ラブライブ! 虹ヶ咲Z   作:ベンジャー

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第3話 『その笑顔が見たい』

虹ヶ咲学園、生徒会室にて・・・・・・。

 

そこでは果林によって優木 せつ菜の正体が生徒会長である中川 菜々であることがエマ達に明かされていいるところだった。

 

しかし、菜々は特に動揺するような様子もなく、だけども果林の言葉を否定するようなこともせず、彼女はただ窓の方へと振り返り、顔を向ける。

 

「否定しないのね?」

「元々隠しきれるものとは思っていませんでしたから。 ですが、同好会以外の方に指摘されたのは予想外でした」

 

菜々としては同好会のメンバーに自分の正体がバレるのは正直時間の問題だったと思っていたので、特に驚くことでもなかったそうなのだが、唯一の誤算と言えばアイドル同好会以外の人物が自分の正体に辿り着いたことくらいだった。

 

それに対し、果林は「たまたま親友が同好会にいてね?」と視線をエマに向けながら、自分がせつ菜の正体を探っていた理由を軽く菜々に説明する。

 

「なんで生徒会長が正体を隠してスクールアイドルをやっていたのか、興味はあるんだけど彼女達が今聞きたいのはそこじゃないみたい」

「・・・・・・せつ菜ちゃん!」

 

エマが菜々のことを「せつ菜ちゃん」と呼ぶと、菜々は一瞬だけ肩をピクリと動かし、エマに続くように彼方やしずくが菜々に声をかけていく。

 

「ちょっとお休みするだけって言ってたじゃん!」

「グループを解散した時に、決めてたんですか? 私達とは、もう・・・・・・」

 

スクールアイドル同好会は廃部になった。

 

しかし、それでもしずくやエマ、彼方はスクールアイドルを続けたかったのだ。

 

ここにはいないかすみも含めて・・・・・・菜々、否、優木 せつ菜と一緒に・・・・・・。

 

だからエマはもう1度スクールアイドルを一緒に続けたいとそれを伝えようと彼女はもう1度「せつ菜ちゃん!」と声をかけると、菜々は背中をエマ達に見せたまま声を荒げるようにして叫んだ。

 

「優木 せつ菜はもういません!!」

『っ・・・・・・!』

 

どことなく、悲痛な叫びにも聞こえるその声にエマ達は複雑そうな表情を浮かべ、菜々は自分はもう・・・・・・優木 せつ菜はスクールアイドルを辞めたことをハッキリと彼女達に言い放ったのだ。

 

「私は、スクールアイドルを辞めたんです!! もし皆さんがまだ、スクールアイドルを続けるなら・・・・・・『ラブライブ』を目指すつもりなら、皆さんだけで続けてください・・・・・・!」

 

菜々は自分の右腕を左手で抑えながら、彼女は自分はもうスクールアイドルはやらないと断言し、スクールアイドルを続けたいのならばエマ達だけでやれば良いと彼女達を拒絶するかのように声を上げ・・・・・・。

 

そんな姿を見せる菜々に、エマ達はそんな菜々にどう声をかけて良いのか分からなかった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

その夜。

 

あの後ギクシャクした雰囲気のままエマ達と別れ、自宅のマンションへと帰って来た菜々は今、自分の部屋で綺麗に畳まれたスクールアイドルの衣装を両手に持ちながらジッとそれを見つめていた。

 

(大好きを叫びたかった私は、他の人の大好きを傷つけた。 私がなりたい自分は、こんなのじゃなかった。 だから・・・・・・)

 

そこでは、彼女は自分の大好きな気持ちが、他の誰かの大好きを傷つけてしまったことを深く、深く反省し、後悔し、彼女は両手に持った衣装をそっと赤いケースの中へと仕舞い込んだ。

 

それはきっと、二度と開くことはないであろうケースの中に。

 

そんな時、「菜々? 入るわよー」という母親の声が聞こえ、菜々は慌ててアイドル衣装の入ったケースをクローゼットの中に仕舞い込むと、彼女は素早く机の上に向かい、教科書とノートを開いて勉強をしている姿を取り繕う。

 

そして菜々が母親の問いかけに「はい!」と応えると扉を開けてお盆にコーヒーを乗せた母親が入って来た。

 

「勉強、捗ってる?」

「勿論」

「来週、模試でしょ? 頑張ってね」

 

母親のその応援に対し、菜々は「うん」と頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

その翌日、菜々は浮かない表情のままトボトボと学校へ行くための通学路を歩いていたのだが、その表情はどこか暗く、端から見ても元気が無いのが丸分かりだった。

 

「いけない、こんなのじゃ・・・・・・」

 

今日は生徒会の仕事もあるのにこんな調子ではいけない、もっとしっかりとシャキッとしなくてはダメだと考え、自分はスクールアイドルを辞めたのだから何時までも引きずってはいけないと気を引き締める菜々。

 

しかし、スクールアイドルのことを忘れようとすればするほど、そのことを彼女は考え、心の中のモヤモヤが全く晴れずに、逆にどんどん曇っていくのを感じた。

 

それに菜々は苛立ちにも似た感情を覚え、どうすればこのモヤモヤが晴れるのか、どうすればスクールアイドルのことを忘れられるのか、彼女は右手で頭を抱えるように抑えて、悩んでいると・・・・・・。

 

「生徒会長?」

「えっ?」

 

不意に、声をかけられて後ろを振り返るとそこには鞄を持って自分と同じく登校中のライの姿があり、ライは菜々の顔を覗き込み、「大丈夫ですか?」と心配げに尋ねて来る。

 

「顔色、悪いですけど・・・・・・。 もしかして体調悪いんですか!? だったら、学校なんて行ってる場合じゃない!! 早く病院に行かないと・・・・・・。 あっ、俺から学校に電話しておきましょうか!?」

「えっ、ちょっ、ちょっと待ってください赤間さん! 別に体調が悪いとかじゃありませんから・・・・・・!」

「でも頭抑えてたし・・・・・・!」

 

予想以上に心配してくるライに菜々は慌てて別に体調が悪い訳ではない、本当の本当になんともないと必死にライに伝えると、未だにライは心配げな表情をしたままで「本当に無理してませんか?」なんて聞いてはくるものの、一応は納得して貰えたようだった。

 

「その、ちょっと色々と悩んでることがありましてね。 そのことでちょっとモヤモヤしてて・・・・・・心配をおかけしてすいません」

「あっ、いや、俺の方こそ・・・・・・なんかすいません」

 

そこから先は目的地が同じということもあり、成り行きで一緒に学校に登校することに2人はなったのだったが・・・・・・。

 

((き、気まずい・・・・・・!))

 

お互いに話す話題も無く、ただひたらすらに気まずさだけを感じライはこういう時、何か話しかけた方が良いのだろうかと必死に考え込み・・・・・・今期の面白いオススメアニメでも話そうか、なんて一瞬考えたものの生徒会長みたいな人がアニメなんて観る訳ないだろうし、逆に鬱陶しがられるだろうと思ったのですぐにその考えを却下した。

 

逆に菜々の方はというと、彼女もまたライと同じ・・・・・・否、ライがせつ菜のファン・・・・・・つまり、自分のファンであることを公言していたことから彼女はライ以上の気まずさを感じており、彼以上に何を話して良いのか分からず、頭の中がグチャグチャしてまともな思考をすることが出来ずにいたのだった。

 

すると、ふっと菜々はライが手に持っている大きめの袋が視界に入り、「そう言えば・・・・・・」と全校生徒の顔と名前だけでなく、住所も把握している菜々はライの家は確かここから随分と方向の違うところにあることを思い出し、菜々は話題が見つかったと思い、あらかじめライに全校生徒の住所も把握しているとこを話すと、彼女はどうしてライがこんな遠回りして学校に登校しているのかを問いかけたのだ。

 

「流石ですね、生徒会長。 全校生徒の住所まで知ってるとは・・・・・・。 その、俺の趣味の話になってしまうんですけど・・・・・・」

 

そう言いながらライは手に持った袋の中に腕を突っ込み、そこから何やらロボットのようなものが描かれた1つの四角い箱を取り出した。

 

「ゼンカイオーブルマジーンのミニプラ買いに行ってました」

 

それはスーパーなどのお菓子コーナーなどによく置いてある所謂「食玩」と呼ばれる玩具の1つであり、このミニプラというのはプラ組み立ての食玩(一箱につきラムネが一個入り)である。

 

ついでにこのミニプラというのは主にスーパー戦隊シリーズのロボがメインであり、かつてはDX版のロボの玩具の劣化版みたいなもので、殆ど棒立ちのものばかりであったが最近はDX版と全く同じ合体構造なのにDX版顔負けの出来を誇っており、アクションフィギュア並にガシガシと動かせる食玩とは思えないクオリティの玩具のことである。

 

ただしこういうのは5箱くらいで何時もバラ売りしているのでDX玩具と違い、1年間ずっと置いている訳でもない為早くしないとすぐに売り切れてしまうし、1箱だけ手に入らないなんて事態も起こりうるので

今日が発売日ということもあり、ライは朝一でそれを買って来たのだ。

 

だったら他のスーパーで買えば良くないか、なんて思うかも知れないが、必ずしもスーパーに置いてある訳ではない。

 

ネットで買うという手もあるが、ネット販売は微妙に市場で出てるのより少し値段が高くなっていたりするので、やはり買うなら直が1番良いだろう。

 

つまり、「あそこしか売ってないから」という理由でライは学校に遠回りして登校することになり、今このような事態になっているという訳なのである。

 

ライは別に隠れオタ・・・・・・という訳では無いので、菜々相手にも聞かれたからと堂々と自分の買ってきたそのミニプラの箱の1つを見せると、直後菜々の目の色が変わり、ガッとライの両肩を掴んできたのだ。

 

「えっ、あれ!? ブルマジーン今日発売でしたっけ!!? まだお店に商品ありました!? 特に5番の拡張パーツ!!」

 

突然の菜々の豹変っぷりと肩を掴まれた際にずいっと菜々が顔を近づけて来た為、歩夢や侑とよく一緒にいるとはいえ女性にそこまで免疫がある訳ではないライは目を見開いて動揺し、顔が赤くなってしまうのだが・・・・・・。

 

(んっ? あれ? なんか・・・・・・生徒会長の顔って近くで見ると誰かに似ているような・・・・・・)

 

菜々の顔が間近まで迫ったことでライは菜々がどこかで見たことあるような顔であることに気づき、なんだか物凄くよく知ってる人のように感じ、ライの頭の中が疑問符だらけになる中、菜々はさらにズイッと顔を近づけて来たことでライはハッとなり、慌てて菜々を自分から引き離す。

 

「ちょっ、近い近い!! 近いです生徒会長!?」

「えっ、あっ・・・・・・す、すいません。 私ったらはしたないところをお見せして・・・・・・」

 

そこでようやく菜々の方も自分は凄くライに顔を近づけていたことに気付いて頬を赤くし、彼女は気恥ずかしそうにする。

 

「・・・・・・それにしても、今の反応からすると生徒会長ってもしかして・・・・・・」

「あっ、いや、別に毎週かかさずニチアサを観てるとかではないんですよ!? ゼンカイジャーやセイバーが毎週面白いとか思ってないですし!? タテガミ氷獣戦記やクロスセイバーとか、ツーカイザーとかがカッコイイとか思ってませんし!? 勇動とか装動とかも何時も買ってるとか無いですから!!」

 

無自覚にライに顔を近づけたことを恥ずかしがってるのもあるのか、先ほどから菜々はどうにもパニクってるようであり、必死に何か誤魔化そうとしているのだが、全然誤魔化せておらず、むしろ逆に墓穴を掘りまくっていた。

 

「会長、気付いて! それ全然誤魔化せて無いから!!」

「えっ、あっ、ああ~!!!」

 

ライから指摘されたことで、菜々は「やってしまった」とでも言わんばかりに頭を抱えてその場に蹲り、ライは少しばかりそんな菜々にどう声をかけて良いのか分からず、悩むが・・・・・・。

 

そこでライは自分の持っているミニプラの入った袋に視線をやった後、彼は菜々の隣に何気なくしゃがみ込む。

 

「生徒会長って初めて会った時はもっと結構、厳しい人なのかなって思ってたけど・・・・・・ニチアサ観てるとか、結構意外でした」

「忘れてください忘れてくださいお願いします! これでも親や周りの人には隠してるんです!」

「いや、そりゃ言いふらしたりしませんけど・・・・・・」

 

そこでライはもう1度自分の手に持つ袋に視線を向けた後、そっと菜々にそれを差し出し、菜々は「えっ?」と驚いたような表情でライの顔を見つめる。

 

「会長も欲しかったんでしょ? 拡張パーツの5番だけもう店に無かったし」

「で、でもそんな・・・・・・悪いですよ!?」

「勿論、タダじゃあげませんよ? 俺だって欲しくて買ったんだから・・・・・・ちゃんと支払い・・・・・・」

「・・・・・・ハッ!? まさか転売・・・・・・!?」

 

タダじゃあげない、ちゃんと支払え、なんてライが言ってくるものだからてっきり2倍の値段でタチの悪い転売でもされるのではないかと菜々はライのことを睨んだが、ライは「誰がするか!!」と当然ながらそんなことはしないと反論。

 

普通に定価である、定価!!(大事なことなので2回言いました

 

「転売いけません!!」

 

両手でペケの字作りながらライがそう言い放つと「ぶふ!?」と思わず笑い出しそうになり、口元を押さえる菜々。

 

「それジュランおじさんじゃないですか」

「やっぱニチアサとか観てるんじゃないですか」

「ここまで来たらもう隠せませんし」

 

そこでもう隠しきれないと判断した菜々は観念して自分もライと同様にアニメや特撮、ラノベなどを嗜んでいるオタク女子であることをカミングアウトし、彼女はまさかこんな形でライにオタバレしてしまうとはと両膝を抱えてしゃがみ込むと彼女は「はぁ」と大きな溜息を吐くのだった。

 

「今までずっと上手く、周りには隠して来てたんですけどね」

 

せつ菜としては隠していなかったが、菜々としてはずっと隠していた自分の趣味をこうもあっさりと最近会ったばかりのライに知られてしまったことに菜々は落ち込み、ただでさえまだスクールアイドルのことを完全に吹っ切れていないというのにと彼女はまたもや大きな溜息を吐きだす。

 

「あ、あの、会長! 俺、本当に言いふらしたりしませんし! それに、溜め息ばっかりしてると幸せが逃げて行くって俺の母さんが言ってました!」

「本当に、誰にも言いませんか・・・・・・?」

「押忍!! 男に二言はありません!! 破ったら腹切ります!!」

「武士ですか!?」

 

全校生徒の名前や住所、学年が分かっても菜々はその生徒達の性格まで知っている訳ではない。

 

彼女はそこまで万能ではないのだから。

 

ライのことも、せつ菜のファンであること以上のことをあまり詳しくは知らなかった。

 

だから、ライが絶対に誰にも言いふらさないなんて保証はどこにも無かったが、約束を破ったら腹を切ると断言した時のライのその真っ直ぐで真剣な目を見ると、とても彼が嘘をついているように思えず、菜々は何度目か分からない溜め息をまた零した後、「分かりました」とその場から立ち上がる。

 

「赤間さん、あなたを信じます」

「押忍! 約束です、絶対に生徒会長の秘密は誰にも言いませんので!」

 

「生徒会長の秘密」、なんて言われると一瞬せつ菜のことかと思ってドキリとしてしまう菜々。

 

「でもホント、意外でした。 会長も俺と同じ、アニメとか特撮とか好きな人だとは・・・・・・」

「えっ? あっ、そっか・・・・・・そっちですよね」

 

無論、ライの言う「生徒会長の秘密」とはせつ菜のことではなく、彼女の趣味のことであり、むしろライは目の前にいる人物こそが自身が憧れるせつ菜本人であるとは全く気付いていない。

 

「あぁ、それと・・・・・・私のこと、いちいち『生徒会長』なんて呼ばなくても構いませんよ。 普通に名前で呼んでくれれば。 歳は赤間さんの方が上なんですし、敬語も不要です」

「えっ? そう? じゃあこれからは菜々ちゃんって呼ぶよ!」

「順応早すぎ!? しかも、いきなり下の名前ですか!?」

 

そこはちょっと普通戸惑うところではないかと思わずにいられなかった菜々だったが、自分で名前を呼んでも良い、敬語も無しで良いと言った手前訂正する訳にもいかず、せめて名字の「中川」と呼んでくれないかと頼もうとしたのだが・・・・・・。

 

「いや、だって・・・・・・俺はもう菜々ちゃんと友達になったつもりだったからさ。 それに、下の名前で呼んだ方が友達感あるじゃんか!!」

 

満面の笑顔でこんな言われ方をすると菜々は断るに断ることができず、少し恥ずかしくは思うものの自分の秘密を守ってくれるのだからこのくらいは別に良いかと彼女は判断し、菜々は「分かりました、好きにしてください」と渋々納得するのだった。

 

「菜々ちゃんも俺のこと、『ライ』って呼んで良いからな!」

「それは、遠慮しておきます。 ってヤバイ・・・・・・!」

 

そうこうとしている内に登校時間が迫っていることに気付いた菜々はこのままでは遅刻してしまうと思い、彼女と同じくそのことに気付いたライは2人で急いで走って学校に向かう為に・・・・・・急いで足を踏み出そうとする。

 

しかし、次の瞬間・・・・・・。

 

「グルアアアアアアア!!!!!」

 

街に、唐突に二足歩行形態の王道体型な怪獣となって能力が大幅に強化されたダランビア・・・・・・「超合成獣 ネオダランビア」が現れたのだ。

 

出現したネオダランビアは何かを探すかのように辺りを見渡すと、手当たり次第にビルを殴り倒して破壊し、頭部の角から破壊光線を放って街を破壊し始める。

 

「怪獣!? いつの間に・・・・・・!?」

 

先ほどまで怪獣が現れる気配なんて全く無かったのに、一体どこからか現れたのかと頭に疑問符を浮かべるライだったが、すぐに彼は隣に菜々がいることを思い出し、彼女を安全な場所に避難させる為に、菜々の腕を掴む。

 

「菜々ちゃん!! 逃げるよ!!」

「ふえっ!?」

 

怪獣が現れたことも驚きだったが、異性に突然腕を掴まれたことに菜々は一瞬ビックリして驚くが、ライはそんな彼女の様子に気付くことはなく、そのまま彼女の腕を引っ張って急いでこの場から離れる為に走り出すのだった。

 

 

 

 

*

 

 

 

 

一方、その頃、ストレイジ本部ではネオダランビアの出現を受けたことで薫子がセブンガーに搭乗し、出撃の準備を行っていた。

 

そんな中、ネオダランビアが暴れる光景を司令部のモニターで見つめていた倉名は何かを探し回るかのように街を破壊しながら蹂躙し続けるネオダランビアを興味深そうに眺めていたのだ。

 

「『この宇宙』に存在する『宇宙球体 スフィア』か。 しっかし、ここは『ネオフロンティアスペース』ほど科学が発達した世界じゃねえんだけどな・・・・・・。 一体何が目的なんだ? 何を探している?」

 

倉名が1人、そう呟き続けている間にネオダランビアは次々と建物などを破壊し、街に甚大な被害を与えていると・・・・・・そこへ怪獣の出現を受けて現場へと駆けつけた薫子の搭乗するセブンガーが到着した。

 

『セブンガー、着陸します。 ご注意ください』

 

着陸注意のアナウンスを鳴り響かせながらセブンガーが地上に降り立ち、パイロットの薫子がネオダランビアの姿を視界に入れると、彼女は「んっ?」と不思議そうに首を傾げる。

 

「あれ、なんかこの怪獣・・・・・・この前戦ったのとなんとなく似てる?」

 

薫子がネオダランビアが身体が岩のようなもので出来ていることやどことなく見た目がダランビアと酷似していることに疑問を感じ、首を傾げ、不思議そうにしていると「先手必勝!!」と言わんばかりにネオダランビアは右腕を触手のように伸ばしてセブンガーを殴りつけ、攻撃を受けたことで薫子は思わず悲鳴を上げてセブンガーは倒れ込んでしまう。

 

「きゃああああ!!? この!! よくもやってくれたなぁ!!」

 

そのことに怒った薫子は「細かいことなんてどうでも言い!!」とセブンガーを起き上がらせると、セブンガーは真っ直ぐネオダランビアに向かって行き、拳を叩き込む。

 

「先制攻撃ってのは本当の主役からって決まってんのよ!!」

 

しかし、ネオダランビアはその部分にピンポイントに「亜空間バリア」と呼ばれるバリアを張ることで攻撃を防ぎ、逆に角から放つ破壊光線をセブンガーは受けてしまう。

 

「わあああ!!?」

 

その攻撃に怯むセブンガーだが、負けじとネオダランビアに掴みかかろうとするもののネオダランビアはそれをひょいっと躱してセブンガーの後ろに回り込み、セブンガーの背中にも破壊光線を撃ち込み、火花を散らして両膝を突くセブンガー。

 

「ぐうう!?」

「グルルルル・・・・・・!」

 

どうにか次の攻撃が来る前に素早く立ち上がったセブンガーは振り返りざまに右腕を振るって攻撃をネオダランビアに繰り出すが、ネオダランビアはそれを左腕で受け止め、セブンガーの腹部に蹴りを入れて引き離す。

 

「こいつ、どうしてセブンガーの攻撃が!!」

 

なぜかことごとく防がれてしまうセブンガーの攻撃。

 

これに薫子は困惑し、どうにか攻撃を叩きこもうと躍起になるもののセブンガーのどんな攻撃もネオダランビアには亜空間バリアで防がれるか躱されるかでまるで通用せず、逆にネオダランビアの攻撃は次々にセブンガーに叩きこまれ、破損レベルも一気に78%になってしまい、これ以上攻撃を受ければセブンガーは大破し、薫子が危険に晒される可能性があった。

 

『薫子! 離脱しろ!! そいつにはセブンガーの攻撃が通用しない!』

「隊長! でも・・・・・・!」

 

そんな時に倉名から通信が入り、離脱するように命令するがここで撤退すれば多くの人々の命が危険に晒されてしまう。

 

そのことを考えると、薫子は撤退するにすることができず、せめて・・・・・・せめて一撃だけでもネオダランビアに入れられないかと必死に考えるが、薫子の奮闘も空しくセブンガーの攻撃はやはり全く当たらない。

 

一度セブンガーから距離を取って離れたネオダランビアは右腕を触手のように伸ばしてセブンガーの腹部に巻き付け、そこから電撃を流し込むことでセブンガーに着実にダメージを与え、薫子のいるコックピット内やセブンガーの身体からは大量の火花が散る。

 

「うわああああ!!!!?」

 

やがてセブンガーの両目が×印になり、ネオダランビアが拘束を解くとセブンガーはその場に座り込むようにして倒れ、煙を上げながらピクリとも動かなくなってしまったのだった。

 

「ぐっ、うぅ・・・・・・ヤバッ!」

「グルルルル・・・・・・!」

 

気付けば、目の前にネオダランビアが迫って来ており、ネオダランビアはセブンガーにトドメを刺そうと角から破壊光線を発射しようとするが・・・・・・。

 

『ゼアアアア!!!!』

『ウルトラマンゼット! アルファエッジ!』

 

間一髪、セブンガーとネオダランビアの間にライが変身した「ウルトラマンゼット アルファエッジ」が割って入り、ゼットは頭部のトサカの横にあるスラッガー状の部位から三日月状の光刃を稲妻状のエネルギーで連結させ、それをヌンチャクのように振るう「アルファチェインブレード」でネオダランビアの身体を斬りつけ、セブンガーから引き離すことに成功。

 

『よし!! なんとか間に合った!!』

「ウルトラマンゼット・・・・・・!」

 

菜々を安全な場所に避難させていた為、少々現場に来るのが遅れてしまったライだったが、なんとか間に合ったことにホッとし、ゼットはアルファチェインブレードをそのまま立て続けにネオダランビアに振るって身体を斬りつけて行く。

 

戦闘BGM「アルファエッジのテーマ」

 

『ジェア!! ダア!!』

「グアアアアアア!!!!?」

 

ゼットはアルファチェインブレードによる連続攻撃でネオダランビアに反撃の隙すら与えずに攻撃し続けていたが、ネオダランビアは咄嗟に角から出した破壊光線をゼットに撃ち込むことでなんとかダメージを与え、引き離すことに成功し、ゼットのアルファチェインブレードもその際に消失。

 

そこからネオダランビアは右腕を触手のように伸ばしてゼットの腹部に巻き付けると電撃を流し込み、それを受けてゼットは苦痛の声をあげる。

 

『ジェアアア!!?』

 

そこでゼットは額のビームランプから放つ、超高熱の破壊光線「ゼスティウムメーザー」をネオダランビアに放つが、ネオダランビアは亜空間バリアで光線を防ぎ、攻撃を防がれたことに驚く様子をゼットは見せる。

 

『ッ!?』

「グルアアアアア!!!!!」

 

それならばとゼットは身体に流し込まれる電撃による痛みをなんとか堪えながらも頭部のスラッガー状の部位から三日月状の光刃を飛ばす「ゼットスラッガー」を飛ばし、ゼットスラッガーはネオダランビアの右腕を見事切断。

 

『ゼットスラッガー!!』

「グギャアアアア!!!?」

 

それによって拘束が解けると同時にゼットは拳を次々にネオダランビアに叩き込んで行き、最後に後ろ回し蹴りを喰らわせる。

 

「グウウウ!!」

 

そして怯んだ隙を狙って最後にゼットは両拳を胸の前で合わせて上下に揃えた後に左腕を左上に、右腕を右下に伸ばして巨大なZの文字を光で描いた後、両腕を十時に組んで放つ必殺光線「ゼスティウム光線」を発射。

 

『ゼスティウム光線!!』

「グウウウウウ、ガアアアアアアア!!!!!?」

 

ネオダランビアは亜空間バリアの展開も間に合わなかった為に諸にゼットのゼスティウム光線の直撃を受け、粉々に砕け散って爆散するのだった。

 

ゼットは怪獣を倒したことを確認すると、そのまま空へと飛び立ち、去って行くのだった。

 

 

 

 

*

 

 

 

それから、ゼットがネオダランビアを倒し終えてから数十分後のストレイジ本部では・・・・・・。

 

「俺、お前に撤退しろって言ったよな」

 

そこでは司令室で自分の撤退命令に従わなかった薫子を叱っている倉名の姿があり、薫子は申し訳無さそうな顔を見せながら「すいませんでした」としょんぼりとした雰囲気で倉名に謝罪していた。

 

その場にはライや璃奈もいなかったが、もし仮に2人がここにいたら珍しく倉名から叱られている薫子をきっと珍しがっていたことだろう。

 

「でも、あそこで逃げたら一般市民への被害が拡大してしまうかもしれないと思ったら、逃げるに逃げられず・・・・・・」

「それは分かるよ。 言いたいことは分かる。 でもな? ライにも似たようなこと言ったけど、お前が死んだらそれこそ被害がもっと増えるかもしれなかったんだぞ。 ライにはまだセブンガーに乗って怪獣と戦うには少し早いし・・・・・・」

 

一応、ライはゲネガーグ襲来時にセブンガーに乗って怪獣と戦ったことはあるものの、あれは緊急事態だったからであり、もしエースパイロットの薫子を失うような事態になればストレイジにとっては大きな戦力ダウンとなっていただろうし、それ以上に倉名は大切な部下の命が失われる事態なんて望んでいない。

 

だから倉名は薫子の言い分も分かるものの、逃げられる時には逃げろと彼女に注意したのだ。

 

「自分の命も守れないような奴が、他人の奴の命を守れる訳が無いんだからな。 確かに俺達ストレイジは人々の命を守ることが仕事だが、その人々の中にちゃんと自分もカウントしとけ」

「・・・・・・はい」

 

薫子は倉名の言葉に頷き、しっかり彼女が反省したことを確認すると彼は「よし」と呟く。

 

「しっかり反省してくれたのなら、俺はもうこれ以上何も言わない。 以後気をつけるように」

「了解! あっ、そう言えば隊長・・・・・・あの怪獣についてちょっと気になることが・・・・・・」

 

そこで薫子はネオダランビアについて気になったことがあると倉名に話し始め、彼女は数日前、セブンガーが倒し、全て回収され、研究所に保管されていた筈のダランビアの破片が全て消失していることを報告する。

 

「以前回収した怪獣の破片が全て消えて無くなってる?」

「はい、塵も残さず・・・・・・」

 

研究所からの報告によれば破片が無くなっていることに気付いたのは昨日のの夕方頃だそうで・・・・・・。

 

そこに保管されていた筈のダランビアの破片は最初からまるでそこに無かったかのように研究所の保管庫から綺麗さっぱり、塵1つ残さず消えていたというのだ。

 

しかも、薫子が言うには研究所に誰かが侵入した形跡もなく、仮に侵入していたとしても研究所の警備は厳重であり、破片の塵1つ残さずに回収するなどほぼ不可能に近いことだった。

 

「もしかして異星人とかの仕業ですかねぇ。 異星人って割となんでもありですし」

「もしくは実はあの怪獣はまだ生きていて、自力で逃げ出した・・・・・・とかかもなぁ?」

 

薫子はもしや異星人などの仕業なのではないかと考える一方で倉名は実はあの怪獣は身体をバラバラにされても生きていられる怪獣なのではないかと予想し、倉名のその予想を聞くと確かにその可能性も大いにあるかもしれないと薫子は思った。

 

と言うのも、過去にも僅かだがそのような事例が幾つかあったからだ。

 

その事例の先ず1つは「吸電怪獣 ギアクーダ」と呼ばれる怪獣のこと。

 

この怪獣はセブンガーの奮闘によって一度は撃破されたのだが、バラバラにされてもその破片の一つ一つが「分身体」となって活動し、いくら細かく砕いてもその分だけ増え続けるため非常に厄介な特性を持つ怪獣だった。

 

この怪獣にはストレイジはかなり手を焼いたものの最後は主食としている電気エネルギーを餌にすることで発電所におびき寄せ、そうしたところで弱点である炎で責めることでなんとか撃退に成功することが出来た怪獣であり、もう1体はセイウチが突然変異を起こした怪獣、「海象怪獣 デッパラス」であり、この怪獣もまた一度死んで生き返った怪獣の1体なのである。

 

この怪獣は突如街に現れては街のケチャップ工場を襲ってはケチャップを食べ、鏡やガラスに写った自分の姿に興奮してこれを追いかけまわして頭部の角で突っつく等どことなく愛嬌のある怪獣で璃奈もこの怪獣のことを「可愛い」と評していたのだが・・・・・・。

 

しかし、やはり怪獣故の巨体とそれに見合った大きすぎる食欲からやむなく倒すことが決定し、一度はセブンガーによって倒されたのだが・・・・・・。

 

一晩掛けて何故か再生し、復活。

 

しかも体の一部が醜く爛れ、顔の右側に鰭のようなものがついたまるでゾンビのような姿の「再生デッパラス」として復活し、以前にあった愛嬌さはどこへやら・・・・・・。

 

ただの凶暴な怪獣へと変貌してしまったのだ。

 

このことに璃奈はデッパラスが倒された時もショックを受けていたのだが、この再生デッパラスに関してはそのグロテスクな姿からその時以上のショックを受けてしまい、彼女はしばらくの間寝込んでしまう羽目になったのだという。

 

ちなみに、再生デッパラスもセブンガーによって再びなんとか倒すことには成功していたりする。

 

「こうして思い返してみるともしかしてあの岩みてーな怪獣、ギアクーダタイプの奴か?」

「嫌ですよ、私また一晩かけて分裂した怪獣達を火あぶりにするの」

「うん、言い方気をつけよ? 間違ってないけど火あぶりって言うのやめよ? なんかスゲー極悪人感あるからその言い方」

 

兎に角、ライと璃奈にも連絡して警戒態勢を怠らないように注意しなければと倉名は考え、薫子には破片の消えた研究所に事情聴取を取りに行くようにと指示を出すのだった。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

それから・・・・・・しばらくして虹ヶ咲学園の放課後では。

 

怪獣騒ぎが早めに収束したということで、学校は特に休校ということにはならず、現在放課後の生徒会室では生徒会長である菜々を始めとした生徒会による会議が行われているところだった。

 

「分かりました。 放課後の体育館使用の件については私が話しておきます」

「お願いします」

「他に議題はありませんか?」

 

会議は比較的スムーズに進んでいき、他にも何か議題が無いかと役員達に尋ねると、メガネをかけた役員の1人が挙手。

 

「はい。 最近、困った子が校内に住み着いているみたいなんですが・・・・・・」

「んっ? どなたです?」

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

「待ちなさーい!!」

 

校内で住み着いている困った子・・・・・・というのは前回の話にも出てきた璃奈や愛が可愛がっていた子猫のはんぺんのことであり、そんなはんぺんをジャージに着替え、捕獲用の網を持った菜々が捕まえようと奮闘している姿がそこにはあった。

 

「コラァ!! 待ちなさい!! コラ、止まってください!!」

 

必死に網を振るってはんぺんを捕まえようとする菜々だが、はんぺんはすばしっこく、中々捕まえることができない。

 

しかし、はんぺんはやがて壁際に追い込まれ、菜々は息を切らしながらようやく追い詰めたと子猫を捕まえる為に網を構える。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、もう逃げられませんよ・・・・・・!」

 

しかし、そんな時・・・・・・はんぺんの元に慌てた様子の璃奈が駆け寄ると子猫は璃奈の胸に飛び込み、彼女もまた子猫をしっかりと受け止めて抱きかかえ、突然の乱入者に驚きつつ、菜々は不思議そうに璃奈の顔を見る。

 

「情報処理学科の天王寺 璃奈さん? その猫を渡してください」

「・・・・・・ダメ」

 

何時も通りの無表情ではあるものの、それでもはんぺんを絶対に渡さないという強固な意志を璃奈は菜々に見せ、そんな璃奈の意志をなんとなく感じ取った菜々は一体どうすれば良いのかと困り果てていると・・・・・・。

 

不意に背後から現れたライに「よっ」と声をかけられながら軽く背中をトンッと叩かれ、菜々は「赤間さん!?」とライの登場に驚きの声をあげ、それと同時に少し遅れて愛もその場にやって来た。

 

「今朝方ぶり、菜々ちゃん! なあ、俺からも頼むよ。 その子猫のこと見逃してくれ!」

「ですが・・・・・・」

 

両手を合わせてどうかへんぺんや璃奈のことを許してくれないだろうかと懇願するライだったが、それは生徒会長という立場的にも黙って見逃すという訳にはいかなかった。

 

「その子、学校の近くで捨てられてたんだよね。 誰の家でも飼えなくてさ・・・・・・」

「動物の放し飼いは、校則で禁じられています」

 

ライと一緒にやってきていた愛からはんぺんの事情を菜々は聞くものの、やはり校則で禁じられている以上野放しにすることはできず、それでもライは必死に菜々にはんぺんのことを許してくれと頭を下げて頼み込む。

 

「そこをなんとか頼むよ菜々ちゃん! 土下座!? 土下座すれば良いか!?」

「しなくて良いです!!」

 

すると菜々はふっと璃奈に撫でられて気持ちよさそうに気持ちよさそうににゃーにゃー鳴いているはんぺんの姿を見つめると、菜々は網を床に置きながら璃奈とへんぺんの前にしゃがみ込み、1人と1匹に向かって微笑みを向ける。

 

「・・・・・・その子は天王寺さんのことが、大好きみたいですね。 名前、なんて言うんですか?」

「・・・・・・っ」

 

 

 

*

 

 

 

その後、一応子猫の問題に関しては菜々がはんぺんを『生徒会お散歩役員』というものに任命するという妥協案を出した為に解決した。

 

それは「飼うのはダメだが、学校の一員に迎え入れることは校則違反にならない」という屁理屈(愛曰く『良い屁理屈』)だったが、そういった建前を菜々が出したことではんぺんは事実上、璃奈や愛、ライが世話をするという条件の元学校で世話をすることとなり、無事に問題は解決することができたのだった。

 

そして問題の解決した菜々は制服に再び着替え、生徒会室に戻ろうと廊下を歩いている時、不意に近くを通りかかった音楽室からぎこちないものの自分にとって、とても聞き覚えのあるピアノの音色が聞こえ、菜々は何気なく音楽室を覗くとそこには鼻歌を歌いながらピアノを弾く侑と、それを聴いているライの姿がそこにはあった。

 

「んっ!!? アレ!? 赤間さん!?」

 

それを見て菜々は音楽室の中と外の廊下を交互に見て頭の中で大量の疑問符を浮かべ、彼女はさっきまで璃奈や愛と一緒だった筈のライが、既に音楽室まで移動していることに驚きを隠せなかったのだ。

 

と言うのも、先ほどライと会った場所から音楽室まではそこそこの距離があり、ジャージから制服に着替える時間があったとは言え、そこまで着替えに時間がかかった訳では無い。

 

見た感じライは息切れを一つもしていない辺り、廊下を走った訳でも無さそうなので菜々はライが瞬間移動でも使ったのでは無いかと思い、彼女はそれに困惑してしまったのだ。

 

一方で、ライと侑は菜々の存在に気付かず、侑は一向にピアノを弾き続け、一度中断すると彼女は視線をライに向け、「どうだった?」と曲の感想を尋ねる。

 

「ぎこちない。 ヘタクソ」

 

そして尋ねた結果、ライからは中々に辛辣な評価が下された。

 

それに少しだけムッとした表情を浮かべる侑だが、これは何時も自分のことを雑に扱っていることへのちょっとしたライの仕返しである。

 

「せつ菜ちゃんの曲はそんなゆったりな感じじゃ無いから!! もっとこう、壁があったら殴って壊す!! 道が無ければこの手で作る!! 心のマグマが炎と燃える!! 超絶合体!! グレンラガ・・・・・」

「ごめん、ちょっと何言ってるか分かんないや」

「まぁ、要するにだ・・・・・・。 よく聴くと『CHAESE!』弾いてるんだなって言うのは分かるから、練習続けていけば上手くなると思うよってこと」

 

直後、「最初からそう言え!!」と侑からのツインテールビンタを喰らうことになったのだが、あんまり痛くない上にちょっと良い匂いがしたのでそれを喰らったライは少しばかり徳した気分になるのだった。

 

「ってかなんでツインテでビンタ?」

「これで普通にビンタするのはダメでしょ、流石に。 取りあえず、もう1回弾くからまた感想聞かせて貰える?」

「良き」

 

そのまま侑はピアノを弾き始め、ライはそれを黙って聴いていると・・・・・・そこで音楽室の扉の前から「なんでその曲・・・・・・」という菜々の声が聞こえ、ライと侑が視線をそこに向けると2人はようやくそこに菜々が立っていることに気付き、ライと侑は2人揃って「どわあああ!!?」と間抜けな声を出しながら飛び退くように驚く。

 

「生徒会長!?」

「菜々ちゃん!?」

(えっ!? 菜々ちゃん!?)

 

ライがいつの間にか生徒会長のことを本名で・・・・・・しかも下の名前で呼んでいることに侑は驚愕の表情を浮かべながら隣に立つライを見つめるが、菜々の自分達の名前を呆れたように呼ぶ声を聞いて彼女はすぐにハッと視線を菜々に戻す。

 

「高咲 侑さん、赤間 ライさん。 音楽室の使用許可は取ったんですか?」

「いやぁー、あのぉー」

「おいまさかお前使用許可貰って無かったのか? それで感想を聞かせてって俺に頼みに来たの!?」

 

菜々の問いかけに対し、目を泳がせる侑をライはジト目で見つめ、冷や汗を流す侑は結局誤魔化す方法も思いつかずに観念し、「ごめんなさい!!」と90度頭を下げて菜々に謝罪した。

 

「アハハ、ちょっと弾いてみたくなっちゃって~。 でも初めてだと全然ダメですねー」

 

あっちゃーという感じのポーズを取りながら、苦笑しつつ侑は菜々にそう説明すると、菜々はそんな侑に「ハァ」と呆れたように溜め息を吐く。

 

「ところでさっき!! せつ菜ちゃんの曲知ってるみたいな感じでしたよね!?」

「えっ!?」

「良いよね『CHAESE!』 動画とか観てたの!? もしかして会長せつ菜ちゃんのファン!? もー、そうならそうと早く言ってくれれば良かったのに!! せつ菜ちゃんのこと色々話そ? あっ、そうだ!! 『CHAESE!』の他にオススメの動画あったら教えてくれない!! 探してるんだけど全然見つからなくてー!!」

 

菜々は自分の両手を握りしめられてグイグイとマシンガントークを繰り出しながら顔を近づけて来る侑に圧巻されてしまい、彼女は顔を真っ赤にするが、すぐに「ち、近いです!!」と声を絞り出したことで侑は菜々が困っていることに気付き、「ごめんごめん」と謝罪をしながら菜々の手を離して侑は彼女から離れる。

 

「今の侑、なんだか俺自身を見ているようだったよ・・・・・・」

 

オタク特有の早口というのを初めて外観的に見たライがそう呟くと侑はライに対して一瞬物凄く嫌そうな顔を見せたが、同じアイドルを好きになった以上、ライが今の侑にそのような感想を抱くのは仕方が無いことだろう。

 

尚、ライが菜々に侑と同じようにせつ菜が好きなのかどうか問いたださなかったのは彼女が自分のオタク趣味を隠しているのを知っているからであり、現状まだ侑に彼女自身の趣味がバレる可能性は低いと判断した為、特にも何も言わなかったのだ。

 

「落ち着け侑。 気持ちは分かるが、一曲せつ菜ちゃんの歌知ってるからって会長がせつ菜ちゃんのファンであるかどうかなんて分からないだろ? かくいう俺もアニメ観てないのに紅蓮華とかたまに無意識で鼻歌歌ってる時とかあるもん」

 

菜々の趣味が侑にバレる可能性が低いとは言え、念のためにライは菜々へのフォローを入れるつもりで侑に落ち着くように声をかけ、それを受けて侑は反省の色を見せる。

 

「う、うん。 ごめん・・・・・・。 生徒会長がせつ菜ちゃんのファンだと思ったら、すぐに語り明かしたいって気持ちが先走っちゃって・・・・・・」

「・・・・・・そう言えば先日お会いした時、優木さんに会いたがっていましたね」

 

そこで菜々は侑達と初めて会った時、侑達が同好会にいるせつ菜に会いに来ていたことを思い出し、そんな菜々の言葉に侑は「うん!」と笑顔を浮かべながら力強く頷く。

 

「大好きなんだ!!」

「・・・・・・っ」

 

そんな侑の言葉に、菜々は目を見開く。

 

「この前、ライブやっててね? 凄かったんだよぉ。 せつ菜ちゃんの言葉が、胸にズシンって来たんだぁ。 歌であんなに心が動いたの、初めてだった!!」

「・・・・・・」

「私、夢中になれるものとか、全然無かったんだけど・・・・・・あの日からスクールアイドルにハマって、今すっごく楽しいんだ~! ライも、せつ菜ちゃんみたいな凄い娘知ってるなら早く教えてくれれば良かったのに!」

 

侑は嬉しそうに、楽しげに菜々にスクールアイドルのことを話し、その過程で彼女はせつ菜のような娘を知っているならもっと早く教えて欲しかったとライに苦言を零すが、そうは言われてもライ自身も割と最近になってハマった上に侑自身、そこまでアイドルに興味がありそうに見えなかったのでライは教えて欲しかったと言われても困ると彼女に言葉を返すのだった。

 

「それで、歩夢と一緒に同好会も入ってね!」

「・・・・・・同好会?」

「そう! かすみちゃんが、誘ってくれて・・・・・・」

「侑、侑! それ菜々ちゃんの前で言って良かったのか!?」

 

ライに指摘されたことで、侑は「あっ」と声をあげると、彼女は必死に両手をブンブン振って「ち、違うの!」となんとか同好会のことを誤魔化そうとする。

 

「ち、違うの! 勝手に部活始めたとかじゃなくってねぇ~・・・・・・」

「そそそそ、そうだよ!? 同好会って言ってもスクールアイドル同好会じゃないよ!?」

 

確かに、侑は「同好会」と言っただけで彼女やライは一言も「スクールアイドル同好会に入部した」なんて言ってはいない。

 

なので侑もライもまだ誤魔化しが通ずると思っていたのだが、優木 せつ菜としてではあるが、かすみと共に同好会で過ごしたことのある菜々にとってそんな誤魔化しは一切通用しなかった。

 

なぜなら、かすみとは喧嘩別れのような形となってしまったものの菜々はかすみがどれだけスクールアイドルのことが「大好き」なのかを知っているから。

 

自分にも負けない、スクールアイドルのことがとても「大好き」なかすみが、アイドル同好会を諦めて他の同好会を作るなんてする筈が無いことを菜々は理解している。

 

だから、ライや侑が必死にかすみが再結成させたアイドル同好会のことを隠そうとしても「かすみちゃんが誘ってくれた」と侑が言った時点で菜々には如何なる誤魔化しなど通用する筈も無かったのだ。

 

「ふふ、特に問題ありませんよ」

 

だが、彼女はワタワタする侑とライの2人を見てクスリと小さく笑うと、勝手にアイドル同好会を再結成させたことについて菜々は特に問題などは無いと、咎めるようなことはしなかったのだ。

 

「えっ、でも・・・・・・」

「確かに、スクールアイドル同好会は一度廃部になりましたが『新しく立ち上げてはいけない』という校則はありませんし」

「「・・・・・・えっ?」」

「部員が5人以上集まったら何時でも申請に来てください」

 

窓に近寄り、窓の外を見つめながらそう語る菜々の言葉に、侑は動揺しつつも「そうなんだ」と返し、ライはそんな菜々に対して深々と頭を下げる。

 

「ありがとう、菜々ちゃん!! りなりーやはんぺんの時と良い・・・・・・。 何から何まで色々と君には世話にはなりっぱなしだよ・・・・・・」

「そんな大袈裟ですね・・・・・・赤間さんは」

 

またそのように頭を全力で下げるライに菜々は呆れつつも苦笑し、再び窓を菜々が見つめると、どこか暗い表情を浮かべる彼女の姿に、ライは不思議そうに首を傾げる。

 

「・・・・・・先ほどの高咲さんの言葉、優木さんが聞いたら喜ぶでしょうね」

「だったら、嬉しいなぁ。 なんで、辞めちゃったのかな、せつ菜ちゃん・・・・・・。 こんな事を思っても仕方無いって分かってるんだけどね。 きっとせつ菜ちゃんも、色々考えてな事だろうし」

 

スクールアイドルを辞めたのはせつ菜自身の意志で、それだけの理由が本人には合った筈。

 

そのことは侑自身、頭では分かっている、分かっているのだが・・・・・・それでもやはり、「辞めて欲しくなかった」という気持ちは抑えられなかった。

 

彼女のあのライブが、自分がスクールアイドルにハマった切っ掛けなのだから尚更。

 

もっともっとせつ菜のライブが見たいと侑が思うのも、それは当然の心理だろう。

 

「でも、時々思っちゃうんだよね。 あのライブが最後じゃなくて・・・・・・始まりだったら最高だろうなって」

 

そして、その時に発した侑の言葉は、彼女としてはただの願望として言ったものだった。

 

「もし」とか「たら」とか「れば」とか、そう言った類のもの。

 

しかし、何気なく言ったその侑の言葉は、菜々の心の奥底にあるものに深く突き刺さり、彼女は僅かな苛立ちを覚えた。

 

「なんでそんなこと言うんですかッ・・・・・・!」

「えっ?」

「菜々ちゃん・・・・・・?」

 

突然、雰囲気の変わった菜々の様子にライと侑は一瞬困惑するが、菜々はそんな風に困惑する2人を無視して、顔を俯かせながらも苛立ちを外に吐き出すように言葉を続ける。

 

「良い幕引きだったじゃないですか。 せつ菜さんは、あそこで辞めて正解だったんです。 あのまま続けていたら、彼女は部員の皆さんをもっと傷付けて、同好会は、再起不能になっていたはずです」

「えっ? そんなことは・・・・・・」

「高咲さんや赤間さんは、『ラブライブ』をご存じですか?」

 

侑の言葉を遮りながら菜々は侑やライにラブライブなるもののことを問いかけると、ライは「当然!」とでも言いたげに胸を張って応え、それには侑も頷く。

 

「俺を誰だと思ってやがる。 せつ菜ちゃんの1番(自称)のファンだぞ! せつ菜ちゃんのいるチームは今年の優勝候補かもしれないって名前が挙がってたくらいだしな! まぁ、でも、その肝心のせつ菜ちゃんがアイドル辞めちゃったけどね・・・・・・」

「要するに、スクールアイドルの全国大会みたいなやつだよね?」

「その通りです。 『ラブライブ』はスクールアイドルとそのファンにとって、最高のステージ。 あなたもせつ菜さんのファンなら、そこに出て欲しいと思うでしょ? スクールアイドルが大好きだったせつ菜さんも、同好会を作り、グループを結成し・・・・・・全国のアイドルグループとの競争に、勝ち抜こうとしていました」

 

顔を俯かせながら、ライと侑にせつ菜がラブライブに向けてどう意気込んでいたのかを話す菜々。

 

しかし、それを語る菜々の姿は、どこかせつ菜というよりもまるで・・・・・・自分のことを語っているようにしかライや侑には見えなかった。

 

「勝利に必要なのは、メンバーが1つの色に纏まる事。 ですが、纏めようとすればする程、衝突は増えて行って・・・・・・その原因が、全部自分にある事に気付きました。 せつ菜さんの大好きは、自分本意の我が儘に過ぎませんでした」

 

かすみを怒らせてしまった光景を脳裏に浮かべながら自分の拳を握りしめながら、菜々はせつ菜がスクールアイドルを辞めてしまったその理由をライと侑に話し、そして・・・・・・ライと侑の目には完全に、菜々とせつ菜の姿が重なり、2人はそれに驚いた表情を浮かべて互いに顔を見合わせる。

 

「そんな彼女が、スクールアイドルになろうと思った事自体が、間違いだったのです。 幻滅しましたか?」

 

そこで今まで俯かせていた顔を上げて、侑やライの方に視線を向けると、2人にそう問いかけるがライも侑も何も応えることが出来ず、3人の間でしばらくの沈黙が走る。

 

「っ・・・・・・」

 

そこで侑が口を開こうとしたその瞬間、音楽室にひょっこりと歩夢が顔を覗かせて来たのだ。

 

「侑ちゃん? それにライくん?」

「失礼します」

 

歩夢が音楽室に来たと同時に、菜々はそれだけを言うと彼女はその場を去って行き、音楽室には気まずい空気だけが残るのだった。

 

 

 

 

*

 

 

 

 

生徒会室に戻った菜々は1人、ノートパソコンを開き、動画サイトで何気なく自分が行った最後のライブの映像を視聴していた。

 

「・・・・・・」

 

その動画サイトのコメントではこれが優木 せつ菜最後のライブであることを惜しむ声が多数上がっており、彼女はそれを見る度に拳を握りしめる。

 

「っ・・・・・・!!」

 

「でも、どうして?」「もったいないね」「いい線いってたかもしれないのに」と書き込まれたコメントを見る度に複雑な感情が彼女の中で激しく渦巻き、菜々はその感情に押しつぶされそうな気持ちとなり、机の上に突っ伏した。

 

(期待されるのは嫌いじゃ無かったけど、1つくらい自分の大好きなことを、やってみたかった・・・・・・)

『スクールアイドルが大好きなんでしょ!? やりたいんでしょ!? こんなパフォーマンスでは、みんなに大好きな気持ちは届きませんよ!?』

 

かすみの気持ちを傷つけ、怒らせてしまったあの日の出来事を後悔しない日は無い。

 

『でも! こんなの全然可愛くないです!! 熱いとかじゃなくってかすみんは可愛い感じでやりたいんです!!』

 

あの場で感情を爆発させたのはかすみだけだったが、もしかしたらそれはかすみだけではなく、彼方やエマ、しずくの心だって深く傷つけていたのかもしれない。

 

そう思うと、菜々はやるせない気持ちでいっぱいになる。

 

(私の『大好き』が、誰かの『大好き』を否定していたんだ。 それは結局、ただのワガママでしかなく・・・・・・。 私の大好きは、ファンどころか・・・・・・仲間にも届いていなかった・・・・・・)

 

そこで菜々は顔を上げると、そっとノートパソコンを閉じ、鞄を持って椅子から立ち上がる。

 

(ケジメでやったステージが、少しでも同好会の為になったのなら、優木 せつ菜だけが消えて・・・・・・新しい虹ヶ咲スクールアイドル同好会が生まれる。 それが、私の最後のワガママです・・・・・・)

 

学園から外へと出ると、そこで彼女はふっと何かを思い出したかのように立ち止まり、ポケットにしまっていた1枚の刀のような模様が描かれたメダルを取りだした。

 

「そう言えば、結局これはなんだったんでしょう・・・・・・?」

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

その頃、歩夢、侑、かすみ、ライ、倉名はスクールアイドル同好会の新しい練習場所である公園に訪れ、集まっていたのだがそこには歩夢達が加入するよりも前にかすみと共に活動していたメンバーであるしずく、彼方、エマ+果林も来ていた。

 

「ってか隊長、ダランビアの調査の方は?」

「今、薫子が事情聴取に研究所に向かってるところ。 報告待ってる間はちょっとだけこっちに顔見せようと思ってな」

 

倉名がここに来ていた理由をライに話した後、歩夢達やエマ達は初対面であるため、お互いに軽い挨拶を交わした後、エマ達からせつ菜の正体が菜々であることかすみ達にも語られた。

 

「えええぇぇ!? 意地悪生徒会長がせつ菜先輩ぃぃ!?」

「やっぱりかあああぁぁ!!!!?」

 

両手で頬を押さえながら驚きを隠せないかすみ。

 

そしてハッキリとした確信が持てなかったライは果林達にせつ菜の正体を教えられたことで頭を抱えて公園の芝生の上に倒れ込むと両手で顔を覆い、打ち上げられた魚か、もしくはミミズのようにウネウネ動きながら彼女の1番(自称)のファンであるにも関わらず、菜々として初めて彼女と会った時にせつ菜であると気づけなかったことを彼は激しく後悔した。

 

「うわあああ!!! 初めて菜々ちゃんと会った時に気づけなかったとか、俺ファン失格じゃんホントに・・・・・・!!」

 

それからウネウネ動くライは物凄く気持ち悪かった。

 

あと、菜々のことは元々美少女だとは思っていたがあれが三つ編みメガネしたせつ菜だと思うとしたらめっちゃ似合うし可愛いとライは思った。

 

確かに、思い返せばせつ菜と菜々の容姿はどことなく似ていたし、どちらも同じくらい身長が小さかった。

 

あと、せつ菜の三つ編みメガネめっちゃ可愛いと思った。

 

どちらも髪が黒く、よく聞けば声も似ていたし、倒れそうになった彼女を支えた時に顔も間近で見たこともあるのに気づけなかったことをライは悔やまずにはいられなかった。

 

あと、せつ菜の三つ編みメガネがめっちゃ可愛いと思った。

 

自分と同じようにアニメや漫画などが好きというオタクである点も共通しており、思い返せば思い返すほどライはせつ菜と菜々が同一人物であることを確信していくことができたのだ。

 

あと、せつ菜の三つ編みメガネがめっちゃ可愛いと思った。

 

これだけの材料が揃っているのに、なぜもっと早く自分は気づくことが出来なかったんだとライは落ち込み、もっと早く気づけていれば、確信が持てていれば音楽室の時に悲しそうな顔をしていた彼女に対して何か言えたかもしれないとライは思わずにはいられなかった。

 

あと、せつ菜の三つ編みメガネg

 

「ウゼえ!!」

「ウザい!!」

「ゲホォ!?」

 

そこで倉名と果林が未だに芝生の上で悶えるライを蹴っ飛ばし、起き上がったライは「ケホケホ」と咽せながらも立ち上がり、「何すんですか!? 何すんだよ!?」と蹴りつけてきた2人にそれぞれ怒る。

 

「何時まで悶えてるのよ! 気持ち悪いわよいい加減!」

「ってかしつけーんだよ!! どんだけ三つ編みメガネに萌えてんだテメーは!!? 三つ編みメガネとか地味ジャンルだろうが!!」

「地味なのが良いんでしょうが隊長! 三つ編みメガネ良いでしょうが!! ねえ、彼方さん!!?」

「なんで彼方ちゃんに話振るのかな!?」

 

何故かいきなり話を振られて困惑する彼方だったが、そこでかすみが「それよりも!!」と声をあげ、なんで自分抜きでそんな重大なことになってるんだと彼女は自分を置いていったことへに対しての不満をしずく達に言い始めたのだ。

 

「なんでかすみんを置いてそんな大事な話しに行ったんですかぁ!? 部外者のお姉さんはいたのに!!」

「へえ、面白いこと言う娘ねぇ?」

 

かすみに部外者呼ばわりされ、少しそれに腹を立てたのか、果林はそう言いながら怪しく笑みを浮かべつつ鋭く、冷たい視線をかすみに向けるとその視線を向けられたかすみは「ヒィ!!?」と背筋を震わせながら悲鳴をあげ、しずくの背中に慌てて隠れる。

 

「ごめんなさい! コッペパンあげるから許してくださいぃ~!」

「あら、美味しそう。 有り難く貰っておくわね?」

 

かすみはしずくの背中に隠れつつ、どこからかコッペパンを取り出して果林に手渡すと、果林は鋭い視線をかすみに未だに向けながらもそれを手に取る。

 

「あんまり後輩いじめてやんなよ、果林」

「別にいじめてないでしょ? ちょっと睨んだだけ」

 

ライの言葉に果林は「心外だ」と言わんばかりにムッとした表情を浮かべながら彼女はそう言葉を返す。

 

「学校中探してもいなかったから、スマホにも連絡入れたんだよ?」

 

そこでしずくがかすみにもちゃんと声をかけようとしていたこと、スマホにも連絡を入れていたことを話し、それに「えっ? ホント?」と首を傾げたかすみがスマホを取り出すとそこには確かにしずくからの着信履歴やLINEによるメッセージが届いており、ただ単にかすみを置いていった訳では無くしずく達からの連絡に自分が気付いていないだけであったことが判明したのだった。

 

「わあ! 全然気付かなかった・・・・・・」

「色々あったからな・・・・・・気付かなくても無理はねえだろ」

 

倉名の言う通り、新しい練習場所を探したり、フリップ星人の襲撃があったり、かすみが歩夢に自分の考えを押しつけてしまっているのではないかということに悩んだりと、一度に色々なこと起きてしまったのだからかすみが気付かないのは確かに仕方ないことだろう。

 

なので気付かなかったのは自分の落ち度なのでかすみはこれ以上特に何か文句を言ったりすることはなかった。

 

また、一方で侑は顔を俯かせながら何か小さく呟いていた。

 

「やっぱり菜々さんが・・・・・・」

「せつ菜ちゃん、本当にスクールアイドルを辞めるつもりみたい・・・・・・」

「ちゃんと話そうとしたんだけど、取りつく島もなかったんだよ・・・・・・」

 

エマと彼方が生徒会室での出来事を侑達に話すと、かすみはそれに残念そうな表情を浮かべながら「そうですか・・・・・・」と呟き、そこでコッペパンを半分に割ってエマと分け合って食べていた果林がそっと口を開く。

 

「何か問題があるの?」

『んっ?』

 

果林のその言葉に全員が頭に疑問符を浮かべるが、倉名だけは果林が何を言いたいのか分かっているようだった。

 

「まぁ、目的自体はもう果たしてるも同然だかんな」

「その通り。 あなた達の1番の目的は、もう果たしているように見えるけど? 部員は5人以上居るみたいだし、生徒会も認めるって言ってるなら、同好会は今日にでも始められるでしょ?」

 

ライや倉名、侑達も果林の言いたいことは分かる。

 

「本人が辞めると言ってるんだし、無理に引き止める必要、無いんじゃない?」

 

確かに、せつ菜自身が本当に辞めたいと言っているのなら、無理に引き止めるのは良くないことだというのはライにだって分かる。

 

だから果林の言いたいことも頭では分かっている。

 

しかし、それでもライは音楽室で話した時の菜々の、せつ菜の悲しそうな顔が忘れられず、ライにはどうしても納得できないものがあった。

 

それは侑も同じなようで、本当にせつ菜はスクールアイドルを辞めたいと思っていたのかと疑問を口にした。

 

「本当に、辞めたいのかな?」

「なんでそう思うの・・・・・・?」

「・・・・・・皆さんは、どう思いますか? せつ菜ちゃん、辞めても良いんですか?」

 

侑が元祖同好会のメンバーであるしずく、エマ、彼方に問いかけると、3人は口を揃えてせつ菜がスクールアイドルを辞めることに反対した。

 

「「「それは嫌だよ!!」」」

「せつ菜ちゃん、すっごく素敵なスクールアイドルだし、活動休止になったのは・・・・・・私達の力不足もあるから・・・・・・」

「彼方ちゃん達、お姉さんなのにみんなを引っ張ってあげられなかった・・・・・・」

「お披露目ライブは流れてしまいましたけど、みんなでステージに立ちたいって練習して来たんです! せつ菜さん抜きなんてあり得ません!!」

 

エマ、彼方、しずくがそれぞれのせつ菜への想いを口にして吐き出すと、それに続くようにかすみも口を開く。

 

「かすみんもそう思います! せつ菜先輩は、絶対必要です! 確かに、厳しすぎたところもありましたけど・・・・・・今は、ちょっとだけ気持ちが分かる気がするんですよ・・・・・・。 前の繰り返しになるのは、嫌ですけど、きっと・・・・・・そうじゃないやり方もあった筈で・・・・・・。 それを見付けるには、かすみんと全然違うせつ菜先輩が居てくれないと、ダメなんだと思うんです!!」

「・・・・・・大きくなったね~、かすみちゃん~♪」

 

力強く、そう言い放つかすみに彼方が後ろから抱きついて頭を撫で、それにムッとするかすみ。

 

「バカにしてませんか?」

「本気で褒めてるよ~」

 

そこで今まで黙っていた倉名も右手を挙げながら、「俺もみんなの意見に同意だな」と前に出て主張する。

 

「どうせ、アイツ自身本当は納得してねえんだろ。 スクールアイドルを辞めるにしても、そんな終わり認めてやらねえ。 終わるんならせめてちゃんと胸張って『やり遂げたよ、最後まで』って本人が満足できる最後じゃねえと、俺も納得できないからな」

「ですね! 俺も部外者かもしんないけど、何が出来るか分かんないけど、同好会の力になるよ」

「せつ菜ちゃんは私達に夢をくれた人だもんね! 私も一緒にやりたい!」

 

倉名に続くように、ライや歩夢もまたせつ菜がスクールアイドルをやってくれることを望んだ。

 

「でも、結局あの娘の気持ち次第よね」

「うぅ、また水を差すようなことを・・・・・・」

 

しかし、そこで折角みんなが「優木 せつ菜を取り戻す!!」と意気込んでいたというのに果林が水を差すようなことを言ってしまった為に一同の空気が重いものに変わり、かすみに抱きついたままの彼方もジトッとした視線を彼女に向けていた。

 

「確かに、果林ちゃんの言う通りだよ」

 

だが、幾らを水を差すと言ってもどの道「せつ菜自身の気持ち」という壁には遅かれ早かれブチ当たるのだから果林の言う通りであるとエマは彼女の意見に同意し、そのことに一同が思い悩んでいると・・・・・・そこで侑とライの2人が同時に「はい!!」と手を挙げて来たのだ。

 

「私が話して見ても良いですか!?」

「俺も、せつ菜ちゃんには言いたいことがある」

 

 

 

*

 

 

 

一応、せつ菜と話すのは明日ということになり、本日は全員一時解散。

 

その後はライと倉名は途中、璃奈と合流して一緒にストレイジ本部へと行くと、丁度薫子が調査から戻って来たところであり、司令室で薫子からの報告を一同は聞いていた。

 

「そんで? 調査の結果は?」

「やはり、ダランビアの破片が何者かに盗まれた形跡は無し。 破片が独りでに動いたっていう感じでもありませんし・・・・・・」

「今日ゼットが倒した怪獣の破片は・・・・・・?」

 

璃奈は薫子にならば今日ゼットが倒したネオダランビアの破片はどうなっているのだろうかと尋ねると、薫子は眉間にシワを寄せ、気むずかしそうな顔をする。

 

「それが、ネオダランビアの破片は回収出来なかったの。 どこ探しても見つからないって処理班からの連絡があって・・・・・・」

「やっぱり独りでに動いてるんじゃ・・・・・・過去の記録にもそういう怪獣いましたよね?」

「その話なら今朝、薫子としたよ」

 

ライは破片が見つからないのならやはり今朝倉名や薫子が話していたギアクーダのような話題のように、バラバラになってもその破片の1つ1つが自我を持ち、独りでに動くことのできる怪獣なのではないかと予想する。

 

「どちらにせよ、そういう類のもんであるのは間違いないかもしれねえな。 こりゃ、面倒なのが来たもんだ。 取りあえず、各自警戒を怠るなよ!」

「「了解!!」」

「・・・・・・了解」

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

その翌日、虹ヶ咲学園の生徒会室にて。

 

「本日は以上です」

『お疲れ様でした!』

 

そこでは生徒会の会議を丁度終えた生徒会役員達や菜々の姿があり、全員が帰る支度をしようとしたその時・・・・・・。

 

校内放送が学園中に鳴り響いた。

 

『普通科2年! 中川 菜々さん! 優木 せつ菜さん! 至急、西棟屋上まで来てください!』

「っ!」

 

校内放送は指定の場所まで菜々とせつ菜が一緒に来るようにというもので、当然ながらそのことに菜々は目を見開き、せつ菜と一緒に呼び出すことに彼女は憤りを感じずにはいられなかった。

 

「ちょっと、行って来ますね」

 

菜々は他の役員達にそれだけを言うと、席を立ち上がって生徒会室を出て行き、彼女は校内放送で指定された場所へと向かうのだった。

 

(ワザワザ、せつ菜と一緒に呼び出すなんて・・・・・・まさか、エマさん? いえ、朝香さんと考えた方が・・・・・・)

 

 

 

*

 

 

 

その頃、校内放送室では・・・・・・。

 

歩夢が「ありがとうねー」と放送部員の少女達にお礼を述べ、一緒に来ていたかすみが感謝の印として悪い笑みを見せながら少女達にコッペパンを渡していた。

 

「これ、お礼のブツです!」

 

それ賄賂って言うのでは?

 

 

 

 

*

 

 

 

そして、校内放送で呼び出された菜々は指定の場所に警戒しながらも辿り着くと、そこで待っていたのは侑とライの2人であり、てっきり元祖同好会メンバーか、もしくは果林だとばかり思っていた菜々はこの2人が待っていたことが意外だったのか、驚いたような表情を浮かべていた。

 

「っ、高咲 侑さん、それに、赤間さん・・・・・・」

「押忍、菜々ちゃん・・・・・・いや・・・・・・」

「こんにちわ。 せつ菜ちゃん」

 

侑の口から自分に向けられて「せつ菜」という名前が飛び出すと、菜々は又もや驚いた顔を見せるが、すぐに冷静さを取り戻し、すぐに彼女はきっとエマ達から聞いたのだろうという考えに辿り着く。

 

「・・・・・・エマさん達に聞いたんですね?」

「いや、もう殆ど答え菜々ちゃんが音楽室で言ってたけどね? まぁ、あん時はまだ確信が持てなかったけど」

「うん。 確かに私達はエマさん達から聞いたけど、音楽室で話してた時にそうじゃないかなーって思ったよね」

 

侑とライは互いに顔を見合わせながら「ねっ!」と言い合うと、再び2人は視線を菜々に戻す。

 

「それで、どういうつもりですか?」

 

どこか、機嫌が悪そうに侑とライに一体なんの用があって自分を呼び出したのかと訪ねると、唐突に侑とライは2人揃って頭を下げて「ごめんなさい!!」と謝ってきたのだ。

 

「な、なんですかいきなり!?」

 

突然2人に謝られたことに一体どうしたのだと菜々は激しく動揺し、戸惑う。

 

「昨日、何でスクールアイドル辞めちゃったのかなっとか言っちゃったから。 無神経過ぎたかなって」

「俺も、侑以上になんか無神経過ぎたこと言ってたかもしれないと思うと不安で不安で・・・・・・なんか凄くせつ菜ちゃん相手に気安く接してたし・・・・・・」

 

侑やライはまだ菜々がせつ菜であることを知る前だったとは言え、ズカズカとデリケートな部分に踏み込み過ぎたのでは無いかと思い・・・・・・。

 

特にライに至っては自分に取っては高嶺の花であるせつ菜相手にかなり気安く接してしまったことを気にしており、2人はその辺りのことで申し訳ないことをしたかもしれないと考え、菜々に謝罪したのだ。

 

「・・・・・・気にしてませんよ? 正体を隠していた私が悪いんですから。 赤間さんも、これまで通りの接し方で構いませんし」

 

菜々は侑やライが謝ってきた理由を聞くと「そんなこと気にしなくて良いのに」と2人の謝罪を受け入れ、そこで3者の間でしばらくの沈黙が走る。

 

「・・・・・・話が終わったのなら」

 

菜々はそれだけを言うと、その場を立ち去ろうとするが、それを侑が「まだあるの!」と手を彼女に伸ばしながら引き止める。

 

「なんですか・・・・・・?」

「私は、幻滅なんてしてないよ!」

「・・・・・・えっ?」

 

侑のその言葉に、目を見開く菜々。

 

それは侑やライは昨日のせつ菜の話をしたことで彼女に対し失望し、幻滅してしまったと思っていたからだ。

 

だから、侑のその言葉が、彼女には意外で仕方が無かった。

 

しかし、そんな侑の言葉を無視するかのように、空気を読まない発言をする男がここに1人。

 

「あっ、俺は幻滅はしたぞ?」

「・・・・・・(無言の腹パン」

「ゲハアア!!?」

 

直後、そんな空気を読まない男(ライ)の腹部に強烈な腹パンを侑が叩きこんだ。

 

「ぐぅ、彼女は瑠璃ではないってか・・・・・・」

(いやそれ、腹パンした方が言う台詞・・・・・・)

 

ライがそんなことを言い、菜々がそんなことを思っていると侑はそんな空気の読めない発言をするライに向かってカンカンに怒りながら彼を睨み付け、指差す。

 

「なんでそんな空気読めない発言するのライは!? っていうか幻滅してたの!? 全然そんな素振り無かったじゃんか!! せつ菜ちゃんに言いたかったことってそれ!!?」

「ゲホゲホッ・・・・・・! そうじゃなくて!! 最後まで話を聞け!!」

 

お腹を押さえながらなんとか立ち上がったライは一度「ゴホン」と咳払いした後、改めて自分が何が言いたいのかを話し始める。

 

「せつ菜ちゃんさ、『スクールアイドルになろうと思った事自体が、間違いだった』って音楽室で言ってたでしょ?」

「あっ、ハイ・・・・・・」

 

面と向かってそれもここ数日でちょっと仲良くなっていたライに「幻滅した」なんて言われたら一応、覚悟はしていたもののやはり大なり小なりショックなものはショックであり、菜々は少しばかり浮かない顔をしていた。

 

「俺が幻滅した部分って、そこだけだよ。 そこだけが、凄くムカついた」

「・・・・・・えっ?」

「だって、そうでしょ? 君がスクールアイドルをやること自体が間違いだったのなら、君を『大好き』になった俺の気持ちだって、間違いってるってことになるだろ!?」

「はっ、えっ!?」

(あれ? 何気に今、ライってせつ菜ちゃんに告白した?)

 

ライのその言葉を受けて、菜々は顔を真っ赤になり、侑は「この状況で告白するとかマジかこいつ」みたいな顔をしていた。

 

(歩夢の時みたいに面倒なことにならなければ良いけど)

 

だが、別にライは菜々に対して愛の告白をしている訳では無い。

 

「俺だけじゃない!! 侑だって、他の君のファンの人達だって!! 君がそんなことを言ったら、君を『大好き』になってファンになった人達の気持ちだって、間違いだってことになるんじゃないのか!?」

 

ライに力強くそう言われたことで、菜々ははっとなり、彼女はライのその言葉に何も言い返すことが出来なかった。

 

「そのことだけは、俺は絶対に認めないし、他の誰にもそんなこと認めさせない。 君自身にも!」

「うん。 そうだね、ライの言う通り。 だから私達は、スクールアイドルとして同好会に戻って欲しいんだ」

 

そんな侑の勧誘を受けた次の瞬間、菜々は拳を握りしめ、彼女は声を荒げる。

 

「何を・・・・・・『スクールアイドルをやるのは間違いだった』という言葉は撤回しましょう!! ですが!! あなた達ももう全部分かっているんでしょう!? 私が同好会にいたら、みんなの為にならないんです!! 私がいたら!! 『ラブライブ』に出られないんですよ!!?」

「「だったら、ラブライブになんて出なくて良い!!!!」」

 

嘆くように叫ぶ菜々に、ライと侑の2人が同時にそう言い放つと、菜々はそれを受けて唖然とした顔を浮かべる。

 

「あっ、いや、ラブライブがどうだからとかじゃなくって・・・・・・。 私は、せつ菜ちゃんが幸せになれないのが嫌なだけ。 ラブライブみたいな最高のステージじゃなくて良いんだよ! せつ菜ちゃんの歌が聴ければ、十分なんだ!」

「そうだよ。 それになにより、ラブライブなんていらないくらい・・・・・・せつ菜ちゃんは元より最高だしな!」

 

ライと侑が互いに頷き合うと、2人は菜々に歩み寄る。

 

「スクールアイドルがいて・・・・・・」

「ファンがいる」

「それで良いんじゃ無い?」

 

ライと侑が同時に菜々に笑顔を向けると、それに菜々は訳が分からないといった顔を見せ、彼女は困惑するしかなかった。

 

「どうして、こんな私に・・・・・・?」

「言ったでしょ? 『大好き』だって!! こんなに好きにさせたのは、せつ菜ちゃんだよ!」

「『大好き』だから、君が悲しんだ顔のまま、スクールアイドルを辞めて欲しくないんだ」

 

侑とライは満面の笑顔で、菜々にそう言い放つと、彼女はそれに照れ臭くなったのか頬を赤くする。

 

「っ、あなた達みたいな人は、初めてです・・・・・・。 期待されるのは、嫌いじゃありません。 ですが、本当に良いんですか? 私の本当のワガママを、大好きを貫いても、良いんですか?」

「勿論!!」

「当たり前じゃん!!」

 

侑は笑顔で、ライはサムズアップで菜々の問いかけにそう応えると、その瞬間、彼女は自分の心の中が軽くなるのを感じた。

 

「・・・・・・ふぅ、分かっているんですか?」

「「んっ?」」

「あなた達は、自分が思っている以上に・・・・・・凄いことを言ったんですからね!」

 

菜々はそう言いながら数歩前に出て、棟の中央辺りまで歩いて行くと・・・・・・彼女は三つ編みを解いてメガネを外して仕舞い込み、菜々は侑やライへの方へと振り返って右拳を前に突き出す。

 

「これは、始まりの歌です!!」

 

そうして中川 菜々・・・・・・否、「優木 せつ菜」は前を向くと彼女はそこでライブを行った。

 

復活したそんな彼女が歌う曲は・・・・・・「DIVE!」

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・! 虹ヶ咲スクールアイドル同好会!! 優木 せつ菜でした!!」

 

せつ菜の行ったそのゲリラライブは多くの生徒に目撃されており、あちこちの至るところで彼女に対して大きな歓声が上がっており、その中には璃奈や愛、果林の姿もあり、特に璃奈や愛はせつ菜のその姿にとても圧巻されているようだった。

 

「ううううぅぅぅ・・・・・・!! おおおおぉぉぉ!! や゛っ゛ばり゛、や゛っ゛ばり゛せ゛つ゛な゛ちゃ゛ざい゛ごう゛う゛う゛ぅ゛!!」

 

また、せつ菜の生ライブを間近で見れたことにライは滝のような涙を流し、小汚い声をあげながらそのことに感動し、泣き崩れ・・・・・・。

 

侑はライブを終えたせつ菜に向かって勢いよく抱きついたのだ。

 

「せつ菜ちゃん!!」

「わああ!!?」

「もう、大好き!!」

 

そのまませつ菜は尻餅を突いてしまうが、そのことに彼女はなんだかおかしくなって思わず笑ってしまうのだった。

 

「ふふ、あははは・・・・・・!! ありがとう」

 

せつ菜はするとそこへ丁度、今まで3人の様子を影からこっそりと見守っていた歩夢、かすみ、彼方、エマ、しずく、倉名が現れ、かすみは怪訝な表情をしながらしゃがみ込む。

 

「先輩、いつまでくっついてるんですか?」

「やっぱり凄いねー」

 

またそこで歩夢が改めてせつ菜の凄さを再確認すると、彼女は侑に手を差し伸べ、侑もその手を掴んで立ち上がる。

 

「皆さん、見ていたんですか?」

「・・・・・・お帰りなさいっ!」

 

エマは同好会のメンバーを代表してせつ菜が同好会に帰ってきたことを歓迎し、倉名はそんなせつ菜の額を一差し指で軽く小突く。

 

「あたっ!?」

「ったく、俺に相談も無しに勝手にスクールアイドルやめて、同好会無くしてなんとか戻って来たと思ったら・・・・・・ゲリラライブとかやりたい放題にも程があるぞ?」

 

倉名にそう言われてせつ菜は「す、すいません」と縮こまって反省し、色々やらかしてしまったことを倉名や他の同好会メンバーに謝罪するのだった。

 

「まっ、戻って来たんだし、今回は不問にしてやるよ。 つーかライ! お前は何時まで泣いてんだ!?」

「だっで、だっでえ゛え゛え゛え゛!!」

 

ライに取ってただでさえ優木 せつ菜が復活したことは嬉しいのことだ。

 

しかも生でそれもこんなに間近で初めて彼女のライブを観ることが出来たのだから彼女の大ファンであるライにとって、これほど嬉しいことはないし、号泣してしまうのは仕方のないことだろう。

 

それに何より、ライに取って1番嬉しいことは、「せつ菜が自分の笑顔を取り戻してくれた」ということである。

 

彼女の笑顔を見られたことが、また彼女が笑ってくれたことが、ライにとって何よりも嬉しいことだった。

 

「でも、少し盛り上がりすぎかも」

 

そこでしずくがせつ菜のゲリラライブが大盛況で予想以上に彼女のライブが生徒達の間で盛り上がっていることに危機感を感じ、見つかったら先生に怒られてしまうのではないかとかすみが不安を口にする。

 

「先生に見つかったら怒られちゃいますよ?」

「どうする~? 生徒会長~?」

 

間延びした声で彼方がどうするかせつ菜に尋ねると、彼女はニッとした笑みを浮かべて見せる。

 

「今の私は、優木 せつ菜ですよ! 見つかる前に、退散しましょう!!」

『おー!!』

「俺も異論はねえ」

 

せつ菜はさっさと撤退してしまおうとみんなに意見を出すと、それにコーチである倉名含めた全員が同意し、一同はその場からそそくさと逃げ出すのだった。

 

いや、ちゃんと注意して止めろコーチ。

 

「ほら! 何時まで泣いてるんですか赤間さ・・・・・・ライさん!! あなたも一緒に!」

「はぇ!?」

 

未だにグズグズ泣いていたライの手首をせつ菜が掴むと、ライはそのことと+急に名字でなく、下の名前で呼ばれたことに二重の意味で動揺するが、有無は言わせないとばかりにせつ菜に強引に腕を引っ張られ、ライを含め、同好会メンバーは全員そこから立ち去ろうとするのだが・・・・・・。

 

「グアアアアアアアア!!!!!」

 

その時、先日ゼットが倒した筈の「ネオダランビア」が目つきが鋭くなり、茶色だった体色が若干黒っぽくなった「超合成獣 ネオダランビアⅡ」として又もや唐突に復活して街に現れたのだ。

 

「怪獣!? ってまたアイツか!!」

 

ネオダランビアⅡの出現を受け、ライはうんざりとした様子を見せ、また倉名はネオダランビアⅡの姿を見るや否や「チッ」と軽く舌打ちする。

 

「ったく、せつ菜が折角盛り上げてくれたのに、それを台無しにするように出てきやがって。 ライ、こいつ等は俺が安全なところまで避難させておくから、お前は他の生徒達を避難させろ。 薫子にも俺から連絡入れておく」

「押忍!! みんなのこと、お願いします!!」

 

ライは倉名に返事を返すと、すぐさま隊長に言われた通り他の生徒達の避難活動を行う為にその場を離れて走り去るのだが・・・・・・みんなからある程度離れた時、ライはあることに気付いた。

 

それはまたネオダランビアⅡは前回の時と同様、今回もまた何かを探しているかのような動作を見せていることと、ネオダランビアⅡは真っ直ぐこちらに向かって歩いて来ているということ。

 

「アイツ、こっちに向かって来てる!!」

 

そのことに気付いたライは、セブンガーの到着を待っている暇は無いと考え、人気のない場所へと向かうと「ウルトラゼットライザー」を取り出し、トリガーを押す。

 

「行きますよ、ゼットさん!!」

 

すると光の扉である「ヒーローズゲート」が開くと、ライはその中へと飛び込み、「ウルトラアクセスカード」を手に取り、ゼットライザーの中央に装填。

 

『ライ、アクセスグランテッド!』

 

腰のメダルホルダーを開き、ライはそこから3枚のメダルを取り出す。

 

「宇宙拳法、秘伝の神業!!」

 

ライはゼロ、セブン、レオのメダルをそれぞれライザーのスリットにセット。

 

「ゼロ師匠!! セブン師匠!! レオ師匠!!」

 

ブレード部分をスライドさせ、3枚のメダルを読み込ませる。

 

『ゼロ・セブン・レオ!』

「押忍!!」

 

するとライの後ろに「ウルトラマンゼット オリジナル」が現れ、ゼットは両腕を広げる。

 

『ご唱和ください! 我の名を! ウルトラマンゼーット!!』

「ウルトラマンゼエエエエエット!!!!」

 

最後にライザーを掲げてトリガーをもう1度押すと眩い光が走る。

 

するとメダルに描かれた戦士、「ウルトラマンゼロ」「ウルトラセブン」「ウルトラマンレオ」の3人が空間を飛び交う。

 

『ハアッ!』

『デュア!!』

『イヤァーッ!!』

 

するとライは上半身は青、下半身は赤で身体に胸部と両肩に銀色の鎧のようなプロテクターを装着し、頭部のトサカのような部分が3つある「ウルトラマンゼット アルファエッジ」へと変身を完了させる。 

 

『ウルトラマンゼット! アルファエッジ!』

『シェア!!』

 

ゼットへと変身を完了させたライはネオダランビアⅡの進行を食い止める為に立ち塞がるようにネオダランビアⅡの前に現れる。

 

「あっ、皆さん皆さん!! ウルトラマンゼットですよ!! いやぁ~、やっぱりカッコイイですよね!!」

 

ゼットが登場すると、倉名の誘導でみんなと一緒に避難していたせつ菜が立ち止まってしまい、ゼットの姿を見るや否や興奮した様子を見せる。

 

「バカ! それどころじゃねえだろ! さっさと避難するぞ!!」

「あー! あー! うぅ、そうなんですけど、そうなんですけどぉ!」

 

倉名に首根っこを掴まれ引っ張られたことでゼットに釘付けのせつ菜を引っぺがし、そんなせつ菜の姿に苦笑いする歩夢達と共に、再び避難場所を目指して一同は走る。

 

そして、ゼットはと言うと、ファイティングポーズを構えながらネオダランビアⅡに突っ込んでいき、拳をネオダランビアⅡに向けて放っているところだった。

 

『シュア!!』

 

しかしネオダランビアⅡは以前よりも強化された「亜空間バリア」を張り巡らせることで攻撃をガード。

 

それでも何度も拳を振るってネオダランビアⅡの亜空間バリアを攻撃するが、バリアは一向に割ることが出来ず、一瞬の隙を突いてバリアを解除すると同時に口から放つ「赤色破壊光線」を発射し、ゼットは大きく怯む。

 

『ジュア!!?』

「ガアアアアア!!!!」

 

続けて腹這いの状態で地面を滑走して繰り出す体当たり攻撃をネオダランビアⅡはゼットに繰り出すが、ゼットはジャンプして攻撃を回避してネオダランビアⅡの背後に回り込むと両手の指先を頭部ブレードに当て、Z字形の光刃を素早く投擲する「ゼットスラッガー」を振り返りざまに後ろががら空きのネオダランビアⅡに繰り出すが、ネオダランビアⅡは後ろに亜空間バリアを張ることでゼットスラッガーを防いでしまったのだ。

 

『嘘だろ!? こいつ後ろ向いたまま攻撃防ぎやがった!』

 

すると起き上がったネオダランビアⅡはゼットの方へと身体を向けて右腕を触手のように伸ばし相手に巻き付けてゼットの身体を拘束し、電流を流し始める。

 

『ウアアアッ!? この!! ゼスティウムメ・・・・・・!!』

 

ゼットはなんとかこの拘束を解こうと額のビームランプから超高熱の破壊光線「ゼスティウムメーザー」を放とうとするのだが、それよりも早く、ネオダランビアⅡがゼットの顔目がけて赤色破壊光線を撃ち込んだことでゼットの攻撃を阻む。

 

『グアアアッ!? こいつ、顔に・・・・・・ウルトラ痛てぇ・・・・・・!』

 

そしてネオダランビアⅡは触手になった右腕を大きく振るうことでゼットを投げ飛ばし、投げ飛ばされたゼットはビルに激突しながら倒れ込んでしまう。

 

『ウアアアア!!?』

『ぐぅ! ゼットさん!! こいつ、なんか俺達の動きを読んでませんか!?』

『どうやら、そうっぽいな・・・・・・! だったら、荒々しい戦い方で動きが読みづらいエプシロンワイルドで行くでありますよ! ライ!!』

 

ゼットにそう言われ、「押忍!!」とライが応えるとライはメダルを入れ替えて「エプシロンワイルド」にウルトラフュージョン。

 

『ウルトラマンゼット! エプシロンワイルド!』

『ワイルドに吠えるぜ!!』

『ウルアァ!!』

 

ゼットは一瞬、野獣のような声をあげると同時にネオダランビアⅡにすかさず詰めより、顎に膝蹴りを叩きこむ。

 

「ガアア!!?」

 

それにネオダランビアⅡは負けじと口から赤色破壊光線を放つが、ゼットは素早く躱してネオダランビアⅡの背後に回り込むと、光の鉤爪のような武器「ゼスティウムクロー」を出現させ、ネオダランビアⅡの背中を斬りつける。

 

『ゼスティウムクロー!!』

「グルゥ!?」

 

それを受けて怯むネオダランビアⅡだが、右腕を触手のように伸ばして鞭のようにして振り返りざまにゼットに振るい、ゼットに鞭となった腕を叩きつけるとゼットは大きく後退る。

 

「ガアアア!!」

『グウウ!?』

 

さらに続けざまに放たれた赤色破壊光線が撃ち込まれたことでゼットは片膝を突き、そこを狙ってネオダランビアⅡは腹這いの状態で地面を滑走して繰り出す体当たり攻撃を繰り出すが、なんとか痛みを堪えて立ち上がったゼットは両足にエネルギーを溜め、そのエネルギーを一気に放出することで一時的に加速し、一気にすれ違いざまに相手をクローで切り裂く「ゼスティウムソニック」をネオダランビアⅡに繰り出す。

 

『ゼスティウムソニック!!』

「グゥ、ガアア・・・・・・!!? グルアアアア!!!!?」

 

それによって身体を横一閃に切り裂かれたネオダランビアⅡは粉々に粉砕され、無事に倒されたのだが・・・・・・。

 

「グルアアアアア!!!!」

『『なに!?』』

 

ゼットによって粉々にされた直後、粉々に散った身体が元に戻り、さらにネオダランビアⅡはそこからまた新たに姿を変え、目が5つに増え胸に器官が発生し、腕の指が5本になり背中に4本の大きなコイルが生えた「超合成獣 サンダーダランビア」として復活したのだ。

 

『どうせ復活するだろうとは思ってたけど、コイツ、復活する時間が早まってる!!』

 

既に活動限界を知らせるゼットのカラータイマーも点滅を始めており、ライもゼットも予想以上のダランビアの復活の速さに驚愕し、動揺を隠せないでいた。

 

そんな2人の動揺する隙を突いて、サンダーダランビアはそのコイルから電撃を放ち、その直撃を受けたゼットは身体中に電気が走り、身体中から火花が散って片膝を突いてしまう。

 

『グアアア!!?』

「グルルル・・・・・・!!」

『こんの!! ライ!! もう1度ゼスティウムソニックだ!!』

『押忍!!』

 

なんとか立ち上がったゼットは再びゼスティウムクローを両手に構え、両足にエネルギーを溜め、そのエネルギーを一気に放出することで一時的に加速してサンダーダランビアに詰めより、クローを振るおうとするのだが・・・・・・。

 

「ガアアア!!!!」

 

クローが振り下ろされる直前、サンダーダランビアは背中のコイルから全包囲に向かって電撃を放つことで電撃をゼットの身体に喰らわせることに成功し、それを受けたゼットは吹き飛ばされ、地面に倒れ込んでしまう。

 

『グゥ・・・・・・! ジェヤァ!!』

 

しかし、それでもどうにか立ち上がったゼットはジャンプしてかかと落としをサンダーダランビアに繰り出すが、サンダーダランビアはⅡの時よりもさらに強化された「亜空間バリア」を張り巡らせることでゼットのかかと落としを防ぎ、さらにコイルから電撃を発することでゼットに電撃を直撃させ、引き離すことに成功する。

 

『ウアアッ!!?』

『さっきと違って全然攻撃が通じない!!』

『また動きを先読みされてるんだ・・・・・・!』

 

ライの言う通り、サンダーダランビアは完全にエプシロンワイルドの動き方を把握していた為に、先ほどと打って変わり、エプシロンワイルドの攻撃が全く通じなくなっていたのだ。

 

一度戦った相手の動きは完全に把握できる。

 

その「学習能力の高さ」がこのダランビアの最大の武器だった。

 

だから、ネオダランビアはダランビアの時に戦ったセブンガーの攻撃が全く通用しなかった。

 

だから、アルファエッジの攻撃はネオダランビアの時に戦ったネオダランビアⅡには通用しなかった。

 

そして、エプシロンワイルドの攻撃も、同じ理由でサンダーダランビアには通用しなかったのだ。

 

しかもこのダランビアの能力はそれだけではなく、この学習能力の高さに加えて倒されれば倒されるほど復活する時間が早まり、尚且つ復活する度にパワーアップするという非常に厄介な能力を持っていた。

 

『どうすれば・・・・・・!』

「グルアアアアア!!!!」

 

そんなサンダーダランビアをどう攻略すれば良いのか、それを考え込んでしまったことで大きな隙がゼットに出来てしまい、そこを狙ってサンダーダランビアがゼットに突進を繰り出して来たのだ。

 

『しまっ、ぐあああああ!!!?』

 

地面に倒れ込むゼットに、追い打ちをかけようとするサンダーダランビアだが、次の瞬間・・・・・・空中から振って来たセブンガーのタックルを喰らったことで吹き飛び、サンダーダランビアをゼットから引き離すとセブンガーはゼットの方へと振り返り、手を差し伸べる。

 

「私も戦うよ、ゼット!!」

『薫子先輩!』

 

ゼットはその手を掴んで立ち上がると、薫子の言葉にゼットは頷き、ゼットは一度アルファエッジの姿に戻ってゼットとセブンガーは2体同時にサンダーダランビアに飛びかかる。

 

しかし、サンダーダランビアは掴みかかったゼットとセブンガーに対し、電撃を発生させることでゼットとセブンガーに感電させ、2体は身体から火花を散らしダメージを受ける。

 

「きゃあああ!!?」

『ウアアアッ!!?』

 

さらにサンダーダランビアは右腕を伸ばしてゼットの首に巻き付けて拘束すると、電撃をゼットに流しつつセブンガーの方へと投げ飛ばし、2体を激突させ、ゼットとセブンガーの2体はその場に倒れ込んでしまう。

 

『ぐぅ、ウルトラ厄介な野郎だぜ・・・・・・コイツ・・・・・・!』

 

 

 

*

 

 

 

「おい、璃奈。 状況どうなってる?」

「セブンガーも、ゼットも、あの怪獣に苦戦してます」

 

一方、倉名はせつ菜達を引き連れて避難所に来ており、そこに丁度たまたま偶然、璃奈と愛も一緒の避難所に来ていた為に、倉名は璃奈から現状どうなっているのかを尋ねると、彼女は自分の持っているノートパソコンの画面を倉名に見せながら、戦況が著しくないことを報告していた。

 

倉名がパソコンの画面を覗くと、確かに璃奈の言う通りセブンガーもゼットも苦戦している姿が映し出されており、そのことに倉名は眉間にシワを寄せる。

 

「本当に面倒くせぇ怪獣だな、今回は」

「こういう何回も再生する奴って、身体のどこかにコアみたいなやつが存在するんで、それを破壊すればこの怪獣倒せるんじゃないですかね!?」

 

そこでいつの間にか倉名の元にやってきていたせつ菜がずいっと顔を出して璃奈のノートパソコンを覗き込むと、彼女はサンダーダランビアには身体の中のどこかにあるコアのようなものがあって、それが弱点なのではないかと予想し、彼女はそう意見を述べて来たのだ。

 

「あっ、あなたさっきライブやってた・・・・・・」

「ホントだ! さっきのライブ、りなりーと一緒に愛さんも観たよー! 凄かった!!」

「ライブ観てくれたんですね! ありがとうございます! ってそれより今は、怪獣の弱点です弱点! 天王寺 璃奈さんならそういうの調べられるんじゃ無いですか?」

 

璃奈や愛からライブの感想を言われて照れ笑いを見せるせつ菜だったが、それよりも今優先すべきはあの怪獣について調べることであり、璃奈は早速せつ菜に言われた通り、サンダーダランビアの内部構造を調べる。

 

「・・・・・・発見したよ。 あの怪獣、身体の殆どは岩石で出来てるけど、一箇所にだけ不自然な部分を発見した。 多分、それがあなたの言っていた通りの、コアに当たる部分だと思う」

 

璃奈はサンダーダランビアの内部構造をすぐさま調べ、せつ菜の言う通りサンダーダランビアの内部にはコアのようなものがあることを突き止めることが出来たのだが、2つほど問題があった。

 

1つは既にセブンガー、エプシロンワイルド、アルファエッジの攻撃がサンダーダランビアに殆ど通用しなくなってしまっていること。

 

もう1つはそのサンダーダランビアのコアはビー玉ほど小さく、例えもう1度サンダーダランビアを粉々に粉砕したとしても今のダランビアの再生速度を考えると粉々にした直後にコアを破壊する必要があるということである。

 

「もう少し早く、私がこのことに気づけていれば・・・・・・」

 

そのことに対し、もっと早く自分が気づけていればと何時も通り無表情ではあるものの、落ち込んだ様子を見せる璃奈。

 

そんな璃奈の頭をポンポンッと軽く叩き、倉名が励ましの言葉をかける。

 

「隊長である俺も気づけなかったんだ。 お前だけのせいじゃねえ」

「でも・・・・・・」

「せめてゼットにもう1つ、新しいフォームがあれば対応できたかもしれないんですが・・・・・・」

 

既にアルファエッジとエプシロンワイルド、セブンガーが事実上サンダーダランビアに攻略されている以上対抗するにはゼットがそれ以外のウルトラフュージョンを使うしかない。

 

しかし、今ライが所持しているメダルはゼロ、セブン、レオ、響、夕立、友奈の6枚と、現状ウルトラフュージョンには使えない3枚のメダルのみ。

 

つまり、打つ手は無いに等しかった。

 

「あれ? お前なんか、ポケットがちかちか光ってるぞ?」

「えっ!?」

 

しかし、そんな時・・・・・・せつ菜の服のポケットから光が溢れていることに倉名が気づき、そのことを指摘するとせつ菜はポケットから1枚の刀が描かれたメダルを取りだす。

 

(あの時拾った・・・・・・メダル?)

 

どうして急にメダルが光り出したのか、せつ菜は分からず、困惑するのだが・・・・・・このメダルをゼットに届けなければならない。

 

これがゼットの力になる。

 

何故か分からないが、直感的に彼女はそう感じた。

 

だから、せつ菜はメダルを握りしめて避難所から飛び出したのだ。

 

「せつ菜ちゃん!?」

「おい!! 待てせつ菜!!」

 

いきなり外に飛び出して行ったせつ菜に驚きの声をあげる侑。

 

そんな彼女を倉名は急いで追いかけるのだった。

 

 

 

 

*

 

 

 

 

『アルファバーンキック!!』

 

右足に炎を宿した跳び蹴り、「アルファバーンキック」をゼットはサンダーダランビアに繰り出すが、サンダーダランビアはそれを受け流し、ゼットの後ろに回り込むと電撃を背中に撃ち込む。

 

『ウアアッ!?』

 

そこへ今度はセブンガーが右拳をサンダーダランビアに振るって来るが、サンダーダランビアは左手でセブンガーの拳を受け止めると、右手をロケットの如く勢いよく伸ばすことでセブンガーを殴り飛ばし、自身から引き離す。

 

「うわあ!!? こんのぉ・・・・・・!!」

『チクショウ、どうすりゃ良いんだ・・・・・・!』

 

攻撃を完全に封殺し、倒しても復活し、その度にパワーアップを続けるサンダーダランビアをどうすれば倒すことが出来るのか、そのことにゼットやライ、薫子は頭を悩ませ、唇を噛み締めた。

 

「ウルトラマンゼットーーーーーー!!!!!」

 

しかし、そんな時・・・・・・ゼットの名を大きく呼ぶ声が聞こえ、ゼットが声のした方に顔を向けるとそこにはこちらに向かって手をぶんぶん振るせつ菜の姿があった。

 

『せつ菜ちゃん!?』

「その怪獣の弱点は、身体の中のどこかにあるコアです!! それを破壊すれば、恐らくはその怪獣はもう再生できません!! ただ、そのコアはビー玉みたいに物凄く小さいそうです!!」

 

せつ菜のその説明を受け、ライは「そういうことか!」と納得するが・・・・・・先ほども述べたように既にサンダーダランビアにはアルファエッジもエプシロンワイルドやセブンガーの動きも完全に把握されてしまっている。

 

だからコアを破壊するにはもう1度ダランビアの身体を粉々に砕く必要がある、それも再生される前に。

 

時間も無い以上、どうコアを破壊するかライやゼットは考え込むが・・・・・・その時、再びせつ菜からの声が届いた。

 

「これ、多分ゼットの物ですよね!? お願い、受け取ってくださーーーーーい!!!!」

 

せつ菜がウルトラメダルの1枚を取り出すと、彼女は力いっぱいそれをゼットの方へと放り投げ、ゼットはそのメダルを右手で掴むとメダルはゼットのインナースペース内にいるライの手に渡る。

 

『これって、ウルトラメダル!? せつ菜ちゃんが持ってたのか!?』

『おぉ、これは翼さんのメダル! よし、これで新しいウルトラフュージョンが使えるぞ! ライ! 翼さん、菊月さん、夏凜さんのメダルでウルトラフュージョンだ!』

『えっ、果林?』

『いや、ライの知り合いの方じゃなくて・・・・・・』

 

一瞬、知っている名前があったので少し驚いたライだったが、たまたま字が違うだけの同じ名前の人物がいただけだとゼットから教えられ、納得したライは早速メダルホルダーから新たなメダルを2枚取り出す。

 

『鋭く輝く、刃の閃光!!』

 

ライはゼットライザーのスリットに新たな3枚のメダルをセット。

 

『翼さん!! 菊月さん!! 夏凜さん!!』

『翼・菊月・夏凜!』

 

ブレード部分をスライドさせ、メダルをライはゼットライザーに読み込ませる。

 

するとライの後ろに「ウルトラマンゼット オリジナル」が現れ、ゼットは両腕を広げる。

 

『ご唱和ください! 我の名を! ウルトラマンゼーット!!』

『ウルトラマンゼエエエエエット!!!!』

 

最後にライザーを掲げてトリガーをもう1度押すと眩い光が走り、3枚のメダルが空間を飛び交う。

 

『ウルトラマンゼット! オメガブレード!!』

 

そしてゼットは姿を変え、ゼット・オリジナルの青かった部分と黒い部分が水色に変化、さらに赤い腰マントが装着され、胸部と肩には黒い鎧のようなものが装着され、胸部には三日月のような模様が入った姿・・・・・・「ウルトラマンゼット オメガブレード」へと変身したのだ。

 

「おおおおお!!!! 新フォームキター!! やっぱり私の予想は当たってましたか!!」

 

そんな新たな姿となったゼットに、興奮を抑えられないせつ菜。

 

「やっと見つけたぞ、コノヤロー」

 

そこへ、彼女を追いかけて倉名がやってくると、倉名は呆れた顔を浮かべながら、せつ菜に対して軽いデコピンを喰らわす。

 

「あたっ!?」

「あのなぁ、弱点教えるだけなら璃奈を通して、薫子からゼットに伝えられただろ?」

「あー、確かにそうだったかもしれませんね・・・・・・。 でも、ゼットに届けないといけないものもありましたし・・・・・・」

「兎に角だ!! 危険なんだから二度とこういうことはないように!! 分かったな!?」

「・・・・・・はい。 すいませんでした・・・・・・」

 

せつ菜は倉名から危険なんだから勝手に飛び出すなと強く注意され、彼女は深く反省するのだった。

 

挿入歌「ご唱和ください 我の名を!」

 

『クールに侍! シンケンに行きましょうゼットさん!!』

『あぁ、ゼスティウムブレード・・・・・・!』

 

一方でゼットは右手に光の剣、「ゼスティウムブレード」を出現させ、それを構えてジッと立つ。

 

「グルルル・・・・・・グルアアアアア!!!!」

 

そんなゼットに対し、サンダーダランビアはコイルから電撃を放つが、ゼットはブレードで電撃を受け止めるとそのままサンダーダランビアの放った電撃は反射されて跳ね返り、自身の電撃を受けるサンダーダランビア。

 

「ギシャアアア!!?」

 

ならばと腹這いの状態で地面を滑走して繰り出す体当たり攻撃を繰り出すサンダーダランビアだが、ゼットはすれ違いざまにブレードを振るい、サンダーダランビアの背中の右側のコイルを2つ破壊する。

 

『ジィヤァ!!』

「ガアアアア!!!!?」

「隙ありーーーーー!!!!」

 

そこへ今度はゼットによる攻撃でダメージを受けた隙を狙い、セブンガーがサンダーダランビアの背中に飛び乗ると左側にあった残りのサンダーダランビアのコイルを殴って破壊、これによってサンダーダランビアは電撃を発生させることが出来なくなる。

 

「ガアアアア!!!!?」

 

サンダーダランビアは身体を大きく揺らしてどうにかセブンガーをなんとか払いのけるとゼットに向かって右手を触手のように伸ばして攻撃を仕掛けるが、ゼットはそれをヒラリと躱すとそのままブレードを振るってサンダーダランビアの右手を切断。

 

『ゼア!!』

「グウウウ!!?」

 

そして、ゼットはブレードを構えゼットとインナースペース内のライは目を閉じ、前回の戦いで手に入れた心眼と、オメガブレード特有の能力である鋭く研ぎ澄まされた「超感覚」を同時に使うことでサンダーダランビアのコアに当たる部分を探す。

 

『『・・・・・・』』

「グアアアアアア!!!!」

 

そんなゼットに対し、攻撃手段を次々破壊されても尚も立ち向かってくるサンダーダランビア。

 

『そこだ・・・・・・!』

 

サンダーダランビアが左腕で殴りかかって来る直前、ゼットは殴られるよりも早く胸部の中央部分を突き刺すと中にあったコア・・・・・・「宇宙球体コアスフィア」ごと貫く。

 

「グギャアアアアアアア!!!!!?」

『これでお前は、もう再生できない』

 

ブレードを引き抜くと、サンダーダランビアは身体中から火花を散らし、ゼットはブレードを構え、それを十時に振るって放つ光刃「ゼスティウムスラッシュ」を放つ。

 

『ゼスティウムスラッシュ・・・・・・!』

「グアアアアアアア!!!!!?」

 

ゼスティウムスラッシュの直撃を受けたサンダーダランビアは身体が十時に切り裂かれ、火花を散らしながら前のめりに倒れ込み、爆発するのだった。

 

『・・・・・・再生、しませんよね?』

『コアはちゃんと破壊した。 恐らく、大丈夫だろう』

 

サンダーダランビアが完全に破壊されたことを確認すると、ゼットはブレードを仕舞い、空へとZ字を描きながら飛び去るのだった。

 

「わー!! やりましたよ倉名先生! やはり、最後はヒーローが勝つんですね!!」

「分かった! 分かったから揺らすなせつ菜!!」

 

一方でせつ菜はゼットが怪獣を倒したことを喜び、その嬉しさのあまり彼女は倉名の両肩を掴んでガクガクと激しく揺らしていた。

 

(しかし、ダランビアは一体何を探していたんだろうな・・・・・・?)

 

倉名はせつ菜を引き離し、彼はダランビアは結局、一体何を探していたのかと疑問を抱いていると・・・・・・。

 

「おーい!! 隊長ー!! せつ菜ちゃーん!!」

 

そこへ丁度こちらに向かって手を振りながら向かって来るライの姿があり、ライが2人の元に辿り着くと、彼はせつ菜に頭を下げてお礼を述べる。

 

「ありがとう、せつ菜ちゃん!! おかげで助かったよ!」

「・・・・・・えっ?」

 

ライは先ほどせつ菜がサンダーダランビアの弱点と新しいメダルをくれたことに対してお礼を言ったのだろうが、せつ菜としては何かお礼を言われるようなことをしただろうかと疑問に思い、それと同時にライもハッとした顔を浮かべる。

 

「あっ、いや、その・・・・・・だから・・・・・・! 何時もありがとうってことだよ!」

「えっと、それはどういう・・・・・・」

「俺、ストレイジの仕事とかで、失敗とかして落ち込んだりした時にいつもせつ菜ちゃんの歌を聴いたり、ライブ観たりしてたから。 それを聴いたり、観たりする度に俺、すっごく元気貰ってたから! だから、何時もありがとうってこと・・・・・・」

 

ライとしてはそれは誤魔化しで言った言葉でもあったが、同時にその言葉は本心でもあった。

 

そして、そんなライの言葉を聞いたせつ菜も、どこか、嬉しそうな顔を浮かべる。

 

「私の歌で、そんな風に誰かが元気になってくれるなら・・・・・・それなら私も、とっても嬉しいです! 何時も応援、ありがとうライさん!」

 

そう満面の笑顔で自分に笑いかけるせつ菜の姿を見て、ライは・・・・・・。

 

(可愛すぎて死にそう・・・・・・)

 

と内心悶えるのだった。

 

(こいつ等、俺の存在忘れてやがんな・・・・・・)

 

そしてライとせつ菜から存在を忘れられている倉名だった。

 

 

 

*

 

 

 

それと同じ頃・・・・・・。

 

「コシ、カレカレータ・・・・・・。 まだ色々不足してる時に、面倒な奴に目をつけられたと思ったが・・・・・・これでしばらくは問題は無いだろう」

 

ゼットと戦いを見守っていた寄生生物セレブロに取り憑かれたアイラは小さくそう呟くと、不敵な笑みを浮かべながらその場を去って行くのだった。




オマケの補足説明的なやつ。


ライ
「そう言えば隊長ってせつ菜ちゃんと菜々ちゃんが同一人物って知らなかったんですか?」


倉名
「んっ~? さぁ、どうだろうなぁ? そもそもその辺あんまり俺、興味ないし」


ライ
「えぇ・・・・・・」



*



ライ
「あっ、せつ菜ちゃん結局ミニプラ俺から定価で買う?」


せつ菜
「いえ、やはりこれは自分の手で勝利を掴み取りたいので、自分で普通に買いに行きます!!」



*



菊月
「オメガブレードって剣士形態なんだろ? 翼さんと夏凜さんがいるのは分かるんだけどなんで私が組み合わせに入ってるんだ? 私、剣なんて使わないぞ。 姉さん達みたいにモンスフュージョンも披露してないし」


ゼット
『菊月さんは、ツッコミのキレが良いからでございますよ」


菊月
「そういう理由!? 納得できるか!?」

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