ヤンデライザのアトリエ 作:現実逃避中
どうも地の文が多くなってしまう。
アガーテ・ハーマン
若い女性でありながらラーゼンボーデン村の護衛を務めている「護り手」達の一人であり、「護り手」達の中で一番の剣の使い手であり、その実力もあり「護り手」達を束ねるリーダーを務めている。
リーダーに相応しい厳しさと優しさを備えた性格であり、村の老若男女全てから慕われている人気者でもある。また王都へ留学していたこともあって剣の腕だけではなく知識もそれなりに幅広く持っている。
実力や性格だけでなく美貌も兼ねそろえており、凛々しくも整った顔立ちにすらりと伸びた手足、均整の取れた身体は女性の理想であり、男性の憧れでもあった。才色兼備と言う言葉は彼女の為にある。ラーゼンボーデン村の者は彼女の事を総評するだろう。
そんな彼女には人には言えない悩みがあった────────
あなたの朝は、早い。
幼いころは活発な幼馴染で妹の様に思っているライザの突然の思いつきに寝ぼけ眼の所を振り回され、成長してからは剣の鍛錬の為に早起きするのが日課となっていた。最近ではリラとの手合わせやクラウディアのフルートの秘密の練習に付き合ったりすることもあり、あなたの朝は早いのが常となっていた
しかし、それ以外にもあなたの朝が早い理由があった。
あなたはまだラーゼンボーデン村の大半の人が夢の中にいる中、住宅地の一角を歩んでいた。
やがて一件の家の前にたどり着くと、手慣れた様子で玄関の前に置いてあった植木鉢の下に隠してあった鍵を取り出し、玄関を開けた。
住宅の中に入り、居間へたどり着いたあなたは、はぁ、と溜息を洩らした。
居間は衣服や食器や酒瓶が散乱しており、とてもではないが他の人物に見せることが出来ない惨状となっていた。大雑把な所もあるライザ(錬金術をする時はこまめなのだが)ですら、この惨状には顔を引きつらせるだろう。
あなたは気を取り直して今の片づけを始めた。手慣れたもので酒瓶をまとめて一か所に片付け、食器を台所へと持っていき、衣服(下着を除く)を桶に入れて洗濯して、朝食を作り始めた。
フライパンの上で、ジュウジュウと卵とベーコンが音を立てる、ベーコンの食欲を刺激する燻製の良い香りが家の中に漂う。
その香りに釣られたのか寝室の方からこの家の家主がふらふらと姿を現した。
「…………あ、ああぁぁ~~……おはよう……」
「おはよう、じゃないよ。アガーテ姉さん、昨日どんだけ飲んだのさ」
この家の家主……アガーテ・ハーマンは、いつもは美しく整えられている黒い髪を、¥寝癖で見るも無残にぼさぼさにし、「私、今起きたばかりです」と言わんばかりの目ヤニの付いた寝ぼけ眼で頭を書きながら気まずそうに姿を現した。
「ちょ、ちょっと珍しい酒が手に入ったからつい……」
「つい、って……もう、飲みすぎだよ。最近また飲む量が増えているんじゃない? ……というか、パジャマを反対に着ているんだけど、どうやって着たのさ……」
アガーテの凛々しい(今は寝起きのせいでぼんやりとしているが)顔に似合わず、子猫が描かれた可愛らしいパジャマを逆さまに着用していた。通常は前で止めるはずのボタンが背中側に着てしまっているのだが、あれだと着る時が大変だったのではないだろうか。
「……ん、今脱ぐ……」
「着替えは寝室でやって! その間に朝ご飯作って置くから」
「……はぁい」
アガーテは残念そうに後ろへ回した手を止めると、着替えを行うためによろよろと寝室へと戻っていった。
そんな様子にあなたはまた溜息をついた。昔は朝ももっとビシッとしてたような気がするのだが……いつからだろうか? お酒を飲めるようになってからだっただろうか? 気が付いたときはアガーテはだらしのない様子を晒すようになっていた。
あなたはアガーテの変化について考えようとしたが、ジュウジュウとフライパンが音を立てていたため、頭を一度横に振ってから朝食づくりへと戻った。
「んっ、はぁ……おいひぃい……」
「姉さん、食べながら喋るのは行儀悪いよ……」
あなたが用意した朝食はバターをたっぷり塗ったトーストと良い塩梅に焼かれたベーコンエッグに新鮮なミルクというシンプルな物。それをアガーテはだらしのない顔で美味しそうにむしゃむしゃと口にする。
一方のあなたは食事をするアガーテの後ろに回ってぼさぼさの寝癖を櫛を使ってとかしていた。アガーテのだらしなさに思うところはあるものの、昔から姉と慕っていた人物の髪を髪をすいていることは悪い気はしなかった。しなかったが……
あなたは無言でアガーテの髪を整え、あなたに注意されたアガーテは黙々と朝食を頬張っていた。無言の空間にアガーテの咀嚼音だけが聞こえてくる。あなたはこの時間が嫌いではなかったが……それはそれとして昔からお姉さん分だったアガーテにはもう少ししっかりした様子を見せて欲しかった。
(最近、ますますひどくなってる気がするしなー……)
とはいえ、美味しそうに食事をするアガーテの顔を見るのはやっぱり嫌いではないのでついつい世話を焼いてしまうのだが。これは、自分にも責任があるのかもしれないな、とあなたは声に出さず苦笑した。
「よし、では行ってくる。お前は今日はどうするんだ?」
十数分後、護り手としての務めを果たすべく、鎧と剣を纏っているアガーテは先ほどまでの知る人ぞ知るだらしのない姿ではなく、村の百人が百人とも知る護り手のアガーテ・ハーマンになっていた。
ぼさぼさだった髪はしっかりと直されて美しく、表情はいつもの様に凛々しい。そんな、先ほどまでと全然違う『いつもの』アガーテにあなたは苦笑した。
「ええと、今日はライザとクラウディアと一緒に採集に行って、午後はリラさんが稽古を付けてくれることになってる……あ、あと銀ウニを届けて欲しいって頼まれていたから届けなきゃ」
「……そうか、ライザのお目付け役とリラさんとの稽古か」
「お目付け役ってほど目を付けてるわけじゃないけどね」
そう言ってあなたは苦笑し、アガーテは目を伏せた。
何かとアガーテからライザのお目付け役扱いされることの多いあなたであるが、実際はそこまでライザの行動を竦めているわけでもない。無論、やりすぎそうになる時は声をかけているが、ライザに振り回される事はあなたわりと好きな方であった。口に出したことは無いが。
そんなあなたの様子を感じ取ったのか、アガーテは眩しそうに朝日の方を見つめると、「行ってくる」と一言言うと、あなたと自宅とに背を向けて歩き出した。
そんなアガーテにあなたは「行ってらっしゃい」と微笑みながら手を振った。
しかし、数歩歩いたところでアガーテは立ち止まってあなたの方を振り向かずに言葉を掛けた。
「鍵はいつもの所にしまっておいてくれ」
「わかった。姉さんも今日は飲み過ぎないようにね」
「…………ああ」
絞り出すような声の小ささだった。そんなアガーテの様子に首をかしげたあなただったが、アガーテにとっては幸いなことにあなたからアガーテの表情を窺うことは出来なかった。
あなたは夜のラーゼンボーデン村を歩いていた。
リラとの稽古を終え、村に住んでいる老人から頼まれていた銀ウニをご自宅へお届けしたら老人が「わざわざすまないねぇ、ありがとう。せっかくだからお茶でも飲んでいきなよ」というのでお茶をご馳走になりながら昔話に付き合っていたらすっかり遅くなってしまった。
自宅へ向かって歩いていくあなたは、ふとアガーテの家の前で足を止めた。
アガーテは既に帰宅しているようで家の明かりが漏れている。それは構わなかったが、この時間でまだ居間から明かりが漏れている事が気になった。アガーテは大体は今ではなく自室で過ごしているのだが……
「……まさかね?」
あなたは自宅へ帰るのを中断して、アガーテの家へ向かった。
アガーテの玄関のドアノブを回すと、鍵がかかってなかったようであっさりと開いて客人を招き入れる。その不用心さに顔を顰める。
玄関は靴や小道具が散らばっており、乱雑に今朝腰に付けていた剣が立てかけられていた。
あなたは溜息をつくと、「お邪魔します」と声に出してアガーテの家の中に静かに踏み入った。
「姉さん、起きてる?」
「……あ、ああ~~~……ん? どうした~~~?」
「姉さん……」
居間についたあなたが見たのは下着姿で酒を呷るアガーテだった。
今朝片づけをしたときには無かったはずの酒瓶を手に持って、杯に移さずそのまま口を付けて飲んでいた。周囲には同じような酒瓶が数本ごろごろと地面に転がっており、簡易なつまみがテーブルの上に乱雑に置かれていた。つまみは自作したのか調理台は調味料や材料があちこちに零れており、汚れの付いたフライパンが放置されていた。
「……姉さん、明日も早いんだしこれ以上お酒飲むとまずいよ。今日はもう寝よう」
「ん、あ……じゃあ、寝室まで連れてってくれ~~」
「じゃあ、肩を貸すから「やだ、おんぶじゃきゃ、や~だ~~~~!」…………わかったよ。その代わり、今日はもうさっさと寝てよ?」
酒を飲んで酔っ払ったアガーテは幼児退行するというかどうもかなり甘えが強くなる。流石に当初は女性(しかも肌色が多い姿の)をおんぶするのは抵抗があったあなただが、この状態のアガーテは我儘が強いので、おんぶ以外だと梃子でも動かないのを知っていた。
よいしょ、とアガーテを背負うと今を改めて見渡す。もう遅いので片付けるのは明日の朝にしようと決めると、あなたは溜息と共に寝室の方へと向かった。
「……大きくなったな」
あなたに背負われているアガーテがふいに一言漏らした。その言葉には寂しさの様なものが含まれていた。少なくとも酒に酔って出た言葉ではない様だ。
「はは、もう17だしね。アガーテ姉さんにはまだ悪ガキ4人組にしか見えないのかもしれないけど、それでも成長はしてるつもりだよ」
「……」
あなたの言葉にアガーテは顔をあなたの背にこすりつける事で応えた。
アガーテの中ではあなた達はまだ子ども扱いなのだろうか、それとも。…………聞いてみたくなったあなたであったが、いずれアガーテの方から成長したと言って欲しいという思いもあり、その問いは口には出さなかった。
ただ、あなたにもわかるのは
(取りあえず、男としては見られてないよね)
自身が乱れている姿をさらしても問題ないくらいにはアガーテに信頼されているのはわかる。だが、ああまで肌を晒しているというのは……
アガーテをベッドにおろして布団を掛けたあなたは、もう一度居間の方を見て溜息を吐くと苦笑しながらアガーテ家を出た。
明日も早起きしなきゃなあ、と思いながら。
「すまない、こんなことしかできない私を許してくれ……」
布団にくるまりながらアガーテは懺悔するように言葉を漏らした。
その表情はとても先ほどまで大量の先を飲んで酔っ払っていたものとは思えないぐらい悲しみと寂しさと罪の意識に彩られている。
事実としてアガーテは酒を飲んではいたものの、酒に飲まれてはいなかった。とはいえ酔っ払いの様に身体を動かすのが億劫ではあった。酒のせいではなく己の気持ちが原因ではあるが。
「行かないでくれ、行かないでくれ……」
アガーテは不安そうな表情で布団の端をぎゅっと握る。
昔から「姉さん、姉さん」と慕ってくれていた少年が、いつの間にか同じように剣で鍛錬しあうようになり、最近では自分を背負ったり心配したり世話を焼こうとするまでに成長した。弟分だったはずの少年は、いつの間にかアガーテの中で対等な異性として認識されていた。
同時に、胸が高鳴る相手であることも認識してしまった。ふとした時に感じる“男”に、逞しくなった背中に、アガーテは内心でドキドキさせられていた。
「うう……んん……」
アガーテの弟分たるあなたはアガーテの紛れもない初恋の相手であった。自分でも遅いとはわかっていたが、今までそういった感情を抱いてこれなかったのだ。仕方ないだろう、と1人ごちたこともある。
「ああ……こんなこと考えてはいけないのにぃ……」
アガーテがあなたを異性と認識し胸が高鳴る初恋の相手だとわかった時、同時に背中が凍てつくようにわかったことがあった。アガーテにとっての妹分でありあなたの幼馴染のライザリン・シュタウトも女であるという事に。
ライザが自身の感情にはっきりと気が付いているかどうかはアガーテには判断が出来なかったが、同じ幼馴染で異性であるレントやタオに比べてあなたとライザは妙な距離の近さがあった。あなた腕をライザが引っ張って振り回して己をアピールしている事をアガーテは感じていた。その際に腕に抱き着いて身体を押し付けてみたりなんかもしていた。
ライザは才色兼備で知られるアガーテから見ても少女の活発さと女性の柔らかさのいいとこ取りをした成長をしている最中だった。更にライザはアガーテよりもあなたとの距離が物理的にも心情的にもアガーテより近い。もし2人がくっついたら……と思うと気が気ではなかった。
「ライザだけじゃない……」
最近クーケン島を訪れたバレンツ家のご令嬢であるクラウディア・バレンツ。彼女もまた、アガーテが懸想するあなたに好意を寄せている。アガーテにはない淑やかさと麗しさを持つ彼女の存在も、アガーテを不安に陥れる。
クラウディアだけではなく、同時に現れたリラ・ディザイアスもそれに該当する。アガーテよりも戦士としても女としても成熟している彼女は、あなたのことをノヴィスという妙な名で呼んでいる。近くにいるライザもクラウディアも気が付いていないようだが、アガーテから見てリラは確実に“ノヴィス”に執着をしているようであった。
「私は、私は……」
アガーテは優秀な女性である。それは島の大勢の人間がそう思っているだろう。アガーテにもそれには多少の自負もある。
しかしアガーテには思い人であるあなたに対する、ライザに、クラウディアに、リラの事に関して自信を持つことがどうしてもできなかった。
急成長して自分を抜き去っていくする少女たち、自分を上回っているように思える女性。彼女たちを追い抜いてあなたを得ることが、あなたの隣に立つことができるとはアガーテにはとても思えなかった。
────────だからこそ、アガーテは彼女たちとは違う手段を取った。ライザの様に腕を引っ張って振り回すのではなく、足枷の様に絡みついて歩みを止めるという方法を。
酒を飲んで酔っ払ったふりをして、室内をわざと汚して、衣服を散らかせて、あられもない姿をさらしてみたりして。あなたに絡みついていたのである。
────アガーテは酒を飲んで一度も上手いと感じたことは無い
────アガーテは室内を汚すことに後ろめたさを感じなかったことは無い
────アガーテは衣服を脱ぎ捨てる事に慣れることは無い
────アガーテは下着姿をあなたに見せる事に興奮しなかったことは無い
その結果というべきか、アガーテが懸想する少年は毎朝と殆どの晩の時間をアガーテのために費やすことになった。着実に、アガーテの思い人たる“彼”の足元にアガーテは泥の様に纏わり絡み、その歩みをゆっくりとゆっくりと阻害していっている。
背徳感はあった、罪悪感もあった。けれど、小さな悦びもあった。酔ったふりをしてあなたの背中に追われているだけで、どれほどの幸福を感じただろうか。昂った身体をどれほど慰めただろうか。ライザは知らないだろう、殆ど素肌の状態で思い人に背負われる感触を興奮を、そのことがアガーテに暗い優越感を味合わせていた。
「……いけない、あいつの背中の感触を思い出したら、また身体が昂ってきてしまった」
アガーテはほう、と艶やかなような上せたような息を吐いた。その全身は男の前に身体をさらけ出した生娘の様に朱が差し込んでいる。
昂った身体を慰めるため、彼女はいつものように、左手を胸へ。右手を股へとそれぞれ伸ばし────────
そうして慰め終わるとまた罪悪感と背徳感と後悔に襲われながら、アガーテは泥の様に眠りにつく。
アガーテが生み出した泥はやがて纏わりついたあなたとアガーテ自身をも飲み込んでしまうだろう。
そうあって欲しいと願いながら、そうはならないで欲しいと思いながら、アガーテはまた思い人が起こしに来ることに初心な少女の様に胸を昂らせながら朝を迎える。
取りあえず無印はこれで終了。ライザ2はちょっと待っててください。
クラウディア~アガーテのゲーム的なルートは
クラウディア
・戦闘でクラウディアに「囮になる」を規定回数以上使用する
・ライムウィックの丘へ行った回数が規定回数以下の状態でクラウディアの「金のハチの巣が欲しい」の依頼を受ける。ライムウィックの丘へ行った回数が規定回数あると途中で闇の大精霊に攫われ闇の大精霊END
・闇を裂く光竜の襲撃時に「クラウディアに助けを呼んでもらう」を選択しクラウディアが戻ってくるまでに光竜のHPを半分に出来ないとクラウディアEND(ヤンデレ)になる。なお選択肢には「クラウディアと一緒に戦う」もあり、そちらを選択した状態で勝利するとクラウディアEND(ノーマル)ルート。ただし、敗北すると2人とも死亡する。
闇の大精霊
・クラウディアの「金のハチの巣が欲しい」の依頼を受けた時にライムウィックの丘へ規定回数行っている。
・闇の大精霊との戦闘で敗北。
・闇の大精霊と戦闘後に入手できる異界のトラベルボトルで「領域」の方に行く。
これらのどれかで闇の大精霊END。闇の大精霊にはノーマルEND無し。
アガーテ
・早期購入特典DLC適用するとか全クリした後とかでNEWGAMEをする際に「アガーテルートをプレイしますか?」という質問に「はい」と答える。
大体こんな感じ。
あと、微妙な裏設定として語ると、
ライザとアガーテ 妹の様に思っている者と姉の様に思っている者
リラとキロ ノヴィスを探している者とノヴィスと形はどうあれ一緒にいた者
クラウディアと闇の大精霊 護ろうとする者と奪おうとする者
こんな感じで対になっている様に設定してた。