VAーヴァリアス・アビリティ   作:VA

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第十三話 二度あったことが三度あってたまるか!!

今、私は泳いでいる。見渡す限り青い色が広がっている広大な海で。地図で見ると海はとても狭く見えるが、実際には人間がちっぽけだということに改めて気づかされる。

 

そんな母なる偉大な海に、数百人が挑戦していた。私もその中の一人だ。

第一ブロックにいる私が挑戦しているのはトライアスロンという予選だ。この予選は(えい)(しゃ)(そう)という三つの種目を順々にクリアしてゴールを目指すというものだ。

 

まず最初は泳。つまり水泳のことだ。海を泳いで島を一周する。海には普通に泳いでいるもの。海の表面をとてつもない脚力で走っているもの(泳いでいない)。海洋生物や船などにまたがっているもの(泳いでいない)と様々だ。

私はその三つの中の前者だ。とてつもない脚力も無いし、海洋生物も船などもいない。普通に泳いでいる。

泳いでいくのも案外苦では無い。波は穏やかだ。これが荒れ狂う波であったなら泳いでいくのは不可能だろう。

「ちょっと、そこのあなた。私のセインディーネの通る邪魔でしてよ」

泳いでいる真後ろから水馬に乗って日傘をさし、この競技に似合わないフリフリのドレスっぽい服を着た金髪碧眼の貴族風の女に邪魔と言われた。おそらくセインディーネというのは馬の名前だろう。

「何だ。ただのバカか」

独り言のように言い、無視して先を進む。何が起こったか見て見ぬふりして泳ぎに集中しよう。

「ちょ、ちょっとバカって何ですの。それに無視ですの。お、お待ちなさい」

聞こえていたのか、仕方が無い。急いでいるのだが、バカの相手をしてやるとするか。だが、ここでだらだらと話していると他に遅れをとってしまう。どうしたものか。

「何? 私、急いでるんだけど」

「あなた、今、(わたくし)をバカとおっしゃいましたね」

水馬セインディーネに乗ったまま、日傘で差された。マナーが悪い。

「それが何?」

「何って!? しょ、勝負ですわ。(わたくし)が勝負に勝てば、あなたは(わたくし)に隷属していただきます。この華麗なるセレファイス家のトゥルー・セレファイスに」

日傘で私を差しながら誇らしげに言ってくる。そもそも自分で華麗なるとか言う? 本当の名家なら自慢とかしないと思う。それにこんな予選にも出場しないと思うけど。

「それが、どうしたの。私には家柄なんて関係ない。向かってくるものを(はば)むだけ」

まぁ、私の中で一度だけ向かってきたものを(はば)めなかったことがあるけど。ふと、オリンポスに所属していた私を、心の()り所のなかった私を、組織に物として扱われていた私を「組織の操り人形じゃない、お前にはお前の生き方があるし、仲間がいる」と必死に説得してくれた葵のことを思い出す。

「勝負にのったこと、バカと言ったことを後悔させてあげますわ」

「望むところだ」

「では、(わたくし)からいきますわ」

日傘を畳み、ボタンを押すと日傘の先端から突起が現れた。隠し槍というものだろう。そして水馬の手綱を持ち、海の上をカッポカッポとかけてくる。

「知ってまして、我がセレファイス家は騎馬が得意ですの」

トゥルーが馬に乗って日傘槍を振るう。波に揺られながらも槍の切っ先が当たるギリギリのところでかわす。槍は私を捉えられずに海を刺す。お返しにと言わんばかりに海水をトゥルーめがけてかけた。

 

「ひゃあ」

 

水をかけられてドレスが濡れたトゥルーはお姫様のような悲鳴をあげた。

 

「水攻撃とは。中々、やりますわね。ならこれはどうですの」

 

再び日傘槍を構える。今度はより高く構えていた。

 

「喰らいなさい。天の裁き、天雨(てんう)

 

日傘槍を高い位置から私をめがけて突き刺す。ギリギリのところでかわしているが、騎馬が得意と言うだけあって突きのスピードは桁違いに早い。雨のように降ってくる槍の先をかわすのに精一杯で攻撃する暇が取れない。

 

「あら? 今度はかわすのに精一杯で攻撃して来ないのですね。それとも攻撃が出来ないのですか? オホホホホ」

 

槍を突き続けながらトゥルーが見下したような目で見る。

 

この野郎。

 

こんなにコケにされたのは初めてだった。ただのバカと甘くみていた私のミスだ。認めよう。こいつは私が必ず排除しなければいけない相手だ。なら、見せよう私の能力を。……いや、待てよ。今、あいつは自分は強いと思い込んでいる。それに、馬にまたがっている。そこを利用すれば…いける!!

 

「安心してよ。攻撃しないだけだから」

 

語尾を強調して相手に本当はいつでも攻撃出来るぞと意識させる。そして息を大きく吸って空気を肺に取り込めるだけ取り込む。空気が漏れない間に勢い良く海の中に潜った。

 

「海に潜ったところで何が出来ますの。もう一度喰らいなさい。降り注げ、天の裁き、天雨(てんう)

 

トゥルーが周辺の海を突きまくる。馬の周囲に近づけないようにするためだろう。

 

それに当たらないように海の中を泳ぐ。海の中から地上を見ると光が波に反射して輝いてとても綺麗だ。さて、早く決着をつけよう。もう一度、この輝きをこの目に焼き付けるために。

 

水の中からトゥルーの居場所を日傘槍で突き疲れたところを狙うために再確認する。

 

「はぁ、はぁ。ふざけるのもいい加減にして欲しいですわ。下々の分際でこの(わたくし)、トゥルー・セレファイスに楯突くとは」

 

思い通りの展開となったことを海の中で喜んだ。だがしかし、油断は禁物だ。アホそうだが何か奥の手があるかも知れない。

 

(よし、今だ)

 

水の中から思い切り飛び上がる。そして水馬に乗っているトゥルーのヒラヒラドレスの裾を掴む。

 

「えっ、何ですか。は、離しなさい」

 

「落ちろ」

 

掴んだまま水馬、セインディーネから引き摺り下ろす。私には出せないような華麗な声で海へと入水していった。私もトゥルーも海にといった状況になった。

 

「何をするんですの! この(わたくし)を海に落とすとはセレファイス家が許しませんわよ」

 

顔だけをやっと出したような状況でそんな事を言われてもただの脅しにしか聞こえなかった。

 

「それがどうしたの。文句があるなら無くなるまでかかってくればいい」

 

目をパチクリさせ唖然としているトゥルーを尻目に再び泳ぎに集中する。さて、何人に抜かれただろうか。今からごぼう抜きしてやろう。

 

第二種目は車。自転車だ。自転車に乗り第三種目の場所へと向かう。

 

トゥルーとの戯れの後、百人弱の中で中間位で第二地点に入った私は自転車に乗り先を急いでいた。残すところあと数キロだ。

 

「見つけましたわ」

 

ふと、横を見ると馬車に乗ったトゥルーが横ピッタリに走っていた。あの後、泳をクリアし私に追いついたらしい。だが私にはそんな事どうでも良く、トゥルーが乗っている馬車に気を取られていた。本当に何でも有りなのだと。

 

「海での屈辱、ここではらさせていただきますわ」

 

そう言って馬車の中から取り出したのは日傘槍ではなくバズーカ砲だった。

 

トゥルーはバズーカ砲を自転車を漕いでいる私に向ける。

 

「セレファイス家を怒らせるとこう言うことになりますわ」

 

バズーカ砲の引き金を引いた。地球が爆発したかのような乾いた音がしたと思ったらすぐ目の前で道路が爆発した。

 

「あぁ、外しましたわ」

 

残念がるトゥルー。こちらは当たらなくて良かったと安堵する。その安堵も束の間、弾を装填し直し再び構える。

 

「嘘ぉ〜」

 

驚く私の声は二発目のバズーカ砲に消された。

 

そして、二発目も自転車に当たることなく周辺の木々に当たる。

 

「もしかして狙うの下手なの?」

 

「そ、そんなことがあるはずないじゃないですか。わ、私はただあなたのコロコロが壊せればいいなと思っただけですわ」

 

色々と口から物を言っているが図星だということはバレバレだ。それとコロコロって何? 自転車だよ。これだから世間知らずなお姫様は嫌いだ。だが、このままトゥルーと遊んでいる暇はない。荒っぽいが仕方が無いVAを使おう。

 

解放(リリース)(トリガー)

 

能力で異空間に保管しておいたハンドガンを出現させる。そのハンドガンを片手にトゥルーが駆る馬車に狙いをつける。

 

「ふふん、ちゃんと当てられますの? あなたも私と同じで狙うのが下手とかでしたら笑い物ですわ」

 

私が狙うのが下手? オリンポスにいたこの私がターゲットを逃すわけないじゃない。

 

馬車の車輪めがけて引き金を引いた。放たれた弾は車輪の中心にヒットした。見事な装飾がされていた車輪はただの木片となった。

 

「あ、あれ? あらぁ〜」

 

片方の車輪が大破した馬車は舵が効かなくなった見たいに動き回りやがて静かに停車した。

 

「覚えてなさい。次は必ず〜」

 

さて、先を急ごう。第三地点からは走、いわゆるランニングだ。第三地点から最後のゴール、トライスタジアムへと戻る。私が最も苦手としているものの一つがランニングだ。オリンポスにいたのだからそれぐらいと思われるかもしれないが、私は諜報部員だった。そのため体力はあまり必要なく、その場をどう切り抜けるかを考える頭脳が必要とされていた。

 

考えても埒があかない。とりあえず走り始めた。どこかいびつな走りも順調で残すところあと三キロほどにさしかかった。

 

「勝ったまま逃げられると思ってですの。勝ち逃げは許しませんわ」

 

またこの声か。いつまでつきまとうつもりなのか。声のする方を向く。

 

「なっ!?」

 

走っているのならともかく、二つの車輪の乗り物セグウェイに乗っていた。何でもありというルールだがこれに一番驚かされた。

 

「ふふふ、驚いたようですわね。このミッキーからは逃れませんわ」

 

セグウェイにも名前をつけていた。ミッキーという名はあの大人気キャラの名前と同じだが、決して一緒にしたくない。あちらが迷惑被る。

 

「そもそもですわ、私とミッキーの出会いは…そう十」

 

出会いの話などどうでも良かったが十年も一緒にいるとなると家族同然に思えるのだろうか。これは母親を殺された私にはわからない。

 

「出会いは十分前」

 

今、僅かながら考えた時間を返して欲しいと思った。出会いは十年前ではなくつい最近の十分前。ほぼ他人だった。我ながら勝手に思い込んだことが情けないし恥ずかしい。

 

「あなたを追いかける途中で見つけたので即買いしましたの。これであなたを私の奴隷に出来るかと思うと嬉しくてたまりませんわ」

 

「ねぇ、前見ないと、カーブだよ」

 

親切に教えてあげたが、自分の世界に入り浸っているのか聞く耳を持たない。そして、そのままカーブを曲がることなく直進。生い茂る木々の中に突っ込んで行った。

 

あちゃーと思ったがそのまま放置でゴールまで走った。トライアスロンの最終順位は百人弱中の三十位。途中邪魔が入ったにしては、まずまずの結果だった。本戦に進めるのは百位まで。その中にはあのお嬢様も入っていた。

 

本戦の出場権を得た私はここで二人を待つ。残りの競技は怪物戦闘(モンスターファイト)、他生徒との一騎打ち(ワンスオブワン)の二つだ。どれが当たってもあの三人ならやり遂げるはずだ。

 

そう思いながら会場で見ている二人の元へと向かった。ふと、見上げた夜空は海の中のように、輝く星達が祝福するかのように瞬いていた。

 

二次予選一日目 深石霙、突破。本戦の出場権獲得。

残り 〜紫乃原葵、八橋紅葉、狭霧要〜の三名

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