第1話「邪神の目覚め」封印怪獣オルクス登場 作:百合豚怪獣キマシラス
1.
2020年5月8日、この日から次々と奇妙な行方不明事件が起こり始める。日本では年間約8万人もの行方不明者が出ているが、この事件の特筆すべきことは、被害者が目の前でいきなり、何の前触れもなく消滅してしまうということだ。
もちろん、こんな事件を地球人が起こせる訳がない。宇宙人の仕業だ、娘や妻を取り返してくれとMINTに通報が相次いだ。
「いきなり目の前で消滅かぁ、まさに神隠しですね」
「この御時世に天狗でも出たかぁ? 子供なら鳶に連れ去られた可能性もあるがね」
「周佐隊員、これみて、消える場面の映された動画」
赤磐隊員がモニターに映し出したのは、民間人がスマホで撮影した映像だ。
内容は少女が部活でバットの素振りをしている、単調な動画で、僅かに眠気を誘われる。
「早く消えるシーンまで送ってくれよ~」
「狸はその気ですよ、周佐隊員!」
「生意気な新人だぜ...おっ」
なんて言っていると、少女が消える場面が再生された。本当に何の前触れもなく消滅してしまうのを目の当たりにして、加工かと疑ってしまったが、そんなもの赤磐隊員なら直ぐに見抜いてしまう。
よってこれは、種も仕掛けもない本物の動画だと判断できるのである。
「天狗も鳶も映ってないなあ」
「当たり前だよ」
「よし、周佐隊員はスカイオーキッド2号で上空のパトロールだ」
「了解!怪しい円盤とか、見つけてみせますよ」
隊長の命令を受けるなり、勢いよく飛び出して行く周佐隊員を見て、昔からそそっかしいんだからと赤磐隊員は苦笑い。美咲は彼女たちの間に、強い絆があるのを感じ取った。
「隊長、わたしはどうすれば!」
「そうだな、君は先に調査に向かった豊国原隊員の元へ行ってやってくれ」
「了解!よーし、犯人見つけちゃうんだから~~~!!」
メラメラとやる気に燃える美咲隊員も、周佐隊員のことを言えない勢いで飛び出していった。
「若いのは良いが、彼女達にも君のように落ち着きを取得して欲しいものだ」
「あらあら周佐隊員といると直ぐに疲れてしまうだけですよ」
「なるほどな~常に一緒にいる訳だ」
「うふふ、察していただけて嬉しいです」
隙を見つけては遠回しにのろけてくるのだが、上神目隊長はこれを当て付けに感じているというのは、ここだけの話である。
2.
「ごめんなさい、知らないわ」
「いえ、ご協力ありがとうございました」
美咲隊員が豊国原隊員と合流したとき、彼女は住民に聞き込みをしていた。その顔からは疲れが感じ取れる、既に数十軒に及ぶ家のチャイムを鳴らしてきたのだろう。
「お~~い、豊国原さ~ん!」
「美咲隊員! ふう、これで少しは助かるわ...」
手を振りながら子犬みたいに駆け寄ってくる美咲を見て、豊国原隊員は安堵の溜め息を吐いた。
「え~私そんなに頼りにされてるんですか、嬉しい!」
「あなた、事件について訊ねて、嫌な顔されたり知るかさっさと解決しろって怒鳴られてもあんまり気にしないでしょ」
「仕事ですからね、割り切りますよ」
「やっぱり」
このポジティブさは見習いたいところ、いくら仕事、給料を貰っていても不快なものは不快だ、ストレスに繋がり、やがてはそれが原因でミスを産むのだ...なんてネガティブに考えてしまう豊国原は、美咲と正反対の性格である。
「次は家とかじゃなくて、公共施設にいる人たちを当たってみましょうよ」
「その手があったわね、あなた頭良いの?」
「というか豊国原さんが頭わ...はっ!」
ぎりぃっ、冷ややかな目線に気づき、美咲は思わず口を両手でおさえた、口は災いの門である。
「市民プールにまで赴くとは、必死なんだなあMINTの隊員さんもよぉ」
「早く事件を解決して、私も泳ぎたいですもん!」
もちろん水着になんか着替えず、隊員服のままプールサイドに座る客から美咲は話を聞いていた。豊国原の方は監視員などスタッフから話を聞いている。
「正直でいいねぇ、頭の堅い奴らばかりかと思ったが、気分がいい、教えてやるよ...実はな」
客が情報を美咲に伝えようとしたとき、基地内で見た映像と同じく、影も形も残らず綺麗さっぱり、まるで最初からそこに誰もいなかったかのように消えてしまった。
「き、消えた!?」
またも人間消失事件が発生したことで、市民プールも閉鎖となってしまった。せっかく手掛かりを掴めるチャンスだったのに。
「あの人が口封じに消されたなら私のせいです、絶対に解決しないと!」
「今まで数多の侵略宇宙人と戦ってきたけど、今回の相手はかなり手強いわ...それにしても口封じで消すのなら、なぜあなたの方じゃなかったのかしら? 」
「えっ?」
「私が敵なら嗅ぎ回ってる奴を消すわよ」
「ああそれは、たぶん私が...」
やばっ! 美咲は咄嗟に口を両手でおさえた、自分が巨人と一心同体であることを知られてはならない、口は災いの門である。
「私が?」
「いやいや、なんでもないですっ!」
「変なの」
あはははははははははははっ、苦笑いでなんとか誤魔化そうとする美咲だったが、余計に変人の印象を与えてしまった。
3.
美咲・豊国原はエリアポイントk20に向かった、そこは、先ほどまで捜査していた町の次に、人間消失事件が多発しているエリアだ。
「この調子じゃ、犯人...よくて手掛かりが見付かるまでず~~~っと日本、いえ、世界中を巡る羽目になるのかしら」
「流石にそれは私でもキツイですよぅ」
ここでも数十人、手分けして聞き込みをしたが以前手掛かりは掴めない。
また消されないよう周囲に先ほどの何倍も気を遣いつつ、だったので疲れ果てたふたりが、夕暮れに赤く染められる通学路をとぼとぼ歩いていると、あら美咲さんじゃありませんか?と、可愛らしい淑やかな声が。
「ご機嫌よう、MINTに入隊なさったというのはマジらしいですね」
振り向くと、目に入ってきたのは、若干口調に違和感を覚えざるを得ないが、清楚な学生服を着た、いいとこのお嬢様に見える少女。
「お~~~天野じゃん、久しぶり! 実は私たち行方不明事件について調べてるんだけど、知らない?」
え...こんなお嬢様学校に通ってそうな子と知り合い? 美咲はいったい何者なのか、豊国原の美咲への疑惑は更に深まった。
「ネットではもう調べたのですか?」
「うん、それは赤磐隊員っていうオペレーターさんがやってくれてるよ。彼女は脳ミソ、私たちは脚を動かして調査してるんだ」
「なるほど...あの、ここだけの話、怪しい人はいるんですよ」
「誰!?間違いでも責めないよ」
ぐいぐいっ、美咲が目を輝かせて超至近距離まで顔を接近させるが、天野は全く動じていない。その様子が、ふたりは慣れ親しんだ仲であるということを豊国原にも理解させた。
「貴方が喋ったことも言わないわ、だからお願い、教えて欲しいの」
「あらあら美人さん、気を遣う必要はないですよ、クラスの皆が言っているんですもの」
「皆が怪しむくらいの人?」
「なにしろ宇宙人と交信に成功したとか、通報したりしたら、お前たちも消してやるからなとか言ってましたもの」
本当にそんな事を言っていたのなら、今喋った天野さんも消されてしまうのではないかと思った矢先だった。
「はっ、そこ!!」
美咲隊員は彼女の足元に忍び寄るゼリー状の液体に気付いた、それをコンパクトブルームで撃つ。
するとゼリー状の液体はメラメラと激しく燃え上がり、やがて消滅してしまった。
「なに今の...」
「今の液体、明らかに動いていた... ... ...というより、動かされていた感じだったわね」
「やっぱ噂は間違いじゃないみたい、豊国原隊員は彼女の護衛をお願いします!」
「まるで貴方が先輩みたい...まあ、気を付けるのよ」
「ありがとうございます!天野、怪しい人の名前を教えて!」
「笹山 靂無さんという方です、ここから真っ直ぐ歩いて右折してすぐのとこに住んでます、徒歩十分!」
ぺこり、美咲は天野に頭を下げると、笹山宅を目指して走り出した。
豊国原は待っている間に美咲がどんな人間だったか話を聞こうかと思ったが、さっきの液体がまたいつ狙って来るか分からず、神経を磨り減らすばかりで、そんな余裕は生まれなかった。
ーーーーその頃、MINT日本支部では、空のパトロールに出ていた周佐隊員から通信が入っていた。
「“こちら周佐、怪しい円盤を発見“」
「確かにレーダーにキャッチしました、攻撃を許可します」
「了解... ... ...っ!? うわぁああああ!!」
周佐隊員の悲鳴が聞こえたと同時に、レーダーから円盤とスカイオーキッドの反応がロストしてしまった。
「周佐隊員?!周佐隊員、応答してくださいっ!!」
「どうした」
「スカイオーキッド2号の反応が円盤ともども消滅しました!!」
いつも穏やかで作戦中も比較的冷静な赤磐隊員が叫び、上神目隊長も眉をしかめた。
「人間だけでなく、戦闘機すらも消して見せるのか、今度の敵は...だが、彼女ならきっと...」
このまま好き放題される訳にはいかない、上層部からも迅速に対処せよと言われている、どうするべきか、隊長は自分たちで出来ることを探しつつ、新人隊員に期待を馳せた。
4.
「誰が出てやるものかっ!」
窓から玄関にMINTの隊員服を着ている女が見える、きっと自分が関わってると気付いたに違いない。
ピンポーン、ピンポーンピンポンピンポンピンポーン、隊員は悪戯というか嫌がらせにしか思えないようなチャイムの鳴らし方をしてくる。
「ああうるさいっ、警察を呼びたいけど呼ぶわけにはっ」
気を紛らわせる為に、本棚から受話器を片手に悲鳴をあげている女性が表紙の本を引っ張ってくると笹山は毛布にくるまった。
「....くそっ、読者にも集中できない。いずれはドア壊してでも入ってくるかもしんない」
「壊す必要ありませんよ」
「ひぃっ!?」
ちょうど液体が人間を消滅させるのと真反対に、美咲隊員はいきなり笹山の前に現れた。
「え、お前もあいつと同じ宇宙人なのか!?」
「お前“も“?あいつと同じ?やっぱり貴方が手引きしてたんですね」
実際は一心同体となったリリィの力で瞬間移動したのだ、もちろん確信を持てない相手の自宅に押し入れば罰せられるだろう。
しかし地球人の美咲が瞬間移動したなんて言っても、まず誰も信じまい。
「ふふふ、私は天才だから、ケムール人との交信に成功したのよ」
こいつもただの人間ではない、もはや逃げられないと観念したのか笹山は真実を暴露し始めた。
「ケムール人?そいつが人間消滅事件の犯人ですか!」
「それでも過去に交信に成功した地球人の足元にも及ばないらしいけれど」
「ケムール人とやらの目的は何?!」
美咲は笹山に詰め寄るが、観念したことで笹山は余裕綽々といった表情を浮かべている。
「若い人間の肉体さ、ケムール人の肉体は衰え、人工的な体を作って延命してきた、しかし限界は来た、そこで地球人の若い体を狙ったのだ」
「なら何で貴方は消されないの?」
「手を組んだんだよ、ケムール人の弱点を知る者私の気に入らない奴らを消してもらったんだ」
「宇宙人にも地球人にも、身勝手な奴はいるんだね...」
弱点とはXチャンネル光波と呼ばれるもの、それを放つKミニオードであることを知る者達がいた。54年前にもケムール人は訪れて暗躍していたが、Kミニオードにより撃退されたのだ。
これは厄介極まりないことであり、暫くケムール人たちは地球人を諦めていた。だが地球人...笹山からの交信を受けたことでチャンスが産まれた、彼女は弱点を知る者の名を知っているというではないか!
「そこで一人ケムールの弱点を知る者を教え、代わりに一人私の気に入らない奴を消してもらう約束をしたの、まあ互いに利益しかないわけ」
「このっ...!?」
思わず拳を振り上げてしまう美咲、しかし笹山は宇宙人ではなく飽くまで民間人だ、暴力は振るえない。背後にふと現れた気配からは、民間人どころか地球人の臭いはしないが。
「周佐隊員...じゃないね、化けの皮を剥がせケムール人!!」
背後に立っていた者は、容貌こそ間違いなく周佐隊員のものであるが、雰囲気がおかしく違和感しかない。美咲はこれの正体をすぐに見破り、コンパクトブルームの銃口を向けた。
「ふぉっふぉっふぉっふぉ」
奇妙な電子音と奇怪な笑い声を発しながら、偽周佐隊員は耳だけピクピクと動かし始める。美咲がゾッとしながらも拳を構えると、やがて偽周佐隊員は正体を現した。
それは頭から触角を生やし、三つの目、痩せ型の体を持つ不気味な姿の宇宙人だった。
「姿を見せたなケムールっ!」
「!!」
リリィが宿ったことにより力も増していた美咲が、ケムール人を殴り付けると、ケムール人は窓から飛び降りて夜の街を走り始めた。
「こちら美咲、今回の事件の犯人と思われる宇宙人を発見、前獄園遊園地方面へ現在逃走中、至急応援を要請します」
「了解、付近の警官隊を向かわせる、連携して追い詰めろ」
通信を終えた美咲は、睨んでくる笹山を気にも止めず、MINT専用車・アルストロメリアに乗り込むため急いで豊国原と天野の元へ戻るが、彼女たち二人の姿も車もなかった。
「消されたのかッ...!」
憤る美咲、瞬間移動も体力を著しく消耗するため容易くは使えないのだ。サイレンの音が近付いてくる、応援を要請されてやってきた警官隊のパトカーがやってきたらしい。
「貴方が美咲隊員ですね、乗ってください、他の数台は既に前獄園遊園地方面へ逃げる宇宙人を追っています」
「ありがとうございますっ!」
万が一事故が起きれば助手席の死亡率は高い、だから優秀むだ稀有な存在のMINT美咲隊員を極力失う可能性を減らすため、助手席の搭乗は禁止されている。
なので美咲も後部座席に乗ると、このパトカーも宇宙人を追って走り始めた。
「ふぉっふぉっふぉっふぉ」
「待てぇえええっ!」
不気味な笑い声を発するケムール人、その脚はかなり速い。なにしろ最大速度のパトカーですら追い付けないどころか、どんどん距離を空けられてしまう一方なのだ。
暗闇に包まれた街の中を疾走する不気味な宇宙人とパトカーの追走劇は三十分程度続いた末に、両者とも前獄園遊園地へ辿り着いた。
「撃てぇええええっ!」
パトカーから降りた警官隊は、ケムール人を一斉に狙い撃つ。対怪獣宇宙人用に、警官にも特殊な弾を発射する拳銃が支給されている。
ある程度の弾丸を受けても倒れなかったケムール人だが、観覧車にぶら下がっているところに数十発目を受けてようやく地面へ落下
「やったぞ!これで事件解決だ」
「いや待て、様子がおかしいぞ」
警官隊が喜んだのも束の間、ケムール人の体に異変が起きた。奴の体は倒れたままの状態で巨大化した... ... ...!
5.
「着きましたが、でかいですね、宇宙人」
「巨大化したんです、さっきまではあんな大きさじゃなかった!」
美咲隊員はお辞儀を忘れずにパトカーから降りると、お化け屋敷の中へ。
この如何にも本物の幽霊が紛れ込んでそうな暗闇を、美咲が変身用アイテム、リリィペンダントを抱いて強く念じることで眩い白光が覆った。
「くそっ、まったく攻撃が効かないっ!!」
「退避、全員退避ぃいいいいっ!」
「ん?この光は!?」
退こうとパトカーに乗り込む警官隊は、白く激しい輝きに思わず目を眩ませた。そして神秘の白光と共に巨人はふたたび現れる!!
「シュアッ...」
「ふぉっふぉっふぉっふぉ...」
ケムール人とリリィは睨み合い、互いに様子を見ている。
「おぉっ! あれは怪獣を倒してくれた地球人の味方!」
「頼むぞ、宇宙人を倒してくれ」
「我々は邪魔にならないように場を離れるぞ」
「了解!」
通用する攻撃手段を持たない以上、自分たちは邪魔になるだけと判断した警官隊の選択は正しいものだった。実際これで、リリィは足元に気を配ることなく戦うことができる。
「しゅああああっ!!」
リリィは戦いをいち早く終わらせようと、十字に腕を組んでリリウム・レクイエムを発射する。初めて怪獣と戦った時よりも早く、エネルギーが溜められるようになっているぞ!
「ふぉっふぉっふぉっふぉ!」
「シェアッ!?」
リリウム・レクイエムはケムール人の人工皮膚も貫いてしまうだろう... ... ...当たればの話である。
ケムール人は触角から消去エネルギー源を噴出し、リリウム・レクイエムを消滅させてしまったのだ。
「へあっ、ああっ!!」
「ふぉっふぉっふぉっふぉ」
光線を消滅させられて驚愕するリリィに、ケムール人は走って体当たりを食らわせ、うずくまる彼女を執拗に叩きつけてくる。
「しぇああっ!」
「ふぉっ」
リリィはパワーを発揮して攻撃してくるケムール人を弾きとばし、拳を振り上げて突進する。
「ふぉっふぉっふぉっふぉっ」
向かってくるリリィに向けて、ケムール人は触角から消去エネルギー源を発射。
ペタルシールドと呼ばれる光の障壁を展開したことで、リリィはこれを喰らわずに済んだが、代わりにペタルシールドが消滅してしまう。
「シュアアアアアアッ」
「ふぉっふぉっふぉっ」
バリアまで消してしまったケムール人は蹴りを放ち、リリィをお化け屋敷の上に吹き飛ばした。
ぶるぶる、リリィが首を振るいながら立ち上がったとき、観覧車を軽々持ち上げているケムール人の姿が!
「!?」
「ふぉっふぉっふぉ」
ケムール人は観覧車をリリィ目掛けて投げつけた。リリィは威力が低い代わりに直ぐに発射することができる、ショートビームで観覧車を木っ端微塵に吹き飛ばす。
「ふぉっふぉっふぉっふぁ!?」
眼前で観覧車が爆散した衝撃で怯んだケムール人、これをリリィは見逃さず、白い花弁が備わったかのような光の輪を放ち、厄介な消去エネルギー源を噴出しする触角を切り落とした!
「ふぉっ!?」
「シェアッ...!」
「ふぉっふぉっふぉっふぉっ...」
再びリリィは腕を組んで必殺光線を発射する、ケムール人はもうこれを消滅させる方法は持たない、今度こそリリウム・レクイエムが宇宙の誘拐犯に引導を渡すのだった。
ケムール人が爆発しリリィが夜空へ飛び去った直後、空から霧が発生した、それは更なる災厄ではなく寧ろ吉報であった。
その霧が発生してすぐ、コーヒーカップに今までケムール人に誘拐されていた人々が戻ってきたのだから。
「ここは地球か!?」
「良かった、戻ってこれた...」
「酷い目に遭いました」
今まで拐われてきた市民のうち数十人は、近くにいた者と抱擁を交わして、涙ながらに故郷へ戻ってこれたことを喜んだ。
「ごめんて天野、アイス奢るから許してよ」
「美咲さん~~~!」
「わわっ、ちょっ」
天野は美咲に抱き締めた、他の人達とは違い、激しく。
「怖かった~~~」
「お~よしよし、もう怖くないぞ~」
この光景こそ、平和が訪れた証である。豊国原と周佐は、友人同士の時間を暫く与えてやろうと考え、一足お先に基地へと戻るのだった。
6.
「くそっ、やられたか...何処かの国にでも亡命しようかな」
「笹山、やっぱお前のせいか」
「ひっ!」
リリィとケムール人の戦いをメリーゴーランドの馬車を模した座席から見ていた笹山が、ケムール敗北を見て帰ろうとしたところ、今回の被害者の一人、笹山のクラスメイトで正義感の強い女子生徒が絡んできた。
片手には木刀を持っているし、目も据わっている、これは非常に不味い。
「たっぷりお仕置きしたる!」
「勘弁なさって、お、落ち着いてぇえええっ...あ、あら!?」
笹山は逃げようとしたが、足元に注意が及んでいなかったのと、夜で周囲が見えにくかったのもあり、大きな石に躓いて転倒して水溜まりへダイブしてしまう。
ここ数週間、雨など全く降っていなかったのに何で水溜まりがあるのか、答えはひとつ、水溜まり等では無かったから。
「あっ...これって」
「あっ...消える、私がっ、消える!? 助けてっ」
今までの被害者と同様に笹山は影も形も残らず消滅してしまった、水溜まりの正体は残留していた消去エネルギー源だったのだ。
「...ま、自業自得だよね」
正義感の強いクラスメイトは、事件の犯人と手を組んでいた笹山が消えたことを通報することはなかった。
それから転送されてしまった笹山は一体どうなってしまったのか、知る者はいない。
終
技名や姿の正解は調べたり本編見ればセーフでも、鳴き声の表現はこれで正解か正解大体書いてないよ、人それぞれやし!