ようこそ葛城康平に補佐がいる教室へ   作:地支 辰巳

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雨狐さん誤字報告ありがとうございます!


結託 決着はすぐそこに

 二回目の話し合い。最初にまた前回もやった交渉の宣伝をする以外は特に何もしなかった。その何もしない時間を使ったりして、他の人間の観察をしていたが、綾小路含め特に動きは見られず、全員少し動くのを躊躇しているような印象を受ける。

 

「とりあえず……こうして集まるのも2回目だし、そろそろ打ち解けあっていく必要があるんじゃないかな?集まれる回数は限られているわけだしね」

 

 そんな中で動いたのはやっぱり一之瀬だった。一之瀬というコミュニケーション能力が高い人間でも、周りを警戒して動くのを躊躇していたのに、他のグループなどはしっかりと機能しているのか?まぁ、一之瀬にも狙いがあって動いているんだとは思うが……。

 Aクラス以外の人間はその一之瀬の意見に賛成的な意見を出していた。いや、Cクラスの人間は敵対というよりも無関心といった態度か。

 

「下関くんも話し合いをした方が、交渉する人が来る可能性も高まると思うよ?」

 

「一理ある意見だけど、一之瀬自身が来れば済む話じゃないか?いつ龍園が仕掛けてくるかも分からないし、Dクラスもここにいる人間が知らされていないだけで、もう作戦を練っている可能性もあるんだぞ?そんな中で、仕掛けられる前にプラマイゼロで終わらせられる交渉は強いと思うがな」

 

 この内容を竜グループでやれば大きな効果があったんだが、いかんせんこの卯グループでやってもBクラスに対してしか交渉を促すことは出来ないか。流石に綾小路にも効果は無さそうか。

 

「確かにそうだね。でも、ニノ手として交渉以外為にも交流はしておくべきじゃないかな?」 

 

 うーん、意外に一之瀬は強情なんだな。あそこまで言えば引き下がるかと思ったんだけど。そこまでしてAクラスを引き入れることに意味があるのか?Bクラスの何かしらの作戦への布石ということかな……。

 

「だったら良いよ、俺も交流に参加しよう。その代わり一之瀬。君も俺との交渉の席に参加して欲しい」

 

 こうするしか一之瀬は引かないように感じる。それにもし、俺への問いかけをやめて、町田や森重などに変更すれば何かしら情報を取られるかもしれない。

 いや、俺がこの思考に結論付けることを一之瀬は読んでいたのか?俺が一之瀬を交渉の場に引き出したように見えて、俺が交流の場に出されたのか?ああ、駄目だな。これは考えても答えは出ないか。

 

「おい、下関。そんな勝手なこと」

 

「責任は俺が取るし、康平には俺から言っておく。一之瀬答えはどうなんだ?」

 

「それで大丈夫だよ。後で連絡するね」

 

 それから試験は特に進展が無く一時間が経過した。一之瀬と軽くアイコンタクトを取ると、俺は町田と森重と共に部屋を出た。

 

「本気で一之瀬と交渉するつもりか?相手はBクラスなんだぞ?」

 

「分かってるよ。でも、どうせ選り好みしてる暇は無いんだ」

 

 不満げな町田を置いて、坂柳派の森重とも分かれて自分の部屋に戻る。部屋の中には康平が既に帰って来ていたので、一之瀬との交渉のことを話した。

 

「そうか……妥当な人選と言えるな。CクラスもDクラスも不気味なものがあるからな」

 

 部屋の中で現在の葛城派と坂柳派の人間が誰かを整理していると、一之瀬からメッセージが届いた。そこからのやり取りで、今日が終わるか終わらないかの時間に集まることとなった。こんな意味の分からない時間になったのはお互いの時間が合わないことと、万が一他の人間に聞かれることを防ぐ為だ。

 

「深夜ギリギリ、場所はカラオケ。メンバーは俺と涼禅、一之瀬と神崎。相手も交渉を受ける気が少しでもあるということだな」

 

「お互いに擦り合わせた結果とは言え、ここまで秘匿性の高い交渉の場になったからね。まぁ、話し合いの場で言ったから他クラスにも交渉することは伝わってしまってるけど」

 

「それはそれで構わない。焦って結果を急いでもらえれば俺たちに得だからな」

 

 

★ ★ ★

 

 

 集合時間が近くなりカラオケに向かうと既に一之瀬達は着いており、一之瀬達がいるカラオケ部屋へと合流した。

 

「じゃあ、さっそく始める前に、携帯を机の上に置いてもらえるかな?」

 

 いきなり仕掛けてきたか。だが妥当か……お互いに裏切ればリスクは高いんだ。これくらいのことはするのは常識か。そして、特に戸惑う事無く、俺と康平が携帯を出そうとすると、四人の携帯に一斉にメールが届いた。

 

『申グループの試験が終了いたしました。申グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

 マジか。どういうことだ?一之瀬達か?いや、こちらの顔色を伺っている様な表情、違うのか。だとしたら何処だ?しかも何故こんな時間に。いや、とりあえずは交渉のことを考えるべきだ。これは想定外だけど、プラスになる可能性が高い。

 

「Aクラスじゃないよね?」

 

「あ、ああ。俺たちじゃない。お前達でも……無いようだな」

 

 やっとこさ、4人とも冷静さを取り戻すと、改め全員携帯を机の上に置いた。念のためということでポケットの中身も見せ、全員潔白を証明した。

 

「それじゃあ改めて始めるけど、Aクラスの交渉内容を聞かせてもらってもいいかな?」

 

「AクラスとBクラス。お互いの優待者を全員公開する。そして、お互いを指名し合い、プラマイをゼロにする。それに加えて、六人分の優待者情報から優待者の法則を導き出して、他クラスを指名する。この試験の本質はもう分かってるだろ?」

 

 この交渉の大きな問題点はお互いを信じれるか否かということだ。信じなければこの交渉は意味が無いし、結ばれることは無い。だからこそ、出来れば龍園では無く、ここで信じやすい一之瀬の方と結びたい。

 

「それはお互いを信用し合わないと意味が無い。そちらが嘘の情報を渡せばこちらだけが損失を被ることになる。リスクが非常に高い」

 

「神崎の言うことはもっともだ。だからこそ、情報はこちらから出そう。龍園やDクラスの独壇場にしたくないだろ?そして、一つ確認するが、申グループはBクラスの優待者だったのか?少なくともAクラスでは無い」

 

「うん。Bクラスでも無いよ。それにBクラスの子が送ったということでも無いよ。Aクラスの人は送っていないの?」

 

 一之瀬は暗に坂柳派の人間が勝手に送った可能性は無いのかということを示してきている。はっきり言って、それが無いとは断言出来ない。でも、坂柳派に何か動きがあれば神室から何かしらは送られてくるはずだ。もちろん、寝ている可能性も無くはないが……。

 

「その可能性は低いだろう。Aクラスに何の確証も考えも無しに、優待者を指名するような人物がいるとは思えない」

 

 お互いが少しでも有利な状態を保とうとしている。このままだと、有耶無耶になってしまう可能性もあるな。ここらで、しっかりとした答えを聞かなければならないか。

 

「そろそろしっかりとした答えを聞こうか。BクラスにはBクラスなりに考えている戦略もあると思うけど、俺たちと取引するかどうかを」

 

 一之瀬も神崎も特に顔色を変える訳では無く、お互いに軽いアイコンタクトを取っただけだった。

 

「Aクラスと取引するよ。私たちの目標はAクラスだから、今回ばかりの取引だけどね」

 

「それで構わない。マイナスにならないことがこの試験で大事なことだからな」

 

 お互いに携帯の画面に自身のクラスの優待者をメモったものを見せ合う。そこに何の会話も発生しない。メモを取ることも禁じているので、他クラスに言っても信じられる可能性は低い。そして、ここから俺たちは法則性を導き出す為に徹夜することになる。それが一番裏切られる可能性が低いからな。もちろん、全員での協議の上の決定だ。

 

「干支試験というぐらいだ。干支と関係あるのは間違いないだろう」

 

「うん。後は優待者に関連性を見つけることだね」

 

「さっそく始めるとしよう」

 

 カラオケの店員さんにA4の紙を4枚とボールペンを持って来てもらう。ここからはひたすら考えてる作業だ。

 

 考えてる時間に入ってから約一時間。優待者の共通点を見つけ出そうとしたものの全くと言っていいほど共通点は見当たらなかった。雑談もぽつぽつ増えながらも、何かしらの突破口を見つけ出そうと会話を増やす。そして、いよいよ───

 

「そうか!」

 

「!もしかして。分かったの神崎くん?」

 

 どうやら、神崎がやっと法則性を掴んでくれたようで、心の底から嬉しそうな表情をしていた。俺もやっと帰れると思うと、素直に神崎に感謝したい。

 

「ああ。これは干支の順番と苗字が関連しているんだ。子グループなら一番苗字が早い順といった具合にな」

 

 神崎の言う通り、その法則に当てはめていくと、ぴったりと今把握している六人の優待者に当てはまった。そして、もちろん全クラスに三人ずついることにもなった。これは……正解で間違えないかもしれない。神崎凄いな。

 

「やっとだな……一度睡眠を取ろう。長丁場だったからな」

 

 お互いを警戒していたものの、寝れると体が理解してからは全員あっという間に寝てしまった。ここまで来て、俺は何かを仕掛ける気も無いし、一之瀬達も無いだろう。

 

 

★ ★ ★

 

 

 朝。きっちりとした睡眠時間を取った俺たち4人はカラオケボックスを出る。眠っていた時間も合わせると随分長い時間ここにいたな。カラオケで夜を明かすなんて初めての経験だったから、新鮮な気分だ。

 

「では、デッキにお互いに対応したグループのメンバーをここに呼ぶことにしよう」

 

 時刻は三回目の話し合いが始まる一時間前。携帯で連絡する時も問題無く起きており、Bクラスも問題無さそうだった。もちろん、俺から連絡する人間は全員が葛城派の人間だ。

 

「じゃあ、みんな頼んだよ」

 

 一之瀬の号令により、この場に呼び出されたAクラス、Bクラス合計六人が学校に向かって優待者が誰かを指名するメールを送った。その後に六回鳴り響く全員の携帯。いや、船中の生徒全ての携帯が鳴っていることだろうな。

 

「これでこの試験でAクラス、Bクラスがマイナスになることは無い。そして残る5つのグループはお互い自由なタイミングで、構わないか?」

 

「うん。一つぐらいは結果1を目指したい」

 

「幸いにも康平と神崎。俺と一之瀬は同じグループだ。少しはその努力も出来るとは思う」

 

 そんな風に終わろうとした瞬間、また全員の携帯の通知が鳴った。嫌な予感がする。そして、メールはそんな予感が的中したもので、卯グループ、午グループの二つの終了を告げるメールだった。

 

「さっそくお前らがやったのか?」

 

「まだ分からないけど、この二つのグループの優待者はDクラス。少なくともDクラスでは無いことは確かだよ」

 

 だけど、目の前にいる一之瀬達の態度は申の時と変わりないから、Bクラスの可能性は低い。それに、タイミングは告発のタイミングは自由と決定している。このメールに何の問題も発生はしない。

 

「それはこちらの台詞だ。ポイントに貪欲すぎるんじゃないのか?」

 

「やめよ神崎くん。自由って決めていたし、結果が発表されればAクラスかどうかは分かることだから」

 

「一之瀬の言う通りだ。Aクラスでは無いとだけは言っておくけど、お互いに他クラスを指名するもしないも自由だ」

 

 後味の悪い終わり方をしたけど、ここで一之瀬達とは別れた。告発されたグループはどちらもDクラス。暴力事件の際に軽い協力をしていたBクラスがCクラスを告発せずに、Dクラスだけをするというのはあまり考えられない。だったら、信じたくは無いけど可能性が高いのはCクラスか。

 

「Bクラスは指名してくると思う?」

 

「してくるだろうな。だが、一之瀬のことだ、残った3つのグループすべてを指名してくることは無いと思われる」

 

 俺らAクラスからしてみれば今回の試験、マイナスが無いだけで目標を達成しているようなもの。他クラスが獲れても最大100ポイントか150ポイントのこの状況はそこまで問題が無かった。

 

「だが、一つぐらいは指名しておこう。それで構わないか涼禅?」

 

「うん。Bクラスにそこまでする義理は無いからね」

 

 そして、話し合いが始まる直前、AクラスとBクラスによって一つずつグループが指名されて、残るはリーダーが集められている竜グループの一つとなった。

 

「では、話し合いに行ってくる。荒れるだろうがな」

 

 これで試験に関しては終わった同然。後は神室から綾小路の動向を聞くぐらいで、次の特別試験は坂柳に譲って、リスクを減らすことになるかな。

 




次がいつになるか分かりませんが、もうすぐ干支試験編も終わりです!
他クラスの考えとかの補完とかはどうするか考え中
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