「わたしはきぶんがいい」   作:青川トーン

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週二回ぐらいのペースで更新していきたいと思います


悪意の銀、黄金の嵐

 「アガートラーム」はセレナ・カデンツァヴナ・イヴの纏うギア、本来の歴史では後に姉であるマリアが適合するギアであるが、この世界では「二つ」存在していた。

 

 二人目の適合者は「シルビア」だ。

 

 それは「ルイン」の寄生・改造能力を使い、無理矢理の適合であり本来の正式な適合ではない。

 代償としてその肉体には大きな負荷がかかり、継続的なダメージとなる。

 だがそれでもLinkerを使用した際のダメージよりはマシといった所であり、研究所の職員たちはシルビアを第一種適合者、つまりは正式な使用者の一人として扱っていた。

 

 

「検証実験を開始する」

 

 シンフォギアは膨大な数の機能を持ち、使用者に合わせてアンロックすることで形態を変える。

 シルビアのアガートラームは主に「工作能力」に特化しており、ハッキングから加工、エネルギー供給や修復作業など様々な作業が可能という事で「聖遺物」の研究に利用された。

 

 だがそれは表向きだ、その工作能力はルインの能力によって付与されたもの。

 「同化」と「侵食」そして「改造」といった侵略者由来の力である事を知らず、次々と聖遺物へと触れさせていく。

 

 

 古代文明の遺産である聖遺物、その中でも完全な形で残っているモノの起動には歌の力……「フォニックゲイン」と称されるものを主に使用する。

 シルビアという人間の器を持つもののルインが供給できるフォニックゲインというものは非常に少ない。

 

 とはいえそれを補う形でルインの積み重ねてきた破滅の技術をつぎ込む事で、障害をクリアしていく。

 

 

 

 そして目覚めた完全聖遺物の一つが「ネフィリム」。

 聖遺物を捕食する事で成長し、巨大なエネルギーを生み出す炉心となるソレを目覚めさせる事に成功する。

 

 その姿にルインは口角を上げて笑みを見せる。

 ネフィリムの姿はルインにとってよく見慣れたモノだったからだ。

 

 「宇宙恐竜ゼットン」に酷似したソレは間違いなく強力な兵器となる。

 だが、このままではつまらない。

 

 ゲームとして楽しむなら……とルインが導き出した答えは……。

 

「大変です!!ネフィリムのエネルギーが急速に増幅!このままでは臨界し爆発!予想最大温度は一兆度です!!!」

 

 突如、ネフィリムは周囲を無差別に攻撃し始め、隔壁を破壊しながら外を目指す。

 慌てふためく研究員達を内心で嘲笑う、自分がやったと気づかれない形でネフィリムを暴走させたのだ。

 

 もちろん本当に爆発させるつもりはない、道中にある保管庫の聖遺物を捕食させながらネフィリムを向かわせた先は……「市街地」だ。

 

 この研究所は郊外にある工場として偽装されていた。

 それが仇となり、巨大化して暴れるネフィリムは周囲に破壊と恐怖を撒き散らす。

 

 

 すぐさま軍がネフィリムへの攻撃を開始するが、相手は巨大な怪物であり、超古代の遺産……そして侵略者の「おもちゃ」だ。

 とてもではないが太刀打ちできない。

 

 そして人類が持ちうる最大の火力である「反応兵器」を打ち込もうものならネフィリムは臨界し、地球は瞬く間に蒸発するだろう。

 絶望する職員達にシルビアは「覚悟を決めた顔」で声をかける。

 

「私に……私達に行かせてくれませんか!?」

「無理だ……!シンフォギアで対抗できるとでも……」

「絶唱なら……どうにかなるかもしれません、行かせてください……!」

 

 

 元凶でありながらも、まるで聖女か……あるいは勇者のように振る舞い、ルインは周囲へ「勇気と希望」という毒を撒き散らす。

 

「セレナ、マリア……私に、私に命を預けてください」

 

 

 結果として、ネフィリムは倒され「基底状態」へと戻された。

 セレナ・カデンツァヴナ・イヴという一人の少女の犠牲によって、だ。

 

 世間には巨大怪獣の脅威、そしてそれに対抗する為に開発された「シンフォギア」というカバーストーリーが振りまかれ、シルビアとマリアは実験動物から一躍、救世主として称えられる。

 

 

 一方は侵略者、そしてもう一方は愛する家族を犠牲にした苦しみを背負い、傷ついているなどとは知らずに、人々は無責任な希望を託したのだ。

 

 

 

 それから数ヵ月後「怪獣災害」「ノイズ災害」「異端技術」と戦う国連タスクフォース「S.O.N.G.」が結成され、シンフォギア装者はそこに所属する事となる。

 

 晴れて、表の世界にシンフォギアは引きずり出され、多くの研究者・技術者によって触れられる事となり、その解析が進む事となる。

 

 

 それがルインの思惑通りだとも知らずに。

 

 

 

 一方でシンフォギアを語る上で欠かせない一人の科学者「櫻井了子」そして先史文明の巫女「フィーネ」は言い知れぬ悪寒と違和感に悩まされていた。

 対怪獣という「言い訳」のおかげでどうにか日本政府の追及を逃れ、米国のおかげで便宜が図られた彼女であったが、真の目的に少しばかり遠のく事となってしまった。

 

 月を破壊し、相互理解を妨げるネットワークジャマー「バラルの呪詛」を排除し、統一言語を取り戻す。

 シンフォギアも聖遺物研究もその為の一端でしかなかった。

 

 だがイレギュラーの介入により、ネフィリムとシンフォギアの姿が白日に晒され、挙句には自分の手と目の届かない所にまで知れ渡る事となってしまった。

 

 

 そして対怪獣というお題目を掲げた途端、各地で本当に「怪獣」と呼ばれる巨大生物達が目覚める、あるいは宇宙から飛来してくるようになった。

 ネフィリムの暴走による未曾有の危機はこの世界に存在した怪獣を目覚めさせるに足る脅威であった。

 

 アヌンナキが作り出した実験動物、変異した原生生物、過去に宇宙から飛来していたもの、あるいは自然が生み出したもの。

 出自を違えた怪獣達が次々と目覚め、世界は混乱にありつつも共通の敵を持つ事で「結束」を強めていく。

 

 そしてシンフォギア、科学技術だけでなく錬金術といった異端技術までも取り込みながら人類の希望としてフィーネの手を離れて際限なくそれは進化していく。

 

 

キエテ・カレカレータ(わたしはきぶんがいい)

 歪んだ笑みを浮かべる救世主(しんりゃくしゃ)の思うままに世界は流れを変えていく。

 

 

 だが、ルインの起こしたイレギュラーが、蝶の羽ばたきを黄金の嵐へと変える。

 

 日本、特異災害対策機動部二課に新たな装者がやってくる。

 彼女の名は「立花響」

 頻発する怪獣災害・ノイズ災害に対抗する為に戦う事を選んだ一人の少女。

 

 彼女は黒き英雄「マリア・カデンツァヴナ・イヴ」に憧れ、装者になる事を選んだ。

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