●ヤマト
やっと着いた。案外、長かったから体が疲れて今にも倒れそうである。エルルゥが支えてくれているから倒れる事はないけど船酔いに長期間の旅はきつかったかもしれないな。
「大丈夫ですか?あなた」
「どうにか大丈夫かな。悪いが今日は休みたい」
「はい、分かりました。では宿を探して今日は休みましょうか」
「悪いな。エルルゥ。私のせいで付き合わせてしまって」
「私が好きで付いて来たんですしあなたはまだ一人で真面に歩くことすらままならないんですから無理をしないでください」
「本当にすまないな。そう言えば、サクヤの姿が見れないがどこに行ったんだ?」
周りを見渡してもサクヤの姿が見えないのでそう口にした。
「どうやらヤマトに使者として来たようでしたので..」
「そうだったのか。そんなこと言ってなかったから….知らなかったな」
「では、そろそろ宿探しに行きますか」
「そうだな」
俺はエルルゥに肩を貸してもらい、初めて見る街並みに少し戸惑いを憶えながら俺は歩いて行く。
「この国も賑わってるな。色々なものを売ってたりしてやっぱり面白いな」
「…トゥスクルに売ってないものも売ってたりしますね。でも、今は宿を見つけるのが先決です」
エルルゥは辺りを見渡しながら答えた。確かに休みたい気持ちもあるが少しは店を覗いてみたいという気持ちもある。だけど船着き場で休みたいなんて言ってしまったしな。今さら訂正してもエルルゥは宿を探すのを止めてくれないだろうしな。案外、頑固な一面も兼ね備えているから一回、決めた事は曲げないところがあるかな。
「….なあ、エルルゥ。調子も元に戻ってきたから店を見て回りたいんだけど……」
「ダメですよ。まだ本調子に戻っていないんですから。無理して体を壊したらどうするんですか!??」
「..はい。分かりました。じゃあ、休憩をしたら店を見渡してもいいか?」
「ちゃんと休んだ後ならいいですよ。ならちゃんと体を休めてくださいね」
「分かってる」
それから数分の間、会話をしながら近くにある宿を探す。だが、思っていたよりも見つからなかった。こんな大きな国なのだから宿なんてたくさんあってもおかしくないと思うんだがな。
「あ..ありましたよ!!少し高そうなお店ですが..大丈夫でしょう」
私はエルルゥが指をさしている言っている店の方を見ると確かにエルルゥの言う通り見た目は高そうの一言しか言えない。あ、ここで大事な事に気付いた。私はお金を持ってない。
「そう言えば、エルルゥ。お金を持ってないぞ」
「それについては大丈夫です」
「エルルゥは持っているのか?」
「はい。しばらく宿泊出来るぐらいは….」
助かった。もし、エルルゥもお金を持ってなかったら野宿しか道が無くなってしまうからな。
「では、早速行きましょうか」
「そうだな」
その旅館の名前は白楼閣と言うらしい。見た目通り、一泊に掛かるお金はそれなりだった。今、私たちは案内された部屋で一休みしている。自分たちの部屋に着く前に感じた事が..賑わっているということだった。トゥスクルにはこんな旅館は多分ないと思う。トゥスクルに帰ってないから何とも言えないが…..ヤマトという国の繁栄が伺えた。
でも、なんかこの旅館に入った瞬間から何か違和感を感じていた。懐かしいと言えばいいのだろうか…言葉で説明するのは難しいけど.なんかな。
自分の隣に座っているエルルゥに言った。
「エルルゥはなんか感じないか?」
「…感じるとは何でしょう?」
「なんか懐かしいような感じ……だ」
来た事がないのに来たことがあるような感じがする。
「そんな感じはしませんが….」
「そうか。では、私は少し休ませてもらうな」
そう言い私は寝床に入り目を閉じた。
どれくらい経ったかは定かではないが外界と分離されていた私の耳に少しずつ音が聞こえるようになった。つまり目を覚ました。来た時は眩しいほどの太陽が今では美しい夕日に変わっていた。
隣を見るとエルルゥが椅子に座り、目を瞑り今にも横に倒れてしまいそうである。私の隣にずっと居てくれたのか。
私はエルルゥの頭に手を置き撫でた。起こすのも悪いから私一人で店には行くか。体も休んで回復しているはずだしそろそろ一人で歩けるようにならなくてはな。
そう思い寝床から出て俺は白楼閣を出た。
やっぱりどこの店も繁盛しているな。どこのお店も美味しそうな店ばかりだな。まあ、今日は見て回るだけだからどこかで買い物をする気はないものの珍しいものがあると目に入ってしまう。これは一体、何なんだろうか。まったく分からないけどやっぱり他国のものは珍しいな。
「お兄さん。何かお探しですかい?」
店主が私の方を見ながらそんなことを言った。
「いや、少し除きに来ただけですよ」
私はそう言いその店を出た。
それからしばらく時間が経ち夕日が沈んで暗くなってきた。この時間になると人通りも増えて危うくここら辺の土地勘がないから迷ってしまうそうである。迷ったら帰れなくなりそうだから帰るか。さすがにこの年で迷子は恥ずかしいしな。それにこれ以上、帰るのが遅れたら怒られるのは確実になってしまうかもしれないからな。
私は来た道を戻りしばらくすると白楼閣が見えてきた。近付いていくとある事に気付いた。店の前で団体のお客なのか分からないが固まっている。もしかしたら誰かを待っているのかもしれないな。
そう思い中に入ろうとした瞬間
「あの~一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
団体のお客だと思っていた一人が私に向かって話しかけてきた。私に何か用なのだろうか?この人たちとは初対面だと思うんだが。
「はい。何でしょうか?」
「白楼閣にお泊りのお方ですか?」
「そうですが….」
「では、私たちと一緒に食事の席を囲みませんか?」
「何で見ず知らずの私にお声を掛けたんですか?他にもここのお客はいたはずですが」
「そうですね。あなたが今、来たからという理由もありますが…一番の理由はあなたが似ていたからですかね。今はもういないあの方と..別に顔が似ているとかではないのですがなんか.. 雰囲気が少し似ている気が…」
「そのお方にですか…….別にいいですが…私は少し病弱でして.なので一人お供の者を呼んでもいいですか?」
このままこの人たちと食事を一緒にしてもいいがそろそろエルルゥが目覚めてるかもしれないから状況の説明をしておかないとな。
「全然大丈夫ですよ。こちらこそ気が付かずすみません」
「いや、別にいいんだが….」
この人たちが私の正体に気付いている確率は極めて低いが…。気になるのは私と似ていると言うその少年。
「ではまずは入りましょうか」
「そうですね」
そして私たちは白楼閣に入りそれぞれの部屋に向かった。用意が出来たら一階の受付のところに集まろうと約束をして。
でも、まさかヤマトに来て見ず知らずの人たちに話しかけられ食事に誘われるとは思ってなかった。話は変わるがこの白楼閣という場所….。
歩きながら考え事をしていたせいか前から来た女中(じょちゅう)とぶつかってしまった。お互いに尻餅を付く感じになってしまい女中の運んでたであろう食事が落ちてしまった。ガシャァ~~んという音を立てながら食器が割れた。
「すみませぬ。某が前を向いておらず」
「あ、大丈夫だ。あなたの方こそ大丈夫か?」
私はそう言いながら立ち上がり尻餅を付いている女中に向けて片手を差し出した。
「ありが…………」
「どうしたんだ?何かあったのか?」
女中は私の顔を見るに固まってしまった。どうしたのだろうか。何か私の顔に.仮面は付いてないだろうから怖がる要素はないと思うんだが…..
「…………………………….」
「おい、本当に大丈夫なのか?」
まるで動かない。
「……………..あ、はい。大丈夫です。お気になさらず..」
「いや、尻餅を付いている女性をほっとく訳にはいかないからな。考え事をしていた私にも非はあるからな」
私は腰を落とし落ちて割れてしまってる食器を拾おうとした瞬間に女中が歩いてきた方向から大人びた女性が来た。
「またですの。だからあなたは運ばなくてもいいと言っていますのに…」
「だが、某も何か役に立ちたくてな」
「そちらのお方、お怪我は?」
その女性は私の方を向きながら言った。……..カルラかと一瞬、考えてしまったがヤマトにカルラがいる訳ないかと思いその考えを捨てた。だが、似ている。世の中には似ている人物が三人いると言われてるからな。
「大丈夫だ」
では早速、食器の欠片を拾い集めようとすると
「あなたはいいですよ。こちらに非はありますから」
「でも….「大丈夫です。某のせいですのでしそれに急いでいたんじゃないんですか?」」
あ……確かにエルルゥに言いにいかないと。
「…..少しの遅れぐらいなら「大丈夫ですわ。私も手伝いますから。あなたは自分の用を済ませなさい」」
ここまで強く圧倒するところもカルラにそっくりだな。昔のことを思い出してしまいそうになる。
「あ….では私は行かせてもらうよ」
圧力に負けて私はこの場を去ることにした。それにエルルゥが目覚めていたらそろそろ帰らないとヤバいしな。
少し速足で自分の泊っている部屋に向かった。
男が去った後、女中と大人びた女性の二人はお互いに見合っていた。
「…..聖上」
「………よかったですわ。生きているうちにお会い出来たのですから」
「そうだな。仮面がない聖上は初めて見たが…やっぱり美しい。ずっと仮面のある聖上を見てきたからか新鮮だな。だが聖上は我らに気付いてはくれなかったようだな…..」
女中は片付けをしながらそんなことを呟いた。
「ですがベナウィからの連絡が来てなかったと言うことはまだトゥスクルにいる人たちは主様が帰ってきた事を知らないんではないかしら。帰ってきている事を知ってたらオボロとかが騒いでそうですし仮に帰ってきたとしたらトゥスクルの全土に知らせがいっているはずですから。下手に城から出て船に乗ってヤマトに来るなんて事出来ないと思いますし」
「では、どうする?カルラ。一応、連絡はしておくか?」
「いや、大丈夫でしょう。それに主様が一人で来た確率は低いですから誰かお側に仕えている人がいるはずですから。それに呼ぶとあるじ様と触れ合える時間が減ってしまいますから」
「…そうだな。では、我らもトゥスクルに一度帰り支度でもするか。聖上の歩き方もたどたどしかったからそんなに滞在期間は長くないだろうから。今から用意しておかないと間に合わない」
「そうですわね。ずっと戻っておりませんでしたし私たちは主様と共に生き、死ぬ事が喜びですからね。あるじ様は一度、トゥスクルに戻さないと後で私たちがうるさいお説教を聞くはめになってしまいますから」
「またお仕えできる日が来るとは…….十数年待ったかいがあったと言うものだ。これからは絶対に聖上の側を離れない」
「そうですわね。私たちがどれだけあるじ様の事を想っているのか知ってもらいましょうか。でも、トゥスクルも前以上に….いや、それは言わなくても分かっていることですね」
「では、さっそく片付けて会いに行きますか」
「そうだな。おい….まあ、用意はその後からでも間に合うか」
男が去った後、こんな会話がされていた。その会話をする二人の表情はまるで懐かしいものを見て..昔の思い出に浸り、これからの未来を確かめているようであった。