思いついている下関の過去は個人的に結構重いなと思っています。
暴力事件が解決して期末試験も無事に終わって現在は本当にあった夏休みのバカンスについて担任である真嶋先生から説明を受けているところだ。
話は変わるが、俺は今日この日までに暴力事件を乗り切ったDクラスの立役者だろうと思われ、噂されている堀北会長の妹さんであるDクラスの堀北鈴音について軽めの情報収集をしていた。
主に三宅から得た情報では、どうやら三宅と同じで、クラスの中でそこまで人と関わるような事はしていないようだったのだが、最近は隣人や暴力事件の容疑者であった須藤とも少しは会話をするらしい。それに加えて勉強も大変よく出来ていて、しかも運動能力も水泳で上位を取るほど高いらしいのだ。
この事から俺は堀北鈴音を二つの線で予想することにした。
まず一つ目の線としては、あんなにも完璧な堀北鈴音がDクラスにいるのは協調能力がほとんど無いせいであり、人とあまり会話していないのもそれが起因していて、そのせいで平田からもリーダー関連として名前を挙げられなくて、Dクラスとしても扱いに困っているという線だ。
次に二つ目の線としては、堀北鈴音がDクラスにいるのは過去に重大な何かをやらかしたのが原因で、それがバレることを恐れて表だっては人とは話さずに裏からDクラスを支配しているという線だ。
多分普通に見れば一つ目の線が有力なのだと思うのだけど、俺個人として二つ目の線を推したいと思っている。何故ならば、一つ目の線では今回の暴力事件の議会にわざわざ来る事などないだろうと思うだろう。そして何よりまさか堀北会長の妹が協調性が無いなんて……いや、やっぱりあるかもな。兄弟で協調性に差が出るのはよくあることだ。これは経験からも考えられることだ。
だが、二つ目の線も外せない。まず、Dクラスに配属される理由はあまりにも曖昧だ。平田や櫛田はどうやら今の所聞くところだと、能力だけみればBクラス以上は確実にあるだろう逸材なのだ。それなのにDクラスだと言う事は、過去に何かをやらかしてそれを学校側が認識していて配属したという事にもなる。ならば堀北鈴音もその可能性は否定出来なくて、協調性が無いのも演技の可能性もあるのだ。
要するに堀北鈴音は警戒しようということだ。
話を戻すけど、真嶋先生の話は今現在も進んでいて、聞いていると、バカンスは無人島のペンションで一週間を過ごして、その後の一週間は豪華客船で過ごすことになるらしい。いやー楽しみだね。こんな豪華な旅行を国も用意してくれるなんて太っ腹だと思うね。
まぁ今の所の俺の予想だと、無人島で何か試験があり、その後の豪華客船でも試験がある。そしてこれで大きくクラスポイントが動くことになるだろうと思う。
「そしてここでみんなに非常に残念なお知らせが一つある」
と、ここでバカンスの説明が一区切りついたところで、真嶋先生が声のトーンを変えてみんなが注目を惹くようなことを言ってきた。まさか、ここでポイントが変動する可能性がありますなんて言うのかな?あんなにも4月の間に色々隠していた学校側がそんな事事前に言うものなのか?
「このクラスの坂柳有栖が体の都合でこのバカンスに行けないことになってしまった。これで不都合が起きる場合もあると思われるが、これは決定してしまったことだ」
こういうことになったか。俺はこのことを坂柳が予想していなかったとは思いずらい。多分坂柳はバカンスの話を聞いた時から自分が行けないことは分かっていて、しかもバカンスで試験があることも予想しているはずだ。
ならば、今回坂柳がすることは、試験は康平に一任させておいて裏で坂柳派の人間が情報を漏らすかサボるなどをさせてAクラスのポイントを大きく減少させることで、葛城派の信用を大きく落としてAクラスを掌握するという魂胆ということだろうな。
「みなさん。私が行けないのは非常に残念ですが、帰って来たら実りのある話が聞けることを楽しみに待っておきますので、楽しんで来てくださいね」
坂柳は笑顔をしながら言葉を紡いできた。その笑顔は演技でも何でも無くて、自分が行かなくても全く問題の無いようなものを感じさせてきたのだ。
どうやら真嶋先生の話はおおよそこれで終わりのようで、後は夏休み中の健康的な生活についてとか、豪華客船の構造とか仕組みに話してくれた。
そして船の中のお店などはポイントを支払わなくても良いようで、どれだけ高級なお店でも無料で食べられるようなのだ。これも怪しさを十分に感じさせているように思えてならないのはこの学校に通っている学生ならば、当然だと俺は思うね。まぁ船に乗ってから念のために先生に聞いてみるかな。これではぶらかすような答えでは無かったら問題無いだろう。
真嶋先生の説明が終わったから放課後になった俺は康平の席に向かっていた。その内容はもちろんバカンスであると思われる試験についてだ。俺はさっきの話を聞いてから葛城派が生き残る為の策を考えていたので、それを話すつもりだ。
「よぉ、康平。今日の夕食って空いているか?少し話したいことがあるんだけど」
いつものように無言で席に座っていた康平に向かって、俺は部活もあるので夜に会う為に約束を取り付けようとしていた。
「ああ、真嶋先生が話をしてから、涼禅が会いに来るだろうと思っていたからな。問題ないな。店と時間はどうする?涼禅に任せてもいいのか?」
「もちろん俺に任せておいてよ。後で店の場所は送るね。時間は俺の部活が終わってからだから8時頃かな?」
康平の了承を得た俺はさっそく部活に向かった。夏休み中に大会があるようなので、それに向けての練習で部活内がいつも以上にピリピリしているから、遅れないように行かなければならないのだ。
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ハードさの増している部活が終わったので、さっそく康平に対してメッセージをしていた。今回俺と康平が行く予定のお店は普段から利用している奴なんてほとんど居ないだろうと思われるこの学校内で一番高い料理が出るお店だ。
なんで、このお店を選んだのかというとまず個室というところが大きい。それならばカラオケでもいいじゃないかと思われるかもしれないが、夜ご飯にも関わらず俺と康平で歌いもせずにカラオケに行くのはさすがに気が引けたので、今回のような人に話を聞かれずに美味しい夜ご飯を食べれる所にしたのだ。
そのためならば少しの……ポイントくらい仕方ないのだ。
無事に康平との合流を果たせた俺達はさっそく中に入っていった。中は学生が主に食べることが多いとは言え、世間一般にある高級店には見劣りしないような内装をしていた。店員の案内に従った俺と康平は個室に案内されてコースメニューを頼んだ。もちろん、事前に大体の値段は調べておいたので問題は無い。
「ううむ、少し落ち着かないな」
「そうか?まぁさすがに学生だけでこんな場所に来るとなると緊張するよな」
こう言う場所は男友達と二人で来るべきでは無かったかな?でも、戸塚とかその辺とかいっぱい連れて来たら迷惑だろうしな。あれか、彼女とかと来るべきだったな。まぁもちろんまだ居ないんだけど、中学の時に周りの奴に理想の女性について聞かれて答えた時は、みんなには理想が高いな〜とかそんな人間簡単には居なくね?なんて言われたので、残念ながら出来る可能性はこの高度育成高等学校でも低いと言わざる負えないだろう。
「それで、話とは何なんだ?真嶋先生が話していたバカンスで、あるであろうポイントを競う何かについてだということは分かるが」
流石は康平だと言う所だな。確かに俺は今回はバカンス関係について話すつもりだ。だけど今回話すことは康平の了承が得られるかが微妙だ、けれども、俺はこれしか葛城派を生かす方法が無いと思っているから。
「今回の話そうとしていることは二つあるんだ康平。一つ目はこれからのAクラスで大切なことだ。二つ目はバカンスでのAクラスが生き残る為の策を話そうと思う」
「分かった。問題は無い話してくれ」
康平からの了承をもらった俺は、これからAクラスでどちらの派閥が生き残るまで実行する行動について話す事にした。
「一つ目の事だけど、俺はこれからとりあえずAクラスが統一されるまでの間、坂柳派の二番手である神室真澄に対して接触を多くしようと思うんだ」
「何故今そのことを話すんだ?そんな作戦があるならば、4月の時点などで実行しておくべきではなかったか?」
「ああ康平の言う通りだよ。確かにこれは4月の時点から実行すべきだった。でも、今回のバカンスの事を聞いて坂柳派が本格的に動くことに対しても危機感を抱いてしまった俺がいてね。
ゆくゆくは葛城派がAクラスを取った時に、坂柳とか坂柳派を協力させるもしくは取り込むために必要なことかなと思って思いついたんだ。坂柳と直接話すのはちょっと怖いからね」
そう俺は夏休みが始まるからバカンスぐらいからになると思われるが、神室との接触を増やして親交を深めて、後々坂柳派を取り込むのを簡単にするつもりだ。別の奴でもいいのだが、神室の方が坂柳の次にはまとめられるだろうと思うからな。それに今からの方が4月の時にやった時よりも葛城派からの疑惑などが、少なくなると思うから結果的には良かったかな。
「そうか、涼禅がそうしたいと思うならそうしたら良いとは思う。お前なりにAクラスの未来のことを考えてくれて行動しようとしてくれてるんだな」
「ありがとうな康平。俺としても失敗しないように頑張ってみるよ」
「それで二つ目はバカンスでの攻略法のことなんだ」
「攻略法?まだ何をするかも分かっていないんだぞ」
「もちろん学校側が用意する試験のことでは無いんだ。坂柳派との対策についてだ」
俺の言葉を聞いた康平は怪訝そうな顔をしていた。
「俺だって坂柳が来ないからと言って、手を出してこないとは思ってはいない。だが、先を越させることは無いと言う自負もある」
康平だってさすがに坂柳が居ないとはいえ坂柳派が手を出してこないとは思っていないようだけど、この感じは康平の悪い癖が出ているな。康平はたまにだけど、少し自信家なところがある。別に他の相手なら良いのだけれど、坂柳に対してはやめてほしいものだな。
「それで、俺はこのバカンスでの試験について康平に対してお願いがあるんだ」
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下関と葛城がこれからの作戦について話す時間の少し前の時間。ケヤキモールにあるカラオケ店では坂柳と神室が二人で話をしていた。
「それで私に話って何?いつもはいる橋本や鬼頭はいないみたいだけれど」
神室の言葉を聞いた坂柳はいつもしている悪い笑みをしながらも言葉を返した。
「ふふ、神室さんだけに話したいことがありましてね。橋本君と鬼頭君にはさきほど簡単にバカンスでしてほしいことを言ってありますので、神室さんにもして欲しいことを言う為に呼んだんですよ」
それを聞いた神室は不機嫌そうな顔をより不機嫌そうにしながらも坂柳に対して返事をした。
「それだったら私にもその時に言って欲しかった。わざわざあんたと二人っきりより他のやつがいた方が相手しやすいからね」
「神室さんは酷いですね。でも、まぁ理由なんて簡単なものですよ。他の人には聞かれたく無いからですよ」
神室はこの言葉を聞いて疑問に思った。何故今更にもなって私だけに話したいことがあるのかと。万引きのことかと予想した神室だったが、全く予想もしていなかった答えが坂柳から出てくる。
「実は神室さんには、後々坂柳派が主導権を握った時のために、下関君と仲良く、そして親密になって、あわよくばこちらに引き込んで欲しいと思いましてね」
「何を言っているのか分かんないだけど、なんでいきなり下関の名前が出てくるの?」
「理由は色々あるんですが、葛城君や他の葛城派の人は警戒心が強くてダメですが、能力もあって打算ありでもこちらと仲良くしてくれそうな下関君なら神室さんでもいけるんじゃないかと」
「無理だと思うけどね。しかも私じゃ無くて橋本でもいいと思うんだけど」
「連絡先を持っているでしょ?」
「確かにあるけどやり取りしてないし、それに本当に優秀なの下関って?授業中はいつもうとうとしているし、運動能力もそこそこ、多少は顔が広いぐらいだと思うんだけど?」
その言葉って待ってましたとばかりに坂柳はその笑みをより濃くしながら会話を続けた。
「実は私下関君の事知っているんですよ。多分校内一ですね」
「何?知り合いってことなの?」
「違いますよ。私は勝負をしたいある同い年の男の子がいましてね。その子の関係者の間では
「じゃあ一方的に知っていることね。下関も坂柳に知られるなんて本当に可哀想」
「じゃあそう言う事なので、下関君との交流とバカンスでは葛城君がリーダーをすると思いますから葛城君の妨害をして下さいね。私からは無人島では多分連絡出来ないと思いますから」
「増えてるけど……分かった。やれるだけやらしてもらうから」
「任せましたよ神室さん。これでバカンスを終えてからの葛城君は失脚ですかね。そしてやっと気兼ねなく綾小路君と勝負が出来ますね。ふふ。」
最後の方は神室には聞こえていなかったものの、神室は坂柳が勝つだろうな予感のような確信をしていた。
そして神室は好きでも無い男に好かれる方法を必死に考えるのだった。
この下関のバカンスでの策は無人島に着いてから明かしたいと思います。