会話多めですがどうぞ。
その日、ヒロキは部屋で腕立て伏せをしていた。
「28・・・29・・・30・・・・っと。スクワット30回、腕立て伏せ30回、クランチ30回、そろそろ水分補給を兼ねた休憩していい?」
『おう、いいぜ。』
『君の立てたノルマを達成したんだ。私は別に構わないぞ。』
そう言ってヒロキは冷蔵庫に冷やしたスポーツドリンクを取りに行くため、部屋を出る。
ヒロキが部屋を出た後、タイガはタイタスに話しかける。話の内容はクララの変化についてだった。
『なあ、タイタス。ヒロキの幼馴染のクララについてなんだが、タイタスはどう思う?』
『うむ、恐らく彼らがチビスケと名付けたキングゲスラの死が彼女の中に宿るキングジョーのカイジューソウルに反応した結果だと思う。キングジョーの強化体にはキングジョーブラックがいるからな。聞いた話によれば、怪獣娘は感情の変化によっては暴走する事もあるそうじゃないか。』
『ああ、魂だけとはいえ相手はあのキングジョーだ。もし暴走したら、ヤバい事になるんじゃないか?』
『恐らく、私達に肉体があったとしても人間の姿では苦戦は免れんだろう。それにしても・・・。』
『どうした、タイタス?』
『妙なものだと思ってな。怪獣娘は怪獣の魂を持っているんだろう。ゴモラやレッドキングならまだ分かるが、ロボットであるキングジョーにも魂があるとはな。』
「物にも魂が宿るって考え自体はあるよ。」
『『ヒロキ!!』』
2人の会話にヒロキが割り込む。ヒロキはベッドに座りタイガとタイタスに話し掛ける。
「多分だけど、そういうのなんじゃない。キングジョーの魂って。」
『付喪神という事か・・・。確かにその可能性は高そうだ。』
『あるいはキングジョーを作ったぺダン星人の魂とも考えられるんじゃないか?』
「でも、そうだとしたらぺダン星人の怪獣娘になるんじゃないかな。」
『ああっ、そうか・・・。確かに・・・。』
タイガは口を濁す中でタイタスは少し考えながらヒロキに口を開く。
『しかし、トレギアへの怒りでキングジョーの怪獣娘である君の幼馴染がブラックの力に目覚めるのは少し危険かもしれんぞ・・・。』
「どうして?」
『実はキングジョーの強化体は他にもある。キングジョースカーレットというのがあってな。』
「キングジョースカーレット?」
タイタスの言葉を聞いて、ヒロキは机の上にある怪獣図鑑を開くも、見つからなかった。ヒロキはタイタスに質問し、彼からの解説を聞く。
「キングジョースカーレットなんてないよ。」
『恐らく、こちらの宇宙の地球では確認されていないのだろう。トレギアへの怒りでブラックに進化した時はまだ彼女は意識を保てていたのか?』
タイタスの質問にその場に居合わせたヒロキとタイガは答えた。タイタスは推測を交えて、クララの異変について話す。
『見た感じは保っていたな。』
「でも、後にかなり息を切らせていたらしいよ。」
『力に目覚めたばかりで体力をかなり消耗したのだろうな。話を戻そう。』
「うん・・・。」
『恐らく、話を聞いた感じではブラックの力は一段階目の進化の可能性がある。次の2段階目の進化がスカーレットだと考えるのが妥当だろう。しかし、彼女は怒りの感情でブラックへ進化してしまった。それでも彼女の心はブラックの力を制御できる位の力があったのか意識を保ったままだった。しかし、次に怒りでスカーレットに進化させてしまったら彼女の心は完全に怪獣に飲み込まれ暴走する可能性が高い。』
「暴走の可能性が・・・非常に・・・・高い・・・。」
タイタスの言葉を深く噛みしめるヒロキ。幼馴染のクララ・ソーンはモデルとしても活動している。万が一彼女が暴走してしまったらモデルはもうやっていけないのではないと考えていた。そうならないためにもヒロキは決意する。それは幼馴染を絶対に暴走させないという決意だった。
「僕がさせないよ・・・!絶対にクララちゃんを暴走させない!!どんなクララちゃんでも僕は受け入れる。」
『その意気だぜ、ヒロキ。』
『うむ、ではトレーニング再開といこうか。』
「うん!でも、スクワット5万回は流石に御免だよ・・・。」
『俺だって、それは流石に・・・と思うぜ。自分のペースでやらせてくれよ。』
『無論だ。人にはそれぞれやりやすいやり方があるからな。』
3人がトレーニングに戻ろうとした時、下のTVから聞き逃せないニュースが流れてきた。
『ニュース速報です。本日、午前11時に日本政府に脅迫と思われる声明が送られてきました。脅迫の内容は午後3時までに100万ドル用意しなければ怪獣爆弾が爆発して、東京を怪獣が破壊するという内容で・・・』
「タイガ、タイタス!!」
ヒロキは下に降りながらタイガとタイタスに呼び掛ける。2人も下に降り、TV画面を見る。3人はTVを見ながら話をする。
「今、怪獣爆弾って言ったよね・・・。」
『ああ、確かにそう言ってたな・・・。』
『うむ、私にも確かに聞こえたぞ・・・。』
「これって悪戯なんかじゃないよね・・・。」
『TVに写ってる爆弾らしいものを見る限り、嘘じゃないだろうぜ・・・。』
『うむ、昔、これに近い物を見た事がある。時限爆弾式で時間が来れば爆発し、爆弾の中から怪獣が出てくる仕組みになっていた。』
「・・・・絶対に食い止めなきゃ・・・。行こう、2人とも!!」
『おう!!』
『うむ!!』
そう言って、3人は外へ飛び出していった。部屋の時計は午後12時45分を示したところだった。怪獣爆弾爆発まで後2時間15分。
その少し前、時計は正午丁度を示していた。怪獣娘達はGIRLS食堂で昼食を摂っていた。食事しながら、怪獣娘達はTVを見ていた。TVは怪獣騒動について話していた。
『この度、再び地球に怪獣が出現する騒動が続いています。これについてですが、怪獣娘と怪獣出現に何か関連があるのでしょうか。』
『可能性は無いとは言い切れないでしょう。怪獣の魂を持つ彼女達が再び地球に怪獣を呼び寄せた可能性はあると私は考えています。』
「濡れ衣じゃん!!こんなの!!あたし達に怪獣を呼ぶ力なんてないし!!」
「好き勝手言いやがって!!」
ミクとベニオはニュースの内容に憤りを感じていた。当然だ。怪獣の出現が自分達怪獣娘のせいにされているのだから。
ミクの隣に座るアキとレイカはショックを感じていた。
「ボク達、何もしてないのに・・・。」
「なんだか、ショックです・・・。」
サチコとミサオはそんな2人の様子に思う所があったのか下を向きながら話す。
「でも、怪獣の出現があたし達のせいにされてるのは間違いないですよ。あたしのクラスも先生の一部があたしに対して当たりが強くなりました。・・・・クラスの皆は庇ってくれましたが。」
「アタシもだよ・・・。『怪獣が出現した理由はお前ら怪獣娘のせいだろ!!』とか言って隣のクラスの先生に怒鳴られたんだ・・・。その先生さ、怪獣騒動で弟さんが怪我したらしいけどさ、アタシ達は何もしてないって言っても『嘘をつくな!!』だの『大体怪獣の姿に変身できるなんてどう考えても怪しいだろ!!』とか言ってさ・・・全然アタシの話を信じてくれなかったよ・・・。」
ヨウとユカは周りの人から感謝の言葉が多かったのか4人を励ます。
「だ、大丈夫ですよ!!この間、外回りに行った際は怪獣騒動で怪獣娘に助けられた人に感謝されましたし、励ましの言葉も貰いましたから!な、ジャッパ!!」
「そ、そうですよ!全ての人が怪獣が出現した理由を私達のせいにしているわけではないですから!!私のクラスメートも『そんな話気にしちゃ駄目!何も悪い事してないんだから堂々としなよ!!』って励ましてくれましたから!」
2人の話を聞いて少しだけだが明るい表情を見せる4人。そこにミカヅキとトモミが明るく話しかけてくる。
「そうだよ!!私達怪獣娘は怪獣の出現に関係していませんって時間が掛かっても分かってもらえればいいんだから!!」
「ゴモたん・・・。」
「そうですよ~。その為にも怪獣娘の活動は続けましょう~。」
アキはその言葉に納得し、彼女達は食事を進めていると、1人の男が現れた。それはかつてGIRLSにキングゲスラの事件を持ち込んだトモミの叔父『佐倉』だった。
「やあ、君達、昼飯時かい?」
「シンゴ叔父さん!?どうしてここに!?それより、部外者が勝手に入られたら困ります!」
「ちゃんと許可は取ったよ。それより、飯、急いで食ってくれないか?本当に緊急事態なんだ。」
叔父の神妙な表情にトモミは何かただ事ではない事を予感した。彼女達は食事を終え、会議室に集まった。佐倉は口を開く。
「以前、僕が持ち込んだ事件があっただろ。警察もあれから奴らについて調べてみたんだ。奴らの名はヴィラン・ギルド。」
「・・・ヴィラン・ギルド。」
「奴らは固定のアジトとメンバーを持っていない。奴らを捕まえられないのはそのためだ。実際、君達が捕まえた2人はアジトの事を知らなかっただろ。」
「確かに・・・・。アジトなんて知らないと証言していました。しかし、固定のアジトとメンバーを持たないならどうやって・・・。」
トモミの疑問に佐倉は口を開く。
「どうやら、奴らは地球に暮らす宇宙人だけがアクセスできる独自のネットワークで集合離散している。奴らの計画を事前に察知できないのはそのためだ。」
「かなり厄介な組織のようね・・・。」
「でも、それが緊急事態とどう関わりがあるの?」
ランが呟いた後、ミカヅキは佐倉に質問する。佐倉は何も言わずモニターに映像を映す。
映像には数人のマスクを付けた男達がいた。
「今日、政府に届いた脅迫状だ・・・。」
『脅迫状!!?』
『日本政府に継ぐ。東京のどこかに怪獣爆弾をセットした。時間がくれば爆弾が爆発し、怪獣が爆弾から出現する。』
そう言って、映像ではどこかで爆発が起こり、煙がまるで逆再生するようにおさまり、怪獣が出現していた。怪獣は全体的に丸い印象を与えるもののその全身には様々な機械が付いていた。
『本日、午後3時までに大至急100万ドルを用意しろ。そうでなければ、この怪獣爆弾が爆発し、東京を怪獣が火の海に変えるぞ。』
「立派な脅迫だ・・・。」
「本日、午後3時までって・・・・後3時間もねえじゃねえか!!?」
「何で、こんな時間になるまで放っておいたんですか!!?」
映像が終わった後、アキが呟き、ベニオが時間を確認して、慌てて叫び、ミサオが佐倉に詰め寄る。
佐倉は申し訳ないという表情で答え、トモミは号令をかける。
「しょうがないだろ。警察には一般の人には絶対に公開できない細かな事情があるんだから。」
「とにかく、怪獣爆弾の爆発だけは必ず食い止めなければいけません!!私も出ます!!GIRLS出動です!!」
『了解!!!』
彼女達は会議室を勢いよく飛び出していった。
時刻は現在12時30分。怪獣爆弾爆発まであと2時間30分。
その頃、ヒロキは爆弾が仕掛けられそうな場所を片っ端から探していた。そんなヒロキにタイガが声を掛ける。
『おい、ヒロキ。トイレとか探しても見つからないと思うぞ・・・。』
『恐らく、怪獣爆弾を仕掛けたのは宇宙人だろう。人目につかないような場所を探した方がいい。』
「人目につかなそうな場所・・・。」
タイタスの助言を聞いて、ヒロキはスマホで近くに人が寄らなそうな場所を探す。ヒロキは探している中、手を止めた。そして、タイガとタイタスに話しかける。
「ねえ、ここから歩いて30分くらいの場所に廃工場がある!!こういうところかな!?怪獣爆弾を仕掛けた場所って!?」
『行ってみる価値はあると思うぜ。』
『私も確認だけはするべきだと思うぞ。』
ヒロキはそこに走って向かっていた。現場に到着すると、数人の男が何やら話していた。ヒロキは隠れて近付き、聞き耳を立てる。
「いやー、お台場の使われなくなった倉庫に怪獣爆弾を仕掛けるのは大変だったぜ。」
「でも、これでいいのかな・・・。」
「何がだよ?」
「幾ら生活が困難な宇宙人のためとはいえに地球人に迷惑を掛けて・・・「何言ってんだ!!俺達の今までの人生を忘れたのか!!宇宙から飛来した怪獣に何もかも食われて、はるばるこの地球に流れ着いて、どれだけ生きていくのに大変だったか!!苦しかったか!!しかも、地球人の奴らは怪獣娘とかいう怪獣の魂を継いで怪獣の力が使える小娘は受け入れている癖に、俺達宇宙人はちっとも受け入れてくれない。そんな地球人に思い知らせてやるんだよ!!本物の怪獣の脅威をな!!」
「そうか・・・。そうだよな・・・。怪獣娘にも、地球人にも俺達の本気を思い知らせてやる!!」
ヒロキは今の会話を聞いて彼らに気付かれないように静かに立ち去る。そして、彼らが見えない場所まで来ると、急いでお台場に向かって足を進めていた。
近くの時計は1時30分を示していた。怪獣爆弾爆発まで後1時間30分。
怪獣娘の世界に宇宙からの移民が再び来たらどういう鬱憤を抱えるかをこのお話でやりたいと考えています。