「わたしはきぶんがいい」   作:青川トーン

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久々の新作です、中編作品を目指します


破滅招来

 感情を持つ生き物はうれしい事、愉快な事、楽しい事……つまり幸せというものを求めずには居られない。

 それはこの宇宙の絶対の真実でしょう。

 

 私はその幸福をゲームに見つけました。

 物事を始めるというのは結構苦労をするものだ、学習しかり、運動しかり、最初からうまくいくとは限らない。

 最初は失敗の連続だった、思い通りにいかない事ばかり。

 

 だが成功した時の喜びは何物にも変えがたい。

 

 駒をうまく動かし、最善の手を求め、新しく得た技術を試し、時には先駆者に教えを求めて改善していく、この世に絶対というものはないのだから時には失敗もするけれど、それをリカバリーするのもまた楽しくなっていく。

 

 成功と失敗を繰り返し「レベルアップ」し、初めて「ゲームクリア」に到達した時の快感はそれこそ言葉にできない程にすばらしいものだった。

 

 

 

 最初のゲームの事はよく覚えている。

 科学の発展した星だった、標準的なヒト・ヒューマノイドタイプの暮らす星で反社会的なモノ達を操り、それに対抗させる形で防衛戦力を強化させて開発させたロボット兵器、その制御システムを奪い、端末を暴走させて最終戦争を引き起こさせて滅亡の引き金を引く。

 

 まあ宇宙に逃げた多少の生き残りは出てしまったが、無事に星一つ滅ぼす事ができました。

 そして「戦利品達」をロケットへ乗せ、新たなステージ候補の星々へと送りつけ「侵略者への防衛意識」を植え付け、私自身は難なく避難船に乗り込み、惑星を脱出しながら勝利の余韻に浸った。

 

 宇宙の守護者気取り達に気づかれる事は当然なかった。

 

 

 私も死ぬのは当然嫌ですし、なによりもゲームを邪魔されるのはもっと気に食わない。

 奴らは文明への介入を避ける傾向が強い、それを事前に調べておいてよかったとつくづく思う。

 

 

 それから私は死と破壊のゲームを何度も成功させた。

 時には惑星諸共自爆する文明や私ですら制御不能なとてつもない化け物を生み出し自滅する星もあってひやひやした事こそありますが、概ね満足の行くゲームを楽しみ続けました。

 

 しかし、まあ楽しいゲームとはいえ不満もあります。

 高度に発達しすぎた文明は大体の場合、簡単に星を破壊できる兵器を作れてしまう。

 例えば反物質爆弾とか、ブラックホール兵器……オーバーな火力で星が吹き飛ぶのは愉快だけれど、ゲームがあっさり終わってしまう事も少なくない。

 

 なので私は考えました、あえて多少原始的な……発展しきってない星を舞台にする「ルール」を増やそうと。

 

 その条件に最も合致するのが「地球」。

 マルチバースにおいて結構な確率で存在し、平行世界といったものが多く存在する星。

 

 そこに住む「地球人」は他種族との交流が極端に少なく、程よく文明が発達していながら住民は野蛮で、愚かで、攻撃的……それでいて進化と成長が早い。

 とても期待のできる星だ。

 

 私はさっそく最初の「ユニット」を選ぶ。

 あまり強力すぎる奴を送ると手も足も出ずに滅びてしまうのでちゃんと倒せる程度の奴を選ぼか。

 

 MODとして停止状態の「怪獣」を送りつけるのも悪くないが……。

 

 この宇宙の地球ではどうやら「ノイズ」と呼ばれる位相差障壁を持つ兵器や月から発せられるネットワークジャマーによる不和が争いを引き起こしているし、古代文明の遺産も山ほどある……なら今回は初期駒無しでの縛りも楽しそうだ。

 

 

 どうせこの星の住人に私を見破る事なんて無理だ。

 なら今回は「オリジナルチャート」で行こう。

 

 

 

 早速、変化を気づかれにくい「子供」に寄生し、動作確認。

 記憶を読むとこの少女はどうやらF.I.S.と呼ばれる組織で使われる実験動物の一体だったようで、それはそれは面白い情報を沢山知ることが出来ました。

 これは、とても幸先がいい。

 

キエテ・カレカレタ(わたしはきぶんがいい)

 

 思わず私は宇宙語でつぶやいた。

 

 

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 それは気づかれない変化だった、レセプターチルドレンと呼ばれるあまりにもちっぽけな存在。

 研究員達はモルモットがストレスで少し調子を崩した、としか見ていなかった。

 

 ただ一人だけ心を痛める女が居たが、それもまたちっぽけな事だ。

 品質管理として少しばかりの処置を行われただけで、最悪破棄してしまえばいいだけ。

 ヒトの悪意と個への無関心は……退屈を持て余し蔓延る「侵略者」の第一歩を許してしまった。

 

 少女「シルビア」は邪悪なる精神寄生体「ルイン」の最初の「プレイヤーキャラクター」として選ばれた。

 

 

 ルインが最初に行ったのは研究への積極的な協力であった。

 様々な投薬や実験への志願、自己管理、そして他のレセプターチルドレンや研究員への「すりより」。

 

 人間らしい挙動や情緒を利用し、自身への印象や覚えを良くし、無視できない存在へと変えていく。

 一方で薬害や試験での肉体への損傷は気にする必要はない。

 

 所詮は「キャラクター」であり、プレイヤーであるルインに痛みなどひとかけらも無い。

 壊れたら壊れたで次のキャラクターを選べばいい。

 

 この星には掃いて捨てる程に残機が満ちている、コンテニューはいくらでもできるのだから。

 

 

 

「ああ、おはよう!マリア!」

「おはよう、シルビア……今日も調子がよさそうね」

「マリアや皆がいるから、私は今日も一日がんばっちゃえるよ!セレナはまだ?」

「ええ……私達は今日は実験がないから……それに適合者として選ばれて、セレナの扱いはよくなったわ。本当にありがとう、シルビア」

 

 特にルインが目をかけているのはレセプターチルドレンの中でも特別な「適合者」達。

 たFG式回天特機装束……「シンフォギア」と呼ばれる兵器を扱える選ばれた存在。

 

 ルインはこれに目を付けた、様々な文明の兵器を見てきた彼女から見ても見劣りしない、これを育てていけばやがては高次元の存在への対抗手段、宇宙の不条理にも立ち向かえる武器になるだろうと予想する。

 

 一方で欠点も多く目に付く、適合者がいなければ使用できない事、適合できたとしても負担で適合者を壊しかねない事、そして適合者がものすごく希少で替えが聞きにくい事、おまけに製造できる人間が一人だけだということ。

 故に「消費」するタイミングは見計らう必要がある。

 

 開発者にも適合者にも簡単に死んでもらっては困る。

 

「気にしないで、私が好きでやってることなんだから」

 

 人間からすればとても慈愛に満ちた笑顔に見えるのだろう。

 だがその内心では打算と己の悦楽だけが満ちた、邪悪な笑みだった。




ルイン(主人公):セレブロみたいな奴、セレブロが種族名なのか個体名なのかわからない
名前の由来は「破滅」
シルビア:レセプターチルドレンの少女、多分深くは語られない
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