世界最強の剣士の弟子   作:火神零次

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一年生編3

 実戦授業は基本的に学園の敷地にある訓練場で行われる。学生騎士たちが滞在している寮兼校舎とは別の場所にあるため、ちゃんと場所を覚えていないと授業に間に合わなくなる。

 

「そういえば、颯真も同じクラスだったな」

「っていうか、一時間目に気づかなかったの?」

「興味はなかったからな。一輝と話してるだけだったよ」

 

 他の生徒を気にかける余裕がなかったというのが本当のだが。

 

「それにしても、二人ともランクが高かったな。六花がAランクで、颯真がBランクだったな」

 

 騎士としての能力はそれぞれ測られ、全体的なランクが騎士ランクとして登録される。

 騎士として測定されるものは、攻撃力、防御力、魔力量、魔力制御、身体能力、運と六項目。

 それらをA、B、C、D、E、F……と六段階で評価され、六花や颯真のようにAランクやBランクに相当する騎士は突出した才能を持つ『天才』の部類。逆に爛や一輝のようなEランク、Fランク騎士は、魔導騎士としての才能がないと評価される『落ちこぼれ』と揶揄される存在だ。

 魔導騎士としての才能は完全な先天的体質だと言われており、特に魔力量の値は絶対的に変わらないとされている。

 

「僕としては、爛のランクが低いっていうことに納得いかないんだけど」

「仕方ないだろう。測られた能力値は魔導騎士として求められる『純粋な力』を測定したものだ。どれだけ実戦が強かろうと、このランクを覆すというのは無理な話だ」

 

 また不満そうな顔をしている六花の頭を撫でる。彼女がそのようなことを言うのは、幼い頃から剣を振るい、《剣神》と謳われた男の剣を継ぐように、天才的な才能を開花させ、剣だけであれば道場の上級者たちを軽く捻り倒し、負け無しの爛を見てきたからだろう。

 だが、爛が天才的なのは戦闘の才覚だけ。魔導騎士としての才能はない。天は二物を与えずとはよく言ったものだ。

 もし、彼に魔導騎士としての才能もあったのであれば……きっと彼は《風の剣帝》すらも凌駕する魔導騎士になれたのだろう。

 なんてことをやっている内に授業が始まる鈴が鳴った。

 

「今日で初めての実戦授業になる。細かいことは生徒手帳にメールで送られているから、気になる奴は確認しておけ。今回は同ランクの者同士で模擬戦を行ってもらう」

「先生、葛城さんと音無さんはどうするんですか」

「二人でペアになってもらう。同ランクの者がいない以上、近い者とやってもらうことになる。ペアを作って模擬戦を始める」

 

 それぞれ生徒たちが集まってペアを作り出す。

 固定ペアとなった六花と音無颯真……特に、六花はその風景を面白くなさそうに見ていた。

 

「つまんないの」

「そう言うなよ。爛のランクが低いってことには俺も驚いたけど、戦闘なら負け無しだろ。あいつは」

「そうだけどさあ……」

 

 実戦授業では、全ての生徒たちを評価するために制限時間を設け、場外に出た際のタイムカウントを取らないようにしている。

 作り終わった生徒たちから模擬戦を開始している中、二人は最後で模擬戦をすることになっていた。

 勿論、二人は爛の模擬戦を見た。だが、その結果に不満の溜め息を溢した。

 

「今の、わざとだったよね」

「ああ。ありゃ絶対わざとだな」

 

 どう見ても爛が勝てるというシナリオがあったにも関わらず、爛は負けた。早々に模擬戦を終わらせるように、相手の攻撃をわざと大きく避けて、場外負けになっている。

 

「相手にならないから……かな」

「どうだろうな。少なくとも、俺には『戦いに慣れていない』という感じに見えるからな。演じているかもしれない」

 

 落ちこぼれは落ちこぼれらしく。

 爛はギリギリEランクを取れているだけに過ぎない。Eランクでいられるのは、魔力制御と身体能力に救われているだけでしかない。

 同ランクの者同士での模擬戦だとはいえ、ギリギリEランクを取れているだけの人間が勝ってしまえば、周りから飛んでくる言葉に対する感想は、『理不尽』の一言にしかならないだろう。

 ランク主義の社会では、爛は異端だ。

 実力主義であれば、爛は本来のように戦えるのだろうか。

 

「二人とも、あのEランクの彼が気になるのかい?」

 

 二人のもとに、一人の学生がやってきた。

 何者かなんてことは知っている。今年度の首席と次席に次ぐ、第三位での入学者、桐原静矢。

 

「……まあ、幼馴染みなんでね」

 

 ぶっきらぼうに颯真は答えた。

 

「君たちも大変だね? 彼みたいな落ちこぼれと一緒に過ごしてたなんて。恥ずかしいと思ったんじゃない?」

 

 桐原の言葉に、颯真は舌打ちをした。

 桐原は憐れんだような声で二人を気遣っているのだろうが、沸き出てくるものは桐原に対する嫌悪だ。

 

「………………………………」

 

 颯真は何も答えない。六花は既に黙っており、口を開こうともしない。

 

「まあ、彼はここにはいないFランクの落ちこぼれと同じルームメイトらしいからね。同ランクの学生に負けるんだから、落ちこぼれ同士で無様だよ──」

「黙れ」

 

 これ以上、喋らせてはいけない。

 既に六花が限界を迎えようとしている。

 桐原の胸ぐらを掴んだ颯真は、今にも殺しそうな形相で威圧しながら言った。

 

「これ以上、あいつのことを喋るな。ランクだけでしか人を測れない人間が、あいつを語るな……!!」

「おやおや、随分と必死だねえ。そんなに彼のことが大事なのかい?」

 

 何を言っても出てくる言葉は爛を蔑む言葉ばかり。

 これ以上、一触即発でこちらから手を出したらそれこそダメだ。

 

「何を俺の話題で盛り上がってるんだか。いい度胸だな、桐原静矢。なんなら、模擬戦でもするか?」

 

 間に入ってきたのは、苦笑を浮かべた爛だった。颯真の肩に手を置き、引き下がるように目で言った。

 

「あははははははは! 模擬戦? 馬鹿なのか、君は?」

「大真面目さ。自分の能力に過信するだけの人間が、努力した奴に負ける屈辱ってやつを教えてやるためにな」

「良いだろう。そこまで大口を叩いたんだ。精々、鼠のように逃げ回ってくれよ? 

 ……先生、僕は宮坂君と模擬戦をしたいのですが、良いですか」

「……構わない。ちょうど残っているのは桐原たちだけだ。宮坂、また模擬戦になるが」

 

 教師としての務め故か、爛を心配する言葉を言った。だが、爛にそんな心配は不要だ。

 

「問題ありません」

 

 キッパリと言い切った爛は、リングへと向かった。

 

「ランクの差は絶対的だということを教えてやるよ、宮坂君」

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