ポケットモンスターHGSSエボリューション~新たに芽吹きし若葉~ 作:東海鯰
コガネ放送局
「・・・・やはり彼女が絡んでいましたか。」
アポロはコガネ放送局のテレビに映し出される画像を見てそう呟いた。冷静を装いつつも、怒りを持った声で。
コガネシティ・テンノウジ区役所
「コガネシティの皆さん! 私はコガネ都知事のヒロフミです。一時行方不明との報道が流れ、指揮系統の混乱を招きましたこと誠に申し訳ございません。本当は都民の皆さんを、仕事や観光で訪れた人々を置いて逃げることは後ろ髪を引かれる思いでありました。しかし、私は都知事であり、コガネシティの危機に立ち向かわなくてはならない立場の人間であり、失ってはならないと諭され、今ここで皆さんにメッセージを送っております。この場で私をロケット団の手から救ってくれた、三年前にロケット団を倒した英雄である彼女、ブルーさんには感謝の意を表明致します。」
コガネシティの行政区の一つであるテンノウジ区の行政の中心テンノウジ区役所に設置された臨時の放送局からヒロフミは取り残された都民へ向けて放送を行っていた。
「そして今取り残されている多数の都民の皆さまに約束致します。現在から24時間以内にコガネシティを解放し、ロケット団を壊滅させます!! 現在我が党所属の国会議員を通して政府に対し彼らをテロリスト集団として鎮圧させるよう働きかけております。もし、政府が動かない場合はコガネ及び周辺の警察組織の総力を結集し、コガネが奪回致します!! 既にアサギ、エンジュの警察当局は協力することを表明しており・・・」
コガネ放送局
「・・・・フン!」
テレビの電源を切り、アポロはリモコンをテレビの画面に投げつける。画面に若干のヒビが入る。
「さて、都内の情勢は?」
「初めは良かったのですが、正直現在芳しくねえな。」
「・・・ラムダか。」
「ヒロフミの言うようにマジで周囲の警察が集まってきてやがるぜ。どうやら内通させてた奴らも捕まっちまったみたいだしな。」
ロケット団はジョウト地方の警察にスパイを送り込み、情報を抜き取り、骨抜きにしていた。しかし、
「しかしなあ、まさかそれもブルーはお見通しだったとはなあ。」
ロケット団は骨抜きに出来ていたと思っていたのだが、それは違っていたのだ。実際は国際警察のブルーがあえて奴らを泳がせていたのだ。動き出したときに一網打尽に出来るようにと。
「時間が経つごとに多数の武装した機動隊が此方を包囲する形で前進しつつあるようね。だけどそれも無駄なことよ。」
アテナは不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
「それもそうだな。それじゃ、俺は配置に着くぜ。」
ラムダはある人物に変装して別の部屋へと移動した。
エンジュシティ
「まずエンジュに到着か。暫し休息に入るか。」
バクフーンから降りるヒビキ。
「しかし、このままじゃ到着する頃にはバクフーンが力尽きちまう。」
ポケモンセンターでヒビキはバクフーンをジョーイさんに預け、自身も休息に入る。
「・・・・・かくなる上は・・・。」
ヒビキはコトネから貰い受けたひかりのいしを取り出す。
「トゲチック。」
ヒビキはトゲチックをボールから出す。
「それじゃあ、行くよトゲチック。」
「チック!!」
ひかりのいしをトゲチックにかざし、進化を始める。
「・・・・これがトゲキッス・・・。シンオウチャンピオンシロナさんも手持ちに入れているポケモンか・・・。」
ヒビキはトゲキッスをまじまじと見つめる。
「トゲチック。これから俺は困難な闘いに挑む。どうか俺に力を貸して欲しい。」
「キッス―!!」
任せてくれ! と言わんばかりに鳴くトゲキッス。
「そうか。ありがとう。」
ヒビキはトゲキッスに抱きつく。その後バクフーンの回復が完了し、ヒビキはエンジュシティを後にした。
「頼むぞトゲキッス!!」
ヒビキはトゲキッスにまたがるとコガネシティに向けて前進を再開した。
コガネ放送局
「・・・・・ぐあ・・・・。」
「貴方じゃ私には勝てない。それに、貴方は私が探している人じゃない。私が探している彼は・・・・どこにいるのか・・・吐け!!」
「くっ!!」
コガネシティ北区郊外
「最高速度で飛ばしたお陰であっという間に着いたな。トゲキッス! ゆっくり休んでてくれ!!」
コガネシティに辿り着いたヒビキはロケット団の監視の目が緩いエリアを選んで着陸した。
「さて、ここからどうすればいいのやら。」
コガネに着いたとは言ってもコトネがどこにいるのかなど知る由もない彼は何処から彼女を探すべきか。それを考えていた。
「放送局だ。コガネ放送局に・・・コトネは・・・い・・・る。」
「!! シルバー!!」
ヒビキの目の前には命からがら脱出してきたシルバーが現れた。所々服が破け、頭から血を流していた。
「ど、どうしたのシルバー!! ボロボロじゃないか!!」
「ヒビキか・・・悪いことは言わねえ。逃げろ。コトネが俺を。」
「な、何を言ってるんだよ! コトネが何したのよ!!」
「いや、奴はコトネじゃねえ。コトネのような別の人間と言うべき存在だった。いくら俺が語り掛けても・・・うう。」
「あ、無理しちゃだめだ!!」
ヒビキは直ぐにシルバーの傷の手当を始める。そして気持ちを落ち着かせてから話を聞いた。
「・・・みっともねえな。最強になるとか、群れる奴は嫌いだとか言ってたのにさ。」
「シルバー、何があったのか教えてくれる?」
「・・・あれは俺が放送局に乗り込んだ時のことだ。」
30分前のコガネ放送局
「フン。やはりロケット団なんて大した事ねえな。」
俺は下っ端の連中を蹴散らしながら放送局の内部を突き進んでいた。
「! 誰だ!!」
俺は背後に気配を感じ、後ろへ振り向いた。
「・・・コトネか。驚かせやがって。お前も来ていたのか。」
「・・・・・・・シルバー。」
「ああん? どうしたんだお前? そう言えばヒビキは一緒じゃねえのか?」
「・・・ヒビキ・・・・そう。今彼はヒビキと言うのね? 私の探している最愛の人は。」
「・・・・おいコトネ、お前何か変な物でも・・・・!!」
次の瞬間俺の腹を切り裂こうとハッサムが突っ込んできた。
「な、何をしやがる!!」
もしあと少し反応が遅れてたら確実に死んでいた。今思えば初めからおかしかった。
「私はコトネ何かじゃない。私はクリス。ワカバのトレーナーにして。」
「ギャアァーース!!」
「ルギアに選ばれし者よ。」
「・・・ルギア・・・だと?」
「やりなさいルギア。私の想いを妨げようとする邪魔者を渦の餌食にしてしまいなさい。」
「ま、待てコトネ!! お前は今!!」
俺はコトネの奴が洗脳されてることに気付いた。洗脳を解こうと戦うことにしたが、
「・・・・ぐはっ。」
「・・・・シルバーも随分と弱くなったものね。私が知ってるシルバーはもっとバトルを楽しませてくれた。シルバーの化けの皮を被った偽物め!」
俺は奴に勝てなかった。ルギア一匹にしてやられた。
「お、お前。トレーナーに直接攻撃は。」
「卑怯・・・と言いたいの? 偽物に対して当然の報いだと思うけど?」
「偽物・・・だと?」
「最早これ以上の問答は不要ね。殺りなさい、ルギア。」
「くっ!!」
「あの時は煙玉で何とか逃げ切った。命からがらな。」
「・・・・・・。」
「今のコトネは完全に人格を書き換えられてる。ヒビキ、お前が行って敵う相手じゃねえ。だがら。」
「逃げないよ。」
「な、何を言ってる。」
「シルバー、俺はコトネの幼馴染だ。誰よりもコトネのことを知ってるし、誰よりも寄り添って来た自信がある。そしてコトネに俺は昔何度も助けてもらった。もし、今コトネが苦しんでるっていうなら、俺が助ける。いや、コトネは今俺の助けを待っている。そして今コトネがルギアを従えていると言うなら!!」
ヒビキはにじいろのはねを取りだし、空に掲げた。すると何処からか鳴き声が聞こえてきた。
「ショオォーッ!!」
「俺はホウオウに選ばれただ。」
「・・・・なら、俺は何も言わねえ。道案内はしてやる。そこからは、知らねえけどな。」
コガネ放送局
「・・・・ホウオウは我々の支配下から離れましたか。やはり始末しておくべきでしたか。過ぎたことを言っても仕方ありませんが。」
コガネシティ上空
「・・・・・・・・・・。」
(・・・今の私は・・・誰なの? ヒビキ君・・・早く・・・早く・・・・助けて!!)
(続く)