、フリットウィック先生が、そろそろものを飛ばす練習をしましょうと言った。スリザリンとグリフィンドールの合同授業であるこの教科では、魔法薬学までとはいかないが、双方の寮生たちがこぞって睨み合いを続けていたのである。しかし、実戦魔法が使えるとなると話は別で、フリットウィック先生がネビルのヒキガエルをブンブンと飛び回らせるのを見てからというもの、みんなやって見たくてたまらなかったのである。先生は、生徒を二人ずつ組ませて練習させた。ハリーは、シェーマス・フィネガンと組んだが、ロンはなんとハーマイオニーと組むことになった。スリザリン生もグリフィンドール生も1人あまりが出てしまったので、仕方なしにとソフィアはネビルと組んだ。

 

 

 

 

 

 

「さあ、今まで練習してきたしなやかな手首の動かし方を思い出して──ビューン、ヒョイですよ。いいですか、ビューン、ヒョイ。呪文は正確に、これもまた大切ですよ。」

 

 

 

 

これはとても難しく、ふるふると震えたり、ピクピクと動いたりはするものの、羽を高くあげる生徒はいなかった。。シェーマスは、全くもって動かない羽に癇癪を起こし、杖で羽を小突いて火をつけてしまったので、ハリーは帽子で消すはめになった。

 

 

 

 

ウィンガディアム レヴィオサ〜

 

 

 

「言い方が間違ってるわ。ウィン・ガー・ディアム レビィ・オー・サよ。あなたのは【レヴィオサ〜】」

 

 

 

 

長い腕を風車のように振り回し、間違った発音を叫んでいたロンに対し、ハーマイオニーは発音と杖の振り方を注意した。しかし、なんとなくだが上から目線な言い方にイラついたロンがハーマイオニーにやってみるように催促した。

 

 

 

 

 

ウィンガーディアム レビィオーサ!

 

 

 

 

ハーマイオニーが杖を振り呪文を言うと、羽は机を離れ、頭上一、二メートルぐらいのところに浮いた。それを見たフリットウィック先生は、拍手をしながらよくできましたと叫んだ。ハーマイオニーが簡単そうに成功させてしまったのを見て、ロンはつまらなさそうに不貞腐れ、その後も真面目に授業を受けようとしなかった。その後は、チラホラと成功する生徒もではじめてきて最低でも数センチ浮く程度にはなってきたが、ネビルの羽が一向に動く気配がなく、隣で教えているソフィアも手の施しようがないと諦めかけていた。

 

 

 

 

「ねぇ、ミス・グレンジャー、ネビルにコツを教えてあげてくれない?私だと、上手く教えられないの」

 

 

 

「別に構わないけど……」

 

 

 

「そう、助かるわ。」

 

 

 

 

自分が教えることを諦めたソフィアは、ハーマイオニーに助けを求めた。まさか、スリザリン生から声をかけられると思ってなかったハーマイオニーは、少し驚いた様子だったが、すぐにネビルに呪文を教えに行った。ほかのスリザリン生もグリフィンドール生も、他寮生に聞きに行ったソフィアが珍しいのか、驚いた顔をしていた。

 

 

 

 

「やあ、ソフィア。久しぶりだね」

 

 

 

「………そう」

 

 

 

 

ハーマイオニーとソフィアが席を交換したことで、ハリーとソフィアは近くなった。久しぶりに話すのでどんな話をすればいいのか考え込んでいるハリーに、全くもって会話を続ける気がないような返答をするソフィア、ロンはその会話をヒヤヒヤしながら聞いていた。パンジーは、ソフィアがハリー・ポッターと平然と話していることに驚き、マルフォイに2人の関係を聞いていたが、マルフォイも二人が一緒にいるのは汽車でのコンパートメントぐらいしか記憶になく二人の関係など知らなかった。

 

 

 

 

 

 

結局、ネビルは羽を机から数cmしか浮かすことが出来ず、授業が終わったが、初めは全く羽が動かなかったのだから、大きな成長である。

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

授業が終わったあと、ロンの機嫌は最悪だった。最も、授業中もだが……廊下の人混みを押し分けながら、ロンはハーマイオニーについて悪態ついた。まったく悪夢みたいなやつだとロンが言ったとき、誰かがハリーにぶつかりながら、急いで追い越して言った。ハリーがチラッと顔を見ると、それは泣いているハーマイオニーで、ハリーはロンに聞かれていたことを伝えたが、ロンは友達がいないことなんて気がついていただろうと言った。

 

 

 

 

「あら、レディを泣かすなんて、最低ね。ウィーズリー」

 

 

 

「……あっちにも非はあるけど、これは無い……」

 

 

 

 

声の聞こえた方をむくと、パンジーとソフィアが居て、その後ろにマルフォイと腰巾着2名が居た。後ろにいて、自分たちの会話を聞いていたメンバーを見て、ロンは【げぇ】と顔を歪めた。パンジーもマルフォイらも、別にハーマイオニーがどうなろうと知ったことではないが、折角グリフィンドール生に嫌がらせができるチャンスなのだから、見逃すはずがない。パンジーは、ニヤニヤと笑いながら横を通った。マルフォイは紳士的じゃないと言い残し、言われたロンは苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

 

 

 

 

 

 

ハーマイオニーは次のクラスにも出てこなく、ハリー達はその日の午後一度も見かけなかった。しかし、ハロウィーンのご馳走を食べに大広間に向かう途中、パーバティ・パチルがラベンダーに話しているのを小耳にはさみ、ハーマイオニーがトイレで泣いていることを知った。ロンは少しバツの悪そうな顔をしたが、大広間でハロウィーンの飾り付けをた瞬間、ハーマイオニーの事など頭から吹っ飛んでしまった。千匹ものコウモリが壁や天井で羽根をばたつかせ、もう千匹が低くたれこめた黒雲のようにテーブルのすぐ上まで急降下し、くり抜いたかぼちゃの中のロウソクの炎をちらつかせた。新学期の始まりの時と同じように、金の皿に突然ご馳走が現れた。

 

 

 

 

 

「トロールが…………地下室に………お知らせしなくてはと思って………」

 

 

 

 

 

みんなが思い思いの食事を楽しんでいる時に、クィレル先生が全速力で大広間に入ってきて、ダンブルドア先生の席まで辿り着き、テーブルにもたれかかりながら、あえぎあえぎ伝えるとその場でバッタリと気を失ってしまった。大広間は大混乱になり、ダンブルドア先生が杖の先から紫色の爆竹を何度が爆発させて、やっと静かになった。

 

 

 

 

 

「監督生よ、すぐさま自分の寮の生徒を引率して寮に帰るように」

 

 

 

 

 

重々しいダンブルドア先生の声が轟くと、各寮の監督生たちは自分の寮生たちを寮へと引率し始めた。

 

 

 

「ちょっと待て……ハーマイオニーだ!」

 

 

 

ハリーは、ハーマイオニーがこのトロールの騒ぎを知らないことをロンに教えた。二人は、監督生であるパーシーに見つからないようにハッフルパフ生に紛れ込み、女子用トイレへと急いだ。角を曲がると後ろから急ぎ足で誰かがやってくる音が聞こえ、パーシーかと思ったが、スネイプ先生だった。ほかの先生達と違い地下室へ行こうとしないスネイプ先生に首を傾げ、二人は出来るだけ音を立てないように廊下を歩いた。

 

 

 

 

「スネイプは四階の方に向かってるよ」

 

 

 

「なんか匂わないか?」

 

 

 

 

ハリーが、クンクンと鼻を使うと、汚れた靴下と、掃除したことがない公衆トイレの匂いを混ぜたような悪臭が鼻をついた。そして、低いブァーブァーという唸り声と、巨大な足を引きずるように歩く音。ロンが指さした方向を見ると、月明かりにうつされた場所に大きなものがヌーッと姿を現した。背は4メートルもあり、墓石のような鈍い灰色の肌、岩石のようにゴツゴツのずんぐりした巨体、ハゲた頭は小さく、木の幹ほど太く短い脚に、コブだらけの平たい足ついている。ものすごい悪臭を放ちながら、巨大な棍棒を引き摺っているトロールだった。トロールはドアの前で立ち止まり、中をじっとみた。

 

 

 

 

「鍵穴に鍵が着いたままだ。あいつを閉じ込められる」

 

 

 

「名案だ!」

 

 

 

ドアの中にノロノロとトロールが入ると、2人は開けっ放しのドアの方にジリジリと進み、最後の一歩を大きくジャンプして、ピシャリとドアを閉めて鍵をかけた。やった!と意気揚々に、二人はもときた廊下を走ったが、曲がり角まで来た時に、甲高い、恐怖で立ちすくんだような悲鳴とふざけんなという怒鳴り声を聞いた。

 

 

 

 

 

──たった今、鍵をかけたばかりの部屋からだった──

 

 

 

 

ロンの顔は血みどろ男爵ぐらい真っ青になり、ハリーも息をのんだ。

 

 

 

 

 

「女子用トイレだ!」

 

 

 

「「ハーマイオニーだ!!」」

 

 

 

 

これだけは絶対にやりたくなかったと思いながら、二人は回れ右をして全力疾走した。ハリーは、ひとつはハーマイオニーはわかったが、もうひとつの怒鳴り声はなんだったのかと考えた。しかし、そんな考えも吹っ飛ぶほど慌てており、気が動転して鍵が上手く回せなかった。二人は、ドアを開き突入した。ハーマイオニーは、奥の壁に張り付いて縮み上がっていた。トロールは、洗面台を次々と薙ぎ倒しながら、ハーマイオニーに近づいていく。

 

 

 

 

ステューピファイ(麻痺せよ)!」

 

 

 

ソフィアが、今にも気を失わんばかりのハーマイオニーの前に立ち、トロールに杖を向けていた。さっきの怒鳴り声はソフィアだったのかとハリーは、自分の中の疑問を解決した。しかし、トロールは止まらない。ハリーは、蛇口を拾って力いっぱい壁になげつけ、トロールの気を引いた。トロールは、音の聞こえた方へと向き直った。見つけたハリーに向かって棍棒を振り下ろそうとするも、横からロンが投げた金属パイプに気が引かれ、そっちへと向き直った。ハリーは、ハーマイオニーに向かって逃げろと叫ぶが、ハーマイオニーは恐怖で口を開けたまま壁にピッタリと張り付いていて動けなかった。すかさず、ソフィアはハーマイオニーに無理やり立たせ、ドアの方へ運ぼうとするが、ハリーの叫び声を聞いたトロールが逆上し、ロンに向かっていった。

 

 

 

 

 

「ああ、もう!ペトリフィカス トタルス(石になれ)

 

 

 

 

 

ソフィアが打った魔法は、トロールの足の少しを石にするだけで、たいした効果はなかった。ハリーは、勇敢とも間抜けとも言えるような行動に出て、走って後ろからトロールに飛びつき、トロールの鼻へ杖を突き上げた。痛みに悶え、トロールは棍棒をメチャメチャに振り回した。ハーマイオニーは恐ろしさに座り込み、ハリーはトロールから振り落とされぬようとしがみき、ソフィアが立て続けに魔法を打つもトロールにたいして効いていなかった。

 

 

 

 

ウィンガーディアム レビオーサ!!

 

 

 

ロンは、最初に頭に浮かんだ呪文を唱え、トロールの棍棒を浮かした。棍棒は空中を高く高く上がって、ゆっくり一回転してからボクッと嫌な音を立てて持ち主の頭に落ちた。トロールはドサッと音を立ててその場にうつ伏せに伸び、倒れた衝撃が部屋中をゆすぶった。ハリーは、トロールの鼻から自分の杖を引っ張り出し、着いていた鼻くそをトロールのズボンで拭き取った。ものが壊れる音や、トロールの唸り声を聞き付けたであろう先生方が入ってきた。最もクィレル先生は、トロールを一人目見たとたん、弱々しい声を上げ、胸をおえてトイレに座り込んでしまったが……

 

 

 

 

「一体全体あなたがたはどういうつもりなんですか」

 

 

 

 

冷静だが怒りに満ちているマクゴナガル先生の唇は蒼白だった。スネイプ先生は、ハリーに素早く鋭い視線をなげかけた。

 

 

 

 

「マクゴナガル先生。聞いてください───二人は私たちを探しに来たんです」

 

 

 

 

「ミス・グレンジャー!」

 

 

 

 

「私がトロー「……あー…色々ありまして、グレンジャーは夕食に参加していなかったんです。で、トイレにいて…私は、彼女の忘れ物を渡しにここに来ていたんです。明日は会わないと思うので──で、大広間に戻ろうとしましたが、トロールが入ってきて……えー……ポッターとウィーズリーが、多分私達がトロールについて何も知らないだろうと探しに来てくれたんですよ。で、この状況です」

 

 

 

 

「ええ、もし二人が見つけてくれなかったら、今頃、私達どうなってたか……二人とも誰かを呼びに行く時間がなかったんです。二人が来た時にはもう、殺される寸前で……」

 

 

 

 

ハリーとロンは、その通りですという顔を装った。そういうことならとマクゴナガル先生は、4人をじっと見つめ、何故教員に説明せずに自分たちで探しに行ったのかと言った。ハリーとロンは、項垂れた。ハリーとロンで五点ずつ減点され、四人に五点ずつ加点された。怪我がないなら各寮に戻り、中断されたパーティーの続きに参加するといいと言われ、急いで部屋を出た。何はともあれ、トロールのあの匂いから開放されたのは嬉しかった。

 

 

 

 

「3人で15点は少ないよな」

 

 

 

「3人で5点よ」

 

 

 

 

自分たちが鍵をかけて閉じ込めたことや呪文な成功したことなどを話しながら、寮に戻った。ハーマイオニーが気がつくといつの間にかソフィアは居なくなっており、三人はいついなくなったのかと顔を見合せた。それ以来、ハーマイオニーは二人の友人になった。共通の経験をすることで互いをすきになる、そんな特別な経験もあるものだ。四メートルもあるトロールをノックアウトするという経験もまさしくそれだった。

 

 

 

 

 

 

 

それから、図書館でソフィア話しかけるハーマイオニーが目撃された。

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 

「もう、人のもの盗んできちゃダメだからね──ノア」

 

 

 

 

 

スリザリン寮に戻ったソフィアは、自分がトイレに行く用事をつくったノアを抱き上げながら、説教を始めた。最後の授業が終わり、スリザリン寮に戻るとノアが明らかに自分のでは無い羽根ペンを咥えていたのだ。誰のか分からないので聞き回ったところ、ハーマイオニー・グレンジャーのものだと分かり、夕食の前に届けに行ったらあのザマだ。おかげで死にかけたと呟きながら、膝の上でなんの悪びれもなく丸まっているノアを撫でる。ベッドに潜り、目を閉じれば、ソフィアはすぐに夢へと引っ張られた。

 

 

 

 

 

 

 

─黒猫が意地悪そうにニャーと鳴いたのも知らずに─

 




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