世界最強の剣士の弟子   作:火神零次

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一年生編6

「やれやれ……落ち着いて昼飯を食うことも出来ない」

 

 手作りの弁当の包みを片手に、呆れたようにため息をつく爛。

 何故こうなっているかというと、桐原との模擬戦で勝ったのが理由だ。

 現代の騎士社会ではランクが重視される。それ故に、この破軍学園ではランク重視で七星剣武祭の代表選手が選ばれる。実戦成績によって選ばれる学園もあるらしいが、それらは少数と言える。

 騎士ランクが高いことは実力がある……という偏見がついて回っているようだ。強ちそれが間違いだとも言えない。高ランクを保有しているものは実力のあるものが多い。

 だが、それは彼等が裏で才能以上に努力という対価を支払っているということを知らないがために、そのような偏見がついて回り、その結果、桐原、そして彼の取り巻きたちのような人間が生まれる。

 本当の実力を知っている者はそれらに毒されることはない。それは爛がよく知っている。

 そのような人間ばかりいる破軍学園には、心底うんざりしており……それと同時に、入学するべきではなかったと後悔する気持ちもなくはない。

 

「それで退学すれば、俺もそこまでの奴だった。という話になるだけだな」

 

 やっと落ち着けそうな場所を見つけた爛は、ようやく昼食にありつくことが出来た。

 

 昼食を食べ終え、自室へと引き返した爛。

 

「……あ、爛。おかえり」

「一輝、何があったんだ」

「何って?」

「とぼけるな。俺の目を誤魔化せると思ってるのか。お前、霊装で傷つけられただろ。早く見せろ、手当てするから」

 

 部屋にいた一輝の服がところどころ破れている。

 桐原は爛をからかうだけには飽き足らず、一輝にまで手を出してきた。最初は陰口だったり、からかうだけだったのだが、一輝が一切相手をしないからか行為はエスカレート。周りにも聞こえるレベルで悪口を言ったり、果てには霊装展開禁止場所で霊装を展開し、一輝に私闘を受けるように迫り、何度も矢を放ったらしい。

 一輝は学園からどう思われているかは察しているらしく、戦闘行為と思われてしまうことは一切出来ない。あの手この手で退学させようとする学園側の思惑は駄々漏れ。最悪の場合、回避するだけでも戦闘行為と取られてしまう可能性もあった。

 一輝の鋼の精神で桐原に対しては何もせず、思わせ振りに走ってきた職員によって止められた。一輝は一切なにもしていないことは監視カメラに記録されているので、一輝が戦闘行為を取っていないという事実があるため、学園も退学させるということはなかった。だが、桐原は名前だけの厳重注意が処罰として下されただけだった。

 

「やれやれ、学園側もお前を退学させようと必死だな。間違いなく職員も手を貸しているな」

「あの場に職員がいたのは既に確認してたよ。僕が何か動き出したら、取り抑えるつもりだったみたい」

「話を聞けば聞くほど、理事長が腐ってるのが分かるな」

 

 傷の手当てをする爛はため息をつくしかなかった。

 

「……よし、これでいいな。終わったぞ」

「ありがとう……ねえ、爛」

「なんだ?」

「何も感じないの?」

「お前が言いたいことは理解できる。退学をして、別の学園に行く手だってあるのも知っている」

「なら……」

「俺がここにいるのはお前に同情して……というわけじゃない。俺には約束がある」

「約束?」

 

 爛の言葉に一輝は首を傾げた。

 

「ああ、約束だ。三年前、一歳下のある女の子を助けてな。その子も伐刀者だったんだ。また会いたいと言ってきてな。日本に来れば、また会える……そう言ったんだ。もし外国の人間が日本に来るのならまず何処に行きたがる?」

「首都の東京……」

「ああ。そこの近くにあるのは破軍学園。七星剣武祭でも多くの功績を残している。あの子の目につく可能性があるとしたら、ここだろうと思ってな。まあ、家の位置の関係上、ここが一番都合がいいってのもある」

 

 ま、そんな理由さ。といいながら救急箱を棚に戻す爛。

 会えるかも分からない少女のために待とうとする爛は、何処と無く悲しそうで、嬉しそうでもあった。

 

「それより、お前もこれから気を付けろよ。もっとタチの悪いものが出てこないとは限らないんだからな」

「……うん、分かってる」

 

 ◇◇◇

 

「……で、今度は俺が標的になったわけだな。ハア……ったく、あいつらもあいつらで暇人だな。つるんでる奴等とカラオケにでも行ってこいよ」

「あはは……随分辛辣だね」

「あんな奴等に同情する方が身が持たんわ。全く、こういうのを別の方面で使ってくれないかね」

 

 桐原たちは爛を次の標的にし始めた。

 どうやら今日は爛だけをターゲットにしているらしく、彼の犠牲の上に一輝の平穏が訪れていた。

 自分に迷惑がかかるのは構わないらしいが、それが唐突に降りかかってくるのは避けたかったようだ。何とか振り切ってベンチに座っている爛はある意味で疲れきっていた。

 

「大丈夫か、爛」

「悪いな、颯真。お前にも迷惑をかける」

「構わないさ。突っ掛かってきたら模擬戦で黙らせてやるのが一番だ」

 

 奴等から爛の行方を眩ませるために、六花と颯真も協力した。

 訓練場での一件がきっかけで、颯真に挑んでくる生徒がいるのだ。というのも、颯真は爛が去った後にわざとらしく怒りを買うようなことを言ったのだ。才能が全てだと思い込んでいる連中の逆鱗に触れ、全員が颯真を黙らせようとしたものの、試合開始数秒で決着をつける颯真に心が折られたようだ。それでも挑んでくる屈強(?)な精神の持ち主がいるようだが。

 それらも手で虫を払うようにあしらったことで、颯真は彼等の標的になることはなかった。

 六花のことだが、桐原に目をつけられているらしい。当の本人は「爛にしか興味はない」と言い切って相手にしていない。流石にランクがAの六花に喧嘩を売ると八つ裂きになる自覚があるのか、彼女に突っ掛かってくることは少なくなったようだ。

 

「早撃ちの練習として最適だからな」

「それ、言い方次第だと誤解されかねないよ?」

「事実だぞ? 最近はタイムが縮んできてる。能力無しでも五秒切れるようになってきたんだ。それでも、爛には勝てないけどな」

「最初の頃はキツかったんだがな……お前のお陰で俺の反射神経は鍛えられてるよ」

 

 誤解されようが別に知ったことじゃないと、平然としている颯真に、一輝は爛に視線を向けるが、彼の顔が苦笑のままで変わることがないことから、どうしようもできないと察したようだ。

 

「そうだ、爛。六花が溜め息をつくようになったから相手してやってくれ」

「分かった。部屋で待ってると伝えておいてくれ」

「了解」

 

 六花も人間だ。あんな悪質な奴に突っ掛かってこられては、ストレスは絶対に溜まる。適度にストレスを吐き出させないと、彼女が精神的に参ってしまう可能性もある。

 棒読み気味に返す颯真はベンチから立ち上がり、手を振りながら寮の方へと歩いていった。

 

「さて、俺たちも寮に戻るか」

「うん」

 

 ここに意味もなくいても面倒に絡まれるだけなので、爛と一輝は早々に自室へと引き返した。

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