久しぶりの帰りトゥスクルは一体どんな感じになっているんだろう。エルルゥから聞いてはいたものの自分の目で確かめたい。それに娘の素顔も真面には見れてないんだから…見て抱きしめてあげたい。その微かな願いすら叶うことは今まで無かったのだからな。
「あなた!!!」
「あ…どうしたんだ?」
「何度呼んでもあなたが返事をしてくれないから」
エルルゥは心配そうな顔をしながらこちらを見ていた。
「少し考え事をしていてな。悪いな」
でも、帰ったらもう皇にはなりたくないな。しばらくは隠居して穏やかに暮らして行きたいな。
「あなたは帰ったら何をしたいですか?」
「そうだな……….ゆっくり休息を取りたいかな。ベナウィには反対されるかもしれないけどもう俺の代わりにオボロがうまくまとめてくれているらしいしな」
「多分、無理だと思いますよ。ベナウィさんはあなたが帰れるようになったら連絡をしてください!と言ってましたし」
「まさか、もう連絡をしたのか!????」
「いや、忙しかったので連絡はしてませんがこのまま城に向かえばどっちにしろ知れると思いますよ」
こっちを向かず笑顔で彼女言った。やっぱりベナウィは俺にまた仕事三昧にする気かもしれない。
「…..そうだな。仕方ないのかもしれない。それにベナウィの顔も久しぶりに見たいし仕方ないか。まあ、いざとなったら逃げればいいか」
「逃げるのはダメですよ!!大人しくしてもらわないと」
もう歩き始めて10分は経ったぐらいだろうか。久しぶりの太陽の光を眩しいと思いながらも少しずつ進んでいる。でも、こんな新鮮な空気を吸うのもいつぶりだろうか。
ウォォォ~~~~~~~~~~~という獣の鳴き声と思われる声が森中に響き渡った。
近くに何かいるな。この鳴き声の主かもしれないがこの鳴き声どこかで聞いたことがある気がするんだよな。獣の鳴き声を聞いて一番早く思いつくのはムックルだがこんな森の奥深くのところにいるとは思えないし。アルルゥがムックルから離れる時なんてないからこの声がムックルだとしたらアルルゥも近くにいるのだろうか。
「エルルゥ。アルルゥに今日、帰ることを伝えたのか?」
「いえ、伝えてないですよ。それにウルトリィ以外には誰にも知られていないと思いますよ」
「そうか………エルルゥはこの声はムックルだと思うか?」
ムックルだとしてもさほど問題はないが気になったので聞いて見た。
「…..どうですかね?私も長い間、帰ってませんでしたか?」
「確かにそうだな。だが鳴き声が少しずつ遠退いて気がするからこっちに来る訳じゃなさそうだな」
「はい。多分、ムックルがあなたの匂いを辿ってここまで来たという感じでしょうから。そうでもなければさすがにこんな森の深くまで来ないと思いますから」
エルルゥは少し苦笑をしながら答えた。確かにエルルゥの言う通りだな。いくらアルルゥと言ってももう立派な大人だろうから好奇心だけでこんな森の深くまで来ることはないだろうからな。
「そうだな。アルルゥも大人だろうしな。そう言えば、ヤマトに行ってみたいと思うんだがどうだろうか?」
「何故、行ってみたいんですか?」
「…私はトゥスクルという国以外を観光という目的で行ったことはなかったからな。それにトゥスクルとヤマトは前のようにいがみあうような関係でもないしな。それに一番の理由は…………………….」
「どうしたんですか?」
「いや、他国を見てみたいんだ。自分が育った国では無く一度も行ったことがない国に行ってみたいんだ。だけどそんな事、言ったらベナウィに反対されるかもしれないな」
「間違いなく反対されますし多分、全員が反対すると思います。私も反対します」
「え……エルルゥ。頼むよ。お前だけは…..」
「ダメですよ!!それに私たちがあなたの事を想って反対しているんです。体も以前のように動ける訳でもないのでしばらくは体を休めて欲しいだけなのですから」
エルルゥでもダメか。やっぱり無理なのかな。だけど諦めたくないな~でも、皆に心配を掛けたくないしな。
「あ….これならどうだろう?」
「何でしょう?」
「皆には私が帰ってきたことは言わずにヤマトに行くと言うのは」
「そんなのダメに決まってるでしょ。あなたは自分の立場が分かっているんですか。私たちがどれだけあなたの事を想っているのか。分かっているんですか!?????」
こんな強く言うエルルゥを見るのは初めてかもしれない。それほど私の事を考えてくれているという事か。まあ、エルルゥが私の事をいつも第一に考えていてくれていることは分かっているけど……….
「分かっているつもりだよ。エルルゥが皆がどれだけ私の事を考えてくれていることも。それに皆には感謝しかないよ。本当に皆、それぞれが自分がやるべき事を理解してやっている。そんな皆を私は誇りに思っているし凄いと思っている。我儘かもしれないけど頼むよ!生い先短い老人の頼みを聞くと思って」
「まだそんな年でもないでしょ。本当に大丈夫なのですか?」
「…..大丈夫..だとは言えないが行ってみたいんだ。それにエルルゥが近くに居ればどんな事でもどうにかなると思うんだ。だから今回は我儘を聞いてくれないか?」
これで断られたら仕方ないから諦めるしかないな。そんな事を考えながら答えを待っているとエルルゥは俯いていた顔を上げて重い口を開けながらこう言った。
「….仕方ないですね。まあ、自由の出来る時間もあまりなかったですし少しだけなら息抜きも必要ですからね」
「本当にいいのか?」
「仕方ないじゃないですか。あなたにお願いされたら断れないですよ」
「感謝するよ。エルルゥ。本当にありがとう!」
「いいですよ。だけど私も付いて行きますからね」
「それはもちろん!」
●船
バレずにここまで来れたのは予想以上だ。もっと早くバレてしまうかと思ったがバレることはなかった。顔を隠そうと思ったがうまく顔を隠す方法が見つからず素顔で来てしまったがよく考えれば私の素顔を見た事があるのはエルルゥだけだから心配する必要はなかった。
だけど今になって帰った後、ベナウィにどれだけ叱られるか考えただけで身震いしてしまう。いや、ベナウィだけとは限らないな。他の人たちにも怒られてしまう気がするのは気のせいであってほしい。
「….ハクオロ様….」
反射的に声におした方向に振り向いてしまった。冷静に考えればエルルゥが様を付けて呼ぶ事なんて数えきれるぐらいしかなかったからおかしかった。
そして振り向いた先に居たのは…….サクヤかな?私が知っているサクヤと違いすぎて断言は出来ないが多分、サクヤだと思う。
「ハクオロ様ですよね?」
うわぁ~さっそくバレてるし..仮面も外れて素顔の私ならバレるとは思っていなかった。どう誤魔化させばいいんだ。
「………人違いですよ。ハクオロ様は仮面を付けているではないですか?私は付けてませんしハクオロ様でもありませんよ」
「そうですよね………………ってそんな事ある訳ないじゃないですか!!!仮面を付けて居なくても見間違う訳ないですよ。長い間、会ってはないですが見間違う訳ありません!!!!!」
そんなにバレやすいのか。サクヤにバレてしまうんじゃオボロとはにはバレてしまうんだろうな。
「だから見間違いですよ。それにハクオロ様がこんなところに居る訳ないじゃないですか?」
今、バレたらヤマトに着いてもすぐにトゥスクルに戻されるかもしれなあいからバレる訳にはいかない。
「..いくら頑張っても分かりますよ。あなたは私が会った殿方の中でも特殊な人でしたから」
特殊な人………自分のどこが特殊なのだろうか。分からないが確実にこれがバレてるし。
「……………….サクヤ。久しぶりだな」
もう仕方ないと思い私はサクヤの方を見ながら言った。もう誤魔化しても無駄と判断したためである。それにエルルゥが帰ってきたらどうせバレてしまうことだからな。
「はい。久しぶりですね。ハクオロ様!」
「….変わったな。お前を見ているだけでも長い年月が経ったことが分かってしまうぐらいにな。大人っぽくなったな」
私が知っている時は肩に付くか付かないかぐらいだった髪が腰近くまで来ている。でも、本当に大人っぽくなったな。面影が残ってたからサクヤだと分かったもののあと数年していたらサクヤだと気付かなかったかもしれないな。
「ありがとうございます!ハクオロ様にそう言っていただけて嬉しいです!でもそれよりあなたに会えてよかったです。もう会えないかとも思ってましたから」
「…..そうだな。私もこうしてサクヤにもう一度会えるとは思ってなかったよ。大きくなったな」
私はサクヤに近付きサクヤの頭を撫でながら言った。こうしているとアルルゥの事を思い出してしまうな。アルルゥにもこうやって頭を撫でた事もあったっけ。
「ハクオロさ~~~ん。遅くなって…………あ、サクヤさん」
「.エルルゥさんではありませんか。やはりハクオロ様と一緒だったのですね」
「….もうバレてしまったのですね。やっぱりあなたに変装をさせた方が良かったですね。まあ、変装してもどうせバレてしまうと思いますが」
エルルゥは私の方を見ながら言った。いや、バレないと自身があっただけどな。変装をしなくても…
「それより何でヤマトに向かっているのですか?」
サクヤは疑問に思ったのかたずねてきた。
「………観光にな…」
「..本当ですか?」
サクヤは腑に落ちていないような顔をしながら言った。
疑うのも無理はないが本当の事だから何とも言えないな。
「あ...本当だ。久しぶりに外に出たのでな」
「そうですか.....」
だが、こんなところで会うとは縁があるのかもしれないな。サクヤの顔を見ているとクーヤの顔が頭に浮かぶ。記憶を無くし幼い頃に戻ってしまった少女の事が。クーヤは一体、どんなったんだろうか?もしかしたらもう記憶を取り戻しているかもしれないし帰ったらすぎに会いに行こう。