VAーヴァリアス・アビリティ   作:VA

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お待たせしました。ここから二章が始まります。


第二章 強者たちの宴、緋月戦!!
第十話 修行開始! 氷兎を捕まえろ!


「おーい! 品出しの棚はここら辺でいいいか?」

「おう! その辺だ。あと提灯もつけといてくれ」

「あいよっ!」

「この時期になるといつも商品が不足するからな、今年は大量に仕入れとくか」

「今年は誰が優勝するのかねぇ」

「そりゃ三年の誰かだろう。だが、今年の一年は豊作らしい。良い戦いを見せてくれるだろう」

緋月島商業エリア。緋月の台所と呼ばれている地区である。多数の商店が立ち並ぶ商店街で商人たちがある準備をせっせと始めていた。

緋月島はとある時期が来るとお祭り状態となる。そのある時期とは緋月島三大行事と言われる体育祭、緋月祭、緋月戦の三つが行われる時期である。

この時期に開催される行事は緋月戦である。簡単に言うと各々(おのおの)が持つ能力を使い、頂点(トップ)を取るというランキング戦である。

このランキング戦を経ることで一学期のランキングが決定される。ランキング戦を勝ち進むことが良い成績を取る秘訣でもある。そのため、学園内の生徒たちは勉学を一旦置き、能力育成に励む。

 

「火炎玉」

 

手のひらで炎をとどめ球の形を作る。そして、出来上がった野球ボール大の火炎の球を相手に向かってぶち投げる。

 

「相変わらず、熱苦しい球だね。汗が出るよ」

 

手をかざして飛んでくる火炎玉に冷気を纏わせる。凍りかけた火炎玉は威力を失いその場に落ちた。まるで、人々から嫌われそうな大きな雹のようになりながら。

 

相変わらず相性の定理を覆してしまう先輩。尾乃影当麻。その弱点は炎だが、彼はその炎すら凍らせてしまうほどの力の持ち主なのだ。

 

そして、俺が当麻先輩と修行しているのにはある理由があった。それは、三日前に遡る。

三日前、緋月学園式場ホールにて生徒会長よりあることが発表された。

 

「えー、緋月学園はこれより緋月戦準備期間に入ります。それに当たって、生徒諸君には修行期間を一週間与えられます。一人で修行するもよし、相手を見つけて修行するもよしです。尚、ランキング一位になった生徒には黄道第二席、牡牛座(タウロス)の称号が与えられます。では皆さん祭が開催されるまで各自頑張ってください。」

 

生徒会長のお祭り開催宣言から数分後、ホールは生徒達の歓喜で包まれた。もちろん俺も歓喜の声を上げた。なんたって漣岬(さざなみみさき)尾乃影当麻(おのかげとうま)虎徹麒麟(こてつきりん)先輩と同じ黄道の席に着くことが出来るんだ。一位を狙わない手はない。

 

「やぁ、葵。ついにこの時が来たね」

 

心躍らせる俺の前に紺色のスーツを着た尾乃影当麻先輩が現れた。こうして会うのは入学式以来だった。

 

「はい! 優勝目指して頑張ります」

 

「そこでだ。俺と一緒に修行しないか」

 

「え?」

 

突然の申し出だった。

 

「まぁ、俺は緋月戦には参加出来ないが、以前、模擬戦をして素質を感じた。そこで、俺は何とかお前を勝たせてやりたいと思ってね!……どうした? 嫌か?」

 

「い、嫌じゃないです。是非ともお願いします」

 

いきなり当麻先輩の口から途轍(とてつ)もないことが発されたからびっくりした。黄道のメンバーとともに修行など、そう簡単に出来るものではない。俺はこの機会(チャンス)を生かして強くなりたい。もちろんいつかは黄道の誰よりも強い存在になりたい。そう夢を持って挑戦する。

 

「そうか、そりゃ良かった。緋月戦は全学年がまじわる戦いだ。だから、まずはランキング戦の出場権を獲得する。そのためには生半可な修行はしないから、覚悟しといてね」

 

「はいっ!」

 

と言った理由から俺は当麻先輩と修行することになった。

 

俺はワクワクが止まらなかった。一体、どんな修行が始まるのかと。しかし、こんなに期待をしたことを後悔することになるとは思いもしなかった。

 

「ほらほらほら~」

 

当麻先輩指導の元、まずは本戦出場権の獲得と言う目標を胸に修行を開始した。

「せ、先輩。何ですかこれ? 動けないんですけど」

 

俺は突然、首から下を氷漬けにされていた。カチコチに凍っているため手足は全く動かない。

 

「さぁ、そっからソッコーで出て来て!」

 

うん? 言っている意味がイマイチよく分からなかった。氷漬けにされてソッコーに出てくる!? 無理だろっ! まずは溶かさないといけないし、溶かしても少しずつだからソッコーでは出られない。どうしろって言うんだよ。

 

「誰が氷を少しずつ溶かせと言ったのさ。葵には、劫火(ワールドデストラクト)があるじゃないか。それで一発でしょ」

 

あぁ、なるほど。能力で出ろってことか。納得納得。

 

「了解っ」

 

そう言って氷の中でVA、劫火(ワールドデストラクト)を解放する。俺の体温が能力によって温かくなっていくのがわかった。今なら思いっきり炎を発することで氷を破壊出来る。

 

「うらぁ」

 

自分の力を炎につぎ込む。最初は体を温めるほどの温度だったが、今は氷なんぞ瞬時に溶けるほどの温度まで高まって来た。体温の上昇はちょっと心配だったが、まぁ大丈夫だろう。

 

「割れろぉ~」

 

さらに炎につぎ込む。すると、(ひつぎ)のようになっている氷にヒビがいった。そして、そのヒビは全身に行き渡り、俺を縛っている氷が大きな亀裂音を発しながら割れる。

 

「よっしゃあ~」

 

「じゃあ、次ねっ」

 

休む間もなく次の修行だった。当麻先輩が手のひらを地面につける。すると、空気中の水分が冷気で固まり人形の形になった。

 

「じゃあ次は俺のコピー、氷分身と戦って勝つこと」

 

相手は氷。殺してもお咎めなし。それに一対一。これならいける。すぐにクリアだーー。

 

「がはっ」

 

「おいおい、分身にも勝てないの?」

 

おかしい。なぜ勝てない。と言うか再生とかせこいわ。どこ斬っても再生するし、どうやって勝てって言うんだよ。まぁ、一人で文句ばかりいっても始まらない。ええと、さっきは能力で抜け出せっていってたな。なら、今回も能力をフルに生かせば。

 

炎を平らに、先は刃物のように鋭く。そして、切っ先は凍ることのない炎、劫火(ワールドデストラクト)を纏わせる。

出来たーー。

 

『長刀、炎帝』

 

「へぇ」

 

当麻先輩が目を見開いて作り上げた刀に感心を見せる。刀は長刀であるため一m七十cm程の長さだ。

 

「さぁ、第二ラウンドだ。氷の当麻先輩」

 

炎帝を分身の当麻先輩に向ける。氷の当麻先輩はニヤリと笑い、空気中の水分から氷槍を作り、それを投擲(とうてき)してくる。

 

「オラァ」

 

俺はその槍を一刀両断に切り捨てる。切っ先に世界を焼き尽くすほどの火力を纏った刀だ。ただの氷ぐらいすぐに破壊出来る。この調子で投擲(とうてき)された全ての槍を破壊した。

 

そして、そのまま氷の先輩を斬りに向かう。氷の先輩が槍を手に向かってくる。

 

氷槍と長刀―炎帝がぶつかり合う。炎帝で氷槍を弾き返して右腕を切り落とす。切り落とされた腕は綺麗な断面を保ったまま再生することはなかった。

 

「よしっいけるっ」

 

腕を斬り落とされた氷の当麻先輩は左手で氷槍を持った。そして、無言のまま俺に向かって槍を振りかざす。その槍をうまくかわし、もう一本の腕も斬り落とす。斬り落とされた氷の左腕は地面に落ちる前に熱で溶け蒸発した。両腕を失った氷の先輩はその場に(たたず)んでいた。

 

「うんっ、中々に能力を使いこなせるようになったね」

 

当麻先輩が拍手しながら戦いを終えた俺を賞賛してくれた。

 

えへへへ。黄道の水瓶座(アクエリアス)の当麻先輩に褒めてもらった。それだけで頑張れる気がした。今なら何でも出来そうだ。

 

「次は何します?」

 

「うーんと、能力を使いこなせるようになったから……次は体力だなっ」

 

げっ。体力だと!? 俺は昔から走ることや体力を使うことが苦手だ。今も体力を使うことは苦手だ。だから俺は体力はないっ。これだけは誇って言えた。まぁ、誇らしげに言うことじゃないのだが…。このことを踏まえると今回の修行は緋月戦前の最大の難関と言えるだろう。

 

「じゃあ、体力を鍛える修行として今回はあるものを捕まえて来てもらうよ」

 

はい、でました。追いかける方が永遠に走らされる魔の競技―『追いかけっこ』

 

さて、軽く準備運動でもしておくか。今からあるものを追いかけなければならないからな。

 

「準備はいい? 氷造形(アイスメイキング)(ラビット)

 

当麻先輩が再び空気中の水分を氷結させウサギ型の氷を作る。

 

「それでは、追いかけっこ……スタート」

 

当麻先輩の声と同時に氷兎(アイスラビット)が街中の方へと逃げて行く。

 

「えっ、街中に逃げるの!?」

 

「誰もそこらへんに逃げるとは言ってないよ。ほらほら、早く追いかけないと見失っちゃうよ」

 

慌てて振り向くと氷兎(アイスラビット)の姿は豆粒ほどになっていた。

 

「お、おい待てぇ。ウサギ~」

 

それを追いかけるために慌てて俺もスタートをきる。ふ~ハンデがありすぎて困るぜ。

 

兎を追いかけ始めて数十分。唐突すぎる展開の連続で体力が無いことを忘れていた俺はある建物の階段で休んでいた。

 

「はぁ~はぁ~。しまった、俺体力無いの忘れてた。明日は筋肉痛だな。うん」

 

完全にノックアウト状態の俺の前に氷兎が現れる。

 

「待てこらぁ。あたたたたたぁ」

 

追いかけようとするが体が動かない。どうやらいつも動かしていない体を無理に動かしてしまったため体にガタが来ているらしい。そのガタの全てが腰に来ていた。

 

「見て見て、(うさぎ)がいる~。可愛い」

 

「冷たっ。氷で出来てる。めずらし~」

 

痛みに悶えながら腰に手を当てる。腰に手を当て支えながら声のした方を向く。その方向には幼馴染の八橋紅葉(やつはしもみじ)深石霙(ふかいしみぞれ)が氷の兎と触れ合っていた。

 

「も、紅葉と霙。何でここに?」

 

理由(わけ)を聞くと、要を誘ったら修行で忙しいと断られ、代わりに俺を買い物に誘いに来たら俺もいなくて、代わりに当麻先輩が座って読書をしていたらしい。当麻先輩から修行のことを聞いて残念に思い買い物に来たらちょうど出会ってしまったと言うわけらしい。霙はあの事件のあとからしゃべり方が変わっている。あの時は若干無理していたようだ。

 

「ちょうどイイや。葵、買い物、手伝ってよ」

 

その場の雰囲気に流されデパートに連れて行かれた俺。

 

だいたい連れて来られた理由は分かってる……そう男子の仕事と言えば荷物持ちだ!!

 

「お、おい。まだ…買うのか」

 

俺の二本の腕に支えられている荷物は当に背丈を超えるほど重ねられている。女の子は一体なぜこんなに大量に買うのだろうか。不思議だ。

 

その後も三店舗くらいハシゴしてすべての荷物を持たされた。

 

腕も足もパンパンだ。違う意味で修行になった一日だった。明日は筋肉痛だな。はぁ。

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