VAーヴァリアス・アビリティ   作:VA

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第十四話 竜王

「ふぁ~あ」

 

第一ブロックの二次予選が終わった次の日の早朝、ある男があくびをしながら学園のメインストリートを歩いていた。男は短髪で白髪。そして、右足には銀色に輝く義足をはめている。男は道端に設置されている自販機の前まで来るとお金を入れて、頭をかきながら、お目当ての飲み物を探す。

 

缶コーヒーの欄を押して出てきた缶のプルタブを人差し指で開け、一口すする。

 

体の隅々にすすった缶コーヒーが行き渡っていくのを感じながら口を開いた。

 

「さて、可愛い後輩たちと遊んでやるとするか」

 

「ここにおったんか、雷同。めっちゃ探したわ」

 

いつの間にか雷同の背後に男が立っていた。男は短めの髪で色は金。見てくれはヤクザのようだ。

 

「あぁ、すまん。部屋には俺が好きな缶コーヒーが売ってないからなぁ」

 

「まぁ、ええわ。ほいじゃあ行くか。今年がどんなか楽しみじゃのぉ」

 

「なぁ、禄山(ろくざん)。お前、その言葉遣いなんとかならんのか」

 

「はぁ、わりゃあ何言っとんじゃ。カッコええじゃろうが」

 

見てくれはヤクザと言ったが中身もヤクザのようだった。

 

「そ、そうなのか。俺にはよく分からんが」

 

缶コーヒーをグイッと飲み干すと手と口を使ってピィーと高い音を出す。

 

重低音の羽ばたきが聞こえたかと思うと、二人の周りが暗くなる。太陽は暖かな日差しで赤く町を染めていた。だが、何かが学園と太陽の日差しの間に入り込み日差しを妨害していた。

 

「よーし、いい子だ」

 

学園を太陽の日差しから覆い隠したのはギロリとした目を持ち、ゾウの何百倍もある体で金色に輝き。鳥の何百倍もある翼を持ち、鋭く尖った牙を持つ。幻獣と呼ばれているドラゴンだった。

 

ファフニール、それがこのドラゴンの名前だった。

 

ファフニールは(くちばし)に二人を乗っけると長い首を生かして背中まで送る。二人は嘴から背中へと乗り換えをした。

 

「さぁ、行こうか、ファフニール。我らを止める事が出来る者たちが何人いるかな」

 

ファフニールはそれに答えるかのように咆哮(ほうこう)すると巨大な翼を羽ばたかせ飛び去って行った。

 

 

「おめでとぉ」

 

「霙、よくやったな。まさか一番最初に本戦の出場権を勝ち取るとはなぁ」

 

俺は自室で霙、紅葉、要の四人と祝勝会を楽しんでいた。また、俺の部屋だが毎度毎度の事なので慣れた。現在六時。この祝勝会は昨日の午後九時ごろから開いていたが見ての通りオールだ。三人とも当に限界など越えている。俺と紅葉(もみじ)(かなめ)は今日、二次予選なのだが大丈夫なのかな。要は今はぐっすり眠っているため予選には支障が完全にないとはいえないが大丈夫だろう。問題は俺と紅葉だ。いつまでも起きているのだから支障をきたすことになるだろう。

 

「みんな、ありがと」

 

普段からお礼を言うことに慣れてないためか少しだけ頬を赤らめて笑う霙。

 

「しかし、あいつは何だったんだ?」

 

霙は誰? というような顔をして首をかしげている。三回も相手をしたのにもう忘れているのか。よほど興味がなかったのか、単に忘れっぽいだけなのかどっちなんだろう。

 

「あいつだよ。確かトゥルーなんとかって言ったっけ」

 

あぁと思い出したように手を叩く霙。本当の本当に忘れていたらしい。三回もやられたのに。俺がなぜ知っているかと言うとモニターに全て写っていたためだ。会場の全員が霙の海での悪行、馬車の破壊とか。いや、戦いを見ていたのだ。

 

「い、いや。あれはね。ちょっとバカにされたからつい、カチーンとなっちゃって……」

 

笑って誤魔化そうとするが、こっちは一部ではなく全部始終見ているんだぞ。全く誤魔化せていないぞ。

 

「ほぉ~、カチーンとねぇ~。本当はただウザかっただけじゃないのか?」

 

「そ、そんなわけないじゃん。バカにされたんだよ。お前の攻撃は当たらないとか言われて…それで悔しかったんだよ…」

 

涙目になりながら言う霙を見て、俺も可哀想になった。だからこの話は終わりにした。

 

「な、なぁ、紅葉。俺たちも頑張ろうな」

 

「う、うん。頑張ろう」

 

ぎこちない会話をする俺と紅葉。それはいいが間が持たない……。こればっかりはどうしようもできなかった。

 

「じゃ、じゃあ私は予選の準備をしてくるから、先帰るね」

 

この気まずい空気から逃げるようにして部屋を出ていった。一人にしないでくれよ。

 

「ねぇ、葵」

 

「な、何?」

 

気まずい雰囲気の中、ロボのようにギリギリとした動きで霙の方を振り替える。霙が真剣な眼差しで俺を見ていた。不思議なことに怒られるとかじゃないことは分かった。

 

「今日の二次予選だけど。あの、その……絶対勝ち残ってね」

 

霙の思いが全て籠った言葉を受け取った。普段、霙は思っていることを表情に表さない。しかし、今は違う。恥ずかしさなのか分からないが頬をほんのり赤く染めてなれない笑顔で言ったのだ。俺は思った。これに応えなければ男じゃない。

 

「おう、あったりまえだ。俺は絶対勝ち残る。本戦に出場して優勝するまで俺は負けない」

 

「うんっ!」

 

そうなったら今日の二次予選に向けて睡眠をとらなければならない。無睡眠のまま予選に出るのは重要な場面で判断を鈍らせる恐れがある。予選は十時開始だ。残り三時間ほど眠れる。よしっ、寝よう。

 

「じゃあ俺は軽く睡眠をとるから」

 

霙に言って机を少しずらす。空いたスペースに横たわって目を閉じる。

 

「うん、分かった。お休み……。えっ寝るの!?」

 

予想もしていなかった一言に驚きを隠せない霙。

 

「あぁ、何か問題があるのか」

 

「ありありよ。このまま寝れば絶対寝坊するわよ」

 

「んなバーカーな。絶対あり得ねぇ。ちゃんと起きて会場へ向かうよ。それじゃあ……」

 

「まぁ、そこまで言うなら。じゃあ私帰るから。ちゃんと起きてよね」

 

「あぁ、さんきゅな」

 

霙が眠っている要を背負ったのと小さく可愛いと声に出して笑ったのと玄関のドアが閉じる音までは聞こえていた。俺が寝坊? 愚問だ。俺が寝坊することなど、万に一つとしてない。なぜなら、俺は………。

 

 

「さて、予選も残すところあと二種目となりました。今日はその両方をやっちゃうよ」

 

トライコロシアムで桃柿りんごが巧みな話術で観客を盛大に盛り上げる。その盛り上がりに連鎖して選手たちも勢いづく。

 

「よしっ、頑張るぞぉ」

 

紅葉は湧き上がる歓声の中、決起していた。この二次予選は三つの競技に分かれている。一つは霙があたったトライアスロン。二つ目は私と要のブロックの怪物戦闘(モンスターファイト)。最後の三つ目が葵の二次予選史上最難関と呼ばれている他生徒との一騎打ち(ワンスオブワン)だ。最初に本戦出場を決めたのは霙だ。もちろん、これに続いて紅葉も本戦の出場権を勝ち取らなければならない。

 

紅葉は周りの挑戦者を見渡した。屈強そうな男子生徒や頭脳明晰っぽい女子生徒。様々なジャンルの生徒が予選開始を今か今かと待ちわびていた。いずれもそれなりの修練を積んできているはすだ。しかし、それは紅葉も同じだ。

 

「えーと、葵はどこにいるのかなぁ」

 

選手、観客で大入り満員状態のコロシアム内から葵の姿を探す。コロシアム内で人一人を探すのは骨の折れる作業である。それに葵がどんな服装でいるのかも分からない。勘と髪型、身長など記憶が頼りだ。

 

控え室、メインステージ、観客席。いずれも見て回ったが葵の姿はどこにもない。

 

「どうした? 誰か探しているのか」

 

紅葉が振り向くとそこには騎士の格好をした女子生徒が立っていた。

 

「はい、ちょっと友達を探していて」

 

「ふむ、友達か。ここにいないのであればいないのだろう。その友達は何かしらの理由があって来られないのだろう。電話とかして見たらどうだ」

 

電話…なぜ電話が考え浮かばなかったのだろう。そう電話をすればいいのだ。そうすればすぐに居場所がわかる…はず。って、そういえば私、葵の電番知らない。どうしよう。はっ、霙なら知ってるかも。

 

「あの、ちょっといいか」

 

再び騎士の格好をした女の子に話しかけられる。

 

「私も探している人物がいるのだが、犬臭い奴なんだが見ていないか」

 

い、犬臭い奴? 言っている意味が分らなかった。匂いで人を探すとかありえないでしょ。

 

「さ、さぁ」

 

「そうか。わかった。ありがとう」

 

そう言って騎士の女子生徒はスタスタと他の選手たちの中に混じっていった。

 

変な人と思いながらスマホに登録されている霙の覧から電話番号をタッチする。

 

「もしもし、霙? 私。紅葉。うん、もうすぐ始まる。うん、頑張るね。じゃあ」

 

霙と話をして元気出た。よし、頑張ろう…って違うよぉ。一人であわわしながらもう一度霙に電話をかける。

 

「あっ霙? 私。ごめん。一番聞きたいこと忘れてた。まだ葵が来ていないの。それでね葵に電話したいんだけど電話番号教えてくれない?」

 

 

時間は少し遡る。

 

紅葉が葵を探し出す前、二次予選を突破し早くも本戦の出場権を得た深石霙は指定された座席に座り。二次予選の開始を今か今かと待っていた。

 

「ここ、いいかしら」

 

入ってきたのは私を助けてくれた人。漣岬だった。その隣には葵の師匠、尾乃影当麻も立っていた。

 

「どうぞ」

 

そう言うと何の遠慮もなしにドカッと椅子に腰掛ける。一つは遠慮したらどうだと思ったが許可したのは霙自身だ。しょうがないで済ませた。

 

「葵くんが気になる~?」

 

「えっ、あっ、その」

 

不意に突かれた言葉に霙は言葉が出なかった。何もかも見透かされたようで怖かった。

 

「ふふ図星かなっ。まぁ今の葵くんなら大丈夫じゃないかな。当麻がしっかり教えているから」

 

横に座っている当麻先輩を見る。当麻先輩は苦笑いで済ませている。

 

「だけど竜王に当たらなければ…」

 

竜王? 誰だそれ? と思いながら話を聞く。

 

「竜王とはね…」

 

霙の疑問をも見透かしたように竜王について話し出す。

 

 

プルルルルル。

部屋中で電話のコール音が響く。数分ごとになるそれはもはや地獄だった。

 

「あぁもう、うるさいなぁ。もしもし…えっ!?」

 

電話の相手は紅葉だった。なぜか紅葉に強めの口調で「時計を見ろバカヤロー」と言われ一方的に電話を切られた。

 

「ったく、なんだよ」

 

言われた通りに目覚まし時計を見る。ただいまの時刻、午前十時。たしか二次予選は十時から。…十時!? 大変だぁ。

 

ベッドから飛び降り、服に着替えると急いで寮を出た。寮から会場のトライスタジアムまでは徒歩、ランではかなり遠い距離だ。はぁ、どうしたものか。とりあえず会場まで向かおう。徒歩で会場まで向かい始めた。

 

キキィー。

 

背後から来た車が歩いていた俺の行く手を阻むように停止した。そして助手席の窓が開いた。俺に文句を言ってくるのか。車が止まるほど邪魔はしてないと思うんだが。

 

「おう、紫乃原じゃないか、何してるんだ。お前、緋月戦の予選に出てるんじゃないのか」

 

車に乗っていたのは一組のボス。またの名を女子寮の伝説(レジェンド)こと千崎棗だった。棗先生はかけていたサングラスをはずした。

 

「で? 何で寝坊なんかしたんだ。まぁ、お前のことだ。おおかた祝勝会とかやっていて寝不足とかだろう」

 

助手席に座り車で送ってもらっている俺は縮こまっていた。なんせ棗先生の車ということもあり居心地が悪かった。それに予選に遅刻という禁忌(タブー)を犯しているのだ。

 

「は、はい。そのとおりです」

 

「祝勝会とかやるのは別に構わないが試合に負けてみろ。分かっているな」

 

鬼みたいな目が俺を見ている。怖すぎて先生の顔を見れないまま車に乗車すること十分。目的地が近づいてきた。

 

「ほら、着いたぞ。頑張れよ、もし…予選落ちなんかしたら…」

 

再び鬼が出現した。桃太郎・犬・猿・(キジ)よ、助けてくれぇ。そんな伝説の英雄が助けてくれるはずもなくそそくさと車から逃げるように降りてコロシアムの内部へと向かった。

 

「ふむ、走って向かうとは気合十分か。感心感心」

 

何か勘違いをしている千崎棗は再びサングラスをかけると活発なエンジン音を鳴らし走り去っていった。

 

「はっはっはっは…はぁ~」

 

現時刻午前十時十五分。なんとか間に合ったようだ。コロシアム内部はまだ桃柿りんごの説明を受けていた。

 

「やっと見つけた」

 

息を整えつつ振り向くと紅葉が走ってやってきた。紅葉もなぜか息を切らせていた。

 

「もう心配したんだからね」

 

「あぁ、わりぃな。ちょっと…」

 

「じゃあ今から二次予選を開始しちゃいま~す。ここトライコロシアムでは一騎打ち(ワンスオブワン)、隣のトライアリーナでは怪物戦闘(モンスターファイト)が行われま~す。時間をご確認の上、ご覧いただきますようお願いしま~す」

 

桃柿りんごの言葉によって話が遮られる。それとともに準備もろくに出来てないまま二次予選が始まった。

 

俺の二次予選は他生徒との一騎打ち(ワンスオブワン)だ。ランク的に予選突破が一番難しい予選とされている。

 

『一回戦―紫乃原葵VS西原翔馬(にしはらしょうま)。両名はコロシアム中央に集まってください』

 

休む間もなく女性のアナウンスが俺の名前をコールした。えぇと不満全開のため息をつきながら中央へと向かう。

 

「来たなっ! 俺はお前を倒し黄道の弟子を倒したと自慢してやるぜぇ」

 

指を差され、いきなり宣戦布告を受ける。自慢するのは勝手にどうぞと言いたいが、俺が負けると先輩の名に傷がついてしまう。負けられねえ。

 

「いいぜ、かかってこい。ボコボコにしてやるぜ」

 

結果、俺の勝利。宣戦布告してきた割には案外弱かった。な~んかがっかりだった。一回戦を終え休憩室にて休憩をとる。到着してすぐの戦闘だったからかお腹が鳴った。

 

チュー。

 

即席の栄養ゼリーで空腹を満たす。ゼリーをすすりながら休憩室に設置されているモニターで要、紅葉の様子を確認する。二人とも二次予選は怪物戦闘(モンスターファイト)一騎打ち(ワンスオブワン)よりは突破しやすいだろう。

 

『二回戦―紫乃原葵VS朽坂雷同(くちさからいどう)。両名はコロシアム中央に集まってください』

 

よしっ! この調子で勝ち進む。そんでもってちゃちゃっと本戦出場だ。腕が鳴るぜ。

 

コロシアム中央にて対戦相手の朽坂雷同の到着を待つ。対戦相手より先にコロシアムに立つというのは何か良いな。主人公の勇者が来るのを待ち構えているみたいで。ってこんなこと思っていたら負けるフラグが立つじゃんよ。

 

ブンブンと首を振って今の考えを振り払う。

 

ゴォー。

 

戦闘機がやってくるような音が上空から響く。上を向くと何かが上空に舞っていた。飛行機で華麗に登場か。やるなと思いつつ見続けているとその何かが滑空してくる。すげぇ飛行機だなと思っているとその何かが飛行機でないことがわかった。なぜなら飛行機にすれば大きすぎるのだ。飛行機の二倍はありそうなシルエットは段々とコロシアム付近に近くなりその巨体が露わになった。

 

ドラゴンだ。

 

 

モニターから二回戦が始まるのを観戦していた霙は竜王という言葉が頭に引っかかっていた。岬先輩の「竜王に当たらなければ…」という言葉が。その竜王とは強いのか。漣岬先輩がいうほどの人物だ。想像以上の実力を持っているのだろう。

 

竜王―朽坂雷同。竜を操るVAでVAランキング常に上位に入っている三年生。竜を使った戦闘を得意とし、王のように他の生徒を全て蹴散らしていることから竜王と呼ばれる。

 

葵は勝てるだろうか。いや勝ってくれる。私が葵を信じなければ誰が葵を信じるのだ。頼むぞ葵。絶対に勝って。

 

 

「いやぁ、待たせたな」

 

ドラゴンから飛び降りた朽坂雷同は笑っていた。そして右足の銀色に輝く義足の機械音を鳴らしながら迫ってきた。

 

「こいつはファフニール。お前が紫乃原葵か。ふ~む」

 

朽坂雷同の視線が痛い。品定めをされているようだ。

 

「市丸が言っていたように戦いがいがありそうだ」

 

ピィーと二回戦開始のスタート音がなる。

 

「おっと、戦闘の始まりだ。お互いに悔いのない戦いをしような」

 

そういうとドラゴンの元へと向かい(くちばし)から背中へと移行しまたがる。そして飛び上がる。

 

「え~と…ドラゴンって反則じゃないか」

 

そう思いつつも劫火(ワールドデストラクト)を体に纏わせた。よしっ行くぜっ。左手で火炎玉を作り、右手で長刀―炎帝を作成する。いつでもドラゴン、ファフニールを迎撃できるように隙が出来るのを待つ。待ってろよファフニール。今から英雄が倒してやる。

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