土曜日になって、火曜日に議会があるDクラスは焦っているだろうと思う中、俺はいつもの通りにカラオケルームに入っていた。もちろん俺とカラオケルームに来ている奴なんて西野しかいなくて、もう店員からしたら常連であり同じ奴と飽きずにカラオケに来る俺のことを変な奴とか思っているだろうな。
「それで今日は何の用なんですか?」
あいも変わらず西野は歌うことも無く飲み物を飲みながら今日のことについて聞いてきた。今日はやることなんて言ったら決まっているポイントを取引をする方法を共有することだ。でもだからといって西野にはポイントの取引はさせない。なら何故今日集まる必要があったのかというと、まぁあれだな。最後まで仕事には付き合ってもらおうというだけだ。
「何って暴力事件での俺の望んだ結末にするための会議ってところだな」
「いちいち会議なんてする必要はあるんですか?私龍園くんに洩らしちゃうかもしれないよ?」
「今更そんな事を言うの?そうだな……そんな事態になったら、情報をもらしていたってことで西野は粛清される。それになによりも俺を裏切ってことで絶対に退学させるかな」
俺の言葉に西野は身震いを少ししてしまったようだ。まぁ半分は冗談だしここまで来たら西野には卒業までこの関係で付き合ってもらおうかな。今のところは。
「あー下関くんってやっぱり怖いよ。じゃ、じゃあとりあえず気を取り直して会議を進めましょうよ。そんな携帯ばっかりいじってないで」
「一応言っておくがこの作業も大事な事だからな。しっかりと信用は稼いでおかないとな。支持してくれる人がいなくなったらリーダーとかその辺は致命的だからな」
西野はそのまま流れるように俺の隣に座ると操作している俺の携帯を何の躊躇いも無く覗いてきた。
「普通人の携帯なんてそんなまじまじと見るか?ちょっとは遠慮はしろよな」
「いやー遠慮が無いのが私の美点だと思っているので、てか、それよりもずっと携帯で何をしているんですか?見たところ色んな人に同じようなメッセージを送って似たような返事を貰ったりしてますけど」
「これはDクラスの平田にAクラスの目撃者を探してくれと頼まれたから、俺が聞ける範囲である葛城派の連中に聞いてるんだよ」
もちろん目撃者捜索の結果は芳しくないけどな。平田には申し訳ないが、Dクラスに手を貸し過ぎる訳にはいかないんだよ。
「なんでわざわざ聞いてるんですか?目撃者なんていないことは分かってるんだから全員に聞いたって嘘つけばいいのに」
何か分かんないけど後味が悪いから結局律儀に一人一人に聞いてしまってるんだよな。
「なんでだろうな。俺にもよく分かんないけどしなきゃなんか気持ち悪いだろ」
「そういうもんなんですかね」
俺は最後の町田からの目撃者を見てないというメッセージに対して返信をすると、携帯を触るのを止めていよいよ本題に入るのだった。
「じゃあ本題に入るとするか。まず質問するから答えてくれよ。西野はこの事件の情報を募集するような物をどこかで見たか?」
西野はいかにもな手を顎に当てるようなポーズで思い出しているようだったが、思い出したのか上擦った声で発してきた。
「ああ思い出しましたよ!学校の掲示板に金曜日の朝は貼られて無かったのに放課後になったら情報を持っている生徒を募集する紙が貼られてましたよ。しかもポイントまであげるって書いてた気がするので、これに情報を持っていって今回の目的のポイントをもらってくるってことですね」
西野の言う通り金曜日の放課後には掲示板にそのような貼り紙がしてあったのを俺も見ている。しかもBクラスの神崎と名前が書いてあったのを確認している。まさかBクラスがこんなことまでするとは思わなかった。他のクラスよりもお人好しが多いとは思ってはいたがポイントまで払うほどとはな。
「ああ。貼ってあるのをしっかり見ていたのは褒められるが、今回はそれを利用してポイントを増やすようなことはしない」
「え、何でですか?わざわざポイントを渡すとも書いてあるから、後から嘘をつかれることもありませんよ?」
「神崎のことだ。そんな事はしないと思うが、これに情報を持っていかないのは神崎が直接会わないかとメッセージを送ってくると思うからこちらのことがバレる恐れがあるからだ」
もしかしたら直接会わないかもしれないかもしれないが、それでもBクラスにしかも警戒心が高そうな神崎に俺のこの行動をバレることは避けたいからな。
「でもそれ以外にポイントを稼ぐ方法ってなく無いですか?わざわざ面と向かって情報を持ってますってDクラスの人に言う訳にもいかないですよね?」
「だから丁度良いものがここにあるんだ。しかもこっちのことがバレない可能性が高いものが」
携帯を操作をすると、俺は西野の前に学校のHPにある掲示板が表示されている画面を見せた。
「こんなの初めて見ましたよ、しかも何か書いてあるじゃないですか」
西野が見つけた通りこの掲示板にはBクラスのリーダーである一之瀬が情報提供を呼びかけていた。しかも有益な情報提供者にはポイントを支払うとも書いてあった。
「俺はこれを使うつもりでいる。もちろん新しいアカウントを作った上でだけどな」
「はぇー確かにこれだったらバレずにポイントが得られますね。でも、あの録音全部ここに載せるんですか?流石にそれだったらDクラスの方が勝つと思うんだけど」
もちろんそんなことは俺もしない。録音にある始めの石崎達の作戦会議そして挑発や最初に殴りかかったところもカットして、俺が隠れていたロッカーに石崎がぶつかってきたぐらいから最後までを載せるつもりだ。
「問題はない。録音は最後の方しか載せないからな。じゃあ一旦この話は終わり。次に西野に頼みたいことがあるんだけどいいか?」
まだ今日載せる訳では無いので、この話を辞めにして西野を呼んだわざわざ作戦の概要を伝えた目的を伝えることにした。
「もちろん構いませんけど……」
「じゃあ頼むけど、龍園の連絡先を俺に教えてくれないかな?」
そう俺が西野を呼んだのはポイントの稼ぐために必要であった龍園の連絡先をもらう必要があったからだ。龍園の奴はクラスの奴全員とは連絡先を交換しているくせに他のクラス、学年の奴とは交換をまったくしていない。龍園と直接会う訳にいかない俺は連絡先を入手する必要があったからだ。
「ああ確かに直接会う訳に行かないもんね。じゃあ……はいこれ龍園くんの連絡先ね。ちゃんと間違えずに覚えてね」
西野から見せられた龍園の連絡先をメモした俺は新しくアカウントを作成した。
「じゃあこれで西野を呼んだ目的は終わったから、今日は解散しようか」
「は? 私今日一日予定空いてるんですけど?今日は一日中下関くんに付き合うつもりで来たのに、それは酷く無いですか?」
怒ったように見られた西野からの要望により俺は西野とカラオケに入りまくって初めて歌を歌ったりして土曜日を消化したのだった。
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日曜日の昼間。俺は平田に頼まれていたAクラス葛城派の連中全員に聞いたことを報告していた。まったくもって役に立つような情報は無かったが、それでも平田からは真っ直ぐに感謝を伝えてくるメッセージを受け取って心が傷んだのはここだけの話だ。
午後からは久しぶりに葛城派の康平とよく康平の周りにいる連中とケヤキモールに遊びに行っていた。ゲーセンでレーシングゲームをしたり、ボウリングをやったりしてそれなりに楽しめた休日になったと思っている。
そして気付かぬ間に夜になっていた俺は部屋の中で録音した音声を編集をしていた。編集と言ってもがっつりしたものでは無く目的とした箇所をちょっと切ったりして短くしているだけだ。
そして完成したのはそこまで議会に影響がないであろう音声だ。俺はさっそく作った新しいアカウントを使って一之瀬の募集した情報所有者求むという掲示板にこの音声を載せた。俺の予想では明日ぐらいにはポイントが入るだろうと思っている。さて、一之瀬はいくら入れてくれるのかな?
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俺綾小路清隆が月曜日の朝、須藤とCクラスに関係する情報をもつ生徒を募集する貼り紙を一通り見て感心をしていると、一之瀬からそれを発案して実行したであろう神崎の紹介を受けて握手した。
「どう神崎くん。有力な情報はあったかな?」
「残念ながら使い物になりそうな情報は無かったな」
「そっかじゃあこっちも例の掲示板見てみるね」
「掲示板?他にも貼り紙をしているのか?」
一之瀬に携帯画面を見せてもらうとそこには学校のHPに目撃者を募っている書き込みがあって、閲覧者数まで見られるようだった。よくよく目を通すと音声まで送ってきている者までいた。こちらにも、有力な情報にはポイントを支払うとも書いてあった。
「あ、ポイントなら気にしないで。私たちが勝手にやっていることだから。それに今のところちょっと新しい情報は難しいかも。……あ」
「どうしたんだ?」
「書き込み、3件ほどメールが来てるみたい。少し情報があるって」
一之瀬は携帯の画面を確認する。
暫くの間メールを確認していた一之瀬だったが、途中携帯に耳を傾けたりすると、驚愕した表情をした。読み終わった一之瀬は大きな笑みをこぼしていた。
「結構やばい情報あるかも。まずはこれを見て二人とも」
一之瀬によって文書が見えるのようにこちらに傾けられる。
「例の三人の一人、石崎くんは中学時代に相当な悪だったみたい。喧嘩の腕も結構すごいらしくて地元じゃ恐れられてたんだって。同郷の子からのリークかな」
「興味深いな」
神崎が呟いた言葉に俺も同じく非常に興味深く面白い内容だと思った。
俺が須藤にやられた三人組に対して見解をしていると、まだ言いたいことがあるのか一之瀬は
「で、こっちの情報はもっとやばくて。ちょっと二人とも聞いてみて」
と前置きをすると、携帯はまた操作すると音量を大きくして、新しく届いていたメールを開いてそこに保存されていた音声を再生した。
聞こえてきた音声はここ何日も目撃者探しや目撃者の佐倉と交渉をしていた俺にとっても衝撃の内容で、その音声は須藤とCクラス三名との喧嘩の音声を録音したもので、大きな衝撃音から始まるそれは須藤とCクラスの喧嘩の時の音声をばっちりと録音していて最後に石崎が意味深なセリフを吐いてそれに須藤が反応して、須藤が帰ってから石崎達が不気味な笑い声をあげるところで終わっていた。
俺は音声を聞き終わると一体誰がこの音声を録音して情報提供をしたのかを考えて始めた。
まず考えられるのは佐倉だが、これは無いと断言出来る。確かに目撃者の佐倉だがわざわざ掲示板に投稿してポイントをもらおうとするような人物では無いと俺はここ数日交流をしていて感じたからだ。そしてこの最初にある衝撃音。これを至近距離で聞いたとなると確実に佐倉は声を出す性格だ。だが音声にはそのような声は入っていなかった。
次に考えられるのはBクラスだ。俺たちに恩を売るために自分たちの力で目撃者を見つけ出したと見せかけて借りを作る可能性もあるのだが、これも無いと断言出来るな。そんな事をするならわざわざ音声を俺を聞かせるようなことをする必要までは無い。俺達に勘付かれる可能性があるからな。
別の意見で善意でこれを掲示板に送ったというのも考えられるが、それも無いだろう。一日前になってからわざわざここに送るぐらいならば、全学年に交友ある男子ならば平田。女子ならば櫛田や一之瀬に対して音声を渡せばいいもしくは目撃者として名乗りを上げればいい。
だとすれば考えられるのはポイントを稼ごうとしている俺たちに正体を知られたくはない第三者もしくはCクラスの者。あの録音を送ってきた人間はアカウントを別に作って匿名で送ってきていることが分かった。俺たちに対してよほど正体を知られたく無いのだろう。
可能性が高いのはCクラスの人間の中のポイントを欲している裏切り者か須藤を嵌めた作戦を考えた者だが、第三者としてはたまたま目撃したポイントを欲している2年、3年のDクラスの人間。可能性は低いが、これが事前に起こることを知っていた上でポイントだけをもらう目的で今まで名乗りをあげずにポイントを貰おうとしている者。
いずれの人間にしても佐倉の他にも目撃者が存在していたということだ。
「この音声どうしようかな。それにこの音声を送ったのはDクラスの目撃者なのかな綾小路くん?」
「いや、俺たちが見つけてきたDクラスの目撃者はこんなことをするような人間では無い」
「そっかそうなんだね。じゃあ全く新しい目撃者ってことか……。と、とりあえず綾小路くんにはこの音声送っておくね」
一之瀬からメッセージによって俺に対して音声が送られてきた。さて、これを誰に対して共有すべきか……。
「……俺たちのポイント目的か」
「それでも神崎くん情報提供をしてきたくれたんだからポイントはしっかりと払わないと詐欺になっちゃうから」
俺は一之瀬から匿名への送り方を聞かれたのでやり方を教えて、それによって一之瀬の保持ポイントを見たが、今のところはそれを考えることは後にすることにした。
だがこの新しい目撃者が現れた所で方針を変える訳にはいかないな。今から探した所で見つかるはずも無い、見つかったところでしらをきるだろうことは目に見えているからな。
今まで通り佐倉に議会に立ってもらうことにするしかないな。
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俺はいつも通りに起きるといつもと同じように支度をして寮を出た。暑さに耐えながら並木道を歩いていると携帯に対して通知があった。
そこには俺の新しく作ったアカウントに対してポイントが支払われたというものだった。その額なんと8万ポイント。それなりだな。10万は超えて欲しいところだったが、さすがに怪しさが過ぎるだろうから警戒したのかな?まぁ貰えるだけマシだと思っておくことにするか。俺は新しいアカウントから元々のアカウントへとポイントを移して、増えた自分のポイントを見て少し笑みを浮かべながら学校へと向かうのだった。
終わりませんでした!
二巻は暴力事件を次の一話で終わらせて、三巻の事前仕込みで一話、そして幕間を一話投稿して終わりの予定をしています。