すいむさん誤字報告ありがとうございます!
説明会から翌日。俺は康平と共に優待者発表の瞬間を部屋で待っていた。そして、午前8時きっかりに俺と康平の携帯が同時に鳴った。
『厳正なる調整の結果、あなたは優待者に選ばれませんでした。グループの一人として自覚を持って行動し試験に挑んで下さい。本日午後1時より試験を開始いたします。本試験は本日より3日間行われます。卯グループ方は2階卯部屋に集合して下さい』
まぁ、そんな簡単に選ばれるわけ無いよな。優待者になれれば色々と手間が省けて楽だったんだが、なれなかったらなれなかったなりに取れる戦略は色々あるからな。
康平の携帯も見たが、康平も優待者では無かった。少し考えてみたけど、俺と康平が優待者では無いという情報だけでは優待者の法則にたどりつけないか。やっぱり情報を集めないと。
「康平。あの作戦で行くことに決定でいいんだよな?」
「ああ。だが、どちらのグループにもリーダー格が存在しているから、俺達は会話することが増えるだろうな」
「了解。一之瀬にも気をつけつつも友好的に接しておくよ、取引相手の第一候補だからね」
♠ ♠ ♠
康平との会合が終わり、いよいよ試験開始の時間となった。今の時間までに葛城派の連中に声をかけて、優待者を二人ほど把握することに成功して、神室からも坂柳派の優待者の情報をもらえた。これで、Aクラスの優待者はすべて把握出来たので、勝利に一歩近づいたと言っていいだろうな。まだ、法則性については考えられていないけど。
途中で出会ったAクラスの同じグループである町田と森重と共に試験部屋の中に入ると、すでにBクラスが部屋の中央に円のように並んでいる椅子に座っていた。その中で一際存在感を放っている一之瀬は入って来た俺たちに微笑んできたが、特に言葉を発することはしなかった。全員が揃うまで待っているのか、それとも、俺たちを警戒しているのかな……?
それから少しだけ経ってCクラスのメンツが来て、Dクラスの軽井沢も一人で入って来た。最後に綾小路含めたDクラス三名が来て、卯グループ14名全員が揃った。椅子は大体クラス別に座っているが、それがこの学校での特色をよく表していると実感出来るな。
『ではこれより一回目のグループディスカッションを開始します』
こんな感じで始めるとなると誰かが会話を回すことになりそうだな。まぁ、その役目は一之瀬がやるだろうし、俺が極力喋ることはないか。
「はいちゅうもーく。大体の名前は分かっているけど、一応学校からの指示もあったことだし、自己紹介したほうが良いと思うな。初めて顔を合わせる人もいるかもしれないし」
予想通り一之瀬が出てきたが、周りの反応はさまざまだった。特に隣の町田は今回の作戦を忠実に守っているのか、外界との繋がりを避けるため一之瀬に対して突っかかった。うーん、俺の方をちらっと見てから突っかかるのは辞めてほしいし、一之瀬は取引相手の可能性があるから、あんまり突っかかて欲しく無いな。
まぁ提案通りに、自己紹介は全員したけど特に何も起こることは無かった。
「さてと、これで学校からの言いつけは果たせたかな?それでこれからのことだけど、どうやって進めていこうか。私が進行役をするのが嫌なら言ってもらえる?」
「あ、じゃあ一言だけ良いかな?」
俺が発言しようとしただけで空気が重くなった感じがした。Bクラスのメンツが睨らんできたり、町田や森重から息を呑んだからだ。
「いいよ、下関君」
「一之瀬が進行するのは構わないけど、場合によっては変わってもらってもいいかな?」
「うんうん、もちろん大丈夫だよ」
この会話にそこまで大きな意味も無いかもしれないけど、これからAクラス全体が黙秘を続けるとなった時に、俺だけは話せるかもしれないと他クラスに知らせるという意味では良かったと思う。
「まず今回の試験を始めるにあたって、分からない点や疑問点、気になる部分があったら皆で話し合うべきだと思うの。そうじゃないといつまでもシーンとした状況が続いちゃいそうだし。誰か質問はある?」
一之瀬が明らかに俺や綾小路へと周りを見渡す中、他の人間よりも少し長く見つめてきた。そんなに見なくても意見なんてそうそう無いのに。ていうか、一之瀬は綾小路の本来の実力に気づいているのか?いや、直感とかの可能性もあるかな?
「皆に聞きたいことがあるから質問させてもらうね。私としてはみんなが優待者ではない、というのを前提に聞かせてもらいたいことなんだけど、この試験を全員でクリアする、つまり結果1を追い求めるのが最善の策だと思っているかどうか聞かせて欲しいの」
こんな質問は大した意味をなさないだろうな。他の人間からすればただの確認。だけど、一之瀬からすれば、それぞれのクラスの姿勢を確認する意味や、運が良ければ優待者を反応から絞りたいと思っているという所か。
それを知ってか知らずか、どんどんとB.C.Dのクラスの人間が賛成という姿勢を示し始めた。綾小路も続いたのは少し意外だったけれど、周りに合わせたのか?実力を出したいのか出したくないのかよくは分からないな。
そんなことを考えている間に、町田とBクラスの浜口が激しい舌戦を繰り返していた。……康平からの命令を忠実に守ってくれているみたいで何よりだな。でも、伝えていないとは言えやり過ぎは良く無いかな。
「なら俺たちAクラスは全員沈黙させてもらうことにする」
「ちょいと責めすぎた質問だったかな?……ちなみに、下関君の意見も聞いてもいいかな?」
「ああ。町田の言う通り俺たちAクラスは基本沈黙させてもらうが、適度に俺だけが発言させてもらう。そして、交渉などは受け付けている」
「詳しく聞いてもいいかな?」
康平には申し訳無いがここまで他クラスが動いてくるとなると、俺達もそうそうに手を打たなきゃならないと思うから、先に交渉だけは出しておくことにする。もちろん、後で謝るけど。
「今回の試験は話し合いを経ての優待者の発見や駆け引きが試験の肝だと思っている。その上で、俺たちはウチのクラスにいる優待者を守るためにこのような沈黙策を取ったが、勝ちには貪欲にいきたい。だから、優待者に関する取引だけは俺だけで受け付けようと思っているという訳だ。まぁ、取引や交渉がAクラスに最後まで一切無かったのなら、一之瀬の言う結果1でも問題は無いと考えている」
Aクラスの他男子含めた全員が俺の発言に対して考え込んでいるようだった。これで、綾小路や一之瀬がどんな発言をするかが気になるものだな。
「うーん、その交渉って意味があるのかな?この試験の形だと嘘をいくらでもつけちゃうよ思うけど」
「それはしっかりと対策していくつもりだ。まぁ俺が言いたいのは何処か一つのクラスに勝ち抜けされるぐらいなら、取引をしてマイナスをなくさないか?ってことだ。それ以外にAクラスが動くことは無い」
言おうとしていたことは言い切ったので、顔を俯き、これ以上の質問は受け付けないという姿勢をとった。その後、二、三人が軽く疑問や文句を言っていたようだけどよく知らない。でも、これで少しでも興味が出た人間はバレないように話し合い以外の時間に接触してくるだろう。
その後は沈黙になった俺の代わりをするように、Aクラス沈黙作戦についての詳しい説明を一之瀬と議論し合い、他のクラスを巻き込みながら始めた。結果的には、他クラスが好意的に思うことは無く、Aクラスが鎖国することだけ伝わり、町田と森重は部屋の隅に移動した。
「下関くんは移動しなくてもいいんですか?」
「警戒するな浜口。俺はAクラスの交渉役だから。いつでも交渉歓迎という意味でここに座っている」
今回はこのままだらだらと様子見しながら終わるものだと思っていたんだけど、Cクラスの真鍋という女子がDクラスの軽井沢に向けて、因縁を付け始めた。これは龍園の作戦かとは一瞬考えたが、軽井沢ならありそうな原因と軽井沢の反応から事実なんだろうな。だが、それを試験中に軽井沢に無断で写真を撮ろうとまでするなんて、あまり良いことだとは言えないな。
「ねぇ……この子になにか言ってあげてよ」
何を思ったのか。軽井沢は俺の隣の席に座り俺に対して助けを求めてきた。何ヶ月か前に1度会っただけの男に頼ってくるものなのか?綾小路とかに頼ればいいのに。
「無断で写真を撮るなんて許せないんだけど。下関くんはどう思う?」
「一応ここは試験の場だから、あまり先生におおっぴらに言えないことはしない方が良いだろうとは思う」
出来るだけどちらの味方もしないようにしたんだけど、それでも真鍋には効いたようで押し黙ってしまった。龍園の名前を出してもよかったんだが、クラス間の争いに関わらせるのは面倒そうなので、止めておいた。
「変な言いがかりはやめてよね、まったく。ありがとう下関くん」
「ただの正論だから、気にするな」
この騒動が終わった後も、特に話し合いに大きな変化が訪れることは無く、自由にしていいというアナウンスが流れたので、康平と打ち合わせをするためにとっとと部屋を出た。……綾小路と同じ部屋にそんな多く居たく無かったというのもあるけど。
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その後の康平との話し合いでは勝手に交渉役を名乗ったことを謝ったけど、何処かしらで康平自身が出るはずだったので問題無いと言ってくれた。本当に康平はリーダーに向いていると思う。
他のグループに行ったAクラスは全員沈黙作戦を実行して問題無かったが、康平の所は沈黙作戦の実行に対しての龍園や堀北、神崎と弁戦するはめになったらしく、結構疲れたみたいだった。その影響が大きく、解散となった。
そこから、俺はお酒が飲めるバーに神室を呼ぶと、リンゴジュースを飲み、ダーツをしながら作戦会議をしていた。
「こんな場所で私と二人っきりで会ってもいいの?あんたの作戦はもう広まってるけど」
「まぁ、問題無いよ。今、神室と会っていても試験の話をしてるだけだと思うだろうし、こんな場所まで付けてくるやつはAクラスに居ないだろうから問題はないでしょ」
お、良いとこ当たった。でも、何故か総合的に神室に負けてるんだけど……おかしいな。ていうか、クールな性格で流れるようにダーツを投げる。改めて思ったけど、神室ってかっこいい女性だな。
「で、話ってなんなの?」
「綾小路に対しての尾行を頼みたいんだ。直ぐにバレるかもしれないから軽くでいいから。今回の試験思ったよりも忙しくなりそうだからさ」
「まぁいいけど。……はい、私の勝ち。明日の夜のご飯奢りよろしく」
帰っちゃったよ。言うことは言ったし、別にいいか。……そういえば、奢りって言ってたけど、この船のご飯は全部無料なんだよなー。神室も知っていると思うんだけどな。まぁ明日は何かしら起こりそうだし、それも含めて夜ご飯の時に話すか。
進みも更新も遅いですが、エタらないように頑張ります!