ようこそ葛城康平に補佐がいる教室へ   作:地支 辰巳

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第4巻始まります。


第4巻
各種各様 つながりは固く結ばれる


 あの無人島試験から、何日か経った今日。未だに、試験が開催されるような気配や陸に着くような感じもしない。そんな空気感だからなのか、生徒たちも最初は警戒していたようだけど、今となっては素直に楽しんでばかりだった。

 

 それは、俺も例外では無くて、今日は人と会う予定が3つも入っていた。

まず、昼前ぐらいから、弓道部の三宅と吉本と一緒に昼飯を食べたり、遊んだりする約束をしている。弓道部の面子で遊んだことないよなってことで、俺が誘って実現した。思ったよりも楽しみだ。

次は9時ごろから飯を食いながら橋本と喋る予定をしている。あっちから誘って来たからどんな話をするか知らないが、無人島試験のことや俺に対するアプローチが聞けるかなとは思っている。

最後に日を跨ぐ前に、西野と会うことになっている。これは俺が誘って、無人島試験のお礼とこれからのことについて話すためだ。

 

3つとも色んな意味で有意義な時間になるとは思っているので、今日という日をめいいっぱい楽しもうとは思う。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

「よぉ、二人とも。ちゃんと来てくれてみたいで、嬉しいよ」

 

 二人とも遅刻することは無く、時間通りに来てくれた。服はどうやら私服のようで、三宅は地味な色合いながらも、似合っていてイケメン感が倍増していて、吉本は若干色合いが派手だが、おしゃれに見える。二人とも柴田とか平田とかその辺が強すぎて薄くなりがちだけど、イケメンなんだと実感出来るよ。

 

「それで……最初はどこに行くんだ?」

 

「んー昼飯じゃね?下関何か目星とかつけてる?」

 

「ピザとかパスタとかどうかなって思うけど、どう?」

 

 ただの俺の食べたいものを言っただけだけど、二人とも賛成してくれたみたいで良かった。

 船内にあるイタリアン店に入ったけど、中は一組、二組程度で、客はあんまりいないようだった。三宅はピリ辛のパスタ。吉本はカルボナーラ。俺は和風パスタを頼んで雑談をしながら食べていた。

 

「そういえば俺たちってさ、いつまでも苗字で呼んでるの何か変じゃないか?」

 

「そうか?……別にそんなこともないと思う」

 

「まぁいいんじゃない?明人、功節」

 

 不意打ち気味に名前で呼んでみたら、功節は笑っていて、明人は照れ臭そうにこっちと目を合わせようとしなかった。こんな感じで人のことを名前で呼ぶなんて康平以来かな?前までは、アレがあったり、心に余裕が無かったから呼べなかったけど、今ならこの二人にぐらいには呼べるかもしれない。

 

「なーに、わざわざイケボで言ってんだよ涼禅」

 

「本当……男子はわざわざ名前で呼ぶって事前に言うものじゃないだろ」

 

 その後も楽しい雑談の時の過ごした。この二人といると、康平と一緒にいる時や神室と一緒に居る時とは違う感じで、楽だし心地いいんだよな。こんな恥ずかしいセリフわざわざ言わないけどな。

 その後は、プールに遊びに行ったり、マッサージ店に行ったりした。そんなこんで、この二人と遊ぶ時間は終わりに近づいて来ていた。

 

「今日はどうだった二人とも?」

 

「すげぇ楽しかったよ!他クラスの奴とは遊ばないから、新鮮だったしな」

 

「俺も……久々に遊べて楽しかったよ」

 

「ありがとな。また、誘うよ」

 

 楽しかった。ただそれだけでいいじゃないか……。あの二人とは本来違うクラスで競争相手、普通ならば遊んでいないはずだ。それが、遊べたんだ。裏切られるとかそういう関係性では無い。だから、これからも付き合っていっても大丈夫なはずだ。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

 夜21時、生徒たちは昼間からまだ遊んでいるやつや、疲れ切って寝てるやつが多い中、俺は船の中にある焼肉屋に来ていた。事前に聞いていた通り、個室のタイプの焼肉屋で橋本一人しか居なかった。

 

「よぉ。まぁ、座れよ。どうだった今日は?下関はモテるから、女遊びでもしてたんだろ?」

 

「そんな訳ないじゃないか。遊んでたのは男だよ」

 

 相変わらず剽軽とした態度で腹が立つけど、元々橋本のスタンスは好きでは無いので、今更だ。

 

「男か。下関はそっちの方もいけたのか初情報だな。覚えておくぜ」

 

「橋本。冗談もほどほどにして、本題に入らないか?」

 

俺が本気で嫌そうにして圧をかけて問いかけると、橋本も切り替えは早いのか、一瞬にして真面目そうな雰囲気を漂わせ始めた。

 

「まぁ、今回誘ったのは、無人島試験のことが主だな。俺は坂柳の命令で仕方なく、龍園の野郎に取り合ったのよ。それで、あいつには色々情報を渡してしまったから、それの謝罪だな」

 

 予想通りの内容か。だが、俺も事前に予想していたとは言え、何故こんな話を橋本がわざわざ俺にするかが分からない。橋本が俺のことをどう評価しているかは分からないが、その事が俺にバレているのかも分かっていないのに、話すのはリスクしか無い。いや、あえてリスクしか無い情報の提示で俺の反応を窺っているのか?それならば、今言う説明が出来ないこともないか。

 

「謝罪か……後から考えたんだが、龍園が俺がリーダーだとしっかりと当てるには元々リーダーであった神室から聞くしか無い。だが、神室は俺とほぼずっと居た。Cクラスの拠点に行って帰ってくるような時間は無い。だったら、残るはやっぱり橋本お前しか居ないよな」

 

「本当それについては申し訳ないとは思ってるんだぜ?でも、うちんとこの姫さまは結果をお望みだからさ、仕方ないだろ?」

 

 橋本の言う通り坂柳は結果を重視する人間だ。それに、失敗をすればどんな罰を与えるか分からないという不気味さも兼ね備えている。このような点が坂柳を坂柳派のリーダーとたらしめているんだろうな。

 

「怒ってはないよ橋本。俺たちAクラスは結果的に2位になったんだ。その過程で橋本が何をしようとも今更関係ない」

 

「そう言って貰えると、ありがたい」

 

「だが、それとは別に二つ気になることがある。まず、お前が謝罪をしようとした目的はなんだ?それと、これは橋本の意志なのか?それとも坂柳か?」

 

 橋本がもし坂柳の命令で謝罪に来たのだったら、俺の反応次第で神室との関係を探って来ている可能性が高い。その場合、俺は神室を守るために、坂柳と表立って対立しなければならないかもしれないし、葛城派を一旦とは言え辞めなければならないことにもなるかもしれない。それは現時点ではメリットが無さすぎて、避けなければならないことだ。

 

「目的は後で語るとして、ここには俺の意志で来てるぜ。先に言っておくが、俺は最終的にAクラスで卒業出来れば良い。この意味が分かるよな?下関」

 

 雰囲気から何となく察していたが、やっぱり橋本はそういう人間だったか。自身が最終的に勝ち残るためならば、どんな奴とでも手を組むスタイル。だったらやっぱりこの会合の目的は……

 

「勝ち残るためにどんな奴とでも手を組んで行くということか」

 

「そういうこと。だから見込みのある人間にはすでにつながりを作っている。今のところ坂柳が一番勝つ見込みが高いからそっちについているが、龍園にも見込みがあるから、今回は恩を売ってつながりを作らせてもらったということよ」

 

「俺が今回来た目的は、下関お前にも見込みがあると思ったから、取引をしに来たんだ」

 

 はっきり言えば、他人の信頼を裏切るような野郎は嫌いだ。だが、橋本はわざとそれを相手に悟らせようとしている。自分を裏切らせないように頑張ってくれよという風にな。こいうのを勝ち馬に乗る才能があるというのか、そう言われるように努力しているかは分からないが、直ぐに裏切るような奴とは違うみたいだな。

 

「俺にも恩を売っておくってことか」

 

「そうとも言うが、下関にも得がある取引だと思うぜ?さりげなくだが、情報も提供するし、少しぐらいは下関に有利な意見も出す。どうだ?」

 

 神室で坂柳派の情報は足りていると言える状況だが、実際、悪くは無い取引だ。俺は特に差し出すものは無くていいわけで、橋本が持って来る情報に少し警戒しておくだけでいいということだからな。団結力という点では他クラスに圧倒的に劣っているAクラスではもしかしたら、有効に使える場面があるかもしれないからな。

 

「良い取引だな。一応了承だけはしておくよ。俺はもうちょっとだけ裏方でいたいからな」

 

「了解。じゃあ今後ともよろしく頼むぜ」

 

 その後の話は無難なことしか話さなかった。この話し合いでは、収穫が多くとあったと思っていい。一番はやっぱり信用出来ない情報源が出来たことだな。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

 従業員しか来なくて、携帯の電波も通じない船の一番下層部。こんな時間に来るだけで何かが出ると思わせるほどの暗さと人気の無さ、それが逆に良いと言う人間もいるだろう。例えばスパイと雇い主みたいな関係の密会などで来ている俺みたいな人間が。

 

「また、ここですかー?寒いんですけど」

 

「仕方ないだろ。お前との関係を他に知られないようにするためには、他に良い場所が無いんだよ」

 

 西野の服装はパジャマに上着を羽織っているだけの格好で、もう他の生徒は寝静まっている時間なので、パッと来てパッと帰るつもりで来たのだろう。

 

「それでこれは何のための会合ですか?出来れば早くしてくれませんか?眠たいんで」

 

「まず、今回の無人島では情報をくれて感謝してる。この報酬はいつもの所に振り込んでおくよ」

 

 西野にはCクラスの動向を続けてもらう必要があるからな。今回の報酬はこれからのことも含めて多く振り込んでおくか。

 

「まぁ、それはいいですけど。無人島が何であの結果になったとかも聞きたいんですけど?」

 

「ああ、その辺はしっかり説明するよ」

 

 Cクラスの過半数はすぐにリタイアしてしまったからな、何故Dクラスが一位になって、Cクラスが最下位になったのか知りたいんだろう。

 俺は出来るだけ客観的に無人島で何があったのかを説明しつつ、最後にはDクラスの中には怪しい策士がいるとだけ言っておいた。今ここで綾小路の名前を出す必要は無い。何人も俺の復讐に巻き込むつもりなんて無いからな。

 

「へぇーそんなことがあったんですね。……それじゃあ私もう帰ってもいいですか?」

 

「いや、後一つ言いたいことがある。これから、俺は時折、裏から表に出つつ、Aクラスの統一を少しずつだが、進めていこうと思っている。そこで、西野を使うことも増えて来ると思う。……それだけは言っておこうと思ってな」

 

「はいはい。分かりましたよ。私はもう寝ますから」

 

 あんまり嫌そうな顔はしなく、微笑を浮かべて西野は去って行った。今日会った全員とは話したことで、少しは見えてきたものがあると思う。……復讐には関係ないけど、この学校を上手く楽しく生きて行く為の関係も大事なのかもしれないな。

 

 

 

 




よう実の新刊が出るたびに新しくイラストがついたキャラのイラストを見るのが楽しみ。
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