世界最強の剣士の弟子   作:火神零次

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一年生編

 破軍学園の入学試験を無事に合格することが出来た爛は、自分より劣った存在と出会った。

 自分が『魔術』に関しての知識はあれど、才能は平凡以下であることは自覚していたが、まさか自分よりも劣っている存在がいるとは思ってもいなかった。

 

「宮坂くんって、あの《天剣》の息子さん?」

「そうだ。それと『宮坂くん』は止めてくれ。呼び捨てでいい。これから一年は、ルームメイトなんだからな」

「そうだね。これからよろしく、爛」

「よろしくな、一輝」

 

 自分よりも劣っている少年──黒鉄一輝が差し出した手を握り、握手を交わす。

 《天剣》は、KOK・A級リーグ元序列一位であり、爛の父『宮坂双木』の二つ名だ。

 頂点に立つことが出来たのは、双木の能力が比類なき強さを持っていたから。それは双木本人も認めており、剣だけではそこに立つことは出来ないとも言っていた。

 

「まぁ、俺の曾祖父も凄い人だったけどな」

「爛の曾祖父……? もしかして《剣神》!?」

「あぁ。武術を多少は齧る程度で出てくる名前だからな。それだけ、俺の曾祖父は武術に大きな影響を与えているわけだ」

 

 多少、武術を嗜む程度で出てくるほどの大物。

 第二次世界大戦にて、まさに一騎当千とも言える活躍をしていた誠一郎は、武術の面にも大きく影響している。三人しかいないと言われる総合武術・宮坂流の究極の型を会得した者。

 異常なほど剣への執着は、まさに『鬼』と言わしめるほどでもあり、海外では《剣鬼》とも呼ばれているそうだ。

 

「……にしても気になるが、一輝は黒鉄家の人間なんだよな」

「そうだよ。それが何か?」

「すまない。嫌われることを承知で言うが、名門とも言われている黒鉄家で、一輝のような人間を魔導騎士の道に進ませるとは思えなくてな」

 

 黒鉄家の当主は黒鉄厳。秩序を重視し、私情を一切挟まないことから、《鉄血》の二つ名で呼ばれている。

 エリートを数多く輩出している黒鉄家からすれば、一輝という存在は『異端』そのもの。それを、彼は許しているのだろうか。

 

「……僕は、親からこう言われてたんだ。

 何も出来ないお前は、何もするな……って」

「……とんだ親だな。周りの人間は何も言わなかったのか」

「妹の珠雫は違ったかな。でも、父さんは珠雫の言葉すら耳に入れようとはしなかった」

「すまない……聞いて悪かったな」

「ううん。こうして聞いてくれるだけでも、助かるよ」

 

 今の日本の魔導騎士社会はランク重視だ。

 高いランクを有する者は尊敬の目を向けられ、低いランクの者は見下される。これから、その道を歩もうとしている一輝は、自分以上に逆風が吹き荒れることになるだろう。余りにも過酷な茨道だ。

 

「あ、そうだ。爛もよかったら朝練しない?」

「勿論だ。俺も欠かさずしているからな」

 

 体が資本である自分達が鍛えることを怠ってしまえば、元々落ちこぼれである自分達は、高いランクを保有する者達に負けてしまう。少なくとも、基礎的な部分で勝っていなければ、彼等と同じ土俵に立つことすら出来ない。それは一輝が一番よく理解しているはずだ。

 

「それじゃ、買い出しにでも行くか。何か食いたいのはあるか?」

「爛は料理出来るのかい?」

「ああ。家では飯を俺と母さんで分担しているからな。人並みには出来るさ」

「だったら、カレーをお願いしようかな」

「分かった」

 

 買い出しにでも出掛けようと、準備をしている最中に、一輝はこんなことを尋ねてきた。

 

「爛って、男子って感じしないよね」

「……そうか? まあ、容姿はそうかもしれないな」

 

 制服が男女で違うお陰で、性別の判断はつけられているが、もし爛が女装をして、女子の振る舞いをされたら女性だと勘違いしても可笑しくないほどに、中性的な見た目と声をしている。

 

「よく周りから言われたよ。男らしくないとな」

 

 小さい頃は女の子とよく間違われたこともあった。両親や姉は面白がって女装させようとしてきたこともあったし、それを幼馴染みに見られたことは恥ずかしい思い出だ。

 

「お陰で姉や幼馴染みに弄られたことは、結構参ったがな。あまり気にしてはいないよ」

 

 気にしても、この姿が変わるわけではないと言った爛は、買い出しに出掛けた。

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