ベンKさん誤字報告ありがとうございます!
無人島試験終了からはや数日。今日この日、充分な休息をした生徒たち全員に学校側からメールが届いた。うるさく甲高い音を伴って届いて、寝ていた俺も起こされたぐらいなので、全生徒が気づいていることだろう。
『生徒の皆さんにご連絡いたします。先ほど全ての生徒宛に学校から連絡事項を記載したメールを送信いたしました。各自携帯を確認し、その指示に従ってください。また、メールが届いていない場合には、お手数ですがお近くの教員まで申し出てください。非常に重要な内容となっておりますので、確認漏れのないようお願いいたします』
念入りに放送で確認を促してくるくせに、メールの内容については全く触れてこない。わざわざこんな二度手間なことをするということは、緊急を有する非常事態では無くて見なければならないもの……特別試験関連か。まぁなんにしてもメールをみたほうが早いか。
『間もなく特別試験を開始いたします。各自指定された部屋に、指定された時間に集合してください。10分以上の遅刻をした者にはペナルティを科す場合があります。本日18時までに2階201号室に集合してください。所要時間は20分ほどですので、お手洗いなど済ませた上、携帯をマナーモードか電源をオフにしてお越しください』
やっぱり特別試験ということで、相談するために康平と連絡を取ろうとしたんだけど、すでに神室からメッセージが一件来ていた。内容は簡潔に『20時 201号室』だけだった。後で聞こうと思っていたことを先読み出来る。流石、仕事が出来る人は違うね。
『康平。何時からだった?』
『20時40分からだ。涼禅は何時だ?』
『俺は18時からだった。多分ルール説明ぐらいしかしないだろうし、俺のが終わったら部屋で作戦会議でどうかな?』
『問題無い。俺はその間に涼禅より早く終わりそうなやつに、話を聞いておこう』
『了解』
無事、康平との作戦会議の予定を取り付けられたけど、今から何をしようか。呼び出される時間が違って試験が行われないのはほぼ確実だから、ルール説明だと思うことしかまだ考察出来る部分は無い。だから、今からやることはほぼ無いと言って良いに等しい。
だったら、ようやく悪夢を見ずに深く眠れるようになって、今までの睡眠を取り戻す意味という意味で、時間が来るまでにまた寝ることにするか。
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俺は少々遅刻しかけている。起きたのがちょうど17時50分。そこから、もうダッシュで部屋から出て階段を駆け登っているのが今だ。目覚ましもかけずに寝たのが不味かったな。眠りの悩みから解放されたから、ついつい油断してしまったな。さて、間に合えばいいけど。
201号室のドアを乱雑気味に開けて広がっていた景色は、Cクラスの担任よ坂上先生と同じAクラスの葛城派である町田とAクラスの坂柳派の森重が二人椅子に座っているものだった。何というか、微妙な関係の人しかいないな。
「揃いましたね。では、少し早いですが進めてしまいましょうか」
まず初めに、坂上先生によると今回の特別試験は干支になぞられた12のグループを、各クラスから三人から五人を集めて一つのチームとするらしく、今この部屋に集まっているのがAクラスのメンバーだそうだ。しかも、『シンキング』の能力が問われる試験らしい。
「そして、これが君たちが所属する『卯』グループのメンバーです。退出時には回収しますのでそのつもりで」
何故、干支なのかという疑問は絶えないが、そんな疑問はグループのメンバーを見たときに消え去ってしまった。
Aクラス・下関涼禅 町田浩二 森重卓郎
Bクラス・一之瀬帆波 浜口哲也 別府良太
Cクラス・伊吹澪 真鍋志保 藪菜々美 山下沙希
Dクラス・綾小路清隆 軽井沢恵 外村秀雄 幸村輝彦
……綾小路がいる。もう名前を見ただけだったら問題はないけど、こんな偶然が起こることに喜びなのか不安なのかは分からないけど、感情が大きく震えてしまう気がした。ああ、ダメだ。どうしても綾小路に引っ張っられてしまう。早くメンバーをメモらないといけないのに。
俺が手間取りながらもメモをし終わったのを見届けてから、坂上先生は説明を再開してくれた。意外にも他クラスに優しい先生だな。
今回の特別試験は明日から3日間行われるようで、やることは主にメールで自分が優待者かどうか確認することと、一日に二度一時間ほどグループのメンバーが集まり話し合いをすることらしい。この試験の目的は自身のグループの優待者を当てることで、その答えは試験終了後に一人一回学校側に送ること。
ここから答え方とか状況次第で、結果が四つに分かれる。
結果1は優待者と優待者と同じクラスの生徒を除く他の生徒の解答が正解していた場合、全員が50万ptを得る。
結果2は優待者と優待者と同じクラスの生徒を除く生徒の内、一人でも未解答・不解答の場合、優待者が50万ptを得る。
結果3は試験終了を待たずに答えを学校に告げて正解していた場合、答えた生徒のクラスは50cpを得て、答えた生徒は50万ptを得る。見抜かれたクラスは50cpを失う。この瞬間試験は終了となる。
結果4は試験終了を待たずに答えを学校に告げて不正解の場合、間違えた生徒のクラスは50cpを失い、優待者は50万ptを得て、優待者のクラスは50cpを得る。この瞬間試験は終了となる。
簡単には理解することは出来たが、複雑そうな試験であることには違いないか。簡単な人狼ゲームかと思えば気は楽だが、人狼で肝となる役職なんかは無く、自分の洞察力だけで優待者を当てなければならないのはなかなかにつらい。だけど、そんな試験では殆どが結果2になってしまい試験としての形を成さない。だから、試験の目的となるであろうことは、優待者となる条件を考えるという意味で『シンキング』の能力を測るこということかな。
他にも坂上先が細かい説明をなさっていたが、その辺は後でまとめて康平と打ち合わせをすればいいだろう。幸運にもグループが綾小路と一緒になったことで、綾小路の探りは出来そうだから、今回の特別試験で当初の予定よりは康平に対して協力することが出来るかな。
「下関。これから葛城さんと会うのか?」
「ああ、そのつもりだけどどうしたんだ?」
「見たところ下関はメンバー以外はメモっていなかったから、この特別試験の説明のメモを葛城さんに渡しておいてくれ」
町田は特別試験のメモ用紙を渡すと、去って行ってしまった。今回は後で康平も聞くだろうからと、メモっていなかったからありがたいな。康平にも町田からのメモだとしっかり伝えておくか。
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部屋に帰るともう康平がいたので、今回の特別試験に関することを町田のメモを見ながら俺の見解込みでの説明をした。
「ふむ。この町田のメモに書いてある優待者の公平で厳正な調整という部分から察するに、各クラス3人ずつ優待者がいるとみて良さそうだな。自身のクラスおの優待者を把握することが先決か」
「だけど、康平も分かっているとは思うけど、その部分では俺たちAクラスは後手に回ると思う」
「ああ。坂柳派の人間は俺に対して、自身が優待者だと明かさないだろうな」
「それを鑑みると、優待者になる条件を考える試験なのに、大分不利になるだろうね」
今回はCクラスが有利かな。独裁体制で確実に自クラスの優待者を知れる点に加えて、龍園の声一つで他クラスの人間を買収するほどのポイントを用意出来る。また坂柳派の奴と組まれる優待者の情報が漏れそうで、厄介だな。
「康平はここまでで今回、どんな戦略でいくかは練れた?」
「優待者が誰かは集められるだけ集めるとするが、目標は2学期に響かない結果1、2を目指す方向にするか。それを達成する意味でも、この試験が話し合いに重きが置かれているとブラフをかける意味でもAクラスは話し合いに参加しない姿勢で統一だな」
確かに良い戦略だと思う。もちろん誰かが優待者の法則性に気づいた時点で終了だが、少なくとも二日は持つだろうな。
「もちろん、涼禅の考えている懸念も分かる。Cクラスに無人島では一位だったDクラス。この試験の狙いに気づき、優待者の法則を当てるクラスも現われる可能性もある。その場合に備えて、一度どこかのクラスと取引をする予定だ。協定も結べればベストだな」
「こっちから優待者の情報を出して、相手からも出してもらうのか。手っ取り早く情報を得るには最善か。それを元に相手も気づいたとしても協定を結んでおけば、Aクラスの優待者が全員当てられることが防げる。メールに細工は出来ないから、欺しにくいのもある。なかなかいいんじゃないか?」
「ああ。それですまないが、涼禅に今回やってもらいたいのは、Aクラスの優待者を全員調べてもらうことだ」
「問題ないよ。なんとかそれくらいはしてみるよ」
そのくらいなら、綾小路を調べる片手間でも出来るか。もし坂柳派に優待者が行ったとしても、神室から聞けばいいし、最悪橋本から取引でもなんでもして聞き出せばいいからな。
康平が時間になって部屋に向かうのを見届けた俺は、先に送っておくという意味で、西野に自身のグループのメンバーとCクラスの優待者が分かれば送るように連絡した。はっきり言えば、側近では無い西野がCクラスの優待者を把握することは厳しいかなとは思うが、西野自身が優待者の可能性もあるので聞いておくだけ価値はあるだろう。
帰って来た康平のグループである辰グループを見たときは非常に驚いた。
Aクラス・葛城康平 西川亮子 的場信二 矢野小春
Bクラス・安藤紗代 神崎隆二 津辺仁美
Cクラス・小田拓海 鈴木英俊 園田正志 龍園翔
Dクラス・櫛田桔梗 平田洋介 堀北鈴音
「うわーこれはなかなかだね」
「ああ、明らかに各クラスのリーダー格が集められている」
「今更言う必要は無いと思うけど、龍園には気をつけて」
「……そうだな。すでに龍園とは対峙したが、奴は狂犬だな。涼禅も気をつけたほうが良い」
対峙したか。龍園は裏をとりがちで煽りぎみだから、康平と相性が悪いんだよな。出来ればグループ内でもめないといいけど……。
「それに、Dクラスも無人島では良い結果を残している。こちらも油断することは出来ないだろうな」
まぁ個人的な意見なら綾小路がいる俺の卯のグループの方が警戒すべきだけど、綾小路がどこまでDクラスを物にしているか分からないので、警戒するにこしたことはないか。
「了解。とりあえずは明日の優待者発表まで待機かな」
「そうだな」
さて、優待者になれたら色々と楽だから、なりたいな。
ルール説明分かりにくかったらすみません。