宇宙怪獣『ベムラー』登場
ある夜、フーマが建物を壊しながら地面に倒れた。
『うわあああああ⁉︎』
「ギイィィィィィン‼︎」
その先にはこの星で最初にウルトラマンと戦った宇宙の平和を乱す悪魔と言われた宇宙怪獣『ベムラー』がいる。ベムラーは口から青白い熱線『ペイル熱線』を放つ。フーマはベムラーの目に止まらぬ速さでそれを避けた。そしてヒロキはタイガスパークのレバーを引く。
〈カモン!〉
「力の賢者、タイタス!!」
『うおおおおおっ!ふんっ!』
「バディィィゴーーーー!!!」
〈ウルトラマンタイタス!〉
『私に任せろ‼︎』
タイタスは登場するなりポーズを決める。目の前の青い巨人が突然別人に変わったことにベムラーは目を見開いて驚くもすぐにペイル熱線を吐いてタイタスを攻撃する。
『うおおおおお‼︎』
しかし、タイタスにはその熱戦を突っ切ってベムラーに拳を叩き付ける。そしてベムラーの腰を両腕で抑えて力強く締める。タイタスの力はベムラーの骨に大きなダメージを与えた。
「ギイィィィン⁉︎」
ベムラーは後ろに後退りしてタイタスと距離を取る。タイタスは額のスターシンボルに力を溜め始めた。
『喰らえ‼︎星の一閃、アストロビーム‼︎』
タイタスの額から放たれた星形の光線がベムラーに命中する。ベムラーはそれを受けて大爆発を起こした。タイタスは爆発するベムラーを前にポーズを決める。そしてその様子を1人の影が見つめていた。
『ここのところ連日で怪獣が現れて街を破壊する騒動が続いています。調査によると最近頻繁する怪獣騒動には宇宙人の影がありGIRLSでも多発する怪獣騒動の裏で暗躍する宇宙人の・・・・・。』
翌日、GIRLSの食堂でヒロキはTVを眺めていた。丁度昨日のベムラーとの戦いの様子がニュースで写っていたためヒロキはテレビを画面から目を離せない。そこにクララ、ミコ、ミカヅキ、ベニオがやってくる。
「ヤッホー、ヒロちゃん‼︎」
「・・・・・。」
「オッス、ヒロキ。」
「・・・・・。」
「おーい、ヒロ。」
「・・・・・。」
「ヒロキ?」
「・・・・・。」
彼女達の呼び掛けに答えないヒロキ。TVの画面を見続けて自分達に目を向けないヒロキにミコが痺れを切らして声を荒げる。
「ヒロ‼︎ちょっと聞いてるの⁉︎」
「・・・‼︎ミコさん⁉︎あっ・・・皆・・・ご、御免‼︎」
「やっと気付いたか・・・・ったく・・・どうしたんだよ、TVをずっと眺めてさ。」
ヒロキのテーブルに彼女達が入ってくる。ベニオの問いに少し考えてヒロキは答えた。
「・・・いや・・・怪獣の出現率が余りにも上がっているような気がして・・・。」
「ああ・・・昨日のベムラーとの・・・。」
「昨日の夜はお疲れさま。」
「最近連日で怪獣が出現してるから気になるんだ・・・マグラー、ペスター、ペギラ・・・一昨日のアボラスとバニラ・・・・そして昨日はベムラー・・・明らかに怪獣の出現率が上がっている・・・。」
「あー、確かに・・・連日で怪獣が立て続けに現れてるよね・・・。」
ミコは怪獣から逃げる人々の避難誘導をした事を思い出す。ヒロキはTVに流れるタイガが背中に無数の刺が生えた黒い地底怪獣『マグラー』を投げ飛ばす映像、タイタスがヒトデを繋ぎ合わせた体に中央にコウモリのような顔が生えた油獣『ペスター』の顔にパンチを撃ち込む映像にフーマが灰色の体表に巨大な翼を持つ海豹のような冷凍怪獣『ペギラ』の冷凍光線を避ける映像、そしてフォトンアースとなったタイガがオーラムストリウムでスリムな体型の赤い体表のタツノオトシゴを思わせる鼻顔の赤色火焔怪獣『バニラ』とがっしりとした体に大きな頭で鼻先に角を持つ青色発泡怪獣『アボラス』を消し飛ばす映像を指差した。そしてこれらの映像がニュースキャスターがスタジオ内で話す映像に切り替わる。
「見れば分かるけど・・・宇宙人の事についても触れられてる・・・。」
『ここのところ相次ぐ怪獣騒動についてGIRLSの怪獣娘が調査した結果、幾つかの事例では地球に密かに潜伏した宇宙人達の影が見られたとのことでGIRLSは宇宙人対策を整える方針を固めています。』
「本当だ・・・。」
「今までもアベルって名前のガピヤ星人とかあのナックル星人とか宇宙人自身が巨大化して現れた事もあったもんね。」
ミコがナックル星人の事に触れた時、ヒロキの表情が曇る。それを見てタイガがミコを注意した。
『おい‼︎あのナックル星人の事は触れてやるな‼︎』
「あっ・・・ご・・・御免、ヒロ・・・。」
「いや・・・・大丈夫・・・。もう小田さんの事は振り切ったから・・・。・・・もう世間に宇宙人が潜伏している事がバレるのは時間の問題かもしれないって事を言いたかったんだ・・・。」
「寧ろもうバレてるんじゃないのか?」
「レッドンの言う通り現在も宇宙人が存在していた事が世間に隠しきれなくなるのは時間の問題ですね・・・・・。」
ベニオの言葉を補足するかのようにトモミがやってきて発言した。彼女も席に座るとトモミは叔父の佐倉から聞いた話を語り出す。
「最近、叔父から連絡があったのですが・・・・最近不穏な動きを見せる宇宙人が増えてきてるとの事です・・・。わたし達も警戒する必要がありそうですね・・・。」
「えーっ⁉︎ヤダなぁ〜、皆で仲良く楽しく暮らせばいいのに〜。その方が絶対に面白いじゃん‼︎」
トモミの言葉にミカヅキが苦言を立てる。ヒロキとトライスクワッドはその言葉を聞いて何とも言えない気持ちになる。
「なぁ、タイガ、タイタス、フーマ。3人はここのところ起こる怪獣騒動は宇宙人の仕業だと思う?」
『俺はその可能性が高いと思うぜ。本来この星から怪獣は滅びたんだろ?』
タイガの言葉に答えたのはトモミだ。彼女の言葉をミコが補足する。
「そうですね・・・本来はこの星から怪獣はいなくなった筈ですから・・・。寧ろ今のこの状況がおかしいと言えるでしょう。」
「確認された怪獣の中にマグラーやペスターなどの地球の怪獣もいるしね。」
『ならばやはり人為的に引き起こされた可能性が高いな。ヴィラン・ギルドによる怪獣オークションや商品となる怪獣兵器のテストの可能性がある。』
「でも・・・マグラーやペスターって兵器にする怪獣としてはかなり微妙な方じゃない?」
「アボラスやバニラならまだ分かるけどね・・・。」
『う〜む・・・確かに・・・そう言われれば・・・君達の言う通りか・・・。』
タイタスの答えにミカヅキとミコが疑問を上げる中、ヒロキはかつてのデアボリックの事件の事を思い出していた。そんなヒロキの深層を見抜いたのか隣の席に座っているクララが話しかける。
「どうしたのデスカ?ヒロキ。」
「えっ⁉︎・・・あー・・・うん・・・前にあったデアボリックの事件を思い出してさ・・・ヴォルクさんみたいに怪獣娘に不満を抱く宇宙人もいる事を思い出したんだよね・・・。」
『あー、いたな・・・まさかヒロキ、お前、そういう宇宙人の仕業だと考えてるのか?』
「・・・・・考えられない話じゃないと思う・・・。この星で隠れて暮らしている宇宙人にとって怪獣娘は・・・疎ましい存在に見えるらしいから・・・・。」
『・・・そーいや俺を売り払おうとしていたあの宇宙人達・・・怪獣娘を認めて自分達を認めないこの星に本物の怪獣と宇宙人の脅威を思い知らせるとか言ってたな・・・。』
「うん・・・あの事件も元を辿れば強力な力を持つ怪獣や宇宙人の怪獣娘が大怪獣ファイトとかに出演してて人気だったりモデルとかタレントとかやって受け入れられるのに自分達だけが受け入れられない事に不満を持つ宇宙人の仕業だった・・・だから・・・。」
フーマの言葉を聞いたヒロキは思わず自身の言葉を言おうとすると目の前のミカヅキとベニオ、そして隣のクララを見て言葉を飲み込む。トモミはそんなヒロキの心情を察したのか口を開いた。
「ヒロヒロ、大怪獣ファイトなどの怪獣娘のイベントは未だに怪獣娘を恐れる人達に怪獣娘について理解してもらうためであり、怪獣娘になったばかりの子達に自分の道を選んでもらうためにもとても大事なことです。幾らわたし達怪獣娘に不満を持つ宇宙人が多いからってそれだけの理由で騒動が落ち着くまで中止にするという訳にはいきません。」
「けど・・・それらを見て怪獣娘に不満を持つ宇宙人が沢山いるんです‼︎それで怪獣騒動が収まるなら」
「はーい、海老フライもらうね。」
「ちょっと、ミカヅキさん⁉︎」
言葉の途中で前のミカヅキに海老フライをかっさわれたヒロキ。ヒロキは思わずミカヅキに抗議する。
「何するんですか⁉︎」
「変な事言うヒロちゃんへの罰だよ。」
「変な事って・・・僕は」
「ヒロちゃんの言いたい事は分かるよ。でもね、大怪獣ファイトのようなイベントは色々な人達に怪獣娘を知ってもらうためのもの・・・それには地球人も宇宙人も関係ないんだよ。」
「ミカヅキさん・・・・。」
ヒロキの言葉を遮ってミカヅキは話を続けた。ヒロキはミカヅキの言葉をただ聞いて彼女の名を呟く事しか出来なかった。
「この星で生きる宇宙人達がわたし達怪獣娘に不満を持っているのってきっとわたし達が怪獣の力を持ってても人々に受け入れてもらえたり認めてもらえたりする事へのコンプレックスが原因だと思うんだ。だったらこれから怪獣娘の活躍を見て宇宙人達も自分達の事を世間に曝け出して生きていける社会に変えていければいいんだよ!」
「ゴモラの言う通りデス。ワタシだって怪獣娘『キングジョー』としてモデルを始めるのは勇気がいりまシタ。」
「えっ⁉︎そうなの⁉︎」
ミカヅキに続いてクララの言葉にヒロキは驚く。クララは頷いた後、言葉を続ける。
「エエ・・・最初は怪獣娘のモデルが本格的に認められるまで時間が掛かりマシタヨ。けど、それでも周りの助けがあって認めてもらえマシタ。それは大怪獣ファイターをしている怪獣娘やタレントをしている怪獣娘達も同様デス。」
「でも・・・今、怪獣娘は一般的な存在になっています・・・。だから・・・宇宙人達が隠れて暮らす事なく生きていけるようにだって出来る筈です。」
クララとトモミの言葉にヒロキは少し考えると心が落ち着いたような表情になる。それを見たベニオが発破を掛ける。
「さっ‼︎難しい話は終わりだ‼︎飯食って午後の仕事に備えようぜ‼︎」
その頃、移動販売車のたい焼き屋に1人の少女がいた。その少女は黒い長髪に黄色の瞳の物静かな美少女だった。彼女は店のメニューを眺めると買いたいものを決めたのか口を開く。
「たい焼き・・・2つ・・・。」
「あいよ‼︎」
少女はたい焼きを買うと人目に付かない場所に移動して何かを取り出す。それはソウルライザーだった。
「ソウルライド、『ゼットン』。」
その少女は光に包まれて黒い獣殻に2本の角、額に黄色い結晶が生じる。この少女こそ怪獣娘『ゼットン』の変身前の姿だったのだ。ゼットンはテレポートで高いビルの屋上にまで移動する。そして先程買ったたい焼きを口にすると僅かに笑みを浮かべる。
「・・・うん・・・やはりここのたい焼きは美味しい・・・。」
経緯は不明だが彼女は前にもあの店のたい焼きを食べた事があるらしい。それで気に入ったあの店のたい焼きを買いに来ていたようだ。尚、人間の姿で来たのは大怪獣ファイトチャンピオンである自分がここに来て周りに騒がれないようにするためである。ゼットンはたい焼きを食べ終えると周りを見渡していた。
「・・・・異常は・・・無し・・・。」
どうやら街にシャドウや怪しい動きをする宇宙人がいないか見張っていたようだ。彼女はそういった動きがない事を確認するとテレポートでその場を去っていく。彼女は地上に降りると川辺の方に歩き出す。
その頃、橋の下で暴行を受けている少年がいた。その少年は自分より背の高い柄の悪そうなシャツを着た自分よりも少し年上らしき男達に殴られている。
「オラァッ‼︎有り金寄越せやぁぁ‼︎」
「こ・・・これ・・・は・・・・。」
「渡さないなら更にぶん殴るぞオラアァァァァァァ‼︎」
男達は少年を殴って壁にぶつける。少年が体制を崩した隙に1人の男が髪の毛を掴んで顔面に膝蹴りをした。膝蹴りでよろめく少年に男の1人がバットで頭を殴る。再びよろめいた少年の顔に膝蹴りを叩き込んだ男は鼻や口から大量に出血する少年の髪の毛を掴んだ。
「素直に渡せばこれで済ませてやる・・・・だからテメェの持っている有り金を全て渡せやゴルアァァァァ‼︎」
少年はそれでも男を睨んだ。その事に腹を立てた男は懐からなんとナイフを取り出した。その男に続いて他の男もナイフを取り出す。ナイフを頬に突き立てた男はナイフを少年に振りかざそうとした。そこに思いもよらぬ乱入者が現れる。
「・・・・何をしているの?」
それはゼットンだった。彼女は最初は遠くにいたため彼らの様子が見えなかったが、距離を少し詰めて見ると自分より年下の少年が暴行を受けている事に気付いた。それで彼女は助けに入ったのだ。
「煩ぇ‼︎誰だか知らねぇが邪魔すんな‼︎」
男はナイフをゼットンに突き立てようとする。しかし彼女を見た男の1人が大怪獣ファイトチャンピオンであり最強の怪獣娘であるゼットンだと知ると撤退するように言い放つ。
「待て‼︎ソイツ・・・最強の怪獣娘のゼットンだ‼︎」
「何だと⁉︎」
「くそっ⁉︎行くぞ、お前ら‼︎」
男達はその場を離れていく。ゼットンは少年に駆け寄った。
「大丈夫・・・?」
「えっ・・・ああ・・・・大丈夫だ・・・・・ありがとう、ゼットンの姉ちゃん。」
「病院に連れていくから少し待って」
「⁉︎病院⁉︎・・・駄目だ‼︎病院には行けない‼︎」
「どうして・・・?病院に診てもらった方が・・・・。」
少年は何とゼットンに病院に連れて行かれる事を拒んだ。ゼットンは少年に病院を拒否した理由を聞く。すると少年は迷った後、驚きの答えが返ってきた
「・・・・・コレも何かの縁かな・・・・地球人に・・・・不用意に正体は明かしちゃいけないんだけど・・・・・姉ちゃんはあのゼットンの怪獣娘だし・・・・・・・・特別だ・・・・・。」
「?・・・どうしたの?」
「ゼットンの姉ちゃん・・・・・実は・・・実は俺・・・・・バット星人なんだ・・・・。」
今回の話は群狼の挽歌に続き、怪獣娘の世界に宇宙人達がひっそりと暮らしていたら怪獣娘にどんな不満を抱くかに踏み込みたいと考えました。