ようこそ葛城康平に補佐がいる教室へ   作:地支 辰巳

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流石に平均一ヶ月一話更新からは改善していきたいとは思ってはいます。





訪問 他クラスキャンプへ

やっと試験も3日目になって、クラスの奴らの動きも段々と良くなり効率が良くなってきた頃。

俺と神室は昼前になると、「長い間開けておくけどここをよろしく」と言う言葉を残して、他クラスへの拠点へ訪問することにした。とりあえず最初は近くにあるであろうBクラスの拠点へ行くことに。

 

「なぁこれは世間話なんだけなんだけど、Bクラスって強いって思うか?」

 

「いきなり、何?」

 

昨日にあれがあってから一日経ったので、流石の俺と神室もお互いとの距離感が分かってきたのか、スムーズで普通に会話が出来るようになっていた。

 

「いや、ちょっとした疑問でさ、前から結構考えていたんだよね。それで、神室との認識の共有的なやつをやろうかなと思ってさ」

 

「強いんじゃないの?一之瀬も優秀だし、クラス全員がお人好しで団結力もあるらしいから」

 

「まぁそうなんだけどね、逆にそこが強いからこそ、そこしか無いかなぁて思うんだよね」

 

懐かしいなぁ。よく康平とも中学生の頃から、議論を交わしていたのをすごい思い出すな。例え作戦だとしてもリタイアすることにしてしまった康平は今頃何してるかな。

 

「どういうこと?」

 

「うーん説明しにくいのだけど、この無人島試験みたいな、クラスとしての団結を求める試験なら、多分問題はない。でも、抜け道とかが平気で用意されているような特別試験なら、、誠実な一之瀬は簡単に高ポイントがもらえる抜け道よりも、ルールに基づいたあんまり美味しくは無い正攻法で挑む気がするんだよな。それでBクラスは一之瀬に全面の信頼を置いているから、反対することは無い。だから結果的に、時にはルールを破ることを躊躇うことが無いと思われる坂柳や龍園、綾小路なんかには一方的にやられる可能性があるってこと」

 

「結局長々話したけど、何が言いたいの?」

 

「まぁBクラスには例えcpで抜かされても、抜き返す機会はいくらでもあるよねってこと」

 

俺がここまで話していたのは全部仮定の話だけど、限りなく現実から考察したことだから、大体は当たっていると思う。もしリーダー争いが過激化して、内部分裂が起きて、特別試験がボロボロの結末になることなっても、逆転は用意だなと思ったから、神室に世間話程度で話しただけだ。まぁ綾小路がAクラスになったら追い返せる気なんてしないが。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

そんな風に話していたら、Bクラスの拠点の前まで来ていて、Bクラスからは俺たちの姿が見えて、俺たちからはBクラスの生活ぶりが見える状況になっていた。

 

状況的に敵であるAクラスの人間が、いきなり相手の領域に入ることは憚られるので、俺たちは今の位置で一之瀬辺りが来てくれるのを待とうと思ったのだが、目線の先に一之瀬がこちらに向かって来るのが見えた。

 

「えっと、下関君と神室さんはこの拠点の偵察に来たんだよね?」

 

「ああ、そうなるかな。迷惑だったら帰るけど、大丈夫かな?」

 

自分の事ながら胡散臭く、一之瀬の性格を知った上で、断りにくい言葉を使っている辺りが自分で自分の事が嫌いになってくる。

 

「二人にはAクラスの拠点を見せてもらったから……私と一緒なら見ても大丈夫だよ」

 

「ありがとう」

 

ここでポイントをどれだけ使ったのかを聞けば、Aクラスのポイント詳細を知ったという借りのような思いを持った一之瀬は多分答えてくれるだろうが、流石にそこまでするのは気が引ける。

 

それから、親切な一之瀬にBクラスを案内してもらった。他のBクラスメイトからのちょっとした目線などは多かったけど、一之瀬は普通にしてくれて、ハンモックを使っていたり、俺も手をつけなかったウォーターシャワーなるものも設置していることなんかも、教えてくれた。

そしてBクラスのキャンプには報告通りCクラスの金田がいて、違和感無く、自分から手伝いなんかも申し出ていた。普通に笑顔が多く、意外にも演技派だった。

 

流石団結力のBクラスだと言われるだけあって、総じてBクラスの拠点は整っていて、このまま行けば無難な成績は残せるだろうことは考えられることだった。

 

「ごめんね。こんな感じでいいかな?」

 

「うん。ありがとう参考になったよ。これから俺たちは他クラスの拠点にも行くつもりなんだけど何か知っていることとかはないかな?」

 

「う〜ん……下関君はなんでも知ってそうなんだけど、Cクラスの拠点にはもう誰も残っては居ないみたいだよ」

 

これも情報通りか。西野や他の奴の情報を信用していないわけでは無いが、龍園はいくらでも戦略を変えて来る可能性があるからな。最新の情報を仕入れておいて損は無いという訳だ。

 

「ありがとう一之瀬さん。また機会があったらAクラスの拠点へ来てくれ。情報交換ぐらいは出来ると思うから」

 

「うん!色々ありがとうね下関君と神室さん」

 

Bクラスの拠点から離れた俺たちは、Cクラスの拠点であった浜辺へ行くことになった。もう誰もいないらしいが、まぁどうせ全クラス回るつもりだったし、何かしら残っていることかもしれないので、行かない選択にはならない。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

特に会話することも無いので、無言のまま進むんで行き、森の中を超えるとそこには何も無い浜辺が広がっていた。そこには少し前までCクラスの生徒ほぼ全員が遊んでいたとは思えないほど、何も無く人がいた形跡がまったく無かった。それでも、ここがCクラス拠点だと分かったのは、まだCクラスの担任である坂上先生が運営用のテントで椅子に座っていたからだ。見るからに暇そうだが、Cクラスの生徒がスパイが他クラスに残っていたり、龍園がいるから、帰ろうにも帰れないのだろう。

 

龍園?……そういえば、龍園は今いったいどこに隠れているんだ?俺は龍園の戦略と最終的な目的などは分かっていたが、あいつがこのタイミングで見つからずにどうやって生き残るかは考えてはいなかった。特段気にすることでも無いとは思うが、何故か無性に気になってしまっている。この無人島内で龍園以外の全員が、気づかない場所か。考え込んでしまうな。

 

「熱いんだけどここ。早く次のところに行かないの?」

 

「ああ、そうなんだけど。少し気になることがあってさ。龍園ってどこにいると思う?」

 

「さぁ。その辺でのたれ死んでいるじゃないの?」

 

「まぁ確かに。それだったらリタイアしてくれているし、安心なんだけど……」

 

とりあえず……龍園は置いておくか、金田や伊吹がいる限りは作戦を変更していないってことで、知れている計画ほど警戒するものでは無いからな。だけど、念のために偵察をさせていた奴らに探させてはみるか。見つかったらラッキーという感じで。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

そこからまた歩いて、Dクラスは川の近くに拠点があるというので、川沿いに林の中を進んで行くと、開けた場所に到着した。そこは川の近くの平地で他クラスの拠点よりは涼しく、段差も無いので過ごしやすい良いところだなと思った。

 

Dクラスの生徒は大体半分ほどが残っていて、その中にはDクラスの中では優秀な平田や堀北なんかが居た。そして高スペック無表情の綾小路も普通に作業なんかしていて、報告にあった伊吹も居心地悪そうな感じで座っていたりしていた。

ここもどさどさ入って警戒される訳にはいかないので、平田か堀北なんかが来るまではじっとしてしていると、こちらに気づいてくれたようで平田が寄ってきてくれた。

 

「久しぶり下関くん。ここには……偵察とかに来た感じかな?」

 

「ああ、そうなんだ。どうだろう入れてくれるかな?」

 

「うん。もちろん構わないけど、みんな警戒しているのだけは分かってくれて欲しいんだけど……」

 

「問題ないよ。そのくらいの気遣いぐらいは出来るつもりだから」

 

そこから平田に案内される形で、Dクラスの拠点を見学していった。トイレやシャワー、テントなど特に言うことは無い、無難なお手本と言ったような感じだった。Dクラスの奴らも3日目ともなると、ここの生活にも慣れてきたようで笑顔なやつらが多いような印象だった。

 

一通り見て回ったなと思って、少々平田と雑談をしていると、こちらに堀北がやって来るのが見えた。綾小路という存在が居るのが分かってからは堀北は綾小路の操り人形なのかとも考えたが、さきほど俺が来てから二人が近寄った様子が無いところから、完全な人形というわけでは無いようだ。

 

「平田くん。少し彼らと話をしたいのだけどいいかしら?」

 

こんな堀北の直球の威圧的な雰囲気のある言葉で聞かれても、平田は笑顔を崩さずに対応していた。流石平田だな。俺的にD組の中では色んな意味を含めてもクラスのことを気軽にしっかり話せる人間なだけはある。

 

「もちろん大丈夫だよ堀北さん。じゃあまたね下関くん、神室さん」

 

「ありがとうな平田。……それで何の用なのかな堀北さん?」

 

「ええ、貴方達に色々と聞きたいことがあるのよ。昨日行った時はあなたが体調が急に悪くなったようで聞けなかったから」

 

わざわざご丁寧に「急に」という部分を強調されはしたが、まぁこれは仕方がないな、俺が綾小路を見ただけで体調を崩したのが悪いんだから。さてさて何を聞かれるかな?

 

「まず直球に聞かせてもらうけど、貴方達二人はずっと行動しているの?もしそうだったらお互いずっと隣に誰かが居てストレスが溜まることになるわ。そこまでして一緒にいる理由を聞かせてもらえるかしら?」

 

これは神室がリーダーなのか探られているのかな?でも、今の俺は神室がずっと隣にいることにストレスなんかは感じていないが、神室が感じているかどうかは確かに気になるところだな。

 

「まぁ俺はストレスには感じていないけど、神室はどうなんだ?」

 

「なんだかんだ言って、下関といるのも退屈しないし、一緒に居るだけだけど?」

 

「そう、なら貴方達は親しい間柄だから、ずっと一緒にいるのだと。理解に苦しむのだけど、そう言いたいのね?」

 

「そうは言っていない、俺たちは一緒に居ないと今回の試験に差し支える事柄があるから一緒にいるんだ」

 

「それはどちらかがリーダーだからということなのかしら?」

 

やっぱり食いついてきたか。今回の試験Dクラスの戦術は知らないが、今日見ていた感じはポイントを頑張って残そうとしている感じが見てとれていたが、クラスを引っ張る側である堀北の様子を見ると、リーダー当ても可能ならば狙いたいと言うところか。

 

「いや、違うよ。俺たちAクラスは派閥争いがあってね。その二人のリーダーは今回は休んでいるから、それらのリーダーの補佐である俺らが仲良くすることで団結しようって作戦だからだよ」

 

「……そういうことね。じゃあもう一つ聞きたいのだけど、AクラスにCクラスからのスパイが居ないのは何故なのかしら?」

 

疑問には思うよな。俺としてはBクラスから質問が来なかったことの方が驚きなくらいだ。それが一之瀬の優しいかどうかは知らないが、さて何と答えるべきかな。

 

「それは俺が聞きたいぐらいだ。龍園にとってAクラスがスパイを寄越す必要の無いほど弱いと思っているのか、それともAクラスが非情だろうと思われたのかどちらかだろうな」

 

「じゃあそういうことにしておくわ。これで私が聞きたいことはなくなったから」

 

俺の答えに不満なのかは知らないが、俺からの答えを聞くと、帰ろうとしたので、こちらからも聞きたいことがあるので引き止めることにした。

 

「ちょっと待って堀北さん。俺からも聞きたいことがあるんだ」

 

「何かしら?敵である貴方に対して答えられることは少ないのだけど」

 

「そんな事は分かっている。俺が聞きたいのは何でこちらの拠点に来る時に綾小路を連れて来たのかを聞きたいんだけど?」

 

綾小路の話題を出すと、露骨に堀北は顔を顰めた。そんな表情をされると、より堀北と綾小路の関係が分からなくなるんだけど。

 

「そのくらいなら答えるけど、彼がこのクラスの戦力なるかを確かめていたのよ」

 

「そうなんだ。それで綾小路は堀北さんのお眼鏡にかなったのかな?」

 

「いえ、期待外れもいいところね。期待していた私が馬鹿だったわ」

 

いや、分からないな。演技って感じもしないし、本気で落胆しているように見える。本当にそれだけのために連れて来たのか?でも、まぁ良いか。ここからゆっくりと見極めていくことにしよう。

 

「ああ、ありがとう。それじゃあ俺たちは帰るよ」

 

特にそれから堀北と会話することも無く、Dクラスの拠点を去ることにした。

 

Aクラスの拠点へ帰る途中に、俺は徐に口を開くと、神室に対して話しかけた。

 

「それで、朝、言ったことは出来た?」

 

「問題無いけど。あんたに言われた通り、ずっと人間観察に勤めていたけど、リーダーは多分BクラスはCクラスのスパイにほどよい距離でいた女子、Dクラスは堀北なんじゃないの?こっちを警戒しているかどうかでしか判断してないけど」

 

「ああ、Bクラスはあの子か。よしそれじゃあリーダー指名はそれにしようか」

 

「私の意見全部採用するつもりなの?」

 

「うん。どちらも報告にあった通り、スポット更新組に毎回いたから、合っている確率は結構高い。まぁ堀北が警戒しているのは気質なのかもしれないけど、どうせDクラスに対してはリーダー当てするつもりは無いからね。ありがとう神室。これでこっちの目標通りにいきそうだよ」

 

「はいはい。どういたしまして」

 

さてと、これで無人島試験でやることはほとんど終わったな。あとは他クラスの状況を確かめてながら、暇があったら龍園を探して7日目まで過ごすことになるな。

 




流石に無人島前半に詰め込め過ぎたかなとは思っていますが、ここからあと数話で無人島編は終わると思います。


よう実の新刊が楽しみです。一年の出番はあんまり無さそうだけど、石上のデザインとか活躍を見たいなと密かに期待したりしてますね。




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