ようこそ葛城康平に補佐がいる教室へ   作:地支 辰巳

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この話から下関の過去について触れていきます。


協力者 恐怖は突然に

2日目になった。洞窟で寝た割にはそれなりに快適だったようで、体には特に疲れなどは無いように思えた。女子が寝ている場所を覗いてみると、神室も起きていたようで、入り口の方に目配せをして、歩き始めたのでついて行った。

 

スポットを回っている時も神室は終始無言で、多分起きたばかりでしゃべる気があまりしないのだろう。俺としても、朝の運動としてはちょうど良いくらいだったなという感想しか出てこなかった。

 

帰って来てから、神室は寝るという一言だけを言って、寝ていた場所に戻って行った。俺も昨日はあまり早く寝れなかったことを思い出したので、今日も忙しくなることに備えて、点呼の時間である8時まで寝ることにした。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

無事寝過ごすことも無く、点呼に間に合ったので、Aクラス全体に昨日と同じ指示を出しておいた。これで、特に問題は起こらないだろう。今日の俺と神室の行動は仕事なんかをしながら待つことだ。

他クラスのベースキャンプを知っているので、挨拶に行った方が良いとは思うが、それは今日ぐらいに、ここに偵察に来るだろう他クラスのリーダー格とあいさつをしてからにしようと思っている。

 

わざわざ俺たちから出向いて、リーダーがAクラスの拠点に向かったなんてことになったら二度手間になってしまうからな。

まぁ偵察が来るにせよ来ないにせよ、俺と神室が他クラスの拠点に行くのは3日目ということだ。

なので、俺と神室も洞窟の拠点で他のみんなと同じように仕事に取り組んでいた。ここで洞窟グループが頑張って食料の保存をすれば、水と保存食に加えて朝食と夕食に食べれるものも増えて、体力の回復も出来るだろう。

 

そんなこんなで仕事をしたり、時間が少し過ぎて行った頃に、やっとこさ他クラスの偵察が来てくれた。偵察に来たのは一之瀬と神崎、他の生徒2名のBクラスだ。

一之瀬達は迷う様子も無く、一直線に洞窟の入り口まで来ると、偵察が近くに来たと報告を受けた頃から、入り口近くに待機していた俺に対して声をかけたきた。

 

「下関くん。葛城くんはどこにいるか知らない?中に入っていいか聞きたいんだけど?……ダメかな?」

 

一之瀬は意識はしていないだろうが、男子が見たら、全員が正直に答えてしまいそうな表情で康平の居場所を聞いてきた。はっきり言って、いくら俺といえどその表情を見た瞬間に顔を反射的に背けてしまったほどだ。

 

「康平はリタイアしたから居ないよ。今は俺と神室が擬似的なリーダーを任されているんだ」

 

俺の言葉に一之瀬は顎に手を置いたりして考えていたようだが、考えてついたのか、顔をパッとこちらに向けた。

 

「あちゃーやられちゃった。今がAクラスに勝つチャンスかなとか思ったんだけど、先手を打たれちゃった」

 

この感じは一之瀬もAクラスが分裂しないために康平がリタイアしたと気づいたみたいだな。龍園の時みたいに今は居ないと言っても、帰って来るまで待ちそうな一之瀬に正直に言ったのは正解だったかな。

 

「でも、俺と神室は二人ともリーダーでは無いんだ。団結が重要なこの特別試験で有利なBクラスが勝つ可能性の方が多いにあると思うけどな」

 

「あははー謙遜しないでよ下関くん。私、下関くんはすごい人なんだろうなーって思ってるからさ」

 

そんな真正面から一之瀬みたいな人間に褒められると、なんか難しいというか何とも言えない気持ちになってしまう。今の俺なんてただの負け犬なんだから。

 

「えっとーじゃあ洞窟の中なんて見せてもらうことって可能かな?」

 

「ああ、全然構わない。そんな大したものなんて無いけどな」

 

俺は一之瀬達に洞窟の中を案内した。そこまで心配なんてしていなかったが、一之瀬達は何かに触るなど、怪しい行動などはしていなかった。

冗談とか期待はしてないみたいな口調で、これまで使ったポイントの消費なんて聞かれたが、計算されているだろうなと思って、洞窟にあるものと食事についての消費のポイントの合計で答えた。

 

「色々教えてくれてありがとう下関くん。まさか教えてもらえるなんて思ってなかったよ。Bクラスの拠点に来ることがあったら歓迎するよ」

 

「ああ、助かるよ。じゃあお互い負けないように頑張ろうな」

 

「負けないよ!じゃあね下関くん」

 

自身満々に負けない宣言をした一之瀬は他のBクラスの奴を連れて帰って行った。一之瀬達が帰ったのを見届けると、さっきまで全く近寄って来なかった神室が近づいて来た。

 

「あんなにも無警戒で案内してたのは、Bクラスに歓迎されるのが狙いなんだ」

 

「なんだ聞いていたのか。近寄って来なかったから、一之瀬の声が聞きたく無いほど嫌いなのかと思っていたよ」

 

「苦手なタイプだけど、そこまでじゃないから」

 

「そうか覚えておくよ。それと、狙いは一応合ってるよ。好感度は上げておかないと、他クラスで結託される可能性を減らすためにはね」

 

会話が終わると、さっさと神室は洞窟の中に入って行ってしまった。受け答えを間違えたか?神室には正直に答えた方が好感が持たれるかと思って、質問には正直に受け答えをしているんだが、いまいち距離が縮まった気がしないな、まぁまだ日はあるんだ気長に話していくか。

 

さてさて、スポット更新の時間までにC.Dクラスの偵察は来るかな?Cクラスが来るとしたら龍園の使いパシリが、俺らは楽しんでます自慢をしに来るだろうが、Dクラスは誰が来るんだろうな。まとめ役である平田か、他クラスの生徒との交流が多い櫛田か、はたまた裏のリーダーであろう堀北か、まぁ誰がこようとBクラスとの交流みたいに好感は得られるようするだけだな。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

Bクラスが帰ってから時間が経って、お昼時になったぐらいに、また新しい偵察のような奴が来た。偵察に来た人は二人いるようで、一人は堂々とした振る舞いで、この洞窟の方に真っ直ぐに向かって来た。よくよくその姿を確認をすると、それはDクラスの堀北鈴音だった。まさか堀北が来るとは思わなかったな。他クラスへの偵察とはいえ、多少の交流が必要なのはもちろんなので、Aクラスにも知り合いがそれなりにいる櫛田などを連れて来ると予想していたんだがな。さっきは上手くやるとか思っていたが、まったく交流の無い、しかも堀北からは俺は認知されていないだろうし、さっき挙げた三人の中では一番やりにくい相手が来たな。

 

「神室。今回はサポートをよろしく頼む。俺はあの女子の方の堀北鈴音って人のことは聞く話しか知らない。だから、もしも俺と堀北の相性が最悪だった場合は任せたからな」

 

「分かった。でも、もしもの場合だけだから」

 

そうしている合間に、堀北ともう一人は洞窟の目の前に来て、俺たち二人の前に立っていた。

 

「えーとクラス名と名前を教えてもらえるかな?」

 

「私はDクラスの堀北よ。偵察に来たのだけど、中を見せてもらえる?」

 

堀北の言葉は節々に高圧的というか、棘を感じるみたいだった。こういうタイプは冗談なんかも通じないだろうな。しかも下手な嘘も見抜かれる可能性もあり、その場で追及なんかもしてくるだろう。まぁ何にしても普通にしていれば、特に揉め事なんかも起こらないだろう。

 

「問題ないよ。俺は下関涼禅よろしく。で、こっちが」

 

「……神室真澄」

 

俺が自己紹介を促しただけで、神室は心底面倒臭そうな顔でこっちを見てきたが、仕方ないと言った様子で名前だけでも名乗ってくれた。

 

「そう。ご丁寧にありがとう。でも、よろしくするつもりは無いわ。ああ、あなたも自己紹介をしたら?」

 

俺らとよろしくするつもりは無いらしい堀北は、隣に立っている地味だがイケメンと言われる男子に促した。

 

「俺は綾小路清隆だ。よろしく頼む」

 

は?……綾小路。綾小路キヨタカ?別人だよな?

違う違う、この人を人とも思っていない表情明らかにあの時に見たあの目と同じだ。

どうしてこんな場所にいるんだよ。

お前は……ホワイトルームの中にいるんじゃ無いのかよ

ずっと学校に通っていたのか。どうしてなんでずっと気づかなかったんだ。

いや、違う。気づいていた。俺はずっと分かっていたはずなんだ。クラス分けの表であいつの名前を見たはずなのに、部活説明会でも姿を見たはずだ。ボーリングの日にもすれ違っていた。生徒会の議事録でも名前を確認したはずなんだ。佐倉って女子にも綾小路と呼ばれていた。……分かっていたはずなのに。なんで無意識に避けていたんだ。どうしてどうしてどうして逃げていたんだよ。なんでなんでなんでなんでなんで、復讐するって誓ったはずのなのに。まだ俺は怖がっているのか?毎日毎日毎日夢に見るのに……あの日からずっと満足に寝れたことなんてなかったくせに。どうして気づけなかったんだよ。俺の人生をめちゃくちゃにした綾小路だけは。絶対に許すことなんて出来ないのに。例えこいつが恨み違いであろうと。

 

「ねぇ、あなた大丈夫なの?……その顔休んだ方がいいわ」

 

堀北が何か言ってるな。ああ、俺の体汗びっしょりだ。ははは、体の震えや寒気も吐き気も止まらないや。多分ひどい顔なんだろうな。まぁ俺の体のことなんてどうでもいい。

 

「問題……ないよ。神室二人を案内しておいて、あれよくわかんないけど、さっきみたいに。俺は休んでくるから」

 

逃げた逃げたまた逃げた綾小路から逃げた。勝手に託して逃げた。どこに向かってるんだ?いや、砂浜があるはずだ。そうだ頭を冷やそう。こんな醜い俺の姿なんて人に見せることは出来ないんだ。下関涼禅は完璧じゃないといけないんだ。

 

砂浜だ。砂浜だ。ああ頭を冷やそう。そしてまた戻ろう俺であって俺じゃない自分へ。

 

「……ホワイトルームなんてものがあったから。予定変更はする。あいつを綾小路清隆を退学させよう。そうだ。そうしよう。そうすればホワイトルームに傷をつけることが出来る。ホワイトルームをぶっ壊せる足かがりに出来るんだ。ははは、はは」

 

ああ、なんか疲れたなぁ。でも、頭は冷やせた。もう問題は無い。何も変わらないじゃないか。綾小路に復讐する機会が少し早く訪れただけじゃないか。そうだ。俺が狙っているとバレる前に退学をさせよう。あいつに敵と認知されたら俺なんて一溜まりも無いんだから。

 

俺がやっとのことで落ち着いたところで、砂浜の後ろにある森から葉が揺れる音がした。この無人島には動物は居ない。それは確認済みのことだ。じゃあ、この音は人がいたから出たんだろう。さて、誰かな?ここで綾小路だったら、俺は退学で済んだらいいがな。人を人とも思ってないだろうからな。

 

「なぁ出てこいよ。俺は別に暴力をしようとするわけじゃない。ただ交渉をしようと思ってさ」

 

俺の声を聞いて、物音が大きくなり、そして木の後ろから出て来たのは、神室だった。堀北と綾小路を頼んだはずなのに、いることは驚いたが、他の知らない奴よりも神室だったのは好都合と言える。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

私からの下関への評価は優秀でよく分かんないやつという評価だった。最初に会ったのは坂柳に命令されて連絡先を交換した時。その時も味方になったら坂柳がクラスを掌握するのは早くなるんだろうな。という葛城と一番親しい人間という印象しかなかった。

 

それから月日が流れて、この無人島に来るまでは本当に会話することは少なく、授業での一環ぐらいでしか話さなかった。なのに、無人島に来る前に坂柳に頼まれたおかげで、下関との仲を縮めなければならなくなった。情報を仕入れたら十分だと思って、質問を多くすることで、下関の情報を多く仕入れようと思った。

 

最初は坂柳が居ないことを理由にして接近しようと思ったが、橋本のせいでAクラスの擬似リーダーをやらされる羽目になったが、だがそれのおかげで接近することが簡単になった。

 

下関は私が思っていた以上に優秀だった。この無人島における試験の坂柳派の出方や他クラスの出方もしっかり予想した上で、戦略を立てていた。もしかしたら、坂柳にも匹敵するんじゃないかという頭の良さだった。

 

そんな想像以上の人間だった下関が、今私の目の前で全身を震わせて、汗を多くかいていた。顔は白くなっていて、明らかに怯えていた。原因は何かは分かんないけど、堀北ってやつの隣にいる綾小路の名前を聞いたとたんにこうなった。その綾小路も顎に手を当てて、呑気に考えてごとをしているみたいだし、下関も堀北が何回か声をかけてやっと反応をしめしていた。

 

でもすぐに、下関は堀北と綾小路を私に押し付けたどっかに行った。面倒なことを押しつけてくれたとは思うが、ここであいつを追いかければ、なぜこうなったか、もしかしたら弱点すら分かるかもしれない。そう思った私は自身が思う以上に早く行動に出ていた。

 

「あいつ偶にああなるから、私あいつを追いかけて来るから、適当に見ていていいから」

 

「え、ええ」

 

Dクラスの二人を置いて、下関が向かった方向に向かった。それなりの距離を走ると、そこは砂浜で、下関が海の中に顔をつけていたりしているだけだった。体は全身濡れているから、半袖だけ着ているあいつの背中がみえたけど、所々が変色しているように見えていた。

 

そこから何分経ったかは分からないが、顔をつけたり、全身を濡らしていた下関はやっと声を出した。

 

「……ホワイトルームなんてものがあったから。予定変更はする。あいつを綾小路清隆を退学させよう。そうだ。そうしよう。そうすればホワイトルームに傷をつけることが出来る。ホワイトルームをぶっ壊せる足かがりに出来るんだ。ははは、はは」

 

言っている内容で分かることは綾小路を退学させたいということだけだった他のことはよく分からなかった。

しかも、声は明らかにいつもと違って、暗く濁っている感じで私がこれまでの人生で聞いたことの無いような未知のものだった。あまりの異質さに私は動いて音を出してしまった。

 

下関もその音は聞こえたようで、喋らなくなってしまい。多分こっちの方をずっと見ているんだろう。

 

「なぁ出てこいよ。俺は別に暴力をしようとするわけじゃない。ただ交渉をしようと思ってさ」

 

やっぱりバレていた。こればっかりは仕方が無い。あいつと交渉をして何とか私が誰にも秘密を話さないと説得するしかないだろう。

諦めた私は下関の前に姿を現した。

 

「ああ神室だったのか。安心したよ知り合いで。でさ、交渉する前に聞きたんだけど、どこまで聞いたか聞いてもいいかな?」

 

こんなものはただの確認なのだろう。あいつの目は嘘を許さないと言っている。多分ここで嘘をついたら私は交渉の席にする立つことは無いのだと、予感めいたものを感じた。

 

「あんたがここで言ってたことは全部聞いた。でも、ところどころは分からないことばっかだった」

 

下関は近づいて来ながらも、なおも私に対して問いを掛けてくる。これは下関からが私を信用出来るかという確認だ。間違えた選択肢を選ぶわけにはいかない。

 

「じゃあさ。俺の言葉や様子を聞いてどう感じた?別に考察でも予想でも構わない」

 

近づいて来ていた下関はついに私の目の前に立った。改めて見てもひどい顔をしている。いつも教室で見ることがある顔と別人にしか思えない。

 

「予想だけど、あんたは昔綾小路に何かされた。それも、壊れるぐらいなことを。だから復讐として綾小路を退学させようとしたんでしょ」

 

「うん。まぁ大雑把に言うとそんな感じ。それで、それを他の人に知られるとまずいわけで、神室が信用と信頼出来る人間か見極めようと思ってさ」

 

「でも、あんたは人のことを信用も信頼もしないと言ってた。じゃあ到底無理な話だと思うんだけど」

 

「ああそうだね。でも、このことでは別。俺が復讐を狙っているって知っているのは一応神室だけ。康平も知らない。それに俺はこの人生かけたこの復讐では協力者が必要だと思っている。信用も信頼も出来る協力者が。ここまで言えば分かるだろう?」

 

「……私をその協力者にしようとしてる。じゃあ、あんたは私を信頼出来るっこと?無理でしょ。坂柳の隣にずっといる私を」

 

「それでも神室が適任だと今思った。非道な行いを咎ないだろうし。俺が復讐をしても無関心さを貫けそう。あと神室は今の人生に退屈しているだろうし、俺に協力すれば絶対に退屈は出来ない。あとは神室が坂柳を裏切れるかどうかだけど。どうかな?」

 

やっぱりこいつは意味が分からない。でも、ここまで私を買う奴なんていままで居なかった。坂柳とは自分の退屈を紛らわせるためにずっと付き合って来た。なら、長い人生の退屈を無くすために下関に協力するもの悪くない気がする。どうせ坂柳とは脅しで始まった関係だ。だったら偶には、自分の選択してみるのも悪くない。下関の復讐の結末にも興味が湧いてきたし。

 

「分かった。下関の協力者になる。あんたの復讐に最後まで付き合うから」

 

私の言葉を聞いた下関は、私の顔をずっと見てきた。嘘をついていないかどうかを見分けているのだろう。それを見ただけで柄にも無く緊張をしてしまった。

 

「分かった。俺は神室のことを信じるよ。これから神室だけは俺を裏切らないでくれよ」

 

そんな言葉を言った下関の顔はどこか悲しそうで、いつもは虚勢を張っているだけなんだろう。

 




今回の話では下関の過去について抽象的にしか書きせんでしたが、ゆくゆくは本格的に書こうかなと思っています。
そしてやっと、神室をヒロインポジションに持っていけたかな?
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